2019年5月3日 金曜日

web制作会社の事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

web制作会社の事業譲渡を考えている方はいらっしゃいませんか?長年会社を経営してきたものの、後継者がおらずに廃業をするか、事業譲渡をするかで悩んでいる経営者もいるでしょう。しかし廃業を考える前に、一度、事業譲渡を考えてみることを提案します。事業譲渡をすることで、従業員の雇用を守ることや、会社の積み上げてきた技術やノウハウを残すことが可能となるからです。この記事では、web制作会社が事業譲渡を検討する際のチェック項目をご紹介します。

 

web制作会社の事業譲渡を検討してみては?

・web制作会社とは

web制作会社とは、一般的には「webサイトを作る会社」と認識されています。しかし、実際のところ、web制作会社の業務は非常に多岐に渡っています。

2000年代中頃にFlashが全盛期だった頃まで、多くのweb制作会社は、ビジュアルデザインにプログラミングを組み合わせた業務を中心に行っていました。少数ながらマーケティングを行う企業もありましたが、大多数がクリエイティブ業務に傾いていました。しかし近年では、web制作の現場でも、マーケティングやブランディングの提案を求められる機会が非常に多くなりつつあり、実際にマーケティングやコンサルティングをメインに据えて、web制作を辞める企業も出てきています。

このように、現在持っているweb制作の技術をより深めていく企業がある一方で、他の領域へと手を広げる企業も存在します。一例を挙げるなら、webサイトにとどまらず、アプリやIoT、インスタレーション、サイネージなどを手掛けていくケースです。

 

・事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業を第三者に譲り渡すことを意味します。ここでいう「事業」とは、人材や技術、ノウハウ、債務、事業組織、ブランドなどを含む、あらゆる有形、無形の財産です。事業譲渡をした会社は、競業避止義務により、譲渡後は同じ事業を行うことが制限されるため注意する必要があります。事業譲渡は、会社の全ての事業を譲渡するだけではなく、一部の事業のみを譲渡することも可能です。このように、契約の範囲を定めることができるので、買い手としては、帳簿外の債務を断ち切ることができるのが大きなメリットの一つです。

 

・web会社の動向

web業界は多重下請け構造となっており、大手企業である一次請けから、開発・運営業務を手掛ける二次請け、三次請けと続くピラミッド構造になっています。さらに、web業界は大手からベンチャー企業まで、企業規模が様々で、業態も非常に多様化しています。加えて、IT技術の発展に伴って、IT、IoT、VR、クラウドサービス、認証システムなど、新しい技術が続々と出現しており、さらにスマートフォンの普及も後押しして、事業の種類も増え続けています。

また、マイナンバー制度やIT技術の導入に加え、金融業界のシステム更新のような大規模案件も増えているため、全体としてIT企業へのニーズは高まっています。

現在は、あらゆるモノがインターネットとつながっている時代です。

そのため、IT技術の発展は留まるところを知らず、web業界はますます多様化していくことでしょう。そんなweb業界の市場規模は巨大で、2017年には約12兆円に達しました。リーマンショックや東日本大震災の影響により、一時期、低迷期を迎えたこともありましたが、その後投資の回復もあって、IT業界の市場規模はますます拡大を続けています。

 

web制作会社を事業譲渡するメリット

売却側のメリット

・後継者問題を解決できる

事業譲渡をすることで、後継者問題を解決できる可能性があり、企業のオーナーは事業譲渡により、リタイア資金を得ることもできます。

ただし、売却したい企業が赤字経営の場合は、買い手がなかなか見つからず、譲渡を巡る交渉がとても難航する可能性も高くなります。そのため、事業譲渡を行う前に、自らの事業の整理と分析を行って、企業価値を上げておく必要があります

 

・利益を得ることができる

事業譲渡をする上での大きな利点は、現金を得られる点にあるでしょう。

事業譲渡において売り手側企業は、会社を売却することである程度の現金を得ることができます。事業譲渡はあくまで会社の一事業を売却する手法なので、会社を丸ごと売り渡す会社売却と比べると得られる現金は少なくなりますが、それでもまとまった額の現金を手に出来る可能性は十分にあります。事業譲渡を行っても、会社自体は存続するため、事業譲渡で得られた現金を経営の資金に回すことや、借金を返すための資金にし、経営者自身の今後の生活資金にすることも可能です。

 

・従業員の雇用を守ることができる

事業譲渡を行うことで、従業員の雇用を守ることができます。

後継者がいないために会社を廃業した場合、困るのは経営者だけではなく、従業員も職を失って路頭に迷うことになります。しかし事業譲渡を行って会社売却をすることによって、その企業に勤める従業員は失業せずに済みます。また、優良企業とM&Aを行うことで、かえって従業員の待遇が良くなるケースもあります。

 

・売りたい事業を選べる

事業譲渡においては、売り手側は譲渡する事業を選ぶことができます。そのため、経営が負担になっている事業を譲渡して経営に余裕を持たせたり、最低限の事業のみを残したりと、目的に合わせて調整できる点がメリットです。

 

買収側のメリット

・時間を掛けずに新事業を始めることが出来る

どのような事業でも、ゼロから始めるとなると費用も時間も非常にかかりますが、すでにある事業を買収した場合はそれらを減らすことが可能です。M&Aを行い、素早く低コストで事業を買収できれば、変化の目まぐるしい経済環境に応じた経営を行うことができるようになります。

既に完成されている事業を買収した方が、ゼロから始めるよりも圧倒的に早く、採算性も予測しやすいといえるでしょう。

 

・従業員や技術を確保できる

事業譲渡を行うにしても、会社をただ大きくすれば良いということではなく、買い手側に良い影響をもたらしてくれる企業を買収することが大切です。なぜなら事業譲渡は対象となる企業の優秀な人材と技能の獲得が前提となるからです。ですから、企業を買収する場合、優秀な人材が退職しないように条項を設定する必要があります。仮に卓越した技術を保有していなくても、仕事の速さや人件費の安さといったメリットがあれば、それが買収の決め手になることもあります。

 

・買収する事業を選べる

事業譲渡において、買収側は当然ながら、買収する事業を選択できるので、自社が欲しい事業のみ譲渡を受けて、不要な負債や事業を引き継がないということが可能です。

 

・事業譲渡なら節税することができる

事業譲渡において、買い手側は税務面でもメリットがあります。事業を買い取る際、買い手側は、現在の事業の価値に加えて、その事業が将来生み出すであろう価値を買取金額に上乗せします。この上乗せされた金額を「のれん」と言い、損金算入することが可能です。この「のれん」の償却を利用することで、節税することができます。その一方で、買い手側には、消費税や登録免許税に加えて不動産取得税などの税金を納めなければなりません。そのため、事業譲渡では、株式譲渡などにくらべて納める税金の負担は大きくなります。

 

web制作会社を事業譲渡する際のチェック項目

売却側のチェック項目

・譲渡のタイミングを考える

事業譲渡においては、譲渡のタイミングも非常に大切です。できる限り早く準備を済ませておくと良いでしょう。譲渡には非常に時間がかかるからです。
事業譲渡をしたいと考えていても、希望するタイミングで譲渡ができるとは限りません。実際のところ、買収候補となる企業が見つかっても、後に交渉が破綻することも有り得ます。差し迫ったタイミングでの譲渡では、売却側に不利な条件であっても、その条件で売却せざるを得ないこともあり得ます。事業譲渡には、余裕をもって最適なタイミングで臨みましょう。

また、市場環境は常に変化していることも、しっかりと踏まえておかなければなりません。リーマンショックや東日本大震災以後落ち込んだweb業界の業績は、近年では回復傾向にありますが、不況に転じるリスクは当然あります。そうなると、買収側企業も買収を控えがちになってしまいます。ですから、現在の流れに乗って、好条件で事業譲渡をするためにも、早いうちから準備をすることが望ましいと言えます。

 

・早い段階で事業譲渡の事実を社員に知らせない

事業譲渡の検討に時間がかかる場合は、秘密保持に気を付けましょう。譲渡の計画が漏れると、交渉条件が悪化しかねないからです。それに、従業員が事業譲渡に不安を持って辞めていくこともあります。そうなった場合、交渉そのものが破談になりかねません。

 

・譲渡先の相性を考える

事業売却が成立する上で、社長同士の相性も非常に重要です。お互いの信頼があってこそ、友好的な事業売却は成立するものです。社長同士が信頼し合い、その会社の理念に共感出来れば、事業売却後の経営統合作業でも、円満に進むことも多いでしょう。

一方で、事業売却の交渉において、意固地になって自分の条件にこだわりすぎていては、平行線で全く進まないといったことになる可能性があります。その場合は、事業売却専門のアドバイザーの意見を聞きながら、お互いに歩み寄る努力をすることが成約につながっていくと言えます。

 

・事業譲渡には時間が掛かる事を考える

事業譲渡は非常に長い時間がかかります。

まず、条件がピッタリの買い手企業を探すのに相当な時間がかかりますし、その企業との交渉や、交渉成立後の引継ぎにも時間がかかります。そのため、事業譲渡には少なくとも6カ月ほどの期間が必要です。また、事業譲渡ともに引退を考えている方は、譲渡が完了しないことには、完全に引退することができないので注意が必要です。

 

・事業譲渡はスピードが大切

事業譲渡はスピードが命です。事業譲渡は企業同士の口約束ではなく、書面を交わすことで成立します。その書類は買収監査という審査に必要で、その準備には膨大な手間がかかります。実際のところ、この段階で多くの経営者が事業譲渡を投げ出したくなります。その後も、企業同士の話し合いの中で、これまで友好的だったにも関わらず、利害関係を巡り衝突をしてしまう例は多々あります。しかも、お互いが普段の業務を行いながら話し合いを行うので、完了までに1年以上かかってしまう可能性もあります。そんなに長い時間をかければ、当然、当初とは状況も変わってくるので、最悪の場合、譲渡希望の企業が撤退してしまうことも十分に起こり得ます。そのため、事業売却はスピーディーに行うことが非常に重要なのです。

 

買収側のチェック項目

・シナジー効果があるかを考える

シナジー効果とは、例えるならば、1+1が3にも4にもなることを言います。つまり、事業譲渡で2社が合わさることにより、とても大きな価値が生まれる効果を意味します。そのシナジーには、収益向上のシナジーとコスト削減のシナジーがあります。収益向上のシナジーとしては、クロスセルを期待できる会社への事業譲渡が挙げられます。取引流通を拡大できたり、顧客単価を上げたりする対策として有効です。

 

・買収の目的を明確にする

譲渡希望の企業は、なぜ事業を買収するのかを明確にしなければなりません。現在のweb制作会社は、webサイトの制作だけではなく、ブランディングやプランニングを行う必要があります。そのため、自社のブランドデザインの提案や、プランニングの能力の向上を目的にした場合、それらを強みとするweb制作会社を買収することで、事業価値を高めることができます。

 

まとめ

web制作会社の事業譲渡を検討する際のチェック項目をご紹介しました。現在web制作会社は空前の売り手市場で、買収を考えている企業は数多くあります。そんな事業譲渡をスムーズに完了するためには、いくつかの注意事項があることを見てきました。

今回ご紹介したチェック項目は、事業譲渡を成功させるために、押さえておきたい大事なポイントです。事業譲渡に臨む際には、これらの項目をしっかり確認して、円満な成約を目指しましょう。

web制作会社の事業譲渡を検討する際のチェック項目
web制作会社の事業譲渡を考えている方はいらっしゃいませんか?長年会社を経営してきたものの、後継者がおらずに廃業をするか、事業譲渡をするかで悩んでいる経営者もいるでしょう。しかし廃業を考える前に、一度、事業譲渡を考えてみることを提案します。事業譲渡をすることで、従業員の雇用を守ることや、会社の積み上げてきた技術やノウハウを残すことが可能となるからです。この記事では、web制作会社が事業譲渡を検討する際のチェック項目をご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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