2018年12月3日 月曜日

飲食店の事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

飲食店の経営権を手放す方法は様々です。

閉店する際には、従業員の解雇や不動産の解約などの手続きもあり、多くの手間と費用を伴います。

一方で閉店はせずに、店舗とその経営権を別の人や会社に売却する事業譲渡という方法もあります。飲食業界における事業譲渡は珍しいものではありません。

ただし、メリットも多い反面、独特の複雑さを伴うという実態もあります。事業譲渡を検討する際にチェックしておいたほうが良い項目について見てみましょう。

 

飲食店の事業譲渡を検討してみては?

動きの激しい飲食業界ですが、事業を成長させることができている方、あまり思わしくない方、それぞれ事業譲渡に興味があるのではないでしょうか。

  • 他のビジネスに集中するために飲食事業を手放したい
  • 成績の芳しくない店舗が重荷になってきているが、閉店するには、従業員の解雇等の諸問題が気がかり
  • 意欲や健康上の問題から引退を考えているが、後継者が見当たらない

などなど、事業譲渡の理由は様々考えられると思います。

こういった方が検討すべき解決策が事業譲渡です。

事業譲渡であれば事業をとめずに、新経営者にさらなる成長を託すこともできます。

いうまでもなく譲受側は有望な事業を自ら育てる手間なく手に入れることができます。

他業種からの参入の場合もよい足掛かりになるでしょう。

後継者に悩んでいる場合も、事業を受け継いでくれる人を広く探すことができます。

不採算店も閉店してしまうより、解決のビジョンを明確に持っている新経営者に託したほうが従業員の雇用を守ることもつながるでしょう。

会社全体を売却する株式譲渡と異なり、一部の事業を切り離して売却する事業譲渡は飲食業界では多い選択肢です。

上記の様な悩みを持たれている方は前向きに検討してみてはいかがでしょうか。

 

飲食店を事業譲渡するメリット

急に事業譲渡といわれても、本当にはじめていいものか、迷われる方が多いと思います。

まずは、事業譲渡を検討したい人のために事業譲渡の具体的なメリットを整理していきましょう。

 

現金を得られる

事業譲渡を行う場合、その事業を引き渡すことへの対価が発生します。

対価の算定基準は店の不動産としての条件、売上や利益率、将来性、ブランド、料理やサービスの質に至るまでさまざまな要素が左右します。

直近では、スピード感をもって飲食業界での事業立ち上げを行いたい経営者も増えています。

大規模から小規模までさまざまなM&Aが行われる中、譲渡側にとっても有利な条件が付くケースも多くあります。

さまざまな事情により当座の資金が必要な場合、一部店舗や業態を事業譲渡という形で売却して現金化することができます。

また、十分成功している事業を譲渡する場合は、事業成長の成果を報酬として確定し、獲得することができます。

事業譲渡から得られる現金は多くの場合、一番のメリットでしょう。

 

後継者問題の解決

飲食業界において、人手不足の問題は深刻です。

経営が順調でも、人手不足により閉店にまで追い込まれる店の話をお聞きになった方も多いのではないでしょうか。

後継者についても同様の状況で、身内からの後継者探しは困難を極めます。

子世代の数が減少し、子のうちのだれかが継いでくれるだろう、という期待ができにくくなってきたこと、親世代も無理に継がせようという意向を持たなくなってきていることもあります。

 

人口の減少傾向にある日本ですから、これからもこういった状況は変わらないことが予測されます。

むしろ、後継者難の状況はより厳しくなることが予測されます。

後継問題解決のためにも事業譲渡の検討は早めに進めたいところです。

 

店舗や事業の発展

事業拡大が見込める店舗の選択肢としても、事業譲渡が挙げられます。

経営実態に追い風を感じているものの、店を増やす人的資源や資金の手当てがつかない場合、余力のある事業者に事業を託して発展を望むということが考えられるのです。

経営者の中には、事業全体ではなく、創業地域での事業は自分の手元に残したうえで、成長が見込まれる地域の事業を切り離して譲渡するという選択をとる方もいます。

 

雇用維持

事業を縮小したり撤退したりする際に、閉店してしまうことと比べた事業譲渡の大きなメリットに雇用の維持があります。

現経営者が経営を離れるときに事業譲渡を選択することで、単に従業員の生活を守るだけでなく、従業員のスキルを途切れさせずに済みますし、営業期間を通じて従業員たちの中に蓄積された無形のノウハウが失われることを防ぐこともできます。

また、解雇を行う場合は諸手続きに時間をとられるだけでなく、精神的なダメージも負うことになります。

 

不採算店舗、部門の切り離し

事業全体の状態はそれほど悪くなくとも、一部地域、店舗、業態が思うように売上、利益を出せていないというケースは良く見られます。

このような場合、足かせになっている店舗から解放されたいと考えている現経営者にとって、事業譲渡が解決策になることがあります。

不採算部門を切り離すことでコストを下げ、事業の順調な部分に経営資源を集中させることで売上、利益の増加を図ります。

事業譲渡で得る現金もその助けになることは言うまでもありません。

不採算部門となっている店舗でも、その店舗の買収に興味を持つ経営者はいます。

スピーディーに事業を立ち上げたい、飲食業界に異業種参入したいと考える経営者にとっては、欲する事業を不動産だけでなく、従業員やノウハウまで含めて丸ごと手に入れることができるためです。

また、買収を行う経営者・企業は解決のための明確なビジョン・独自の施策を持っていることが多くあります。

 

飲食店を事業譲渡する際のチェック項目

ここまでは、事業譲渡のメリットを見てきました。

一方で事業譲渡は手続きも複雑で、進め方を誤って、損失を被る場合もあります。

続いて、事業譲渡を本格的に検討する際のチェック項目をご紹介します。

 

譲渡の目的

事業譲渡に限らずどのプロジェクトでもそうですが、成功させるためには目的を明確にしておかなければなりません。

譲渡の目的は、譲渡計画書を作成する際も冒頭に持ってくるべき検討事項です。

現金を得ることが一番大切であれば現事業の方向性が変化することを甘受しても高く買ってくれる相手を探すことが大切です。

逆にのれんを継続することが大切なのであれば、売値を下げてもコンセプトを守ってくれる相手に譲渡する方がよいでしょう。

事業拡大が目的であれば譲渡先の経営能力や体力を重視します。

譲渡目的により以下で検討する他のチェック項目の内容も大きく変化してきます。

 

譲渡先の選定方法

事業譲渡の目的に沿った譲渡先を検討します。

譲渡先は親類、従業員、知人の紹介で知り合うケースもあれば、完全な第三者から引き合いが来るケースもあります。

飲食業界は横のつながりが強く、事業譲渡となる場合も身内や紹介による場合が多いのですが、どちらも一長一短と言えます。

事業譲渡を検討していることが多くの人に漏れてしまうと、譲渡条件が大幅に悪化するだけにとどまらず、譲渡が成立しない、のれんが毀損し現在の経営にも悪影響を与えるなど、ダメージは計り知れません。

紹介により譲渡先を探す場合は秘密が漏れる可能性が高くなることを覚悟する必要があります。

特に現金重視といったドライな目的の場合は秘密が漏れにくく、しがらみを気にしなくてよい第三者への譲渡の方がよい結果を出せることもしばしばあります。

のれんの継続性を重視する場合でも、方針に強く共感してくれる第三者があらわれる可能性もあります。

小規模譲渡の場合は費用の安いインターネット上の事業譲渡マッチングサイトの利用も有効ですが、掲載の際は現店名が特定されないよう、注意深く掲載内容を吟味しなければなりません。

信頼できる仲介事業者の利用も視野に入れた上で、譲渡先を選定してください。

 

事業価値の再評価の基準

譲渡先が決定してからは譲渡条件を詰めていくことになりますが、その際に重要な材料になるのは譲渡側の事業価値の評価です。

会社全体を売却する株式譲渡と異なり、事業の一部分だけの売却となることも多い事業譲渡では事業価値の評価は複雑なものとなります。

事業価値の評価法は譲渡される部分の資産価値を積み上げる方法であったり、市場での評価を基に算定する方法であったりとさまざまな種類があり、それぞれ専門知識が必要なものです。

数値的評価は会計士や仲介業者といった専門家に任せるべきでしょう。

譲渡側と譲受側の交渉で「一声いくら」で価格の決まることの多いおおむね1,000万円以下の小規模譲渡では数値化できる事業価値とは別に譲渡側が店に注ぎ込んできた思いやノウハウなどを言語化しておくと売却交渉の際に有利な材料とすることができます。

 

事業の改善余地

前項の事業価値の再評価の段階で現状に対する課題が洗い出されることもしばしば見られます。

譲渡を有利な条件で進めるには実現可能な項目について改善しておくことが求められます。

事業の磨き上げといいます。

手塩にかけた事業を少しでも良い条件で送り出すためには、かけたコストが売却価格の上昇分を超えてしまう費用倒れに注意しつつ、磨き上げを怠らないようにしましょう。

 

譲渡タイミング

譲渡に至るまでに不測の事態があるかもしれないことや、追い込まれての事業譲渡では好条件を望みづらいことを考えると、経営に余裕のあるタイミングでの譲渡が望ましいと言えます。

譲渡の準備を早くから進めておくことで、譲渡に最適なタイミングを選ぶことができますが、好条件を求めるあまり譲渡先の選定や譲渡交渉の期間が長くなると秘密が漏れる可能性も高くなり、譲渡できずじまいになってしまうリスクがあることには注意してください。

 

従業員への伝達

一般に事業譲渡や株式譲渡では秘密を守るために譲渡の事実を従業員に伝えるのはギリギリまで遅らせるケースが主流です。

しかし、飲食業界においては店舗の運営の多くを熟練の従業員に頼っている場合が多く、売却の価値を高めるためにも特にキーマンとなる従業員には可能な限り残ってもらいたいところです。

店舗運営に慣れた従業員を引き継げるかどうかが譲渡後の事業継続の円滑さにも関係しますので、支障なく事業譲渡を進めるためにキーマンには早めに事実を伝えることも考えられます。

秘密を早めに明かすことができるかどうかは普段の経営者と従業員の信頼関係も大きく影響してきます。

譲渡先決定以降は新経営者に店舗運営に参加してもらい、従業員、特に要となる人物との関係構築を進めておくとスムーズな譲渡につなげることができますし、譲渡条件へのプラスの影響も大です。

 

デューデリジェンスへの備え

事業譲渡の交渉が大詰めを迎え、最終契約の直前に行われるのがデューデリジェンス(買収監査)です。

デューデリジェンスでは譲受側が問題のある事業を買ってしまわないように買収対象事業の状態を細部まで洗い出す作業をします。

譲渡側は後のトラブル防止のため、そして売却価格を高めるために買収側の求めに応じて必要な資料を提出できるように準備しておく必要があります。

この資料があまりに杜撰だと売却の交渉自体がひっくり返りかねませんので、会社概要、財務諸表、労務管理状況、契約書類、飲食店では特に重要な行政の許認可関係などを正しくまとめておきます。

譲渡側が小規模でも譲受側は専門家を伴ってかなり細かく見てくることが考えられますので、譲渡側も専門家に相談するのが無難です。

これら書類の点検だけでなく、店舗をじかに視察したり、従業員にヒアリングしたりといったこともしばしば行われます。

隠していた不利な条件がこの段階で明らかになってしまった場合、譲受側の信用を失い、交渉妥結に問題が出てくるので注意してください。

 

まとめ

事業譲渡について複雑な譲渡手順、手続きに二の足を踏んでいる場合は仲介から譲渡交渉、注意点までワンストップで相談できる専門業者もあるので利用の検討してみましょう。

手続きや妥当な譲渡条件の決定などで複雑な面も多い事業譲渡ですが、それを上回るメリットを得られるケースも多々あります。

金銭的なメリットも当然ですが、事業を手放すことになっても、新しい人、事業者のもとで、愛着を持って育ててきた店を継続させることができるということは大きいのではないでしょうか。

飲食店の事業譲渡を検討する際のチェック項目
飲食店の経営権を手放す方法は様々です。
閉店する際には、従業員の解雇や不動産の解約などの手続きもあり、多くの手間と費用を伴います。
一方で閉店はせずに、店舗とその経営権を別の人や会社に売却する事業譲渡という方法もあります。飲食業界における事業譲渡は珍しいものではありません。
ただし、メリットも多い反面、独特の複雑さを伴うという実態もあります。事業譲渡を検討する際にチェックしておいたほうが良い項目について見てみましょう。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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