2019年3月4日 月曜日

旅行代理店のM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

最近経営が上手くいかずに悩んでいる。そんな問題を抱えている経営者は少なくありません。特に、参入障壁が低く競争の激しい旅行代理店業界からはそのような声が多く聞こえてきます。
自身の力で経営を回復できればいいですが、なかなか全てを思うように進めるのは難しいですよね。

そんな悩める経営者を救う手段として、近年M&Aが注目されています。

M&Aとだけ聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、この記事でご紹介するポイントを押さえれば、きっとM&Aがもっと身近な手段になるはずです。
早速みていきましょう。

 

旅行代理店のM&A


まずここでは旅行代理店業界の現状と、旅行代理店業界における最近のM&Aの動向について簡単に押さえておきましょう。
時代の変化や旅行者のニーズに沿って、旅行代理店業界も日々変化しているのが分かると思います。

 

旅行代理店とは

旅行代理店とは、宿泊や移動手段、旅先でのサービスの提供などの要素から構成された旅行商品を販売する会社の事を指します。
旅行自体の企画や実施にも携わり、旅行者にとって心強い旅のパートナーと言えます。
近年では店舗を持たないオンライン旅行会社も増えています。

 

旅行代理店業界の現状

2020年には東京五輪もありますし、全体的な日本人の旅行者数は増加傾向にあります。これだけ見ると旅行代理店業界も好調に思えますが、実際はどうなのでしょうか。
まず、近年ではインターネットが当たり前になっており、旅行者もインターネットを使って旅行の計画を立てるのが一般的です。
一昔前であれば旅行の計画にはプロの旅行代理店に全てを依頼するケースが多かったですが、旅行代理店には頼らずに自身で旅をプランニングする方も増えています。
また旅行代理店業界は参入障壁が低い業界だと言われていますが、「楽天トラベル」や「るるぶトラベル」などインターネット業界からの参入も増えており、価格競争が更に激しくなっています。
少子高齢化の影響も考えると、旅行代理店の生き残りをかけた争いは更に激しくなっていくと考えられます。

 

旅行代理店のM&Aの動向

そんな中、旅行代理店のM&Aの動向はどうなっているのでしょうか。

まず大きなポイントとしては、大手旅行代理店同士の事業提携が活発化していることです。
上述したように、インターネットと旅行の親和性が高く、旅行者は旅行代理店に頼らなくても理想の旅が出来る時代になっています。
そんな状況を打破するために、大手旅行代理店同士が手を組むケースが増えています。

続いて大手旅行会社による旅行代理店の買収も目立ってきています。
今の時代のニーズを汲み取った独自のサービスを展開して、生き残っている旅行代理店は少なくありません。そんな他社の強みを自社に取り入れようと、大手旅行会社によるM&Aの事例も増えています。

 

旅行代理店のM&Aを行う理由は?


ここでは売り手側と買い手側、それぞれの視点に立って旅行代理店がM&Aを行う理由をご紹介します。
相手の立場の考えを理解する事は、M&Aを成功に導く第一歩になります。
早速、詳しくみていきましょう。

 

【売り手側の理由】

1.売却によりまとまった資金を得られる
M&Aによって会社を売却するので、その売却益が期待できます
会社の規模によって売却額は様々ですが、一定の資金が売り手側に入るのは大きなメリットです。次の事業を始めるための資金に活用することもできますし、場合によっては老後の活動資金にあてても良いでしょう。

 

2.後継者問題を解決できる
少子高齢化で後継者の問題で頭を悩ませているのは、旅行代理店業界も一緒です。
身内や会社内に後継者候補がいれば良いのですが、中小規模の代理店だと、適任者が見つからないケースも珍しくありません。
その際にM&Aは後継者問題を解決する手段にもなります。

 

3.経営の安定が望める
旅行代理店業界で生き残っていくために、大手旅行代理店に経営を任せたいとM&Aを選択される方も多くいらっしゃいます。
旅行代理店業界は参入障壁が低く、競合が大勢います。そんな中で中小規模の旅行代理店が生き残っていくのはなかなか難しく、大手旅行会社の傘下に入るケースも増えています。

 

【買い手側の理由】

1.事業規模の拡大を図れる
売り手側の会社のシェアや取引先を、自社の顧客へと広げる事が出来るので更なる事業規模の拡大を図る事ができます
事業規模を拡大できれば、お客様からの信頼向上も期待できますし、認知度や知名度も上がります。より強固な旅行代理店の経営が可能となるでしょう。

 

2.優秀な人材を確保できる
どこの職場にもキーマンと呼ばれる、優秀な人材が存在します。
激しい競争の中、ライバルとして生き残っている旅行代理店であれば尚更です。
キーマンが自社に増えれば、新たな店舗を拡大する事も現実味が帯びてきますし、選択肢が広がります。
M&Aは事業拡大も大きなメリットですが、優秀な人材が確保できるのも大切なポイントです。

 

3.弱みの事業を強化できる
例えば海外旅行販売のノウハウが不足している、インターネットでの販売のシステムが手薄など、旅行代理店ごとに強みもあれば弱みもあると思います。
そんな際にM&Aを上手く活用すると、自社の弱みを補強する事も可能です。国内外の旅行をインターネットで気軽に申し込めるようになったら、ぐっとお客様との距離も縮まるはずです。

 

旅行代理店のM&Aを行うタイミングは?


続いてはM&Aを実施するにあたって、その最適なタイミングについてお伝えしたいと思います。
ここでは状況が異なるいくつかの例をご紹介します。実際にM&Aを検討されている方は、旅行代理店の運営状況をよく見定めて、どう行動するべきか判断するようにしましょう。

 

・状態A:業績良 意欲高
現実的にはこの好調期に会社の売却を考える経営者は少ないかもしれませんが、最も売り時のタイミングがこの状態です。
理由は明白で、業績も経営者の意欲も共に良好だからです
会社を買いたいと考えている経営者からも、ポジティブに評価されるでしょう。
現実的にこの状態で売却を考える経営者は稀ですが、事業承継の問題を抱えていてM&Aを考えている方であれば、状態Aにて売却を検討するケースも出てくるかもしれません。

 

・状態B:業績良 意欲低
現実的なケースを考えた場合には、この状態Bも非常に良い売り時のタイミングと言えます。経営者の意識は低下しているかもしれませんが、業績が良い状態なので、周囲からの評価も期待できます。会社の売却においても有利な条件で交渉が可能となるケースが多いです。

注意点は経営者のモチベーションが低い事です。モチベーションをしっかりとコントロールしないと、周囲の社員が変化を察知します。
社内のムードが悪くなってしまえば、離職者が出てしまう場合もあるので、対応には注意しましょう。

 

・状態C:業績悪 意欲高
なんとしても業績の改善を図りたいのが、状態Cです。
他社との事業提携、主力となる事業への一本化を検討してみても良いでしょう。
判断は各会社の詳しい状況にもよりますが、一つの選択肢として会社の売却も検討してみても良いでしょう。
このケースは特に専門家の意見も取り入れる事をお勧めします。

 

・状態D:業績悪 意欲低
もっとも会社の売却が難しい状態です。業績も悪く経営者の意識も低いので、当然と言えば当然です。
しかし、だからといって簡単に会社の売却は出来ないと諦めてしまうのはもったいないです。チャンスが眠っていないか、こまめに情報収集はしておきましょう。
会社の売却もお見合いと一緒でタイミングが全てです。条件を受け入れてくれる会社に出会えるかもしれません。倒産など、さらに追い込まれた状況になる前に、早めの売却を検討しましょう。

 

旅行代理店のM&Aを実施するのは誰か?


ここではM&Aを実際に行う際の主な登場人物を改めて振り返ってみましょう。

 

経営者A(会社を売る側)
当然ですがM&Aの主役の一人が、会社を売る側の経営者です。
会社を買いたいと思う経営者だけが沢山いても、M&Aは成り立ちません。
後継者の問題など様々な理由から、会社を手放したいと考える経営者がいる事で初めてM&Aの第一歩が始まります。

 

経営者B(会社を買う側)
M&Aのもう一人の主役が会社を買う側の経営者です。
自社の弱点を補強したり、事業規模を拡大させたかったり、会社を買収したいと考える背景は会社の数だけあると思います。
自社の考えにマッチする会社をよく見定めて交渉していかなくてはなりません。

 

M&Aの相談相手
実際のM&Aの交渉の様々な局面でサポートしてくれるのがM&Aアドバイザリーや会計士、弁護士といった専門家です
例えばM&AアドバイザリーはM&Aにおけるすべての業務をサポートしてくれるスペシャリストです。会社ごとに最適な専門家を選定し、助力を得るようにしましょう。

 

旅行代理店のM&Aの相談先は?

最後に、旅行代理店のM&Aを行う際の相談先と、選定する際のポイントについて解説します。
M&Aに興味を持っているけど、何から手をつけて良いか分からないという経営者の方も多いと思います。そんな時は焦らずに最適な相談先を見つける事から始めてみましょう。

 

主な相談先

M&Aの相談先ですが、下記に挙げるいくつかの専門家が該当します。それぞれに特徴があるので、自社にマッチする専門家を選定しましょう。

 

M&A仲介会社
もっとも代表的な相談相手の一つがM&A仲介会社です。
M&A仲介会社は、文字通り買い手側企業と売り手側企業の間に入って仲介してくれます。
売り手と買い手、その双方の利益が最大化されるように動いてくれるのがM&A仲介会社の最大の特徴で、中小企業のM&Aで採用されるケースが多いです。

多岐にわたるM&Aの業務ですが、M&A仲介会社を起用すれば一連の業務にてサポートが得られます。企業同士のマッチングに始まり、最後のクロージング業務まで一貫して対応してくれます。

 

ファイナンシャルアドバイザー
M&Aの専門的な知識を豊富に持った専門家がファイナンシャルアドバイザーです。
上場企業同士のM&Aで起用される事が多く、ファイナンシャルアドバイザーの最大の特徴としては、自身が付いている企業の利益が最大化されるように行動する点です。
同じM&Aの専門家でもM&A仲介会社とはこの点が異なるので注意しましょう。
サポートは幅広く、M&Aに関連する専門的な業務を幅広く行ってくれます。

 

税理士・会計事務所
顧問の会計士や税理士にM&Aの相談をまずしてみるという事は、誰もが考える手段でしょう。
M&Aを考える上で、税務や会計の知識は必須なので、どこへ協力を仰いだとしてもいずれかの会計士や税理士のサポートの介入は考えられます。

しかし、M&Aには税務や会計以外の知識やネットワークが必要となります。
それぞれの知識を併せ持っている税理士や会計士の方は限られてくるので、よく相手の得意分野を見極めた上で協力をお願いするようにしましょう。

 

銀行・証券会社
特に大手の銀行や証券会社であれば、M&A専門の部隊を持っている事が普通です。
ただし注意点は銀行・証券会社が専門にしているM&Aは上場企業といった大手企業を専門にしている点です。
料金も高めに設定されており、中小企業のM&A案件に対してはあまり向いていないと言えます。

 

弁護士事務所
顧問弁護士がいる場合、まずは意見を聞いてみるというケースも少なくないでしょう。
M&Aには様々な法律が絡むので、法の専門家が味方に付いてくれるのは心強いです。中にはM&Aの支援や仲介を積極的に行っている法律事務所も増えてきています。

ただし注意点は、M&A全般に対する知識や、税務・会計面をフォローするネットワークや仕組みがあるかどうかです。総合的にみて相談相手に相応しいか判断するようにしましょう。

 

M&Aの相談先を決めるポイント

M&Aの相談先は複数候補として考えられますが、どのように選定すればいいのでしょうか。ここでは3つのポイントに着目して、相談先の選定基準を紹介したいと思います。

 

1.M&Aの実績が豊富で専門性がある事
過去にM&Aを成功に導いたという実績は、相談先の選定において一番説得力のある項目です。
依頼する新しい案件でも最適な買い手と売り手を結び付けてくれる可能性も高いでしょう。
M&Aで全く同じ案件というのはなかなかないかと思いますが、旅行代理店のM&Aの経験が複数あると聞けば心強いはずです
実績と経験を元にアドバイスをして頂ければ、安心してM&Aを進めていけるのではないでしょうか。

 

2.相性が良い事
少し抽象的に聞こえるかもしれませんが、相性の良さはとても大事なポイントです。
実際にM&Aの相談先を決める際には、複数の候補先と話し合いを重ねて、実際の依頼先を選定すると思います。
そこで感じた、この会社のこの担当者は話しやすく気配りが出来ていた、信頼感を持てたなど、そういった感覚は大切にしてください。
M&Aを進めていくと大事な話し合いをする局面が沢山あります。
そこでコミュニケーションに問題があると、交渉に不備が生まれ、相手企業からのイメージダウンにも繋がりかねません。相性が良いと思える相手を見つけましょう。

 

3.料金が明確な事
M&Aの相談先に支払う料金には様々な種類があります。
一般的には「着手金」、「中間金」、「成功報酬」、「月額報酬」といったものがあり、依頼先によってその金額や、支払が必要な項目は異なります。
具体的にいつまでにいくら必要なのか分かりやすく明言出来ている相手を選定すると、あとでトラブルが発生する事も少ないです。納得した金額を支払える相談先を選定しましょう。

 

まとめ

旅行代理店のM&Aを実施する前に考えておきたいポイントを、いくつかの項目に分けてご紹介しましたが、いかがでしたか。
M&Aという選択がより身近なものになったのではないでしょうか。

旅行代理店の経営はなかなか毎日が順風満帆にはいかないと思います。急に業界のルールが変わったり、親族から経営に理解が得られなかったり、立ち止まる機会もありますよね。

そんな経営を見直す際に、M&Aといった手段も選択肢として考えて頂けたらと思います。悔いのない最良の判断を目指しましょう。

旅行代理店のM&Aを実施する前に考えておきたいこと
最近経営が上手くいかずに悩んでいる。そんな問題を抱えている経営者は少なくありません。特に、参入障壁が低く競争の激しい旅行代理店業界からはそのような声が多く聞こえてきます。
自身の力で経営を回復できればいいですが、なかなか全てを思うように進めるのは難しいですよね。
そんな悩める経営者を救う手段として、近年M&Aが注目されています。
M&Aとだけ聞くと難しいイメージがあるかもしれませんが、この記事でご紹介するポイントを押さえれば、きっとM&Aがもっと身近な手段になるはずです。
早速みていきましょう。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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