2018年12月1日 土曜日

事業承継の事例から読み解く潮流《ラーメン業界》

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

「ラーメン屋の事業承継を考えているけど、実際にどんな事例があるのだろうか」

いざラーメン屋の事業承継を考えてみたときに、実際の事例を知りたい方もいらっしゃるでしょう。

ラーメン屋の事業承継を実施する上で、最近のラーメン業界の潮流や事例を押さえておくことは大切です。

 

この記事では、ラーメン業界における事業承継の動き、最近のラーメン業界の事業承継事例、ラーメン屋の事業承継を実施する上でのポイントについて解説します。

 

ラーメン業界における事業承継の動き

中小企業庁「事業承継を中心とする事業活性化に関する検討会(第1回)」の調査結果によると、中小企業において、60歳以上の経営者の5割が廃業を予定しており、特に個人企業においては、7割近くが「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答しています。

その理由としては、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」などの後継者不在を合計すると3割を超えています。

 

そんな状況を受けて、最近のラーメン業界では、後継者が見つからずに廃業を考えていたラーメン屋が、M&Aの一種である事業譲渡によって、第三者に事業を承継して復活する事例が増えてきているのです。

 

最近のラーメン業界の事業承継事例

それでは、最近のラーメン業界における事業承継事例を紹介していきます。

 

親から子へのラーメン屋の事業承継

まずは、親から子へラーメン屋の事業承継が行われた事例を紹介します。

先代経営者がつくりあげた熊本ラーメン「味千ラーメン」を国内外にフランチャイズ展開する重光産業株式会社は、先代経営者の死去に伴い、子である重光社長が28歳の若さで事業を承継しました。

重光社長は、大学卒業後は父である先代経営者が経営する会社に入社しました。

入社後すぐに店長を経験し、並行して数ヶ月間、中小企業大学校による経営管理者研修を受講しました。

25歳で、同じく中小企業大学校による経営後継者研修を、1年間泊まり込みで受講し、財務・人事管理や商品開発などを学んでいます。

 

その後は会社に戻り、常務となって営業を担当しました。

フランチャイズ加盟店の募集、巡回指導、新規開店の手伝い、百貨店での催事やイベント、配達など、できることは何でもやったそうです。

そして、父の死去により社長に就任しました。

既に入社から6年が経過していたため、周囲からは後継者として認められていました。

さらに、年数回の納入業者との会合への出席や、フランチャイズ店の巡回指導などで、取引先やチェーン店の経営者とも面識があったこともプラスに働いています。

麺やスープ作りは未経験でしたが、旧経営者のブレーンが残っていたことから、特に支障はなかったそうです。

この事例から学べることは、親から子へラーメン屋の事業承継を行うには、数年単位の時間(事例では6年)を要するということです。

店長の経験や経営知識の勉強、そして何より、後継者として認められるには、常日頃から従業員や取引先、フランチャイズの場合はチェーン店の経営者とも面識を持つことが必要です。

意外ですが、ラーメン屋の要ともいえる麺やスープ作りの経験がなくても、精通したブレーンさえ残っていれば、事業承継には問題ないようです。

このことから、後継者に求められるのは、店の味の再現よりも経営者としての素質なのかもしれません。

そうであれば、後継者を子どもや親族にこだわる必要はなくなります。

 

個人ラーメン店から個人ラーメン店への事業承継

次に、個人ラーメン店から第三者の個人ラーメン店に事業承継した事例を紹介します。

 

熊本県のチャンポン人気店「めんきち」は、2017年12月から旧経営者の急逝により休業しており、廃業の危機もありましたが、同じく熊本県のラーメン店「仁龍」の経営者に事業譲渡することで、2018年4月に復活しました。

「めんきち」はラーメン店ですが、お客の8割がチャンポン目的で来店するチャンポン屋さんとして、地域で長く愛されていました。

 

旧経営者の次女夫妻が「めんきち」を閉めるのは忍びないという気持ちから、店の味や理念に賛同してくれる経営者を熊本県事業引継ぎ支援センター経由で探したところ、ラーメン店「仁龍」の経営者が名乗りを上げてくれました。

4月には、一旦ちゃんぽんオンリーでの営業再開でしたが、老舗の味の基本は守られていて「めんきち」の味はぶじ継承されたようです。

 

この事例は、個人ラーメン店どうしの事業承継のため、新経営者は既にラーメンの作り方や店舗経営に精通しています。

そのため、旧経営者としては秘伝のレシピや店の理念など、ポイントを絞って引き継ぎを行えばよいため、それほど時間や手間がかからない良いパターンではないでしょうか。

 

新しく経営者を探して事業承継

次に、子どもや従業員、同業者の店主などではなく、何もないところから新しく経営者を探した事例を紹介します。

 

青森県のラーメン屋「天間林ドライブイン」は、旧経営者が一旦閉店した後に、青森県事業引継ぎ支援センターの後継者マッチングにより新経営者が見つかり、わずか4ヶ月で営業再開できることになりました。

開店前の約1ヶ月で、旧経営者は新経営者に、名物メニューである「みそラーメン」のスープの作り方からつきっきりで教え込んだそうです。

新経営者は、旧経営者が築き上げたラーメン類のレシピを受け継ぎながら、自身が得意な中華メニューもプラスして、事業を承継しました。

 

ラーメン屋は「出店したい業態」としてトップ5に入るほど人気があるため、店を出したい人はそれなりにいます。

そのため、店舗・設備・顧客・レシピを引き継げる事業承継は、ラーメン事業に新規参入したい人には魅力的に映るため、そうした人を探すのも一つの方法です。

 

M&Aによってラーメン屋を事業承継

次は、M&Aによって事業承継を行った事例を紹介します。

 

岡山県の老舗ラーメン屋「梶屋」が、「えびすらーめん」などを経営する株式会社IPPOに事業譲渡(M&Aの一種)することで事業を承継しました。

「梶屋」は「トンカツ中華そば」や大きなエビフライが3本直立する「えび丼」などで人気を博していましたが、臨時休業や営業時間短縮などの末に、2015年から長期休業に入っていました。

しかし、「梶屋」の一ファンでもあったIPPOの川崎社長が、「梶屋を存続させたい」という熱い思いから事業譲渡を受けることになりました。

そして、ホテルで腕を磨いた現店長に、梶屋の大将から技術やノウハウが引き継がれました。

 

M&Aというと、店が丸ごと買収されるようなマイナスのイメージがあるかもしれませんが、譲渡する事業や資産を選べる「事業譲渡」、特定の業務だけ他社と共同で取り組む「業務提携」など、広義では様々な方法があります。

子どもや親族などに承継するよりも、比較的短期間で承継できるメリットがありますので、後継者不在で悩んでいるなら検討してみるのがよいでしょう。

 

ラーメン屋の事業承継を実施するうえでのポイント

ここまでラーメン業界の事業承継事例を紹介してきましたが、実際にラーメン屋の事業承継を実施するうえでのポイントは、下記の5点になります。

 

承継相手をよく考えて選ぶ

まず、承継相手をよく考えて選ぶことがポイントとなります。

承継相手については、「子どもや親族など」「従業員や役員など」「M&A」といった選択肢があります。

例えば、子どもに事業承継するのが最も一般的に思えるでしょうが、メリットとデメリットがあります。

メリットは、既にラーメン店を手伝っている子どもがいるのなら、従業員や取引先に後継者として認められやすいことです。

さらに、子ども本人も後継者としての自覚が備わりやすく、承継に際して負債などの不都合があっても、他人とちがって簡単に投げ出したりしないでしょう。

 

デメリットとしては、事業承継に時間がかかることです。

子どもが別の会社などに勤めている場合、まずはラーメン屋を手伝ってもらって、店の味や理念などについて伝える必要があります。

加えて、経営者としての知識も並行して学んでもらわなければなりません。

 

承継相手を誰にするかは、それぞれのメリットとデメリットを量りにかけて、何を優先したいから誰を選ぶかを、自分の中で整理する必要があります。

例えば、一子相伝の伝統継承にこだわるなら、「時間がかかる」というデメリットを受け入れても、子どもに承継した方がいいでしょう。

 

承継後についてイメージを膨らませる

事業承継後に、どんなラーメン屋になってほしいのかイメージを膨らませることもポイントです。

 

「地域で長年愛された、店の味や伝統をそのまま残したい」

「自分には若者向けのメニュー開発ができなかったので、若い新経営者にはぜひともお願いしたい」

「店の名前が残るなら、あとは新経営者のアイデアでどんどんリニューアルしてくれて構わない」

など、いろいろなイメージが浮かぶことでしょう。

イメージを膨らませるには、事業承継するにあたって譲れない点・変わってほしくない点は何か、逆に、自らの経営における反省点(もっとこうしたら良かった)を振り返ると、今後のラーメン屋像をイメージしやすいでしょう。

未来のラーメン屋像のイメージが固まったなら、その実現のためには誰に事業継承すればよいのかをもう一度考えてみましょう。

 

類似案件について調べてみる

承継後のイメージが固まったなら、そのためにはどうしたらよいか、似た案件がないか調べて参考にしましょう。

しかし、ラーメン屋の事業承継事例は、インターネット上で探すのがなかなか難しいです。

そのため、知り合いや同業者に事業承継の事例がないか聞いてみたり、事業承継の専門家であるM&Aアドバイザーに相談したりするのがよいでしょう。

 

承継のタイミングはよく考える

事業承継を行う上で、どのタイミングで承継するかはとても大切です。

特に、子どもや親族への事業承継には数年単位の時間がかかるため、早めの準備が必要です。

なぜなら、経営者の健康状態の悪化や、最悪は急逝により、事業承継が中途半端な形で打ち切られる可能性があるからです。

そうした場合、子どもや親族が経営者として未熟な状態で引き継ぐことになるため、会社経営が行き詰まって廃業に至ることもあります。

さらには、借入時に経営者が個人保証をしていた場合、法定相続人全員に債務が引き継がれてしまう可能性すらあります。

そのため、健康問題や経営難などの限界が訪れる前に、早め早めの準備を心がけましょう。

 

事業承継の専門家を大いに活用する

早めに事業承継の準備をするといっても、何から手をつけてよいか分からない方は、事業承継の専門家であるM&Aアドバイザーを活用するのがよいでしょう。

素人ではラーメン屋の事業承継の事例を探すことすら難しいですが、飲食・外食業界に詳しいアドバイザーに相談することで、現在のラーメン業界状況や具体的な事例などを教えてもらうことができます。

さらに、事業承継にあたって最初に取り組んだ方がよいのは、ラーメン屋経営の現状を把握することです。

例えば、業績の流れや資産、借入金などの負債などを財務諸表や決算書で確認したり、個人保証の有無や債務残高、経営者名義の事業用土地・建物なども把握したりする必要があります。

 

上記は個人ではなかなか難しいため、M&Aアドバイザーに相談して、専門家の立場からアドバイスをもらうのがよいでしょう。

 

まとめ

まずは、専門家であるM&Aアドバイザーに相談することで、どんな準備が必要で、何から手をつけるべきかを確認するのをおすすめします。

成果報酬型のM&Aアドバイザーなら、M&Aが成功するまでアドバイザー報酬は発生しないので、M&Aを実施するか悩んでいる時点でも、安心して相談できるでしょう。

事業承継の事例から読み解く潮流《ラーメン業界》
「ラーメン屋の事業承継を考えているけど、実際にどんな事例があるのだろうか」
いざラーメン屋の事業承継を考えてみたときに、実際の事例を知りたい方もいらっしゃるでしょう。
ラーメン屋の事業承継を実施する上で、最近のラーメン業界の潮流や事例を押さえておくことは大切です。
この記事では、ラーメン業界における事業承継の動き、最近のラーメン業界の事業承継事例、ラーメン屋の事業承継を実施する上でのポイントについて解説します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2018年12月1日
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