2019年3月1日 金曜日

旅行代理店の事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

旅行代理店事業について今後どうしていくべきか、頭を悩ませている経営者の方は多いのではないでしょうか。
昔ながらのビジネスモデルでは生き残りも厳しくなっており、特に中小規模の旅行代理店は苦境に立たされているケースが目立ちます。
苦しい経営だとしても、今まで築いてきたお客様との信頼や、何よりも従業員の今後を考えると簡単に廃業する訳にもいきません。

そんな中、注目されているのが事業売却です

理想的な買い手企業と巡り合えて事業の経営が好転する例も珍しくありません。
今回はそんな事業売却について詳しくご紹介します。

 

旅行代理店の事業売却で次のステージへ

早速ですが事業売却とは一体どういった方法なのでしょうか。
旅行代理店の現状と併せて、それぞれ分かりやすく解説致します。

 

旅行代理店の現状

ここ10年を振り返ると、生活には大きな変化がありました。
スマートフォンを持っていることが当たり前になり、インターネットはより生活に密接な存在になったのではないでしょうか。
これらの変化は旅行者、そして旅行代理店にも大きな影響を与えています。
一昔前であれば、旅行の計画では多くのステップを旅行代理店のお世話になっていました。

しかし今では、飛行機の手配からホテル予約までスマートフォン一台で簡単に出来てしまいます。旅先の魅力的なスポットやグルメ情報も収集できてしまうので、旅行者にとっては大変便利な世の中になりました。

一方で旅行代理店は更なる工夫が求められています今の旅行者が求めるもの+αの付加価値を提供しなければ、お客様は満足しません。
具体的な改革に向けた動きもあり、大手旅行代理店は地域に根差したアクティビティをお客様に提供しようと体制を強化しています。

ただ、インターネットの恩恵は、旅行者だけでなく旅行代理店にもありました。
実店舗を持たないオンライン型の旅行代理店が次々と生まれたのです。
店舗にて旅行代理店を運営すると、何かと経費が掛かります。人件費も馬鹿になりませんし、店舗の維持費もかかります。
その点、オンライン型の店舗はこれらの経費が掛かりません。この余計なコストがかからないメリットを商品の販売価格に反映させています。
これにより、旅行代理店の価格競争はさらに激しくなっており、中小の旅行代理店は特に経営で苦しんでいるケースが目立ちます。

参入障壁の低い旅行代理店事業なので、ライバルは多くいます。その生き残りをかけた争いは年々激しさを増しています。
旅行代理店が収入の柱としていたコミッション(手数料)の収入にも陰りがあり、元々のビジネスモデルに執着していては先行きが厳しくなっています。
大きな舵取りを迫られている経営者が増えおり、事業売却をはじめとした大胆な手法は注目を集めています。

 

事業売却とは

会社内にある事業を売却する行為を事業売却と言います
単一の事業を売却する場合も、複数の事業を売却する場合も、どちらも事業売却に含まれます。
事業売却は会社売却と比較すると売却の規模が小さくなる傾向があり、買い手企業はそこまで大きな出費をしなくても済むのが特徴です。
事業売却はその手段として事業譲渡を用いるのが一般的です。

ちなみに、事業譲渡に似た手法としては会社分割がありますが、意味合いは少し異なります。
会社分割は組織再編行為に類しており、事業を独立させ、会社内の事業を整理する際に使われます。事業を売買する事業売却と混同しないように気を付けましょう。

 

事業売却の流れ

では具体的に事業売却を実際に行う際の流れを解説します。
上述したように事業売却は事業譲渡という手法を用いるのが一般的です。ここでは事業譲渡を用いた事業売却の手順をみていきます。

①事業売却先の相手企業を探す
まずは事業を購入してくれる相手探しから始まります。ただ闇雲に探せば良いという訳ではなく、注意点があります。
事業売却を行うという情報は極力内密にしましょう
知人などの人脈を頼りに買い手企業を探そうとしている方は、特に情報流出に気を付けましょう。
仲介業者のネットワークを頼りに行動した方が、情報の機密性は高まります。近年だとマッチングサイトを活用する企業も増えています。

 

②意向表明書を確認する
事業を売却しても良いと考えられる候補企業がいくつか見つかり、買い手側の企業側から送られてくるのが意向表明書です。
意向表明書には以下のような事業売却の際の条件が記されています。

・資産について
・事業売却で対象とされる事業について
・債務の範囲について

これらに加えて、今後の事業売却の方針も記載されます。
そのため、意向表明書は事業売却を進めていく上での土台とも言えます。

 

③基本合意書を締結する
意向表明書の内容を受けて、特に問題なく両社ともに合意が得られているようであれば、基本合意書の締結を行います。
基本合意書は今まで両社で同意が得られている方法にて、事業売却を進めていくという約束です。
ただ、事業売却の契約は基本合意書に含まれないため注意しましょう。

 

④デューデリジェンスを行う
売り手側の企業の売却対象の事業について行う調査をデューデリジェンスと言います。
売り手企業の申告内容に虚偽がないか、未申告の負債がないかなど細かく調査されます。
円滑な授業売却を行う上で大切なポイントなので、売り手企業は誠意をもって対応しましょう。

 

⑤契約書を締結する
ここまでのステップを終えて、ついに契約に至ります。
契約は専門的な話も多く、売却額など重要な項目も決定されるため、交渉に時間がかかる場合も珍しくありません。
円滑に話を進めるためにも、仲介業者や会計士、弁護士といった専門家のサポートも受けると良いでしょう

 

⑥株主総会で承認を得る
株式が公開されている企業に限りますが、事業売却の承認を株主総会にて得る必要があります。
承認を得るためには、株主の半数の出席および3分の2以上の賛成票が必要です。

 

⑦事業を引き継ぐ手続きをする
最後に実際に事業売却をする手続きを進めます。
債権や土地の名義などを移転する必要があります。両社で協力してスムーズな事業売却を行いましょう。

 

旅行代理店を事業売却する目的にはこんなものがあります

続いて実際に旅行代理店を事業売却する場合にはどんな目的があるのでしょうか。
ここでは代表的な目的を4つピックアップしてみました。

 

①更なる事業の成長のため
特にベンチャー企業に多く見られますが、急成長中の事業を大企業に売却する場合があります。
大企業の傘下に入れば、経営基盤は格段に安定するので、事業により集中して取り組めます。
お客様からの知名度も上がりますし、信用力も高まるでしょう。
それによって有能な人材確保も容易になるはずです。
大企業の既存事業とのシナジー効果も生まれるので、相互にさらなる成長も生まれるでしょう。

 

②後継者問題の解決のため
後継者問題で頭を悩ませているのは中小の旅行代理店も同様です。
仮にお子様が居ても、旅行代理店の経営状態が良くないなら継がせたくないと考える経営者も少なくありません。
そこで、ただ何もせず廃業の道をたどれば、被害を受けるのは他でもない従業員やお客様です。
しかし、事業売却を行えばそんな問題の打開策になりえます。
今よりも資本力のある企業に買収してもらえれば、事業の業績回復も十分に望めます。

 

③事業ポートフォリオの見直し
大企業の事業売却というと、この「選択と集中」を目的にしたケースが目立ちます。
不採算の事業を自社で抱えるよりも、その分野を強みとしている企業に事業を任せたいと考えるのは当然です。
そうすれば、自社のコア事業に対してより集中できますし、相互の企業のさらなる発展が期待できます。
事業を売却して得た資金を、自社の主力事業に投資して再生を図るという手段もよく使われています。

 

④債務を返済するため
事業売却をすれば、事業規模にも左右されますが一定の資金を入手できます
資金繰りに困っている譲渡会社であれば、債務の返済に得られた資金を使う場合もあります。
今までどうにも解消できなかった債務を事業売却によって解消できれば、新たな一歩を踏み出す契機にもなるでしょう。
再起を図る手段としても、事業売却は活用されています。

 

旅行代理店の事業売却を行う上での注意点

最後にお伝えしたいのは、実際に事業売却を行う際に注意して頂きたい6つのポイントです。事業売却は多岐にわたる複雑な手続きが必要です。多くの検討事項がありますが、ここでは厳選した注意点を取り上げます。

 

①事業売却の目的を明確にする
目的が明確かどうかというポイントは、ビジネスで意思決定する上で大切です。
事業売却という大きな決断であれば、なおさら目的の重要性は高まります。
社員のために後継者問題を解決したいのか、資金を調達して別の事業に投資したいのか、単に事業の整理を図りたいのか、様々な目的が考えられます。事業売却の方向性も、当然ながら目的によって左右されます。
自社が優先するべき目的をはっきりさせ、事業売却の進路がぶれないようにしましょう

 

②情報漏洩に注意を払う
事業売却を考えているという情報は機密性の高い情報です。不用意に情報を漏らしてしまうと、事業売却の条件が悪くなる原因にもなります。
誰にも相談しないという訳にはいかないですが、必要最低限の関係者のみに情報伝達を行いましょう。また誰にいつ何を伝えたかも、記録に残しておくと良いでしょう。
売却先の選定の際も、仲介業者のネットワークから相手を探した方が比較的安全です。
情報の取り扱いには細心の注意を払って行動しましょう。

 

③自社にマッチした専門家を選定する
事業売却が無事に完了するまでには、複雑な手続きが待ち構えています。
経営者自身が、多忙な業務と両立して手続きを行うのはあまり現実的ではなく、一般的には専門家のサポートを借りて事業売却に臨みます。M&Aの仲介業者や会計士、弁護士などを雇うケースが多いです。

ここで専門家選定の際の注意点なのですが、自社に専門性がマッチした相手を選ぶようにしましょう。
専門家の実績や特徴をよく考慮して、見極めると良いです。
例えば、中小規模の旅行代理店であれば、同様なケースの経験と成果のある専門家を見つけましょう。好条件での売却成立に一歩近づくはずです。

 

④事業売却を行うタイミングを検討する
事業売却は、当然ながらいつ行うかによってその結果にも影響が出ます。
業績も良く経営者の意欲も高い時と、業績が落ち込んでしまい経営者のモチベーションも低い時では、買い手企業からの評価も変わってきます。
前者のような状態で事業売却を考える経営者は少ないはずですが、事業売却の決断が遅れて事業価値が著しく低下してからではせっかくのチャンスも逃してしまいます。
事業売却は時間がかかるので、最低限の体力は会社に必要です。
事業の状態を見極めつつ、スケジュール感を持って行動しましょう。

 

⑤デューデリジェンスへの準備をする
上述しましたが、売却対象の事業に対して行われる調査をデューデリジェンスと言います。
買い手企業が不当なリスクを背負い込まないために行われ、売却する事業に対して入念に調査が行われます。
必要に応じて関係者に聞き取り調査も行われるので、売り手企業は洗いざらい調べられると覚悟しましょう
また、調査にあたっては会社概要、財務諸表、労務管理状況、契約書類資料の提出も求められます。デューデリジェンスにて不備や指摘があると、今後の交渉に影響が出てしまいます。
専門家の助力も得ながら準備を進めましょう。

 

⑥社員への伝達を適切に行う
事業売却を考えているという情報は不必要に公言すべきではありませんが、例外もあります。例えば社内でもキーマンとなる特定の社員には、時期を見計らって適切に事実を伝えてもいいでしょう。
旅行代理店の事業を行っていても、仕事を回す上で軸となっている社員がいるはずです。
彼らは買い手企業にとっても大切な財産で、事業価値にも直結します。
事業売却後も会社に残ってもらえるように、ケアをしておくと良いです。

 

まとめ

旅行代理店の事業売却について詳しくみていきましたが、いかがでしたでしょうか。
事業売却の基本的な知識から、実際に事業売却を行う際の注意点まで幅広くご紹介したので、事業売却への理解もきっと深まったはずです。
事業売却という手段を選択肢に入れて考えるだけで、旅行代理店事業の今後も見え方が変わってきます。経営者にとって、そして何よりも多くの社員にとって最善の道を探しましょう。

旅行代理店の事業売却のポイントとは?
旅行代理店事業について今後どうしていくべきか、頭を悩ませている経営者の方は多いのではないでしょうか。
昔ながらのビジネスモデルでは生き残りも厳しくなっており、特に中小規模の旅行代理店は苦境に立たされているケースが目立ちます。
苦しい経営だとしても、今まで築いてきたお客様との信頼や、何よりも従業員の今後を考えると簡単に廃業する訳にもいきません。

そんな中、注目されているのが事業売却です。
理想的な買い手企業と巡り合えて事業の経営が好転する例も珍しくありません。
今回はそんな事業売却について詳しくご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年3月1日
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