2018年12月3日 月曜日

M&Aの事例から読み解く潮流《飲食業界》

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

「飲食店の後継者がいないので、事業承継の一つとしてM&Aを考えているけれど、実際にどんな事例があるの?」

こんな疑問をお持ちではないでしょうか。

飲食店のM&Aを行ううえで、飲食業界の潮流やM&Aの具体的な事例を押さえておくことは大切です。

この記事では、飲食業界におけるM&Aの動き、最近の飲食業界のM&A事例、飲食店のM&Aを実施するうえでのポイントについて解説します。

 

飲食業界におけるM&Aの動き

買い手が同じ場所で飲食店をやる場合、設備や内装だけではなく、従業員や経営ノウハウ、顧客や取引先との関係といった「のれん」(無形資産)まで引き継ぎたいというニーズから、近年では飲食店のM&Aが増えてきています。

M&Aでは「のれん」分が評価額にプラスされるため、単なる居抜き売却よりも店を高く売れる可能性があるのです。

こうした背景から、飲食業界では近年M&Aが活発に行われています。

M&Aの形態としては、次のようなパターンがあります。

  • 飲食業、同業態の2社によるM&A
  • 飲食業、異業態の2社によるM&A
  • 異業種による飲食店のM&A
  • 投資ファンドによる飲食店の株式取得

「飲食業、同業態の2社によるM&A」には、ウェンディーズによるファーストキッチンの買収、「和食さと」を運営するサトフードサービスによる定食チェーン「めしや宮本むなし」の小会社化、回転寿司業界1位のあきんどスシローと5位の元気寿司の資本業務提携などが挙げられます。

同業態どうしのM&Aは、出店エリアの拡大や物流・購買などの効率アップなど、目的が分かりやすいですね。

一方、同業態どうしのM&Aよりも、最近は異業態の2社によるM&Aが増えてきています。

吉野家による有名ラーメン店「せたが屋」の買収、小僧寿司による「カレーハウススパイシー」運営のスパイシークリエイトの子会社化、「丸亀製麺」運営のトリドールHDによる「立ち飲み晩杯屋」運営のアクティブソースのグループ化(後述)などが挙げられます。

これは、単一業態で食中毒などのトラブルが発生するとイメージダウンなどのリスクが大きいことから、単一業態よりも複数業態にしたいという多角化経営推進の表れです。

 

また、M&Aを行うことで、異業種が飲食業界に進出する事例があります。

ホテル事業がメインのレンブラントHDによる「ドムドムハンバーガー」をオレンジフードコートからの事業譲渡(後述)、エネルギー事業がメインのミツウロコグループHDによる「元町珈琲」運営のスイートスタイルとの株式譲渡契約締結などが挙げられます。

こうしたM&Aの波が、中小企業にも広がってきているのです。

 

最近の飲食業界のM&A事例

それでは、最近の飲食業界におけるM&A事例を具体的に紹介していきましょう。

 

高品質を誇る立ち飲み居酒屋が、大手飲食チェーンのグループ傘下に

大きなニュースとしては、2017年7月に、「丸亀製麺」を運営する株式会社トリドールホールディングスが、「立ち呑み晩杯屋」を運営する株式会社アクティブソースの株式を取得し、グループ化することを発表しました。

晩杯屋は立ち飲み居酒屋で、2018年4月時点で39店舗を展開する居酒屋チェーンです。

晩杯屋の経営方針は「誰でも気軽にまずは一杯、どこよりも旨く、どこよりも安く、それが”下地屋”としての腕の見せ所」です。

“下地屋”というのは、一軒目で軽く呑んで食べて二軒目に送り出すという立ち飲み居酒屋ならではの業態で、呑みの下地をつくるという意味があります。

定番メニューの煮込みは130円程度で、安い・旨い・早い、提供スピードにもこだわっていました。

晩杯屋の商品力は業界内でも高評価で、買収側のトリドールHDは低価格メニューの充実と高品質、鮮度の高さ、それでいて客単価は安い点に感銘を受けたことを、M&Aの背景に挙げています。

晩杯屋を運営するアクティブソースの金子社長が、自社の評価を把握するためにM&A仲介業者に登録したところ、業者経由でトリドールHDとの縁ができM&Aにつながりました。

アクティブソースは外食アワード2016を受賞するほど実力のある会社でしたが、中小企業ゆえに経営資源の不足に苦しんでいました。

トリドールHDの傘下に入れば、企業規模拡大によるスケールメリットで仕入れコストや原価率を抑えることができ、全国展開も加速します。

晩杯屋の経営はトリドールHDから独立しているため、M&A後もアクティブソースの上場を目指しているそうです。

 

異業種であるホテル事業会社が、ハンバーガーチェーンをM&A

トリドールHDとアクティブソースの事例は同業者どうしのM&Aのため、比較的イメージしやすいでしょう。

次は、近年増えてきている、異業種による飲食店のM&A事例を紹介します。

2017年7月、ダイエー傘下の株式会社オレンジフードコートは、日本最古のハンバーガーチェーンとして知られる「ドムドムハンバーガー」を、ホテル事業会社の株式会社レンブラントホールディングスに売却しました。

レンブラントHDは、ホテル事業・不動産事業・再生事業などを展開しており、ドムドムハンバーガーを譲り受けた理由として、ハンバーガーの国民的人気の高さや、ダイエーなどの店舗内展開が多く、知名度があり根強いファンがいることなどを挙げています。

 

レンブラントHDは、この買収によって異業種である飲食業界に進出しました。

「お好み焼きバーガー」の20年ぶりの復活に加え、SNSで歴代メニューの復活投票を行った結果1位の「ドムミートバーガー」復活など、人気メニューの復活や、サービス提供時間や使用食材の見直し、既存店舗の改装、ロゴの刷新などを行い、2021年までに19店舗の新規出店を目指しています。

 

ゴーゴーカレーが、全国の飲食店に事業承継を呼びかけ

次は、後継者不在で悩む中小店に参考になりそうな事例を紹介します。

 

株式会社ゴーゴーカレーグループが、後継者不足で廃業を考えている全国の飲食店に事業承継を呼びかけています。

ゴーゴーカレーは、濃厚なルーの上にソースがかかったカツ、キャベツの千切りの付け合わせが特徴的な「金沢カレー」の専門店チェーンです。

募集領域は「全国各地で愛されているカレーの名店」「ゴーゴーカレーおよびインド料理の店舗として運営ができる飲食店」「レトルトカレーを製造するための食品製造・加工工場」の3つです。

ゴーゴーカレーは2017年から既に、後継者不在のカレー店をM&Aによって事業継承する試みを始めていました。

最初の店舗となったのが、石川県で最も歴史あるインド料理点「ホットハウス」です。

ホットハウスも後継者不在で悩んでいました。

子どもはいるけれど継いでほしいとは考えず、従業員も外国人が多いことから経営者としての素質がある人を見つけられなかったのです。

そこで、自らがホットハウスに20年以上通った常連である、ゴーゴーカレーの宮森社長がM&Aを提案します。

M&A後は、金沢のゴーゴーカレーとホットハウスの従業員による食事会や交換研修など、新たな人脈と交流が生じています。

ゴーゴーカレーは、ホットハウスの味を継承したまま、国内外での店舗拡大を検討しているそうです。

 

飲食店のM&Aを実施するうえでのポイント

ここまで飲食業界のM&A事例を紹介してきましたが、飲食店のM&Aを実施するうえでのポイントには次の5点が挙げられます。

 

M&Aの目的を明確に

最初に、どうして飲食店のM&Aを行うのか、目的を明確にしましょう。

通常、M&Aの目的には「事業承継」「事業の集中と選択」「資金調達」「生き残り」などが挙げられます。

まず、「事業承継」とは、飲食店の後継者がいない場合、M&Aを行うことで事業を承継するというものです。

地域で愛される飲食店は、既にオーナーの所有物を超えて、地域の財産になっています。

M&Aを行うことで、従業員の雇用確保や、特徴的なメニューや技術・ノウハウなどの承継が行われるのなら、社会的損失も避けられます。

先ほど紹介した中にも、県で最も歴史のあるカレー老舗店がM&Aによって店を承継できた事例がありました。

次に、「事業の集中と選択」とは、採算が取れない店舗を売却して、採算が取れる店舗に経営資源を集中させることです。

「資金調達」は、新事業のための資金や資金繰りなどのために店舗を売るといったものになります。

「生き残り」は、例えば大手の飲食店チェーンが近くにできて経営不振に陥ったため、異業態のグループ傘下に入って資本を注入してもらい生き残りをかけるといったものです。

M&Aをなぜ行うのか、その目的を明確にし、目的実現のための戦略を立てることで、M&Aが成功する確率を上げることができます。

 

過去のM&A事例をチェック

M&Aの目的を明確にしたなら、過去に同様の目的でM&Aを行った事例がないかをチェックしましょう。

しかし、飲食店のM&A事例をインターネットだけで探すのはなかなか困難です。

そのため、飲食業界に詳しく、過去のM&A事例を豊富にストックしているM&Aアドバイザーに相談するのがおすすめです。

 

買い手のメリットを意識

M&Aの目的を明確にしたら、自店を買うことで買い手がどんなメリットを享受できるのか、買い手側の目的も考えましょう。

通常、「事業の多角化」「店舗・事業の拡大」などが、M&Aにおける買い手のメリットとして挙げられます。

「事業の多角化」は、買い手が異業態や異業種の飲食店を買うことで、飲食事業を多角化したり新規進出したりする事例などが挙げられます。

先ほど解説したような、牛丼チェーンによるラーメン屋の買収、回転寿司チェーンによるカレーハウスの子会社化などです。

「店舗・事業の拡大」は、買い手が同業態の飲食店を買うことによる、オリジナルメニューの吸収やノウハウ・技術の強化、出店エリアの拡大などが挙げられます。

いずれの場合も、自店が長く地域に愛された店であったり、オリジナルなメニューや経営スタイルを確立したりしている場合は、M&Aも容易なものとなります。

買い手がM&Aをどんな目的で行い、自店を売却することでどんなメリットを与えることができるかを意識して、目的やメリットに合うように自店の事業価値を伝えるようにしましょう。

 

タイミングを計る

M&Aでは、買い手のメリットを意識するとともに、タイミングを計ることも大切です。

M&Aは、親族内承継ほど時間はかかりませんが、それでも売り手の希望を汲める買い手とのマッチング、資料の準備、交渉などに時間を要します。

経営不振やオーナーの健康問題などで身動きが取れなくなる前に、準備を早めにしておきましょう。

そして、飲食業界におけるM&Aの動きを踏まえたり、利益率を上げるなど財務内容の健全化を図ったりして、できるだけ事業価値の高いタイミングでM&Aを行いたいものです。

 

M&Aの専門家を活用

タイミングを計ってM&Aを行うには、専門家であるM&Aアドバイザーを活用することが必要です。

飲食業界に精通したM&Aアドバイザーに相談すれば、最近の飲食業界の潮流やM&Aの具体的事例などについて情報を入手できます。

加えて、M&Aの目的に合った戦略立案や、自店の事業価値を示すデータや資料の準備も依頼できます。

 

まとめ

飲食店のM&Aを行うには、目的実現のための戦略を立てることが必要ですが、素人には難しい作業になるため、専門家のM&Aアドバイザーに相談することをおすすめします。

成果報酬型のM&Aアドバイザーなら、相談無料です。

インターネットで気軽に相談できるので、活用してみてはいかがでしょうか。

M&Aの事例から読み解く潮流《飲食業界》
「飲食店の後継者がいないので、事業承継の一つとしてM&Aを考えているけれど、実際にどんな事例があるの?」
こんな疑問をお持ちではないでしょうか。
飲食店のM&Aを行ううえで、飲食業界の潮流やM&Aの具体的な事例を押さえておくことは大切です。
この記事では、飲食業界におけるM&Aの動き、最近の飲食業界のM&A事例、飲食店のM&Aを実施するうえでのポイントについて解説します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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