2019年3月22日 金曜日

M&Aの事例から読み解く潮流《旅行代理店》

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

後継者問題をなんとか解決したい、更に事業を強化して業界のシェアを拡大したい。会社の経営者であれば様々な思惑や展望があるかと思います。そんな経営者の願望を解決する一つの手段として、近年特に注目されているのがM&Aという方法です。一昔前までは少し悪いイメージもありましたが、最近では会社の経営を前向きに考える手段として多くの支持を集めています。多くの業界でM&Aは行われていますが、旅行代理店業界も例外ではありません。今回は旅行代理店業界に注目して、実際のM&Aの事例やM&Aを行う際のポイントなどについて迫っていきたいと思います。

 

旅行代理店におけるM&Aの動き


まずは旅行代理店業界におけるM&Aの動きについてご紹介します。改めて旅行代理店やその業界の現状について整理した上で、M&Aの動向にはどのような特徴があるのか、みていきたいと思います。

 

旅行代理店とは

旅行を計画するときにお世話になったことのある方も多いと思いますが、改めて旅行代理店の定義について解説します。
旅行代理店とは旅先でのサービスや宿泊、移動手段の提供などの要素から構成された旅行商品を販売する会社を指します。旅行自体の企画や実施にも携わり、旅行者にとって心強い旅のパートナーとも言えますよね。近年では店舗を持たないオンライン旅行会社も増えています。

 

旅行代理店業界の現状

さて、旅行代理店業界の現状はどうなっているのでしょうか。
ここでは3つの切り口に分けて現状を解説します。

 

【旅行のセルフプランニングの主流化】

一昔前に比べ、現代では当たり前になったものといえば、インターネットの存在が挙げられます。PCをはじめスマホさえあれば誰でも簡単にどこからでも情報収集が可能になりました。この便利なインターネットは、旅行者自身の旅のスタイルにも影響を与えています。
昔は旅行のプラン決定は専門家である旅行代理店に頼るケースが多かったですが、今では旅行者自身でほとんど全てのプランニングが可能です
一見すると脅威となるインターネットの普及ですが、旅行代理店としてはこの顧客の動向を前向きに捉え、更なる集客へと繋げたいところです。

 

【オンライン旅行会社の増加】

こちらもインターネットに関連する項目ですが、オンラインにて旅行代理店サービスを提供する会社も数多く出現しています。もともと旅行代理店業界は参入障壁が比較的低いことで有名ですが、インターネットによる低コストでの販売体系はそれを後押ししています。無駄を省いて価格面でお客様に還元するオンライン旅行会社の勢いは、旅行代理店業界全体の価格競争を更に激しいものにしています。顧客としては、インターネットと旅行の親和性が大変高いので利便性が大幅にアップしていますが、旅行代理店業界としては生き残りの競争が更に厳しくなっていると言えます。

 

【コミッションの減少】

旅行代理店業界の主な収入源は、宿泊施設や航空券、各種旅先でのサービスの販売によるコミッションです。しかしホテルや旅館、航空会社の経営は難航している会社も多く、コミッションの支払いを減らす動きも出てきています。旅行代理店は、コミッションの収入を重視するビジネスモデルから脱却し、新たな収入源を獲得する必要があります

 

旅行代理店業界におけるM&Aの動向

さて、そんな現状を受けて、旅行代理店業界ではどのようなM&Aの動きがあるのでしょうか。資本力を武器にした大手旅行代理店の動きが活発なようですが、詳細を見ていきましょう。

まず挙げられる動向の特徴は、大手旅行代理店同士の業務提携が活発化していることです。上述したように、インターネットと旅行の親和性が高く、旅行者は旅行代理店に頼らなくても理想の旅が出来る時代になっています。そんな状況を打破するために、大手旅行代理店同士が手を組むケースが増えています。
この動きからは大手旅行代理店の焦りも垣間見えるようで、現状よりも幅広いサービスの提供を可能にすることで、お客様を繋ぎ止めたいという狙いがあります。

また、大手旅行会社による旅行代理店の買収も目立ちます。現状に対応できている旅行代理店は、時代のニーズを汲み取った独自のサービスを展開し、顧客の信頼を獲得しているケースが多いです。そんな他社の強みを自社に取り入れようと、大手旅行会社によるM&Aの事例も増えています。
大手旅行会社は自社の強みを分析をした上で、不足分を補おうと即座に行動している事が分かります。

 

最近の旅行代理店のM&A事例


続いては旅行代理店業界におけるM&Aの実際の事例をみていきたいと思います。ここでは4つの事例をご紹介します。会社ごとに様々な狙いでM&Aを実施していることがわかります。それでは早速、旅行代理店業界の潮流を事例から読み解いていきましょう。

 

【事例1:JTBがアソビューと資本業務提携】

2015年に、JTBはアソビューと資本業務提携を発表しています。
JTBは旅行会社において最大手企業で、古くから日本の旅行文化を盛り上げている会社です。実際に利用された事があるという方も多いのではないでしょうか。
一方でアソビューの創業は2011年3月とまだまだ若いベンチャー企業です。しかしその勢いは凄く、これまでに全国2000以上のアクティビティ事業者と提携し、地域ごとの遊びに関する体験プログラムを幅広く紹介するサイトに急成長しています。
JTBならびにアソビューは、この資本業務提携で日本全国のその地域ならではの魅力を一人でも多くの方に”体験”して頂して頂きたいとの狙いがあります。併せて「体験のインターネット予約」・「地方創生」・「インバウンド」といった注目度の高い分野において積極的に事業を展開し更なる顧客獲得を目指します。

 

【事例2:HISがアクティビティジャパンを子会社化】

2016年に、HISはアクティビティジャパンを子会社化することを発表しています。
さきほどの事例のJTB同様、HISも大手旅行会社として馴染みが深い会社ですよね。一方でアクティビティジャパンはインデックスが事業分割の形で設立した新会社です。アクティビティジャパンは国内アクティビティ予約サイトを運営しており、国内最大規模の全国1700以上の事業者と提携し、豊富なアクティビティのラインナップを有しています。ここまで読むと少し前に聞いた事例と酷似している事にお気付きではないでしょうか?HISとしてもJTBに負けじと国内の体験型ツアー事業の強化を図るべく、今回の決断に至っています。

 

【事例3:楽天によるボヤジンの株式取得】

2015年に、楽天はシンガポールのボヤジンを買収しました。楽天は日々の生活でお世話になっているという方も多いのではないでしょうか。楽天市場を始めクレジットカードから携帯端末まで大変幅広く事業を展開しています。旅行代理店事業としても楽天トラベルが有名で、国内外の旅行の予約が可能です。
一方でボヤジンですが、C2C型のアクティビティー予約サービスを運営していて、アジアを中心に50以上の国と地域で、現地の文化体験や隠れスポットへのツアーなど多数の魅力的なサービスを提供しています。
楽天としても、国内にとどまらず海外も含めたお客様のニーズに応えるために、体験型ツアーの強化のためにボヤジンの株式取得を行ったといえます。

 

【事例4:アドベンチャーがTETを買収】

2018年に、アドベンチャーがTETの全株式を取得し子会社化しています。アドベンチャーは航空券等の予約販売サイト「skyticket」を運営しており、格安航空券の購入の際に利用された方もいるのではないでしょうか。
一方でTETは、国内及び海外旅行の販売や取扱業務を行う会社です。特にTETは日本航空の認可代理店として、国内線の仕入れに強みを持っています。アドベンチャーがTETを子会社化した狙いとしては、両社の強みを活かして更に事業拡大を拡大させる事が挙げられます。

 

旅行代理店のM&Aを実施するうえでのポイント


最後に実際に旅行代理店の経営者の方がM&Aを実施する際のポイントをまとめてみました。特に重要視すべき項目を5つピックアップしています。旅行代理店ならではの事柄も含まれるので、よく確認しましょう。

 

ポイント①:取り扱い商品の強みを見極める

一口に旅行代理店といっても、会社によってその強みは様々です。沖縄や北海道など人気の国内スポットを得意とする旅行代理店もあれば、主に学生をターゲットとした格安海外旅行が売りの会社もあるでしょう。M&Aを行う際は、まずは相手企業の商品の強みを見極めましょう。自社の強い分野をさらに補強したいのか、全くの新たな分野で勝負していきたいのか、企業の戦略としても重要なポイントです。後悔ない判断をするためにもじっくりと相手を分析しましょう。

 

ポイント②:店舗の立地条件を確かめる

オンラインではなく店舗を実際に構えている旅行代理店の場合ですが、大事になってくるのが店舗の立地です。いくら商品から接客まで内容の優れた旅行代理店でも、駅から著しく離れているようではお客様の集客にも一苦労です。自社がターゲットにしている客層をよく考え、それにフィットした立地に買収候補の店舗があるかもよく確認しましょう。若者なのかファミリー層なのか会社員なのか、ターゲットによって適した立地条件も異なります。うっかり後回しになりがちなチェック項目なので要注意です。

 

ポイント③:WEBサイトの状況を確認する

今では旅行プランを探す際はまずはインターネットでWEBページを閲覧するという方がほとんどではないでしょうか。特にスマホに慣れている世代はその傾向が強く、旅行代理店にとってもWEBサイトの存在は欠かせないものとなっています。そのため、M&Aの対象企業のWEB周りの状況を確認するのも大切です。自社と比較して優れたWEBサイトを構築しているようであれば、新たな武器として期待できますし、逆にWEBサイトをほとんど使っていないようであれば、M&Aの後にケアが必要となるでしょう。

 

ポイント④:旅行代理店業界に詳しい専門家を起用する

ざっくりとM&Aに興味を持っていても、専門的な手続きには自信がないという方は多いと思います。そんな時に心強い味方となるのがM&Aの専門家です。M&Aを成功させるための無くてはならないパートナーとも考えられます。では具体的に専門家とはどんな人が挙げられるかというと、もっとも代表的なのはM&A仲介会社やファイナンシャルアドバイザーです。彼らはM&Aのプロフェッショナルなので、一貫したM&Aの業務を担当してくれます。他にも会社によっては会計士、弁護士、銀行や証券会社の専門家にサポートを依頼するケースもあります。
重要になってくるのが、彼ら専門家が特に得意としている分野です。旅行代理店のM&Aの実績が多数あれば安心できますよね。さらに、自社と同じくらいの規模の企業でM&Aを行った実績があると、より頼もしいでしょう。

 

ポイント⑤:相手の気持ちを理解して行動する

M&Aも一つのビジネスです。ビジネスなので、一人で完結するものではなく必ず相手が存在します。自社の今後の事ばかりに頭が行ってしまうと、疎かになりがちな視点が相手の気持ちを理解して行動するというポイントです。相手が何を想い会社を運営してきたのか、どんなビジョンが会社に込められているのか、そういった企業の根底にある相手の経営者の気持ちを理解しようとする姿勢は大変重要です。
M&Aが成功すれば、一つの企業として共に歩みを進める事になります。そこで今までよりも力強く大きな一歩を踏み出すためにもコミュニケーションは大切にしましょう。

 

まとめ

実例も多数交えながら、旅行代理店業界の現状やM&Aの動向、更には実際にM&Aを実施する上でのポイントをご紹介致しましたが、いかがでしたでしょうか。旅行代理店業界におけるM&Aの理解もより深まったのではないかと思います。
これからM&Aをまさに考えなければならないという経営者の方も、本記事からM&Aの潮流や心構えを学んで頂けましたら幸いです。一昔前よりもM&Aはずっと身近な存在になっています。M&Aを正しく理解して、現代を生き抜くための手段として上手に活用しましょう。

M&Aの事例から読み解く潮流《旅行代理店》
後継者問題をなんとか解決したい、更に事業を強化して業界のシェアを拡大したい。会社の経営者であれば様々な思惑や展望があるかと思います。そんな経営者の願望を解決する一つの手段として、近年特に注目されているのがM&Aという方法です。一昔前までは少し悪いイメージもありましたが、最近では会社の経営を前向きに考える手段として多くの支持を集めています。多くの業界でM&Aは行われていますが、旅行代理店業界も例外ではありません。今回は旅行代理店業界に注目して、実際のM&Aの事例やM&Aを行う際のポイントなどについて迫っていきたいと思います。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年3月22日
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