2019年5月4日 土曜日

web制作会社の事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

この記事では、web制作会社の概要をご紹介し、事業売却が実施される目的について、売却側・買収側それぞれの観点から解説していきます。実際に事業売却を検討するにあたって、把握しておくと手続きを円滑に進めやすくなるポイントについても紹介します。

 

web制作会社の事業売却で次のステージへ

web制作会社とは

web制作会社に対する一般的な認識として、企業の依頼を受けてwebサイトを制作している会社というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。実際には、web制作会社の業務範囲は多岐にわたり、制作以外にも多くの業務内容が存在しています。

世間全体にFlashが流行していた2000年代中頃には、グラフィック重視の商業デザインとして、映像表現にプログラミング技術を用いる業務に需要が集中していました。当時は制作技術を特に重視するweb制作会社が多く、マーケティング分野は相対的に後回しにされてきました。

しかし、現代ではwebサイトをビジネスツールとして用いる流れが広まっており、web制作会社に対してもマーケティングやブランディングに関する知識が要求される場面が増加しています。最近では、コンサルタントを主力事業とし、webサイトの制作を事業内容として記載しないweb事業者も見られるようになっています。

新規にwebサイトの制作技術を提供する企業だけではなく、蓄積した事業スキルを他社へ提供していく企業も存在します。web制作会社の業務内容は幅広く、ブラウザ向けのページ以外にも、アプリやIoT、電光掲示板、SNS、インスタレーションなど、web制作技術を活用できる業務を事業領域としていくケースも多くなっています。

 

事業売却とは

事業売却とは、文字通り会社の事業を売却することを指します。会社の売買には多くの実行スキームが存在しますが、売買する事業内容や規模によって、事業売却という名称が変わることはありません。

近年では大手・中小企業を問わずM&Aを実施する事業者が増えており、事業売却が用いられるケースが増加しています。採算性の低い事業やノンコア事業を切り離し、段階的な事業承継の過程としてコア事業を承継する目的で事業売却を用いるなど、さまざまなケースが想定されます。

会社の法人格を含めて売買する会社売却と異なり、事業売却は規模を抑えやすい傾向にあるので、買収側企業にとっては比較的低いコストで実行できる特徴があります。事業売却を実施する際は、事業譲渡というM&A手法に従ったスキームで実行されることが多くなっています。

 

web制作会社を事業売却する目的にはこんなものがあります

売却側の目的

売却利益を獲得する

不採算事業の立て直し、または新規事業を始めるのに必要な資金を調達する目的で事業売却を実施する場合があります。

必ずしもプラス思考で行われる訳ではなく、経営資金の調達が難しい状況で必要に迫られて事業を売却してしまうパターンも存在します。こういった場合には、多額の売却益を得ることに重きが置かれます。売却益の獲得を重視する場合、事業の取捨選択を目的とした事業売却とは異なり、高い収益を上げている事業を売却することも想定されます。ただし、コア事業を売却したことによって経営が行き詰まるというケースは必ず想定し、回避する必要があります。

なお、コア事業の売却が成立した場合は多額の資金を得られますが、これを持て余すことが考えられる場合には、事業売却の主目的を検討し直すことを推奨します。

 

主力事業へ集中する

基本的に、中小企業では従業員の人数や資金力といった経営リソースが限られています。そのため、取捨選択を明確に行うことが重要であり、コア事業とノンコア事業を分別した上で、収益力や業績に優れるコア事業へ人員や資金を集中的に投入していく必要があります。事業計画を構築する過程で、必要性の低い事業があると判断した場合には、該当事業を売却してコア事業に投入できるリソースを確保しようとする企業も多く存在します

ノンコア事業を売却することによって人員や設備にも余裕が出来るので、受注できる案件が増えたり新技術を開発できたりと、当初の想定よりも高い利益を得られる可能性があります。

採算性の低い部門を放置して債務が膨れている場合でも事業売却は実行可能です。諦めて廃業を選択してしまうと、従業員を解雇した上で退職金を支払う必要があります。会社の継続手段として、事業売却の存在も把握しておきましょう。

 

企業の成長力を向上させる

事業を拡大しているベンチャー企業が大手企業へ事業売却を実施するケースも存在します。順調な経営実績をアピール材料として大手企業の傘下へ入った場合、従来の経営方針を維持しながら増資を受けられる可能性もあります。経営基盤が安定することによって技術開発や人材確保などに使えるリソースも増えるので、会社に対する信用性も向上することが見込めます。

 

買収側の目的

事業領域を拡大する

自社と異なる技術を持った企業を買収することで、新規開発よりも短期間で新たな技術を獲得することができます。多くの実績を持つ企業は信頼性も高く、少ないリスクで新事業に参入できます。安定した事業を複数保有することにより、急な景気変動が起こった時にもリスクを分散しやすくなります。

 

シナジーを形成する

企業買収によって獲得した事業と自社が展開している事業とを統合することによって、多くのシナジーを形成できます。業界内におけるシェア拡大、サービス提供地域の拡大、事業領域拡大、取引先増加、会社規模の拡大など、買収した事業内容しだいで多様なシナジー効果が期待できます。各種シナジーの形成によって、受注案件増加が見込めるほか、各種業務を効率化することでコストを削減し、財務状況を改善することもできます。

 

企業を再生する

一度経営難になった企業を立て直す場合、再生手続きを実施すべきかどうかはなかなか判断が難しいところです。しかし、状況の深刻度合いに関わらず、企業の再生を図ったM&Aは多く実施されています。倒産することによって経済や社会の動向に大きな影響を与える企業、もしくは唯一性のある技術や需要を保有している企業が倒産に至りそうな場合には、再生手続きを目的としたM&Aが実施されます。

再生手続きを担当する企業にもメリットは多く、優れた技術を獲得できる以外にも、経営難の企業を再生した実績を得ることができます。経営難にある企業が事業売却によって立て直しを図る場合、優れた実績を持つ事業以外は出来るだけ事業売却で換金することで、将来的な赤字を抑えることができます。残したコア事業へ資金や人員を投入することで、経営改善を図れるというメリットも得られます。

企業の再生を主目的とした事業売却の場合、買収先は経営に関する中長期的なビジョンを持って進めていくことが重要になります。再生過程で事業売却の専門家へ相談する場合、会社の状況を理解して適切なサポートを実施できる人物を優先的に頼ることを推奨します。

 

web制作会社の事業売却を行う上での注意点

ここからは、事業売却を行う上での注意点について売却側、買収側それぞれから解説していきます。

 

売却側企業が注意する点

事業価値は適切か

事業売却を実施する上で、事業価値は特に重要な要素のひとつです。

事業譲渡を用いて売却する場合、ベースとなる価格は、状況によって買収側、売却側企業のいずれかが提示します。技術水準の向上が早いIT業界で、新技術を事業内容にどれだけ取り入れているか、安定した取引先を持っているかなど、買収側企業は多くの観点から対象となるweb制作会社を評価します。事業価値を算出する方法はいくつか存在しますが、いずれも流れや計算などが複雑なので、多くの場合は事業譲渡の専門家へ依頼する必要があります。適正な事業価値を算出するのは非常に困難な作業です。Web制作会社の事業譲渡に明るい、実績を持つ専門業者の協力を得ることを推奨します

事業売却の過程で、買収側企業が相手の価値を算定し、事業を引き継ぐリスクを精査する工程をデューデリジェンスと言います。買収側企業としては、問題を抱えたweb制作会社を買収してしまい、事業売却が原因となって経営に悪影響が出ることは回避したいことです。事業譲渡の形式上、簿外債務や潜在的なリスクを引き継ぐリスクは低いとはいえ、デューデリジェンスは不可欠なプロセスです。高い売却益を得たい場合、デューデリジェンスに対する準備は適切に実施するようにしましょう。デューデリジェンスを実施する専門業者は多く、弁護士による法務デューデリジェンス、会計士や税理士による財務デューデリジェンス、経営コンサルタントによるビジネスデューデリジェンスなど、いくつかの観点から実施されます。

 

いつ売却するか

M&Aに共通する注意点として、売却する時期も非常に重要です。タイミング次第で売却側企業の価値は大きく変動することがその理由です。売却側企業は、売却を検討している事業の現状を把握し、将来的な展開を正確に予測しておく必要があります。

売却側企業に良質な案件を探せる猶予がある場合、業界内でM&Aが活発化する時期を待つことは有効な手段です。具体的には、業界再編が起こり、無対策だと業績低下が予想される時期が適切なタイミングです。

また、業界内の景気が良ければ、より良い条件で成約できることが見込めます。しかし、景気が良くなるまでに会社の業績が悪化してしまうと待つことが逆効果になります。条件を整えたとしても、実際に売却交渉に進むには買い手が現れる必要があります。計画的に事業売却を実行するには、適切に情報を揃えて行動を起こすことが要求されます。

事業売却には数カ月から1年ほどの期間を要することが一般的なので、事業売却を実施する際は、進捗に合わせて準備できるように計画を立てていく必要があります。

 

買収側企業の注意点

相手企業の取引先・従業員を引き継げるか

多額のコストを支払って事業買収する以上、事業ノウハウを持った従業員を承継することは、買収側企業にとって重要な目的となることが多くなっています。

株式譲渡で会社自体を取得する場合、従業員の承継は自動的にできますが、事業譲渡を用いる場合には、引き継ぐ従業員の契約は成立時に一度解除され、買収側企業が個別に再契約の手続きをする必要があります。獲得したい従業員が再雇用を希望しない、交渉結果として断られた場合には、買収価格を下げるといった代替案が考えられます。その他、売却側企業のキーマンが買収に否定的である場合は、事業売却自体が破談となることもあります。

万が一、人材の受け入れ体制が整っていないことで従業員の離職を招いてしまうと、事業売却の調整過程に費やした労力が無意味になってしまいます。労働条件に変更がある時は必ず説明を受けた上で、手続きが完了するまでは売却側企業の経営者と連携を取れるようにしておくことが望ましいでしょう。

 

強みを持っているか

長く経営してきたweb制作会社である場合、長所として対外的にアピールできる「強み」を複数持っていることが一般的です。特定地域に密着した業務を継続している、地方創生支援に関する実績や対応力に自信がある、クライアント企業に対してブランドイメージの向上やマーケティング力強化に繋がる提案ができるなど、多様なニーズに最大限対応できるように取り組むweb制作会社は数多く存在します。

これらの要素はいずれもweb制作会社が基本的に行う業務と思われるかもしれませんが、会社の長所として充分にアピールしていくことが可能です。他社と比べた時に違う点や、現在のクライアントが自社を選ぶ理由を考えた際に気づいた要素は、自社独自の「強み」といえるのです。事業を買収する際には、こういったアピールポイントがある企業を選ぶことをお勧めします。

 

まとめ

web制作会社の事業売却は今がまさに実施するべきタイミングであり、今後も技術革新と業界再編に向けた流れは加速していくと想定されます。他業種と比べて専門技術者や取引先との関係が高く評価されやすいので、売却側企業は自社の業務内容を把握した上で、強みとなるコア事業へ積極的な設備投資を実施していくことが重要なポイントになります。買収側企業は事業売却を実施する目的を明確化し、想定外のリスクを避けた上で多くのシナジーを期待できる相手企業を探し出すことが重要なポイントになります。

事業売却は複雑な手続きを必要とするので、事業売却に関する専門家の協力が必須です。目的に沿った最適なプランを提案してくれる仲介業者を選ぶことで、事業売却を成約に導ける可能性は大きく向上するといえるでしょう。

web制作会社の事業売却のポイントとは?
この記事では、web制作会社の概要をご紹介し、事業売却が実施される目的について、売却側・買収側それぞれの観点から解説していきます。実際に事業売却を検討するにあたって、把握しておくと手続きを円滑に進めやすくなるポイントについても紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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