2019年3月2日 土曜日

旅行代理店の事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

旅行を計画しようとすると、まず目に飛び込んでくるのはインターネット上に溢れる格安プランの広告ではないでしょうか。今はわざわざ旅行代理店に行かなくても、自宅や移動時間に情報を簡単に取得できてしまいます。

このような技術の進歩に合わせて、旅行代理店業界にも様々な変化が起きています。
資本力の大きい企業は次々に大胆な戦略を実行していますが、中小の旅行代理店だと舵取りに難航するケースも目立ちます。
そんな旅行代理店の経営を改めて見直す際の手法として、事業譲渡が注目されています。ニュースでもたびたび登場する言葉なので、馴染みがあるという方も少なくないと思います。
今回はそんな事業譲渡の基本や、実際に事業譲渡する際のチェック項目について詳しくご紹介致します。

 

旅行代理店の事業譲渡を検討してみては?


昨今の旅行代理店業界ですが、顧客の動向の変化に合わせて改革が求められています。
経営についても方向転換が必要な企業も多く、その際の手法として事業譲渡が活用されています。
ここでは改めて旅行代理店業界の現状と、事業譲渡の概要や大まかな流れについて解説します。

 

旅行代理店の現状

現在の旅行代理店業界に大きな影響を与えているものとしては、インターネットの存在が挙げられます。
旅行者の視点で考えても、インターネットが当たり前の今と昔では大きな変化がありました。昔は旅行代理店に頼っていた旅行の細かいプランニングも、今はスマホが一台あれば飛行機からホテルの予約まで簡単に行えてしまいます。
旅先の有益な情報の収集も可能なので、インターネットの存在は旅行者にとっては大変ありがたいものと言えるでしょう。

一方で旅行代理店は、移り変わる顧客のニーズに対応した、新たなビジネスモデルの構築が急務となっています。
例えば大手の旅行代理店は、地域に密着した体験型のアクティビティをお客様に提供できるように体制を強化しています。
またオンライン旅行会社も急増しており、さらに低価格な旅行プランをお客様に提供しようとする動きも活発です。コミッションビジネスも縮小傾向にある事から、旅行代理店業界の生き残りをかけた争いは激しさを増していると言えます。

 

事業譲渡とは

事業譲渡とは、会社の事業を第三者に売却する事を指します。ここで言う「事業」ですが、主に以下のものが含まれます。

・事業組織
・有形の財産
・無形の財産
・人材
・債務
・ブランド
・取引先との関係

会社の事業を構成するあらゆるものが対象と言えます。
事業を売却するという行為を言い換えると、契約によって個別の利権関係や債務、財産などを移転させる手続きです。従って会社で営んでいる事業の一部を譲渡する事も、全てを譲渡する事も可能です。
同時に契約の範囲を細かく設定できるので、債務を必要に応じて遮断する事も出来ます
注意点としては、事業を譲渡した企業は今後同じ事業を行う事が制限されるので、よく検討した上で事業譲渡を行うようにしましょう。

 

事業譲渡の流れ

では具体的に事業譲渡を実際に行う際の流れを解説します。
大きく以下の7つのステップに事業譲渡は分けられます。それぞれどんな事をしているのか、詳しく見ていきましょう。

 

①事業譲渡先の相手企業を探す
事業譲渡は内密に行う必要があるので、相手探しにも注意が必要です。
知人や友人の繋がりから買い手企業を探そうと考えている場合は、特に慎重に行動しましょう。
一般的な方法としては、仲介業者のネットワークを活用する方法が挙げられます。また最近ではマッチングサイトを利用している企業も増えてきています。

 

②意向表明書を確認する
いくつかの売却先の候補企業が見つかり、相手企業側から具体的に会社を買い取りたいとの意向を表明したのが意向表明書です。
意向表明書には次に挙げる事業譲渡の際の条件が記されています。
・事業譲渡で対象とされる事業は何か
・債務の範囲はどの程度か
・資産はいくらか
加えて事業譲渡の今後の方針も記載されるので、意向表明書は事業譲渡を進める際の土台と言えます。

 

③基本合意書を締結する
売り手側と買い手側、両社にここまでで問題が無いようであれば、基本合意書の締結を行います。
基本合意書は、これまでにお互いに同意が得られている方法で、事業譲渡を進めていく約束です。
事業譲渡の契約はこの基本合意書には含まれていないので、注意しましょう。

 

④デューデリジェンスを行う
少し聞きなれない言葉かもしれませんが、売り手側の企業について行う調査を指します。これはとても重要な行為で、売り手側の申告内容に虚偽がないかを詳しく調べます。売り手企業は誠意をもって対応しましょう。

 

⑤契約書を締結する
ここまでのステップを経て、初めて契約に至ります。
買い手企業はデューデリジェンスの結果を受けて、売り手企業の価値とリスクを明確に理解した上で契約する事が最大のポイントです。
円滑に交渉を進めるためには、仲介業者や弁護士といった専門家の力を借りると良いでしょう。

 

⑥株主総会で承認を得る
株式が公開されている企業に限りますが、事業譲渡の承認を株主総会にて得る必要があります。承認を得るためには、株主の半数の出席および3分の2以上の賛成票が必要です。

 

⑦事業を引き継ぐ手続きをする
最後に実際に事業譲渡をする手続きを進めます。土地の名義や債権などを移転する必要があります。両社で協力してスムーズな事業譲渡を行いましょう。

 

旅行代理店を事業譲渡するメリット


それでは事業譲渡を選択すると、具体的にどの様なメリットがあるのでしょうか。ここでは、売り手側と買い手側、それぞれの立場における主なメリットを見ていきたいと思います。

 

【売り手側のメリット】

①まとまった資金を得られる
事業を売却するので、当然ですが対価としてお金を得られます
事業の規模にも左右されますが、ある程度のまとまった資金を獲得できるでしょう。資金の利用道は様々ですが、残した主力事業のためや、引退後の活動資金としても活用できます。

 

②売りたい事業のみ譲渡できる
会社売却ではないので、特定の事業のみを売却できる点も売り手側のメリットと言えます。
会社としての独立性は保ったまま、組織を見直す手段として利用できます。旅行代理店の業務が採算が取れずに手に余っていたとすれば、該当の事業のみ譲渡できます。
事業譲渡は会社のニーズに的確に応えられる手段と言えます。

 

③必要な事業に集中できる
特定の事業を譲渡できれば、リソースも今まで以上に有効活用できます。成長性の高い事業に対して人員も資金も投入できるので、経営の好転も十分に狙えます。
会社組織としてもよりシンプルな構成に見直せるので、意思伝達もよりスムーズになるでしょう。

 

④中小企業だと手間が少ない
事業譲渡の流れでも説明しましたが、会社の規模が大きくなればなるほど、事業譲渡に必要な行程は複雑で大変です。株主総会も開かなければなりませんし、各種契約の見直しなど負担は大きいです。
一方で中小規模の会社だと、これらの手間は軽減されます。

 

【買い手側のメリット】

①買い取る事業を選べる
売り手側のメリットとも共通していますが、買い取る事業を選べる事は、買い手側の企業としても大きな利点です。また、事業譲渡では実際に承継する範囲を契約の際に細かく決める事が出来るので、買い手側が納得した上で事業を引き継げます
認知していなかった売り手企業のリスクを背負ってしまう危険は少ないので、買い手側としても安心して事業を買収できます。

 

②自社の弱点を補強できる
旅行代理店を営む上で補強を行いたいポイントは色々あるかと思います。例えば販売窓口の拡大や、社員の営業スキルの向上などが挙がるでしょう。
企業によって思惑は様々だと思いますが、事業譲渡を活用すれば弱みを強みへと変える事も十分に可能です。
例えば実店舗での販売に強みのある旅行代理店が、オンライン販売で実績のある事業を買収できれば、新たな販売チャネルのノウハウも技術も一度に補強できるでしょう。

 

③低コストで新規事業を始められる
仮にオンラインでの旅行の販売を新たに始めようとした場合、当然ですがお金も時間もかかります。利便性の高いWEBサイトを構築しなければなりませんし、新たな販売窓口としてのお客様の認知度も高めなくてはなりません。
人件費に設備投資、広告にもお金がかかります。一方で事業譲渡を活用すれば、極めて効率的に事業を開始できます。事業を買収する費用は掛かりますが、総合的なコストは大分抑えられます。

 

④節税できる
買い手側が事業譲渡の際に支払う金額は以下の2つです。
・現在の事業の価値
・将来的に生み出すと考えられる価値
このうち、後者の「将来的に生み出すと考えられる価値」は「のれん」と呼ばれています。この「のれん」ですが、損金算入する事ができます。
この、のれんの償却を利用して税金を削減する事が可能です。

 

旅行代理店を事業譲渡する際のチェック項目


最後に旅行代理店を事業譲渡する際のチェック項目をご紹介します。
事業譲渡を考えると、多岐にわたる項目を検討しなければなりません。その中でも特に重要視すべき項目を以下にピックアップしました。
事業譲渡を考える際の参考にしてみて下さい。

 

①譲渡の目的
最も優先順位の高いチェック項目です。事業譲渡の目的が明確でないと、行動にもぶれが生じます。
事業譲渡を行う一番の目的は何でしょうか
後継者問題を解決したいのか、資金獲得が重要なのか、リソースを集中させたいのか、目的によってその後の行動も変わります。
複数の目的があっても構いませんが、優先順位を付けて必須項目を明確にしておきましょう。

 

②情報漏洩のリスク
事業譲渡を行う際に、細心の注意を払うべきポイントです
事業譲渡の情報が不要に広まってしまうと、事業譲渡の条件が悪くなってしまうリスクが高まりますし、本業務でも社員から悪い印象を持たれてしまいかねません。
事業譲渡の情報を伝える際は、誰にどこで何の目的で話したのか、出来る限り把握するようにしましょう。
特に譲渡先の企業を探す際は、情報漏洩に繋がりやすいので気を付けましょう。知人や知り合いを経由するよりは、仲介業者にマッチングをお願いした方が情報漏洩は起こりにくいです。

 

③事業譲渡を考えるタイミング
事業譲渡の最良のタイミングは、事業の業績が良く、経営者の意欲も高い時です。
しかし実際にはその様なタイミングで事業譲渡を考えはじめる経営者はほとんどいないでしょう。
ただ、当然ですが業績が良い方が、理想的な譲渡先に巡り合いやすいですし、評価額も高いです。また事業譲渡にはそれなりの時間もかかるので、あまり余力がない状態で事業譲渡を考えるのはお勧めできません。
ある程度スケジュール感を持って行動するようにしましょう。

 

④専門家の選定
業績など数字で見える部分もあれば、ノウハウや文化など目には見えない価値もあるため、根拠のある事業価値の算出は簡単ではありません。
実際の事業価値の算定には、会計士や仲介業者など専門家の力を借りる事をお勧めします
その際の専門家の選定のポイントですが、旅行代理店の事業譲渡の実績がある業者を選びましょう。なるべく近しい事案の経験がある専門家の方が信頼もおけるはずです。

 

⑤社員への伝達
慎重に判断すべき項目ですが、事業譲渡について社員への伝達も必要になる場合があります。
決して全社員ではありませんが、キーマンとなる社員に対しては、事前に事業譲渡について伝える事も検討しましょう
旅行代理店を運営していても、やはり業務を回していく上で主軸となるような社員は何名かいるはずです。彼らは譲渡先の会社にとっても大切な存在で、事業価値にも関わっています。
タイミングは慎重に判断して頂きたいですが、誰に何を伝えるべきか、検討しておきましょう。

 

まとめ

旅行代理店の経営者の方が、実際に事業譲渡を検討する際に役立つ情報をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
基本的な事から実践的な内容までまとめたので、ぜひ参考にしていただければと思います。
旅行代理店の運営は時代の移り変わりの影響も受けやすく、一筋縄ではいきません。
経営に思い悩むと視野も狭くなりがちですが、選択肢には今回ご紹介した事業譲渡という方法もあります。
最適な経営判断を下せるように、事業譲渡も含めて検討していきましょう。

 

旅行代理店の事業譲渡を検討する際のチェック項目
旅行を計画しようとすると、まず目に飛び込んでくるのはインターネット上に溢れる格安プランの広告ではないでしょうか。
今はわざわざ旅行代理店に行かなくても、自宅や移動時間に情報を簡単に取得できてしまいます。
このような技術の進歩に合わせて、旅行代理店業界にも様々な変化が起きています。
資本力の大きい企業は次々に大胆な戦略を実行していますが、中小の旅行代理店だと舵取りに難航するケースも目立ちます。
そんな旅行代理店の経営を改めて見直す際の手法として、事業譲渡が注目されています。ニュースでもたびたび登場する言葉なので、馴染みがあるという方も少なくないと思います。
今回はそんな事業譲渡の基本や、実際に事業譲渡する際のチェック項目について詳しくご紹介致します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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