2019年5月22日 水曜日

中小企業のM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

最近では、M&Aの件数が増加し、中小企業でも一般的なものになりつつあります。中小企業のM&Aは大企業のM&Aとは目的や時期が異なることが多く分からないことも多いかもしれません。そこで今回は中小企業のM&Aについて解説していきたいと思います。

 

中小企業のM&A

これまでM&Aというと、大企業や海外企業によるものというイメージが有りましたが、最近では中小企業による事業承継を目的としたM&Aが増加しつつあります。

これは、日本の少子高齢化による人口減少に理由があります。人口の減少に伴って消費者も減少し、国内市場をメイン市場としている中小企業の経営は悪化しつつあります。同時に、労働人口の減少も深刻になっており従業員不足、後継者不足に陥る企業も増加しています。たとえ親族や社内に後継者候補がいた場合でも、株式の承継による税の負担や、経営者の個人保証・担保の引き継ぎによる負担を考えて承継をためらう経営者も少なくありません。このような背景から中小企業による事業承継を目的としたM&Aが増加しつつあります。

 

国内のM&A実施件数は2012年から2017年にかけて1.65倍に増加しています。これらは大半が国内企業同士のM&Aであり、取引額が大きい1000億円以上の契約はわずか1%で、100億円未満の規模の小さな取引が45%を締めています。また業種に関しても、特定の業種だけでなく、製造業・卸売業・小売業・運輸業・建設業・医療福祉業と様々な業種でM&Aが行われています。

 

経営者の引退に伴い企業を廃業してしまうと、その企業で保有している技術やノウハウ、顧客や取引先との関係をすべて失うことになります。また、従業員の雇用が失われることも問題になります。M&Aによる第三者への事業承継は今後増加していくと思われます。

 

中小企業のM&Aを行う理由は?

中小企業がM&Aを行う理由にはどのような理由があるのでしょうか。それぞれの理由とその背景について解説してきます。

 

事業承継のため

多くの中小企業において、経営者が高齢化し、後継者の不足がより顕著になりつつあります。廃業を検討している中小企業のうち、半数以上の企業が後継者不足を理由としています。その中で経営者の子供があとを継いでくれる企業は4割程度しかありません。その結果M&Aによって第三者に売却する、または廃業にするというケースがあります。経営状況が悪くない企業を手放すことは勿体無いように思えますが、親族や社内に後継者がいない場合にはM&Aによる事業承継が選択されます

M&Aによって企業を売却することで、事業が継続され、従業員の雇用を確保することができます。また、これまで培ってきた技術やノウハウが無駄になることもありません。さらに、経営者は企業を売却することで売却益を得ることができ、引退後も余裕のある生活を送ることができるというメリットもあります。このような理由から事業承継も目的としたM&Aは年々増加しています。

 

コア事業への集中のため

多くの中小企業では、労働力や資金といった経営資源は限られています。企業にとって重要な事業とそうでない事業を選別し、業績の良い事業に資源を集中させることも必要です。企業の中で維持する必要性が薄い事業を換金し、その資金を核となる事業に投入することを目的としたM&Aを行う企業も少なくありません。

さらに、事業数を少なくすることで労働力や設備といった経営資源を核となる事業数に集中させることもできるため、想定以上の利益をもたらす可能性もあります。事業をやめた場合には、その事業の従業員に多額の退職金を支払う必要があります。なので、事業を手放す際にはM&Aを検討してみましょう。

 

資金調達のため

新しい事業を始める、業績が悪化している事業を改善するための資金を調達するため事業を売却するケースもあります。また、資金繰りに苦しくなった企業が他に売るものがなく、やむを得ず事業を売却する場合もあります。資金調達を目的としたM&Aでは、コア事業への集中を目的としたM&Aと異なり、業績が良い事業を売却する場合もあります。その結果収入源を失い企業全体の経営が悪化する可能性もあるため注意しましょう。

事業の売却によって得た資金は有効活用することができなければあまり意味がないため、資金調達を目的としたM&Aを本当に行うべきなのか注意しましょう。

 

生き残りのため

たえず市場環境が変化し競争が激化している現代において、大企業に経営資源で劣っている中小企業が生き残ることは難しくなっています。優れた技術やノウハウを持っていたとしても、経営資源が豊富な大企業に同じことをされると中小企業としては厳しい状況に追い込まれてしまいます。

そこで、大企業の傘下に入り生き残ることを目的としたM&Aが有効になっています

大企業の傘下に入ることで潤沢な経営資源と知名度・ブランド力が手に入るため、生き残る事ができる可能性が高まります。

 

中小企業のM&Aを行うタイミングは?

M&Aの売却価格は時期によって大きく変わってきます。ここでは、売却を行うべきタイミングについて解説していきます。

 

自社に収益性があるとき

M&Aでの企業や事業の売却金額は、売却される企業や事業の収益性に影響されます。

収益性が低い場合は、企業の価値が低いと判断されてしまい売却金額が下がってしまいます。また、収益性の低い企業を買おうとする買い手は少なく、売却できるとしても安く買収されてしまいます。そのため高く売りたいのなら収益性が下がりきった状態ではM&Aを行うべきではありません。買い手側企業が現れず、事業売却のチャンスを失うことになりかねません。

自社の収益性が高いときにM&Aを行うのが、最適なタイミングといえるでしょう。

 

経営意欲が下がる前

経営者の経営意欲が下がると、企業全体に悪影響を与えてしまいます。

例えば、
・意欲の低下が従業員に伝わり、従業員のモチベーションも低下してしまう
・消極的な姿勢を見せるようになり、営業成績が落ち込む
・顧客が雰囲気を感じ取って契約を反故にする
などが挙げられます。

このような状態になると企業の収益性は低くなり、M&Aでの売却額も下がってしまいます。そのためM&Aは経営意欲が下がる前に行動を起こすことが重要です。M&Aを検討し始めたら早めに行動するように意識しておきましょう。

 

好景気のタイミング

国内の景気が良いときにはM&Aの売却金額が高くなる傾向にあります。買い手側の企業も資金が増えているので、積極的に買収を行うようになるので買い手側の企業を見つけやすくなります。

ですが、好景気であったとしてもすぐさま売却すれば良いというわけではありません。好景気になってすぐに売却すると、その後景気が更に良くなった場合に後悔してしまいます。しかし、景気が更に良くなるのを待っていると売却のタイミングを逃してしまい景気が停滞してしまう可能性もあります。

そのため、普段から国内の景気をよく観察し、景気に合わせて売却のタイミングを見極める必要があります。

 

業界再編時

業界の再編が行われる時期には積極的にM&Aが行われるようになります。大手企業によるグループ化や中小企業同士の持株会社の増加によってM&A市場は売り手市場になるため、いい条件でのM&Aを行いやすくなります。

ですが、業界再編はそれほど長く続くものではありません。大手企業が寡占化を進めると中小企業には買い手が付き難くなり、大手企業同士が統合することで業界再編の動きは止まってしまいます。業界再編の動きが止まれば、買い手側の企業が減少してしまうため売却が難しくなります。そのため適切なタイミングを見極める必要があります。

自分の企業が属している業界の情報を収集し継続的に分析しておきましょう。

 

中小企業のM&Aを実施するのは誰か?

中小企業のM&Aを実施するのは、新規事業参入・事業の多角化・技術力の向上・規模の経済性を目的とした企業です。

それぞれの企業がM&Aを行う目的について解説していきます。

 

新規事業参入を目的とした企業

新しい事業を展開することでリスクを分散させることを目的とした企業です。

この場合売り手側企業と買い手側企業は別業界の企業になります。

複数の事業を展開することによって、特定の事業の業績が悪化した場合でも別事業で補完することができます。新規事業を展開する際、M&Aによって新規事業を展開すると、売り手側企業の従業員やノウハウを得ることができるため、一から展開するよりも素早く事業を展開することができます。

 

事業の多角化を目的とした企業

すでに展開している事業に関連する分野の事業を買収することで事業を強化し、シナジー効果を得ることを目的とした企業です。

この場合売り手側企業と買い手側企業は関連業界の企業になります。

製造業を行なってきた企業が販売店を買収することで製造から販売まで自社で一貫して行うことができるようになります。これによって企業間でかかっていた手数料や販管費といったコストを削減することができます。

 

技術力の向上・規模の経済性を目的とした企業

すでに展開している事業と同じ業界の企業を買収することで、その企業が持っている技術を得たり、事業規模を大きくしたりすることで、規模の経済性を活用することを目的とした企業です。

この場合売り手側企業と買い手側企業は同じ業界の企業になります。

同じ業界内の企業を買収することで売り手側企業が持っていたシェアの獲得も見込めるためシェアの拡大を目的としている場合もあります。

 

中小企業のM&Aの相談先は?

M&Aの相談をする場合誰に相談すればいいのでしょうか。

M&Aの相談先には、税理士や会計士、銀行や証券会社などの金融機関、M&A専門の仲介会社の3つがあります。それぞれの相談先ごとにメリット・デメリットを解説してきます。

 

税理士や会計士

・メリット
税理士や会計士に会社の決算業務を委託している場合、その税理士や会計士は会社の経理面をよく知っています。また、顧問業務などで信頼関係が出来上がっている場合も多いため、安心して相談することができます。

・デメリット
税理士や会計士はそれぞれが持っているネットワークや関与先の範囲でしか案件を検討することができません。そのため広い範囲からM&Aの相手を探すことができません

 

銀行や証券会社などの金融機関

・メリット
金融機関は会社の経理面をある程度理解しています。更に、広範囲に取引先を持っておりそのネットワークを活用することができます。また、金融機関によってはM&Aに関する専門の部署があるため、専門の知識と経験を活用することができます。

・デメリット
金融機関では手数料が高く設定されているため、小規模なM&Aを行なった場合には手数料の負担が重くなります。また、決済などの対応に時間がかかることもあり、迅速な対応に期待できない場合もあります。

 

M&A専門の仲介会社

・メリット
M&A専門の仲介会社は専門の知識と経験も持っているため、案件の相談から契約の締結まで一貫して対応することができます。幅広いネットワークを持っており、素早く最適な相手を探すことができます。また、金融機関よりも手数料が安いため、比較的安価に相談することができます。

・デメリット
あくまで仲介業なので、買い手側企業との交渉は自分で行う必要があります。また、買い手側企業もできるだけ安く買収したいと考えているため利益相反の関係になってしまいます。不利な価格算定が行われていないか確認するために、第三者から価格算定してもらうと良いでしょう。

 

まとめ

中小企業のM&Aについて解説してきましたがいかがでしたでしょうか。中小企業のM&Aは今後増加を続けていくと考えられます。M&Aには時間がかかるため、できるだけ早くから準備することが大切です。

これまでM&Aを検討したことのなかった方は、会社が抱えている問題を解決することができるかもしれません。一度検討してみてはいかがでしょうか。検討したものの断念した方も、中小企業を対象にした仲介会社や中小企業を買収しようとして言う企業も増加しているので、もう一度検討してみてはいかがでしょうか。

中小企業のM&Aを実施する前に考えておきたいこと
最近では、M&Aの件数が増加し、中小企業でも一般的なものになりつつあります。中小企業のM&Aは大企業のM&Aとは目的や時期が異なることが多く分からないことも多いかもしれません。そこで今回は中小企業のM&Aについて解説していきたいと思います。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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