2019年6月27日 木曜日

システム開発会社の事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

システム開発会社を経営している方の中には、何らかの理由で事業を売却しようと考えている方がいらっしゃるでしょう。

もしも経営がうまくいっていない状態の会社を運営しているのであれば、従業員の雇用を維持するために売却を検討しているかもしれませんし、大手企業の傘下に入ることで、資本を増強し、新たな事業に一歩踏み出すためかもしれません。いずれにしても、事業を売却するということは大変大きな決断であることには変わりありません。そこには注意すべきポイントがいくつも存在します。

今回は、システム開発会社の現状を踏まえたうえで、事業売却の目的や注意点を解説していきます。

 

システム開発会社の事業売却で次のステージへ


システム開発はIT産業、情報技術産業の一分野です。システム開発はIT産業のなかでも特に開発色、プログラミング色が強い分野です。

生活やビジネスのIT化は、これまで急速に進んできましたが、今後もさらに加速すると見られ、IT業界やIT人材に対する需要は今後も増加すると考えられます。したがって大きく見ればIT産業の一分野であるシステム開発産業の未来も明るいと予想されます。システム開発会社の事業売却をIT業界の中に位置づけてみましょう。

 

IT業界とは

IT業界の「IT」とは「Information Technology」の略であり、日本語に訳せば「情報技術」です。現代では誰もが当たり前のようにインターネットで洋服、日用品、家電製品、食品、飲料水などなんでも買うことが。おいしいレストランを探すときにも、インターネット上の口コミサイトや、ブログ、SNSサービスなどを見れば、料理はもとより、店の外観、内装を写真で確認し、料理の感想を書き込みで確認することができます。このようなことを可能とするのがIT業界の役割です。

世界最初のインターネット・サービスプロバイダーが出現したのは1989年のことであり、インターネットショッピング企業アマゾンの創業が1994年、楽天の創業が1997年であることを考えると、最近30年間におけるIT業界の進展に驚きます。今後も人工知能の活用や、IoT(Internet of Things モノのインターネット、世界中のモノがインターネットにつながり相互に制御すること)の進展が見込まれるため、IT業界はますます発展するだろうと見られています。

 

IT業界の市場規模

IT業界の市場規模を見るために、2015年の情報サービス産業を見てみましょう。

2015年の情報サービス産業の市場規模は、売上高約21兆円、従業員数約101万人です。売上高の種類別の構成比は、受注ソフトウェアが58.5%、ソフトウェア製品が11.6%、システム等管理運営受託が4.3%、その他情報処理が10.4%、インターネット付随サービスが10.7%となります。従業員の構成比は、システムエンジニア44.5%、プログラマ16.7%、研究員0.7%、ユーザーサポート3.5%、管理営業19.1%、企画2.4%、その他13.0%です。

システムエンジニアの仕事は、顧客から要望を聞き取りシステム全体を設計することです。プログラマの仕事はシステムエンジニアの設計に基づき、実際にプログラムをコーディングすることです。

 

IT業界の現状と将来性

国内民間企業のIT投資実態をみると、2014年以後、IT投資は毎年数パーセントずつ増加しています。また、IT業界は日々変化を続ける新たな領域であるため、次々に新製品や新技術が登場し、世界的には市場が非常に速いスピードで成長しています。

しかし、一方で課題もあります。慢性的な人材不足を抱えているのです。

経済産業省によれば、今後第4次産業革命に対応したビジネスを担えるIT人材の確保は急務となっているにもかかわらず、2019年をピークにIT関連産業への入職者は退職者を上回り、減少に向かうとされています。また、IT人材が2030年まで高齢化の一途をたどり、その低生産性から、将来的には40~80万人の規模で不足が生じるとされています。

さらに、現在日本で働き方改革が謳われるなか、これまでブラックと呼ばれてきた様々な産業において、働き方の見直しが行われています。もちろん、IT業界においてもそれは例外ではないのですが、依然として、労働環境を改善できていない業界と言えます。

この現状に対して、政府も手をこまねいて見ているわけではありません。IT人材の確保のために2020年より小学生のプログラミング学習が必須化し、そのうえ海外のIT技術者を積極的に受け入れることを始めています。

 

システム開発業界における事業売却の動向

システム開発業界の市場規模は拡大傾向にあり需要も売上も好調に推移しています。しかし、業界の多重下請け構造の影響で、下請け企業を中心に経営が厳しい会社も少なくありません。下請け企業から脱却するためには、事業規模を大きくし、最新技術を獲得しより元請けに近い立場になる必要があります。ですが、中小のシステム開発会社では事業規模の拡大も最新技術の獲得も簡単なことではありません。そこで近年増加しているのが事業売買です。

システム開発会社の事業売買は、事業規模の拡大だけでなく、自社開発だけでは難しい最新技術の獲得、資本提携、技術の組み合わせによるシナジー効果などによる企業の成長を目的としたものだけでなく、他業界の企業によるIT業界への参入といったものもあります。他にも経営者の高齢化やアーリーリタイアといった理由での事業売却もあります。

 

システム開発会社を事業売却する目的にはこんなものがあります


システム開発会社を事業売却する目的はいくつもありますが、ここではそのうち主な5つをご紹介します。

 

大手企業の傘下に入る

事業売却することで大手企業の傘下に入ることができれば、事業の規模を拡大させ、大手企業の資本によって経営基盤を安定させることができます。また、システム開発を含めたIT業界は、元請けが二次請けに、二次請けが三次請けに発注する多重下請構造になっています。この構造では下層の下請けに向かうほど利益が少なくなっていくため、できるだけ元請けに近い上層の立場で受注することが利益を大きくする上で大切になります。

大手企業は元請けまたは二次受けなど上層に位置していることが多いため、傘下に入ることで元請けに近い立場で受注することができます。これによって利益の増加が見込めます。さらに、大手企業の傘下に入ることで会社の知名度を向上させることができます。会社の知名度が向上すれば後述する人材不足の解消にもつながります。

 

人材不足の解消

近年のIT技術の進歩によって、システム開発業界の仕事量は増加傾向にあります。仕事量の増加に伴い、業界全体で人手不足が深刻になりつつあります。就職・転職希望の多い大手企業と違い、特に知名度の低いBtoBの中小のシステム開発会社では、たとえ優良企業であっても、人材の確保が難しくなっています。

そこで、事業売却により大手企業や有名企業のグループ会社になることで会社の知名度を向上させ、就職・転職希望を増やすことができます。優秀な人材を増やすことができれば、事業の拡大や利益の増加が見込めます。

 

売却益を得られる

会社経営に行き詰まっており、廃業を考えている場合には、事業売却によって現金などの利益を得ることができるかもしれません。経営者が個人保証などの負債を抱えている場合でも、事業売却であれば負債も事業買収した企業に引き継がれることになるため、経営者は負債を解消し利益を得ることができます

また、創業者が新たな事業に乗り出したいと考えている場合に、システム開発事業を切り離して売却し、新たな事業を創出するための投資資金として確保するということも考えられます。

 

後継者問題の解決

経営者が高齢になり後継者を探そうとしても、先行きが不透明な中小のシステム開発会社だと後継者が見つからないという場合も多くあります。昔は経営者の子どもが会社を継ぐことが多かったのですが、最近では会社を継ぎたがらないことが多く、従業員の中にも継ごうとする人が少ないこともあり、後継者がいないために経営は問題なくても廃業する会社が増加しています。

この問題を解決するために、事業売却によって経営権を譲り渡すことで、事業買収した企業に自分の会社を継いでもらうことができます。もちろん、老後の資金を同時に確保することも可能です。

 

従業員雇用の維持

経営の悪化や後継者の不在によって会社が存続できなくなった場合、これまで会社で働いていた従業員も職を失うことになります。そこで、事業売却によって会社を売却することによって、従業員の雇用を守ることができます。また事業売却によって経営が安定すれば従業員の待遇を良くすることもできるかもしれません。

 

システム開発会社の事業売却を行う上での注意点


システム開発会社の事業売却を行う場合、売却する事業の強みを明確にする必要があります。事業を買収する側の企業も目的があって買収するため、強みを明確にできれば目的に合致した企業が見つかりやすくなります。

ここでは、買収する側の企業がよく気にする点について解説していきます。

 

従業員の人数とスキル

システム開発業界では、たとえ大手企業であっても人手不足に悩まされている企業が多くあります。そのため人材確保を目的とした事業買収が多く行われています。

その際、買収側企業が気にするのが従業員の人数とスキルです。新卒で人材を確保して育成するにはコストと時間が多くかかります。システム開発の経験がある従業員であれば即戦力として仕事を任せることができます。またIT技術が目まぐるしく進歩しているため、常に新しい技術に対応するためにも優秀な人材を多く確保しておく必要があるので、高いスキルを持つ従業員にも注目しています。

 

取引先の数や規模

事業買収によって顧客基盤を拡大することができれば、これまで関わりのなかった顧客との繋がりを作ることができます。これによって、これまで売却側企業が提供していた商品やサービスの他に、買収する側の企業の商品やサービスをセットで売り込み、事業規模を拡大できるチャンスが生まれます。また、事業売却した企業の顧客をそのまま得ることができるため、今まで事業を展開していなかったエリアに進出することができます。

 

開発力

新規事業の立ち上げのために事業買収する企業も少なくありません。また、これまで外注していたシステム運用などを内製化や、自社が不得手としている分野を強化することを目的とした事業買収も増加しています。

これらの事業買収では買収した会社がそのまま自社の新事業になったりするため、会社の開発力を重視する傾向にあります。特定の得意分野や独自性のある技術を持っている会社であれば買い手が見つかりやすく事業売却を有利に進めることができるでしょう。

 

事業規模

事業規模を大きくしてスケールメリットを得ることを目的とした事業買収の場合、買収側の企業は会社の事業規模を重視します。システム開発事業では、固定費が人件費に限られる一方で、事業規模が大きいほど多くの仕事を受注できるため利益が大きくなる傾向にあります

自社で事業規模を拡大するよりも素早く事業規模を拡大できるため、事業規模の拡大を目的とした事業売買も多く事業規模を重視する企業も多くなっています。

 

まとめ

いかがでしたか?今回は、システム開発会社をとりまく環境を解説したうえで、事業売却をする目的や、実際に事業売却をする際に注意しなくてはならない点を解説しました。

システム開発会社が属するIT業界自体は、慢性的な人材不足を抱えていながらも、市場の拡大とともに、今後一層成長する産業だと言われています。今回ご紹介した注意点を踏まえた上で、事業売却を検討し、会社を次のステージに進めてくださいね。

システム開発会社の事業売却のポイントとは?
システム開発会社を経営している方の中には、何らかの理由で事業を売却しようと考えている方がいらっしゃるでしょう。事業を売却するということは大きな決断であり、そこには注意すべきポイントがいくつも存在します。今回は、システム開発会社の現状を踏まえたうえで、事業売却の目的や注意点を解説していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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