2019年6月24日 月曜日

システム開発会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

「システム開発会社のM&Aを検討しているものの、なにから手を付けたら良いか分からない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、システム開発会社のM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介していきます。

 

システム開発会社のM&A

M&Aは、後継者がいない場合や事業承継の問題のような、経営上の問題の解決に有効な手法です。その他にも、優秀な人材の確保や経営基盤の安定化など、M&Aを行うことでさまざまなメリットがあります。近年、多くの業界でM&Aが頻繁に行われていますが、システム開発会社も例外ではありません。M&Aを利用することで、それぞれの会社が抱える問題の解決を図ることができるのです。

 

システム開発会社のM&Aを行う理由は?

システム開発会社が、M&Aを行う4つの理由をご説明していきます。

  • 人手不足を解消するため
  • 後継者不足問題や事業承継問題を解消するため
  • 多重構造
  • 単価の低下

 

人手不足を解消するため

システム開発会社は需要が増加していることや、従業員が定着しないことから慢性的な人材不足に陥っていりやすくなっています。IT業界には「IT土方」という言葉が存在します。IT土方とは、IT業界の労働環境の過酷さから、エンジニアがソフトウェアを組み上げていく姿を、建築職人に重ね合わせて名付けられました。

IT業界は、単に人員不足というだけではありません。システム開発会社におけるソフト開発は、時代に合わせたブームや流行があり、常に最新の技術を学ばなければなりません。システム開発会社は、新しいブームや新しい技術を学び続ける、という所で人材が不足しているのです。

事例をあげると、スマートフォンの開発が当てはまります。スマートフォンの開発には、最新の専門技術が必要です。スマートフォンは、近年急激に成長をしているため、人手不足で仕事が間に合わない状況になっているようです。また、新しい技術を学ぶ時間もないことも、慢性的な人材不足の原因にもなっています。

 

後継者不足問題や事業承継問題を解消するため

後継者不足問題や事業承継問題は、とくに中小のシステム開発会社に起こりがちな問題です。大手企業の場合は、一般的には後継者が見つかりやすいといえるでしょう。大手企業は従業員が多いので、後継者を希望する人も多いからです。中小企業は、後継者を見つけることが難しいのが現状です。中小企業は大手企業と比べると知名度が低く、後継者を希望する人は大手企業ほど多くはいません。そのため、中小のシステム開発会社の経営者が、高齢で引退を考えていると、後継者問題はさらに深刻化します。後継者がいなければ、事業を続けることは困難になります。つまり、後継者問題は早急に解決する必要があるのです。

後継者問題の解決方法の1つとして、M&Aによって買収されることにより、他の会社に事業を継続してもらう手段もあります。とくに大手企業による買収ならば、安心して事業存続を図ることができます。後継者不足により事業の継続ができなくなれば、質の高いサービスを提供できていても、業界全体として大きな損失となってしまいます。そのため、M&Aを行い後継者問題を解決して、事業の継続ができれば、引き続き質の高いサービスを提供することが可能となり、業界全体の活性化にもつながります。質の高いサービスを提供しているのは、大手企業だけではありません。中小のシステム開発会社にも良質な事業展開をする会社は数多くあります。中小のシステム開発会社が後継者不足問題を抱えているのであれば、業界全体で考えなければならない問題です。M&Aによる後継者不足問題の解決は、中小のシステム開発会社だけではなく、業界全体を活性化するのです。

 

多重構造

大手のシステム開発会社が元請けとなり、下請けや孫請けに発注していく、という多重構造があります。多重構造では、下請けになるほど利益が少なくなります。中間に位置する会社の立場からすると、請けた金額よりもさらに安い金額で、下請けに発注しなければ、利益を得られません。そのため、多重構造では下請けになるほど不利な立場になります。多重構造を改善するために、M&Aに踏み切るケースは多いといわれています。

例えば、M&Aを行い規模の大きなシステム開発会社との経営統合が成立すれば、元請けに近い立場に上がることが可能です。そうすれば、大幅に利益を改善することができます。近年、元請けが外注先を選別することが、問題になっています。元請けが外注先を選別し続けると、下請けとなる中小のシステム開発会社は、取引先を確保することが困難になります。元請けと取引を継続することができればいいのですが、選別によって取引を打ち切られるリスクもあります。外注先の選別に対処するために、中小のシステム開発会社はM&Aを行うケースが多々見受けられています。大手企業によって買収されれば、大企業の傘下に入って事業を継続することができるのです。

 

単価の低下

システム開発業界では、オフショア開発などによって単価が下がる傾向があります。オフショア開発とは、システム開発を海外の企業に委託することです。コスト面ではメリットがあるものの、単価の下落の原因にもなります。単価が下落した状況では、それぞれのシステム開発会社で、利益を確保しやすい案件を優先するのが多いです。

オフショア開発では、案件の傾向が変わりやすく、それぞれの会社の事業展開に及ぼす影響は非常に大きいものがあります。場合によっては、事業内容を大きく転換しなければならないこともあります。つまり、事業の展開や拡大を行うために、M&Aを行うケースもあるのです。事業戦略を転換し、事業の拡大を行ううえで、他社との経営統合や買収は大きな経済効果となります。

 

システム開発会社のM&Aを行うタイミングは?

システム開発会社がM&Aを行うタイミングは、どんなときなのでしょうか。よくある3つのタイミングをご紹介します。

  • 業績が良くないとき
  • オーナーがリタイアしたいとき
  • 別の事業に注力したいとき

 

業績が良くないとき

近年、少子化が進み、人口も減少しつつあります。少子高齢化が進んでいくなかで、多くの業種が不況の煽りを受けています。システム開発会社も、若い技術社員の確保のほかに多くの課題を抱えており、業績も決していいとはいえない状況に陥っています。経済環境が不透明なため、このまま経営を続けていくことに不安を感じる場合、大手企業に事業売却を行って、その傘下に入るという選択肢もあります。経営再建が可能であると判断したら、たとえ負債を抱えている会社であっても、買い手希望者は現れます。高い技術力など、自社の強みを明確にすることで、高値で売却することも不可能ではありません。

事業売却をするという選択は、業績不振の企業に限りません。売上を伸ばしている企業であっても、運転資金が増えた影響で、借入金を増やさなければならない状況に直面することがあります。中小企業の社長であれば、個人保証があるため、借入金を返せなくなる不安を抱く経営者も存在します。そのような企業も、事業売却によって大手企業の傘下に入るケースがあるのです。

 

オーナーがリタイアしたいとき

自営業に定年退職は存在しません。経営者の体力が続く限り経営を継続することは可能です。しかし、高齢になっていくと、健康問題の悩みが出てきます。健康面で問題が出てくると、リタイアして経営を退くという選択肢も浮上してきます。選択肢のひとつとして、M&Aによる事業売却の検討をおすすめします。

M&Aを利用して事業売却を行えば、これまでになかった自由な時間と、事業を売却したことにより現金を手に入れることができます。事業を売却したお金で、再び新しい事業を興したり、セカンドライフを送る資金に充てたりすることもできるのです。事業売却を行うことで、経営のプレッシャーから解放されるだけではなく、自由な時間と現金も手に入れることができるので、M&Aには大きなメリットがあるといえるでしょう。

 

別の事業に注力したいとき

事業売却では、事業の一部のみを売却することも可能です。事業を売却して手に入れた現金を、別の事業へ資金投下することもできます。業績の良くない事業を売却して、他の業績の良い事業を一層成長させることができるということです。以前は、経営不振な事業のみを廃業して切り捨てる手法がとられていましたが、経費が意外にかかってしまい、業績の良い事業にまで悪影響が波及してしまうのです。

つまり、スピードを重視する現代の経営において、チャンスさえあれば一気に人・物・金を投入して先行者利益を狙う必要があり、現代ビジネスには選択と集中力が求められているのです。

 

システム開発会社のM&Aを実施するのは誰か?

どのような企業が、システム開発会社のM&Aを実施するのでしょうか。上述したように、人手不足や後継者不足といった問題に加え、業績が不振であったり、オーナーがリタイアを考えたりしているシステム開発会社がM&Aを実施しています。M&Aを行う理由は一概には言いきれませんが、いずれの企業も、積極的に自社の問題解決のためにM&Aの実施に踏み切っているのです。

システム開発会社においてM&Aを実施するメリットを、改めて、買い手側と売り手側、両方の視点からご紹介していきます。

 

買い手側のメリット

買い手側のメリットとしては、新規事業参入が比較的容易に行えることや、技術力の向上を行えることなどが挙げられます。新規事業参入に関しては、自社でゼロから新規事業への参入をした場合、多くのリスクがあります。そこで、M&Aによって、すでにその分野で実績のある企業を買収することにより、新規事業参入へのリスクを減らすことができるのです。また、技術力の向上に関しては、高度な技術を持った企業を買収することで、自社の技術力を高めることができます。

 

売り手側のメリット

売り手側のメリットとしては、後継者問題の解決と従業員の雇用の確保などが挙げられます。現在、中小企業において、家業を継ぎたくない、もしくは家業を継がせたくないという、経営者や家族が増えています。そのため、多くの中小企業で後継者問題が深刻になっています。後継者が不在のままでは、最悪の場合、その会社は廃業になってしまいます。そこで、M&Aを行い、優良企業に自社を託すことで、後継者問題を解決し、従業員の雇用まで守ることができるのです。

 

システム開発会社のM&Aの相談先は?

経営者個人でM&Aの経験がある方は、少ないといえるでしょう。経験が少ない方や初めての方は、M&Aをするうえで、仲介に入ってくれる専門のエージェントへの依頼をおすすめします。買い手が見つかったとしても、M&Aの完了までには多くの手続きがあります。

M&Aではたくさんの書類を用意する必要があり、知識のない人が独力で準備するのは難しいと考えられます。買い手側は、用意された資料をすべて審査する必要があります。審査自体も、根気のいる作業なので、プロに頼った方が安心できます。M&Aに実績のあるエージェントに相談して、M&Aに不可欠な交渉と調査についてサポートを受けましょう。円滑にM&Aを完了するためにも、エージェント探しから始めてみてはいかがでしょうか。

 

まとめ

この記事では、システム開発会社のM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介してきました。中小のシステム開発会社では、エンジニアの確保が難しくなってきており、経営者が高齢化してきています。そのため、業界の動向や自社の将来を考えて会社を売却し、大手企業の傘下に入るという決断をする経営者が増えてきています。大手のシステム開発会社は、業界自体が好調であることから、買収意欲は極めて旺盛で、M&Aの買収ニーズは高いといえるでしょう。

上述の通り、買い手と売り手ではM&Aを行う目的は異なります。つまり、M&Aのメリットとデメリットをよく判断したうえで、M&Aを選択する必要があるのです。さらに、M&Aの手続きは面倒なので、実績のある専門家のサポートを受けながら、スムーズに手続きを進めていきましょう。

システム開発会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと
システム開発会社のM&Aを検討しているものの、なにから手を付けたら良いか分からない…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。この記事では、システム開発会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと、M&Aにおける様々なポイントをご紹介していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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