2019年8月15日 木曜日
システムインテグレーターの事業承継でお困りではないですか?M&A事例を紹介
Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)
少子高齢化の問題が叫ばれて久しいですが、その影響は多くの会社の経営者にも及んでいます。
経営者が高齢になると会社の事業の承継を当然ながら考えますが、適した後継者が見つからずに困っている方がとても多いのです。
それはシステムインテグレーター業界も例外ではなく、どの様にして事業承継していくべきかというのは大きな課題と言えます。
今回はそんなシステムインテグレーター業界の事業承継について詳しく迫ります。
システムインテグレーター業界の現状から実際の事業承継の事例までご紹介するので、事業承継で実際に悩まれている方の参考にしてみてください。
Contents
システムインテグレーターを事業承継しよう
では、実際に会社を事業承継しようと考えた場合、どのような選択肢が経営者にあるのでしょうか。
ここではそもそもシステムインテグレーターとは何か、システムインテグレーター業界の現状と、具体的な事業承継の方法についてまとめてみました。
システムインテグレーターとは
システムインテグレーターとは、世の中に必要不可欠なしくみを、ITを使って構築する情報サービス企業のことを指します。
仕事の範囲も広大で、企業のコンサルティングからシステムの設計や開発、運用から保守に到るまでを請け負います。
IT業界ではSIer(エスアイヤー)と呼ばれることもあります。
システムインテグレーター業界の現状
業界全体としては、リーマンショックや東日本大震災の影響で低迷した時期もありましたが、近年は業界規模も好調に推移しています。
さらにアベノミクスやマイナンバーの影響もあり、ITに対して投資する企業も増えてきています。
他にも業界を後押しする要素は多くあります。
例えば、クラウドコンピューティングの発展も目覚ましいですし、今後さらに影響を与えていくであろう技術としては、ビッグデータや人工知能の存在が挙げれらます。
システムインテグレーターが活躍する場はますます増えていくと言えるでしょう。
その一方で、技術者の不足が問題となっており、少子高齢社会の世の中でどうしていくべきか問題になっています。
事業承継とは
会社を誰かに引き継ぐ事を事業承継と言います。
会社を引き継ぐ相手が誰かによって、事業承継は大きく以下の3つに分けられます。
親族内承継
親から子、そしてまた親から子へ代々家業を継いできたという方もいらっしゃるでしょう。
この古くから親しまれてきた方法が親族内承継です。
経営者自身のお子様やもしくは兄弟といった、親族内にて事業を承継していくことを指します。
この方法が優れているのは、早期から経営に関して教育を行える点です。
経営者としての心構えや、自社の強みと特徴など、無理のないペースで自然と伝授できます。
加えて周囲からの反発も少ない点も親族内承継の良いところでしょう。
社内承継
親族ではないですが社内の人間に事業承継するのを、社内承継と呼びます。
勤務態度や成績が優秀な社員や役員が選ばれる場合が多いです。
社内承継のメリットは、新たに会社に関する教育を行わなくても良い点が挙げられます。
会社の文化やルールに対しても親しみを持っている社員に事業承継を行えば、余計な手間は省けるでしょう。
ただし注意点が1点あります。それは、企業の買取が必要になるので、それなりの資金が必要になる点です。
そのため、後継者候補の社員に事業承継を断られてしまうなどスムーズにいかないケースもあります。
M&A(外部企業への承継)
親族内継承でも社内継承でもない第3の方法が、これから詳しくご紹介するM&Aを用いた事業承継です。
外部企業へ継承するので、事業承継の可能性は大きく広がります。
決して簡単な道ではありませんが、綿密な準備をしてM&Aに望めば、理想的な相手とマッチングする可能性は十分あります。
このM&Aという選択肢は近年特に注目されており、実際にM&Aによる事業承継を実施するシステムインテグレーターも増えています。
後継者がいない、そんなときは
身内でも社内でも事業を承継できそうにない。
そんな際の選択肢として注目されているのがM&Aによる事業承継です。
社外の企業へ会社を承継する手段ですが、なぜM&Aによる事業承継が増えてきているのでしょうか。
その背景とM&Aという言葉について押さえておきましょう。
事業承継にM&Aが用いられる背景
多くの経営者の方、特に中小企業では後継者をどうするべきかという大きな問題を抱えている場合が多いです。
少子高齢の問題は深刻で、子供に恵まれず、親族内で後任がいない例は珍しくありません。
経営者の方も、高齢になってくると会社の今後を不安に思い行動を起こす方が増えます。
そんな中で活用されるケースが増えているのがM&Aによる事業承継で、多くの経営者の方に活路を与えています。
身近な者だけに限らずに事業承継を考えられるので、今の時流にあっており、会社の今後を考える上では不可欠な選択肢と言えます。
M&Aとは
M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の頭文字を取った言葉で、日本語にすると「合併と買収」という意味です。
言い直せば、企業同士で合併し、企業を売買する行為を指しています。
広義の意味のM&Aは、企業同士の提携までを含める場合もあります。
一つの共通した目標に向けて会社が協力する事を指す言葉とも言えます。
また具体的なM&Aの方法は主に、株式譲渡、株式移転・交換、事業譲渡、合併、会社分割があります。
M&Aによる事業承継を選ぶメリット
続いてはM&Aによる事業承継を選ぶメリットについて解説します。
様々なメリットが考えられますが、ここでは売り手側と買い手側に分けて、それぞれの主なメリットをまとめました。
M&Aによる事業承継を考える際の参考にしてみて下さい。
【売り手のメリット】
①事業の継続が可能となり、更なる発展も期待できる
事業を承継できるかどうかという問題は、経営者だけの問題ではありません。
会社で共に働く、社員にとっても大問題です。
無事に会社が承継されれば良いですが、廃業ということになれば様々なデメリットが発生します。
社員の雇用は奪われますし、費用や手間も大きいです。
お客様との関係も白紙になりかねませんし、なによりも長年培ってきた技術やノウハウも活かせる場を失ってしまいます。
そんな事態を回避するためにも、M&Aの事業承継は有効と言えます。
ただ単に承継されるというだけでなく、新たな経営者の下でさらなる発展も期待できます。
②外部から幅広く後継者候補となる企業を探せる
そもそも、なぜ事業承継で困っていたのでしょうか。
理由の一つには身内や社内など限られた繋がりの中から後任者を探していたからではないでしょうか。
M&Aによる事業承継の場合、これらの悩みからは解放されます。
社外に多数にある企業の中から、適任者を探せます。
もちろん、簡単に見つかるわけではありませんが、M&Aアドバイザリーと呼ばれる心強い専門家も味方につけることができます。
視野を広げて、様々な可能性の中から自社の未来を考えられるので、今までよりも前向きに行動できるようになるはずです。
【買い手のメリット】
①スキルのある人材を確保できる
人材不足で特に困っているのがシステムインテグレーター業界です。
M&Aにて事業承継できれば、優秀な人材を一挙に獲得できる可能性があります。
即戦力として期待できますし、人材が不足していた各部署への補填も可能でしょう。
今まで断っていた案件にも新たにチャレンジできるようになるかもしれませんし、人材が増えるメリットは買い手企業にとって大変大きいです。
②新たな技術やノウハウを獲得できる
異なる企業を引き継ぐわけなので、自社にとっては全くの新しい技術が手に入るかもしれません。
例えば開発で主に使っていた言語が両社で異なり、システム開発の幅が広がるかもしれませんし、仕事を効率的に行う優れたノウハウがあるかもしれません。
こうした財産は会社の今後の発展に影響力があり、大きなメリットであると言えるでしょう。
システムインテグレーターの事業承継のポイント
最後にお伝えしたいのは、M&Aによる事業承継を成功に導くためのいくつかの大切なポイントです。
ただ闇雲にM&Aの実施を考えるよりも、これからご紹介する3つのポイントを押さえる事で、思い描いたM&Aの実行に距離が近づきます。
それでは早速みていきましょう。
①自社の強みを把握する
改めて自社の強みは何なのか、明確に言えるように準備しましょう。
システムインテグレーターですと、社員が特定のスキルを持っている、社員の経験が豊富、取引先が多様、特定の分野が得意といった強みが挙がるのではないでしょうか。
自社の価値を決める上でも、この自社の強みを明確にするのは大切なステップです。
洗いざらい全ての強みを挙げてみて、本当の自社の強みは何か分析を行っておくのをおすすめします。
②M&Aの専門家を起用する
M&Aの知識が不足しているなど、様々な悩みを持っている経営者の方も多いのではないでしょうか。
M&Aには専門的な要素も多く含まれるので、日々の業務が忙しいとなかなか手が回らないですよね。
そんな際に頼りになるのがM&Aの専門家の存在です。
M&Aアドバイザリーとよばれ、M&A仲介会社とファイナンシャルアドバイザーに大きく分けられます。
マッチングの相手探しから、一貫したM&A業務を強力にサポートしてくれるので、M&Aを考える際にM&Aアドバイザリーの存在は必須と言えます。
③相手企業の考えをよく理解する
自社の強みを洗い出したり、自社についての情報を整理したり、どの企業でも自社に関する準備は綿密に行います。
しかしここで忘れてはならないのが、相手企業の存在です。
いくら自社の良い点を上手にプレゼンできたとしても、肝心の相手企業に対する理解が乏しいと例え良い反応が返ってきても喜びにくいはずです。
マッチングの候補である企業はどんな企業なのか、何が強みで課題は何か、相手を知る努力も怠らないようにしましょう。
システムインテグレーターの事業承継事例
それでは実際のシステムインテグレーターの事業承継の事例を2つご紹介します。
どのような目的がそれぞれの事業承継にあるのか着目して、事例を参考にしてみましょう。
【事業承継の事例①】
売却会社:ちきゅう株式会社
買収会社:株式会社ジーニー
実施年度:2018年
株式会社ジーニーはちきゅう株式会社が行う中小企業向けCRM/SFAシステムである「ちきゅう」の開発・販売事業を会社分割により事業承継しました。
この事業承継の目的は、株式会社ジーニーはマーケティングオートメーションの「MAJIN」を提供していますが、「ちきゅう」と強固に連結させることで、
事業シナジーを創出していく事です。
これによって、お客様のマーケティング活動をより力強くサポートできるようになると考えています。
【事業承継の事例②】
売却会社:株式会社アドホック
買収会社:株式会社フュートレック
実施年度:2016年
株式会社フュートレックは株式会社アドホックのコンピューターシステム・ソフトウェアー・ハードウェア―の企画・設計・開発・運営・保守、デジタルコンテンツの企画・制作・保守、情報通信機器の販売・保守、労働者派遣などの事業を簡易吸収分割により事業承継しました。
この事業承継の目的は、株式会社アドホックが保有する商品を株式会社フュートレックの展開する商品に加える事で、より戦略的な商品構造が可能となり、さらなる顧客満足度の向上に繋がると考えた事です。
まとめ
さて今回はシステムインテグレーターの事業承継について詳しくご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
M&Aを活用すると、理想的な事業承継を実現できるチャンスが広がります。
子どもにも恵まれ、経営者の事業にも理解があるというケースは昨今では稀です。
多くの経営者が自分の事業を継続すべきか、それとも廃業すべきかで悩んでいます。
視野が狭くなっていると解決が難しいと感じるこの事業承継問題も、視野を広げてM&A活用の道を模索すれば打開策が見えてきます。
今回ご紹介した内容を参考にして、次の一手を考えてみましょう。前向きに行動すれば、経営者にも社員にも明るい未来が開けるはずですよ。