2019年5月1日 水曜日

web制作会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

この記事では、web制作会社の概要を解説した後、M&Aを実施することによって売却側と買収側に生じるメリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。

 

web制作会社のM&A

web制作会社とは

まず、web制作会社の基本的な特徴をご紹介します。web制作会社の主な事業内容は、顧客の意向に沿ったwebサイトを制作することです。業務の概要としては、最初にwebサイトの構成プランを考え、具体的なデザインを起こしていきます。考えたデザインをPC上で動かせるようにコーディングを行い、最後にwebサイトとして機能させるためのシステムを追加することによって完成します。

web制作会社は、新規にwebサイトを制作する以外にも、既存のwebサイトを効率的に運用するプランを作成したり、対象のwebサイトを開いたユーザーのデータを分析し、結果を管理者へ定期的にフィードバックするといったことも行っており、その業務内容は多岐に渡ります。例えば、関連事業を幅広く提供することで収益を伸ばそうとするweb制作会社や、ユーザーの需要に応えていく過程で習得したスキルを応用し、webサイトの質を向上させるプランを提供している会社などが存在します。

 

M&Aとは

M&Aとは「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」を略した言葉です。2社以上の企業間での合併や吸収、資本による企業買収が行われた際に用いられます。

また、企業の買収以外にも、企業の提携もM&Aに分類されます。以前は「買収=乗っ取り」というイメージが広まっていましたが、近年では、深刻化する後継者不足の解決策として、や企業の成長戦略として、M&Aを実施する経営者が増加しています。

 

web制作会社のM&Aを行う理由は?

web制作会社がM&Aを行う理由を理解すべく、M&Aにおけるメリットをそれぞれ売却側と買収側について見ていきましょう。一方で、M&Aをすることには少なからずリスクがあります。下記では、代表的なデメリットも合わせてご紹介します。

 

売却側企業

メリット

・事業の売却によって利益を獲得できる

M&Aによるメリットとして、現金を獲得できる点があります。構築してきた事業を売却することにより、対価として収入を得ることができます。売却後に利益が残るかは、事業価値に左右されるので注意が必要です。適正な売却益を得るには、売却側と買収側の双方が事業価値を算出した上で、見解を一致させられる様に意見をすり合わせていく必要があります。

 

・後継者問題の解消

外部の第三者企業へ事業売却した場合、後継者に関する問題を解決できることは売却側企業の経営者にとって大きなメリットです。中小企業では優れた経営者が会社を牽引しているケースが多く、現在の経営者がリタイアした際に、事業を維持できる人物がいないことも少なからずあります。

経営者の親族や社内に後継者が居ない場合、M&Aによって大手企業へ会社を売却することで問題を解決する事ができます。大手企業へ事業を引き継いだ場合は、優れた経営スキルを持った人物が後継者となる可能性も高いといえるので、M&Aが成立すれば高い確率で後継者問題を解決することが見込めます。

 

デメリット

・企業価値が低く算出される可能性がある

M&Aを実施する際、売却する事業が将来的にどれだけの収益を上げるかによって買収側企業からの評価は変わってきます。売却交渉の時点で黒字だとしても、M&Aが成立した後に業績が伸びないと判断された場合は、企業価値が想定より低く評価される場合があります

売却額を高くする工夫として、業界全体の市場動向を見極めてスケジュールを設定することは有効な手法のひとつです。しかし、非上場企業の株式を売却する場合は、売却側企業の状況が重要な評価基準になります。

将来的な収益につながる設備投資を実施したり、債務を抱えている場合は出来る限り返済しておくことで、効率的に企業価値を向上させることができます。適切な対策を実施することでキャッシュフローを確保出来る体制を構築できた場合、売却側企業の長期的な存続にも繋がります。

 

・事業体系の変更、浸透に時間が掛かる

経営方針が大きく異なる企業へ事業を売却した場合、新しい社風が浸透するまでに時間がかかることが多く、場合によっては会社内での対立や騒動に発展する可能性があります。現場における業務でも、書類の様式や手続きを統一したり、業務体系を統合する担当者に多大な負担が掛かりやすく、業務効率を低下させる要因になります。

 

・買い手による事業方針の変更

売却交渉の流れによっては、従業員の雇用引継ぎや労働条件に関して変更を要求される場合があります。加えて、統合後の会社で従業員同士の対立が起こるリスクも高く、離職率の悪化につながる可能性もあります。

 

・取引先からの信用低下のおそれ

M&Aの実施後に契約内容が変更されたり、異なる担当者が就任した場合、従来の関係性を重視していた取引先からは反発を招きやすく、契約を打ち切られるリスクがあります。取引先の減少によって会社の収益力が低下した場合、買収側企業からM&Aの実施を断られるケースも想定されます。成立に至ったとしても、従業員または役員からの反発を招くことが予想されます。このため、買い手が付かなかった時の対応策や、事業売却後も経営者として留まる可能性があることを考慮しておくなど、M&Aの実施には相応のリスクが伴うことを理解しておく必要があります。

 

買収側企業

メリット

・新しい技術を獲得できる

IT業界では新技術の開発が頻繁に行われるので、企業価値を維持していくには常に最新情報をリサーチし、必要に応じて実践していくことが求められます。

M&Aによって他のweb制作会社を買収した場合、取り入れたい技術を直接獲得することができるので、新規開発する時間やコストを抑えることが出来ます。また、買収時点での最新技術を取り扱っている企業は長期的な収益に繋がりやすく、費用対効果も高くなりやすいと言えます。近年は業務にIT技術を組み込む経営者も多く、他業種の企業がIT関連の企業を買収する事例も存在します。自社ホームページを保有している企業は多く、より実用性の高いwebサイトを制作する目的で、web制作会社の買収を図る企業も増加しているようです。

 

・シナジー効果の獲得

web制作会社の業務内容は多岐にわたりますが、全工程に対して一定のニーズが存在するという特性を持ち合わせています。それゆえ、新技術を獲得することで事業領域を拡大し、収益を確保することが重要となってきます。M&Aは効率的に新技術を獲得できる手法であり、web制作会社を買収する際はシナジー効果の形成を主目的とすることが一般的となっています。

 

・売却元の従業員を確保できる

IT技術の発展に伴ってエンジニア不足は深刻化しており、企業共通の問題となっています。現代ではwebサイトの設計から管理までを総合的に実施する企業も珍しくなく、新規採用時の募集要件も複雑化している傾向があります。例えば、webサイトのデザインを考える時点で、パソコンとスマートフォンはデザインを分けて制作する必要があります。使用するプログラミング言語もHTMLやphpなど複数の種類があり、宣伝効果を最大化するには、webサイト制作に関する総合的な知識に加え、取引先の事業特性を理解していることが前提になります。

近年のIT業界は、新規採用、社員教育の両方ともが困難な環境であると言えます。その分、M&Aによってwebサイト制作の実績を持つ従業員を複数人雇用できることは、買収側企業にとって大きなメリットであるといえるでしょう。

 

デメリット

・シナジーが生み出せない場合もある

M&Aの過程で事業価値を算出する際、買収側企業は譲受する資産の評価額に加えて、事業の統合によるシナジー効果を算出して加算し、最終的な買収金額を決定します。

シナジー効果の例として、業務スキルや取引先などを共有することによる、事業領域の拡大や新規顧客増加、サービス水準の向上、新規開発に関するコスト低減などが挙げられます。

しかし、実際には従業員同士の連携が想定より遅れたり、新技術の実用化が遅れて計画より業務効率が上がらない、取引先に対する対応が上手く行かないといった理由で、計画していたほどの増収やコスト削減効果を得られないケースは多く存在します。それだけでなく、企業規模の拡大によって管理コストが増大し、利益を出せない状況が続くというデメリットも考えられます。想定したシナジー効果を得られない可能性は常に念頭に置き客観的に評価することによって、シナジーの獲得に過剰なコストを支払うリスクを防ぐことが出来ます。

 

・従業員からの不満

web制作会社を買収する際、事業設備とともに従業員も引き継ぐことが多くあります。しかし、買収側企業との間で雇用条件や業務内容に差が付いていたり、売却側企業の従業員は昇進が遅いといった問題がある場合、従業員からの不満が蓄積されていきます。

技術開発や業務スキルの共有などは従業員同士による連携が前提となっており、買収した企業の従業員に不満が蓄積する状況はデメリットが大きいといえます。シナジー効果が形成できないこと以外にも、ストレスを溜めた従業員が集団的に離職してしまう可能性も考えられます。

 

・売却側企業の従業員の離職

創立からの経緯や歴史は企業ごとに異なります。M&Aによって統合する際には、業務体系や各種規定などに関しては買収側企業の規約がベースとなることが多くなっています。一方に合わせるという性質上、M&A成約前から統合後までの間に、ほぼ確実に軋轢が生じます。

企業同士の軋轢を解消する上で、売却側企業の従業員から信用されているキーマンが存在しているかは重要なポイントです。M&Aの実行に伴い、キーマンが企業内の意向をまとめ上げられるかによってM&Aの結果が左右されるとも言えます。買収に伴って従業員が離職することは想定可能なリスクであり、売却側企業のキーマンが離職することは極力回避する必要があります。

 

web制作会社のM&Aを行うタイミングは?

web制作会社のM&Aは今が最適なタイミングといえるでしょう。ここ数年、IT業界内のM&Aは増加しています。2018年では11月末時点で979件のM&Aが実施されており、過去最多となった2017年の748件を大きく上回るペースで推移しています。2018年における日本のM&A市場で最初に1000件を超える業種となる見込みであり、同年内の全M&A件数の35%を占めています。成立件数も他業種に比べて格段に多くなっています。

買収ニーズが高いため、売却側企業は多くの案件から買収先を探す事ができます。買収側企業から見ても、より具体的な希望条件を満たすweb制作会社を買収できる可能性が高くなります。つまり、業界全体でM&Aが行われている今こそ、M&Aを実施するのに最適なタイミングなのです

 

web制作会社のM&Aを実施するのは誰か?

M&Aによってweb制作会社を買収又は売却しているのは、一体どういった企業なのでしょうか。

売却を行うケースとしては、既出のとおり、後継者問題の解決や売却益の獲得を目的として実施する経営者が増加しています。売却先は同じweb制作会社である事が多くなっていますが、同業他社へ売却する過程として、他業種の企業を買収するケースも想定されます。

買収する企業は、IT技術の獲得を目的としている企業が大半です。買い手となる企業の業種は、小売やゲーム業界など多岐にわたります。M&A市場におけるweb制作会社の需要は高く、買収を検討する企業は増加しています。

 

web制作会社のM&Aの相談先は?

web制作会社のM&Aを検討している場合、M&A仲介業者へ代行依頼を行って進めることを推奨します

M&A仲介業者は、M&Aを検討する経営者に対して売却または買収希望の案件を紹介する業者です。多くの場合、案件の紹介以降における交渉過程やデューデリジェンスなどもサポートしてくれるので、M&A仲介業者はアドバイザリーとしても活用できます。M&Aの実施に必要な公認会計士や税理士などを専属雇用している仲介業者も多く、全国に顧客ネットワークを構築していることから、M&Aのスペシャリストであるといえます。M&Aは非常に複雑な業務であり、個人経営規模の案件だとしても経営者が自力でM&Aを進めていくことは困難です。

 

まとめ

M&A市場でのweb制作会社に対する需要は高く、シナジーの形成や解決したい問題点を明確にした上でM&Aを実施することによって、良い結果を得られる可能性を高いといえます。後継者問題などといった自社の問題解決策としてはもちろんのこと、IT業界では日常的に新技術が開発されているので、M&Aを実行して開発コストを抑えながらエンジニアを獲得し、効率的に企業価値を向上させていくことが賢明です。

web制作会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと
この記事では、web制作会社の概要を解説した後、M&Aを実施することによって売却側と買収側に生じるメリット・デメリットをそれぞれ解説していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年5月1日
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