2019年1月20日 日曜日

不動産管理会社の事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

2012年から実施されている低金利政策および2020年の東京五輪に向けて不動産業界は活発な状態であり、業者間の競争も規模を問わず激化し続けています。従来の不動産管理は1度管理契約を取れば恒久的に固定収入が発生する状態でしたが、2001年に管理規定の厳格化が施行されてからは、会社の乗り換え営業などが増加し、中小企業間において顧客の獲得競争が増加しています。

大手企業は中小企業をM&Aで買収する事でシェアを拡大しています。M&Aより手軽な乗り換え営業も多く実施しており、一部の大手企業へシェアが集中する状況は年々明確になっています。
M&Aに対して乗っ取りや買いたたきといった悪印象を持つ経営者も多いわれてはいますが、法改正が進んだことによって、事業承継の手段としてM&Aを用いる中小企業も増加傾向にあります。
中小企業間の競争を避け、スケールメリットによる恩恵を得るために、大手企業への事業承継を検討する中小企業は増加傾向にあります。
本稿ではそういった不動産管理会社に特に着目して、事業承継の手法やメリット・デメリットを紹介します。

 

不動産管理会社を事業承継しよう


事業承継の主な手段としては親族内承継、社員承継、IPO(株式公開)、M&Aが主に用いられます。

親族内承継は最もポピュラーな方法であり、経営者の息子や娘に経営を引き継ぐ方法です。経営者にとって安心感と信頼性が高く、従業員や取引先にとっても反発が起きにくいというメリットがあります。
問題点としては、後継者を1から教育する必要がある点で、引き継ぐまでには非常に長い期間を要します目安としては10年ほど掛かる事を考慮し、オーナーの年齢や経営状況に余裕があるうちから取り組む必要があります。
また、子ども側が後継を承諾する必要があるので、メリットの具体的な説明や、傍から見ても魅力のある事業を展開している事が重要になります。

社員承継は社内の役員や従業員に引き継ぐ方法です。既に社内事情に詳しい社員が後継者なので、社内や取引先から理解を得やすく、信頼性の高さから近年利用率が伸びている手法です。
自社内から幅広く候補者を選べるほか、経営スキルの教育についても1から教える必要がないので、短期間で引き継げるメリットがあります。社風や経営方針を維持しやすい事も特徴ですが、状況によっては発展性が低いというデメリットにもなります。
経営権を引き継ぐ過程で現オーナーが自社株式を持っていた場合は一緒に引き継ぎますが、後継者は株式に対価を支払う必要があります。金額が億単位になる事も多く、有力な後継者候補が資金力不足というケースが多いです。
金額を下げて譲渡すると前オーナーが得られる金額も下がり、事業承継のメリットが薄れてしまう事には留意が必要です。

IPOは非公開の株式を上場させることによって不特定多数に公開し、自由に取得させる手法です。実施には証券取引所の審査を受ける必要があります。
メリットとしては多額の資金が確保できる事や社内規定の充実を図れる事などが挙げられます。
デメリットとしては株式公開規定が複雑であり、数年単位の準備が必要な点です。上場を達成した場合も管理コストの増加や社会的責任の増大といった影響もあり、ハードルは高い手法です。

 

後継者がいない、そんなときは

企業間の競争などの要因で、事業に集中し続ける必要があり、現在の経営者が高齢化しても後継者候補がいないケースは増加し続けています。2017年度時点で中小企業は382万社あるとされており、2025年までに経営者が70歳以上となる企業は245万社に上るとされています。
結果として廃業を検討する企業も多いとされますが、後継者不在で廃業を検討する企業の半数程度は、負債の無い黒字経営であるとされます。優れたノウハウや人脈を築いたオーナーが多いという事であり、継承せずに閉鎖する事は業界全体にとってもマイナスに影響します。従業員への雇用斡旋や管理物件への家賃支払いなどの作業も必要であり、事業に価値が付かない分、オーナーの手元に残る金額は少なくなります。
また、銀行の借入金にはオーナーへ個人保証が付加されており、廃業した後も全額返済する必要があります。
事態の解決策としてM&Aを選択する、検討している企業も増加しています外部企業へ経営を委託することで後継者問題が解消されるほか、事業価値によっては債務解消の上で現金を得る事が出来ます。

M&Aで事業譲渡を行った場合、純資産価額に営業権を加えた価額で取引されます。
営業権とは暖簾とも呼び、買収による増収効果のうち無形の要因について評価した項目です。相場は税引後利益の3~5年分とされています。
例えば2000万円の税引後利益で、営業権が5年分で算定された場合の株式価格は、5年分の利益に営業権を加えた2億円となります。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット


不動産管理業はスケールメリットの恩恵が大きい事業であり、競争力の向上と事業規模の拡大を目的とした大手企業によるM&Aが活発な状態です。
事業売却によるM&Aの場合、まとまった額の現金を得られるのは大きなメリットです。長期にわたって継続してきた場合は相応の事業価値が付く場合も多く、債務問題を解消できる以外にも、新規事業や引退後の資金にあてる事が出来ます。
また、事業売却によって社長への個人保証を解除できるケースもあります。
今までの事業に紐づいていた自宅などの担保と個人保証を解除し、承継後の事業に契約を持ち越すというパターンも可能です。
後継者問題を解決できるのも大きなメリットであり、オーナーが高齢化しても後継者候補が居ない場合において、優れた外部企業に今までの事業を引き継ぐことが出来ます。
従業員の雇用引継も手続きを行えば可能であり、社員の再就職先を憂慮する事も不要となります。相手企業にとって人員の確保は主目的である事も多く、雇用期間の保証を売却条件に組み込むことも可能です。
また、複数の事業を展開していて人員や資金が回らなくなった場合も、一部事業を売却して重視したい部門を自社内で引き継ぐ事によって特定事業に集中することが可能になります。特に大手企業の傘下に入った場合、充分な人員と効率的な業務体系を得られる事によって、自社の経営の立て直しを行う事が出来ます。

近年は入居者と管理組合とも大手志向が強まっており、スケールメリットを享受する事によって自社を発展させる事も可能となります。
双方の事業内容によっては新規事業の取引先とノウハウを提供する事が可能となり、企業価値の上昇によって高い売却額を得られるほか、承継後の企業において前オーナーが役員となるなど収入と影響力の高いポストに留まりやすくなります。

 

不動産管理会社の事業承継のポイント


事業承継の準備として、自社管理物件の展開地域や管理状況、社員の保有資格や人数について、予め纏めておく必要があります
物件の管理状況には、賃料収入に対する借上げ費用や管理費用の割合、物件のオーナーとの関係性も含まれます。入居率が低い物件に対して改善策を提案できているか、支出が収入を超え続けている赤字物件を持っていないか等は事業価値に大きく関係するポイントです。
人員の提供によって管理体制を充実させ、管理物件の入居率向上や既存の入居人に対する新たなサービスの提供を実現するにおいて、自社のメリットは的確に把握しておく必要があります。

交渉の際は自社と企業理念が近い企業を選ぶことも重要です。
近い理念を持つ会社は事業内容も近い事が多く、違う場合でも事業領域の拡大という点でシナジーが期待できます。逆に方針が合わないと交渉が難航しやすくなり、成立した場合でも売却側の意向が反映されない会社になる可能性が高くなります。

従業員の引継ぎを行った場合は社内で意見の対立が起こりやすく、最悪の場合契約を白紙に戻される可能性があります。

経営状況が悪化してから売却先を探しても買い手が付きづらく、応じる企業が現れたとしても経営方針の摺り合わせや売却条件の交渉などに時間を掛けられなくなります。確実な事業承継を行うには経営状態の良さを示す必要があるので、状況に余裕がある間に売却を決断する必要があります

事業承継の形式を問わず、金融機関や物件のオーナーへの周知徹底は必要です。
起業者の人格や経営力によって長く存続してきた会社ほど代替わりによるリスクは大きく、オーナーの交代と同時に契約を解除されるパターンも存在するのでリスクの低減は慎重に行う必要があります。

親族内承継の場合は先代との差を見られる事が多く、外部への紹介は経営教育が完了した後もしくは早々に行って完了時期を決めるパターンが考えられます。

社員承継の場合は周知するタイミングが重要になります。早すぎると候補者の吟味度合いや色眼鏡を疑われやすく、あまり遅くても事業の継続性に疑問を持たれやすいです。

 

事業承継税制について

また、事業承継税制が適用できるかも重要なポイントです。
前提として認定期間内に経営権を持たなくなったオーナーから後継者候補に株式が譲渡されている必要があります。
ただし、既に通常の認定を受けた場合でも、前オーナー以外の株主から贈与・相続された株式については認定後5年間居ないに申告期限が到来する者に限り、追加で特例認定が可能となっています。

また、猶予条件を1つでも満たさなくなった場合は猶予されている額を全額支払う必要があることから非常に導入ハードルの高い制度でしたが、税制改正によって一時的ながらも条件が大幅に緩和されています。
実行には認定支援機関による指導と助言を受け、その旨を「特例承継計画」に記載する事が必要となります。

平成30年度の税制改正により、改正後5年または10年間において税制の適用対象となる株式割合が3分の2から100%となり、相続税に適用される納税猶予の比率が80%から100%に引き上げられた事で、制度の利用価値が向上しています。

不動産会社の主要資産となる不動産物件は承継税制の適用外となる特定資産に含まれるので事業承継税制は適用困難に思われますが、以下の事業実態要件を満たしていれば資産の内訳に関わらず適用可能です。

事業実態要件
①贈与日までに満3年以上事業を継続している
②贈与の時に常時使用従業員が5名以上いること
③贈与時において常時使用従業員が勤務している事業所、店舗、工場その他を所有又は賃貸していること。

 

まとめ

後継者不在や作業人員の不足に悩み、廃業を選ぶ中小企業は増加を続けています。
しかし近年になってM&A関係の法整備は大きく進んでおり、事業承継の手段としてM&Aを用いる企業も年々増加しています。M&Aに対する否定的なイメージも実際の事例によって払拭が進み、具体的なメリットの周知が進んだ事などから、事業承継にM&Aを用いる経営者は増加傾向にあります。

不動産業界の景気は堅く、市場規模も拡大している事から大手企業においても人手は不足しており、社員の獲得を目的としたM&Aを活発に行っています。マイナス金利政策によって金融機関から融資を受けるハードルが下がり、資金調達が行いやすくなっている事もM&Aの増加に拍車をかけています。

経営者の交代による発展性の高さと経営実績による信頼性の高さを併せ持った手法であり、成立時のメリットは大きいです。しかし管理物件や社員などに関する詳細な情報をまとめる必要があり、企業理念や経営方針の摺り合わせを慎重に行う必要があります。

どの手法でも共通する事として、事業承継は早めのスケジュール設定が重要になります。

親族承継やM&Aは引継ぎ完了に5~10年を要する事も多く、その間において現オーナーが経営を維持し続ける必要があります。過程の半ばで交代せざるを得なくなった場合、経営スキルの未熟な後継者が継ぐことになり、周囲に悪影響を与える事になります。M&Aの話が流れた場合はそのまま現オーナーの引退と同時に企業閉鎖のリスクもあるので、確実に事業承継を行うためにも早めの準備が必要です。

後継者候補が居る場合でも事業承継にかかる多額の相続税や贈与税が払えずに困窮するオーナーも多いとされます。不動産業界に限らず増加しているケースであり、対応する形で平成30年度に税制が改正されています。特例措置として適用期間が限られていますが、引き継ぎ直後に掛かる税金を猶予できるメリットは大きいので検討の価値はある制度です。

不動産管理業の寡占化は今後も進む見通しであり、環境の変化も早くなっていく事が予想されます。事業承継には素早い判断が必要ですが、実行の前にはあらゆる情報を精査しておく事が一番のポイントです。

不動産管理会社の事業承継でお困りではないですか?
2012年から実施されている低金利政策および2020年の東京五輪に向けて不動産業界は活発な状態であり、業者間の競争も規模を問わず激化し続けています。従来の不動産管理は1度管理契約を取れば恒久的に固定収入が発生する状態でしたが、2001年に管理規定の厳格化が施行されてからは、会社の乗り換え営業などが増加し、中小企業間において顧客の獲得競争が増加しています。

大手企業は中小企業をM&Aで買収する事でシェアを拡大しています。M&Aより手軽な乗り換え営業も多く実施しており、一部の大手企業へシェアが集中する状況は年々明確になっています。
M&Aに対して乗っ取りや買いたたきといった悪印象を持つ経営者も多いわれてはいますが、法改正が進んだことによって、事業承継の手段としてM&Aを用いる中小企業も増加傾向にあります。
中小企業間の競争を避け、スケールメリットによる恩恵を得るために、大手企業への事業承継を検討する中小企業は増加傾向にあります。
本稿ではそういった不動産管理会社に特に着目して、事業承継の手法やメリット・デメリットを紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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