2019年6月29日 土曜日

事業承継の事例から読み解く潮流《システム開発会社》

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

IT技術の進歩が著しい現代では、システム開発会社は必要不可欠な存在となっています。そのため、システム会社の需要は、現在でも急拡大しており、IT業界の売上は順調と言えます。

好調な業界ではあるものの、どの会社にも必ずと言って良いほど付きまとってくるのが「後継者不足」や「人材不足」でしょう。この記事では、これら後継者問題や人材不足を解決する一つの策としてM&Aによる事業承継についてご紹介します。

 

システム開発会社における事業承継の動き

IT業界とは

そもそもシステム開発会社が存在するIT業界のITとは、「information technology」の頭文字を取ったもので、日本語では「情報技術」と訳されます。コンピュータやインターネット、携帯電話などを使う情報処理や通信に関する技術を指します。

IT業界をさらに細分化すると、具体的には「ソフトウェア業界」、「Web・ネット業界」、「情報処理サービス業界」、「ハードウェア業界」、「通信サービス業界」などがあります。次々に新技術が生まれゆく現代において、IT分野は市場規模が大きく、今後も成長されることが見込まれます。

しかし、そんなIT業界では慢性的な人材不足が課題となっています。これは、日本の少子化に加え、IT業界が持たれているイメージが「過酷な環境。拘束時間が長い。その割に低賃金」ということでしょう。

一方で、現実には新人の時は確かにその傾向はありますが、経験と知識、ノウハウが積み重なってきたころには、高賃金が見込まれています。また、IT業界は、技術者不足なので、確かな技術力と知識、そしてノウハウさえあれば、IT業界内の他分野に転職することも容易で、やりがいのある仕事でしょう。とはいえ、ここまでのレベルに達する技術者が少ないことが課題となっているのも事実です。

この人材不足を解消するべく、2020年には日本で小学校にプログラミングの授業が必須になることもあり、今後はエンジニアの数も増えることが見込まれています。この世代に、IT業界に入ってもらえるよう環境を整えておくことも課題の一つと言えます。技術者不足を解消し、一人ひとりの負荷を減らし、良いイメージを持たれることが一番の解決策でしょう。

 

システム開発会社とは

IT業界がどのような業界かは理解ができましたが、システム開発会社の事業内容はどのようなものでしょうか。システム開発会社とはシステム(ソフトウェア)を開発している会社のことです。具体的には、次のような仕事をしている会社です。具体的な例は、パソコンのOSや、携帯やスマホのアプリケーションなどがあります。

 

<システム開発の流れ>

①要件定義

お客様が抱えている課題を解決するには、どのようなシステムがあれば良いのか、システムエンジニアがヒアリングしながら決めていきます。具体的な内容としては、どんな機能が実装されていればいいのか、どういったハードウェアのスペックで動くか、GUIの操作のしやすさなど決めていきます。この時に、おおよその作業工数や納期を決めておきます。

 

②外部設計

画面設計(実装するシステムに画面があるなら)と機能を実装するうえで必要な関数の入出力の部分を決めていきます。細かい内部の処理は次に説明する「内部設計」に書きます。ここでは、「これは、〇〇機能を実現するために実装する関数で、この値を関数に入れたら、この値が返ってくる」程度で良いでしょう。入出力の変数の型もこの時決定します。クラスという概念がある言語で開発する場合は、ここで、クラスにどんなプロパティ(変数)が必要か、メソッド(関数)が必要かも書いておきます。このクラスが継承しているクラスの場合は、どのクラスが親か、その旨も書きます。

ここで気を付けるのは、後々保守しやすいようなるべく分かりやすい構造にすることです。

画面設計は見た目の部分でボタンやリスト、ラベルなどを組み合わせて作っていきます。この時、気を付けることは、使い手(ユーザー)を考えて操作しやすい画面であるか、この画面で先にご紹介した、要件定義で定義した機能が抜け・漏れがなく実現できるか確認します。

 

③内部設計

外部設計で挙げた関数(クラスがあるならクラスに含まれるメソッドの中身、プロパティの初期値など)の内部処理をどう実現するか、アルゴリズムを書きます。アルゴリズムは保守性を高くするために、複雑なコードになりそうなものは避けます。クラスという概念がある言語の場合は、どのように値を持ってくるのか、どのタイミングでどういう処理を行うか、等を記載します。ここまでが、システムエンジニアの仕事です。

 

④プログラミング

ここまできたらプログラマーやシステムエンジニアが設計した要件定義や設計書に目を通し、外部設計と、内部設計通り動くシステムを作るべくコーディング(実装)していきます。忘れがちなのは、要件定義で定義した非機能要件(動き易いシステムであることやGUIが簡単なことなど、機能以外の要件)も守ることです。コーディングの際、次のテストをしやすい環境にするために、途中経過の入出力も確認できるようなコーディングをしておくと保守しやすいシステムになります。また、分かりづらいコーディングの部分はコメントを残しておくと、後で見た時に自分も他人が見た時も助かります。

 

⑤テスト

まずは、関数単体できちんと動くかをプログラマーが手元で確認します。関数単体で正常動作することを確認します(単体テスト)。その後システムエンジニアが一機能単位(関数の集まり)で入出力等、合っていることを確認します(結合テスト)。その後システムエンジニアがシステム全体を本番環境で正常稼働するか確認します(統合テスト)。不具合(バグ)が出たら、どこの処理が原因か特定し、修正します(デバッグ)。不具合は重要な機能から修正することが大切です。軽微な不具合は、優先度を低くし、後のバージョンアップで改修しましょう。

 

⑥引き渡し

テストが充分にされたら、お客様にシステムを提出します。お客様が納得いくシステムなのかを見てもらいます。使い勝手が悪い、要件定義で定義した機能が実装されていない、または、イメージと違った場合は、コーディングし直します。運用する前に、営業とシステムエンジニアが現場に行き、操作イメージ等をプレゼンするところが多いです。

 

⑦運用・サポート

引き渡しが無事に終わったら、お客様がシステムを運用してみます。その際、不明点があったり、不具合が見つかったりした場合はその都度対応します。不具合改修や追加機能を実装した場合はバージョンアップ版として、お客様にお渡ししてインストールしてもらいます(営業やシステムエンジニアが現場に行って行うこともある)。システムが難しくてなかなか運用出来ていない場合は、営業とシステムエンジニアが現場に行き、研修会を行う場合もあります。主なサポート方法は、電話やメールであったり、パソコンをリモートで操作し、説明したり、実際現場に行って直接教えたり、という形があります。

 

システム会社における事業継承とは

システム会社、特に中小企業のシステム開発会社において、後継者不足問題は常に課題として発生しています。大手企業の場合は、そのブランド力もあり、後継者を希望する人が多い一方で、中小企業はブランド力がなく、後継者を希望する人も少ないのが現状です。

中小企業のシステム開発会社のオーナーが年齢的を理由に引退を考えているならば、なおさら後継者不足は深刻化します。後継者がいなければ、結果として事業の継続が厳しくなるでしょう。これを避けるために後継者不足は早めに対策をしておきましょう。事業継承により事業を継続させる選択肢を選んだ場合は、他の会社に事業を続けてもらえます。良いサービスを提供しているのは大手だけではなく、中小企業の中にもあると考えると、業界全体で後継者不足問題を解決していくことが最も良い対策になりえる、と言えるでしょう。

 

システム開発会社における事業承継の動き

前の章で述べた通り、システム会社の業界は、深刻な人材不足と後継者不足に悩まされています。一方で事業承継によりその問題は解決することもでき、事業承継のニーズは高まっています。システム開発会社の事業継承は、後継者問題を解決するだけでなく、うまくいけば、人材不足解消や資金調達など良い事ばかりです。今は中小企業が中心に事業継承を行っていますが、大手も後継者不足や人材不足は大きな問題なのは変わりないので、今後は、大手の事業承継も増えていくことでしょう。

 

最近のシステム開発会社の事業承継事例

ソースネクスト株式会社による株式会社筆まめの買収

ソースネクスト株式会社は、2017年2月6日、株式会社筆まめの全株式を取得し、子会社化する基本合意を、株式会社筆まめの株主である株式会社ソフトフロントホールディングスと締結しました。

この事業継承により、ソースネクスト株式会社は筆まめの全製品を保有することになり、ソースネクスト社の販売力や企画力と、筆まめの特徴であるソフトウェアの開発力、顧客を生かした経営基盤の強化を目指しています。

 

株式会社アイオスによるイーテクノ株式会社の買収

アイオスは金融系システムの開発、運用保守を中心に、様々な領域で事業を展開している会社です。イーテクノは、Webの技術や組込みの技術をメインに、ソフトウェアの設計・開発を手がける会社であり、金融や空港などのシステム開発が得意な企業です。アイオスはこの買収により人材不足の解消と事業領域の拡大を見込んでいます。

 

株式会社土木管理総合試験所による株式会社アイ・エス・ビーの買収

土木管理総合試験所は建設コンサルタント会社として、土質や地質の調査、や環境調査試験などの業務をワンストップで手がける会社です。一方のアイ・エス・ビーは土木測量設計プログラムパッケージの開発や販売をしている会社でした。この買収によって、土木管理総合試験所はIT技術の強化を図るとともに、生産性の向上や、ワンストップサービスの拡充が見込めるとしています。

 

システム開発会社の事業承継を実施するうえでのポイント

つづいて、システム開発会社が事業承継を実施するうえで、チェックしておくべきポイントをご紹介します。

 

自社に独自性があるか

まずは、買い手にメリットが出るような自社の特徴を考えましょう。独自性がある商品やサービスがあることで、競合他社がいても優位に立ち、利益を上げられるからです。逆に独自性がないと、買い手も付かないことが多いです。理由としては、その分野で競争が難しく、長期的には利益を上げられないと判断されてしまうからです。

 

優秀な技術者がいるか

システム開発会社が他のシステム開発会社を買収する例を挙げると、優秀な技術者がいることが決め手となって取引が成立することも少なくありません。優秀な技術者は、数ではなく質が求められます。いくら技術者の数が多くても、質が悪ければ意味がありません。逆に新人でも積極的に学ぶ姿勢が出来ている人たちならば、将来性はあります。

 

将来性があるか

三つ目に、その事業の将来性が見込めることをアピールしましょう。研究段階の技術や、開発中の商品やサービスに高い価値があるとより良いでしょう。現状の取引の数が多い事や、規模の大きさなども前面に押し出しましょう。システム開発は、研究段階を経て、開発し、商品化やサービス化にこぎつけます。すぐに利益が出るわけではありませんが、それを差し引いても長い目で見て資金を割いても良い、という答えがもらえるよう、しっかりとメリットを説明しましょう。

 

社員に柔軟性と適応性はあるか

IT業界は常に新技術を取り入れなければならないので、柔軟性、適応性が高い従業員であることが良求められます。常に最新技術が得られるよう、展示会に行ったり、学会に参加したりして、情報を集めておきましょう。固定概念に縛られず、アイディアが出せる社員がいることがアピールできると良いでしょう。

 

売るタイミングは適切か

最後に、事業の価値が高いうちに後継者を見つける、という視点も必要です。現在は高く見積もってもらえる技術でも、来年には陳腐化している可能性すらあります。それほど昨今のIT技術の変化は著しいと言えるのです。タイミングを見計らうのは難しいですが、経営者の手腕の見せ所とも言えます。

 

まとめ

IT業界の属するシステム開発会社の事業承継についてご紹介してきました。システム開発会社だけではなく、IT業界全体で後継者不足が発生しています。これは、少子化に伴う入社数減少という理由と、システム開発は「過酷、その割に報酬が低い」などのイメージがついており、なかなか社員が入ったところで長続きしない、という現状があります。事業承継を行うことで、自分が築いた商品・サービスが別の会社に受け継がれ、発展していくことが見込まれます。会社の行く末を案じるのであれば、事業承継という選択肢を考えてみましょう。

事業承継の事例から読み解く潮流《システム開発会社》
システム開発会社は好調な業界ではあるものの、どの会社にも必ずと言って良いほど付きまとってくるのが「後継者不足」や「人材不足」です。本稿では、これら後継者問題や人材不足を解決する策として使われている、M&Aによる事業承継についてご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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