2019年6月5日 水曜日

ファンドへの事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

自社の売却先を検討する際の候補の一つに「投資ファンド」が挙げられます。
投資ファンドは企業を買収した後、その企業の経営に関与することで事業価値を高め、企業を再売却することで利益を得ます。
本稿では、投資ファンドを活用した事業売却で失敗しないために、投資ファンドとM&Aを行うにあたり、知っておくべき知識を紹介していきます。

ファンドへ事業売却して次のステージへ

「ファンド」は多くの中小企業のオーナーにとって、普段接する機会が無く、馴染みが薄いのではないでしょうか?
ファンドへの事業売却は「豊富な資金を有していないと取り合ってくれないのではないか?」と思われているかもしれません。
さらに、経営破綻に陥っている企業の債券や株式を買い取り、強引な再建計画に基づいて企業価値の再生を狙うファンドの総称「ハゲタカ」を思い浮かべる方がいるかと思われます。しかし、後継者不足問題や経営課題などの理由から、多くの中小企業が投資ファンドへの売却で会社経営の立て直しを画策し、更なるステップアップを目指しています。

ファンドは投資家から資金を集めて、その資金で企業に対して投資を行い、その投資からリターンを得ることで、投資家に還元しています
ファンドは、私募ファンドに分類され、特定の大口投資家のみを顧客としています。ファンドの事業買収の目的は、投資額以上のリターンの獲得です。買ったときの金額よりも高くその事業を売ることで利益を得ます。もちろん、多くの資金を運用しているファンドとの取引は、売却側の企業にとってもメリットがあります。

2008年に起こったリーマンショックの直後から長らく投資ファンドのM&Aは停滞していました。一方、昨今の投資ファンドによる中小企業のM&Aは年々増加傾向にあり、2017年には2000年代中盤に比べ、約200%の成長を記録しています。

M&Aは企業の譲渡・売却のみなならず、資本提携・業務提携なども含みます。
複数の事業を運営する企業であれば、売りたい事業のみをファンドに渡し、伸ばしていきたい事業に経営リソースを集中していくことも可能です。
反対に買収側からみても、事業成長が見込める事業にフォーカスして買収を行うことができます。

ファンドへ事業売却するタイミング

ファンドへの事業売却を行うタイミングとは、どのようなときでしょうか。

【業績が思わしくないとき】
業績が急激に悪化し、遂には会社経営が赤字になった時、事業売却を考える経営者が多いのではないでしょうか。
会社を売却し、多くの利益を獲得することができる、ファンドへの事業売却に成功すれば、経営難からの脱出が期待できます。また、会社経営に伸び悩んだとき、事業の拡大を経営戦略として掲げたものはいいものの、大手企業のように豊富な資金を保有していない中小企業には悩ましい問題です。そこで、ファンドに事業売却をすることで、豊富な資金力を獲得することが可能となり、事業の拡大や中核事業の強化を行うことができます

【経営者がリタイアしたいとき】
経営者は常に、世間の動向に目を配り、他社の商品やサービスとの差別化を図るために、身体的・精神的にタフでなければ成り立たない立場に置かれています。
様々なプレッシャーや病気、高齢化を理由に経営者の立場から退くと決めたとき、後継者探しのため、ファンドへの事業承継を検討します。家族や従業員の中に、経営者としての素質をもつ人間がおらず、後継者探しに時間がかかってしまうと会社の経営に支障が出ることが懸念されます。
ファンドへの事業売却により、スムーズに後継者を派遣してもらうことが出来るので、会社経営を安定させたまま後任を見つけることが可能です

【他の事業に注力したいとき】
会社が複数の事業を展開している場合、経営する事業を絞って特定の事業に注力することがときには大切です。
事業の絞り込みには、廃業という手段を選択するよりも事業売却の方がメリットが多くあります。廃業という選択をした場合、従業員の配属先がなくなりリストラを余儀なくされます。事業売却であれば、事業を従業員ごとファンドに譲渡できるので、従業員を解雇する必要がなくなります
さらに、売却益が得られるので、特定の事業を強化したいときこそ、ファンドへの事業売却の絶好のタイミングです

【事業の拡大を行いたいとき】
安定した事業拡大していくために、充分な資金を確保する必要があります。市場環境は変化を続けていく中で迅速な対応ができなければ、競争に勝ち残れなくなってしまいます。ファンドがもつ資金力は、柔軟に市場変化に対応するために非常に強力です。事業を継続的に伸ばしていきたいのであれば、ファンドの資金力を活用してあらゆる市場環境に対応できるよう、会社を再編していくことも一手です。

ファンドとの取引成立までは長い時間がかかります。市場に動きがあってからファンドを探していては、投資してくれるファンドが現れないこともあるでしょう。事業戦略の一つとして、早めに検討をしておくことが重要です

ファンドへ事業売却する目的にはこんなものがあります

M&Aで会社を売却する際、自社の現在の状態や将来を考えたM&Aスキームで事業売却を行います。
何故ファンドへの事業売却が行われているのでしょうか?ファンドへ事業売却することのメリットをご紹介します。

高値で売れる

ファンドに会社を売却する最大の目的は資金の獲得です。
ファンドは、売却する会社の事業価値が高ければ、多額のコストをかけてでも落札しようとします。買ったときよりも高く売れるのであれば買収する理由はファンドにはあるのです。
さらに、事業メインで事業の買収を行っているわけではなく、買収そのものを目的として投資家からお金を集めています。資金が潤沢であるため高値を提示しやすいという背景もあります

少数株主として残れる

ファンドへの事業売却では、一部の株式を創業者が継続的に保有することを認めてくれる場合があります。
これは、ファンドには経営のノウハウがないため、経営者に会社に残ってもらい引き続き経営をしてもらおうと考えるからです。経営者のみならず、従業員の多くが会社に残るケースが多いです。
また、ファンドと一緒に上場を目指し、プラスアルファで上場したときの利益を獲得できることがあります

時間の短縮

市場環境が著しく変化していく中で、慎重に経営戦略を練っていれば、他社に先を越されてしまう可能性があります。
グローバル化やシェアの拡大、人材や技術の獲得を行うなど、積極的に他社と差別化を図る必要があります。
ファンドへの売却により、市場環境の予測や人材、技術の獲得などプロフェッショナルのノウハウを取り入れることが可能です

信用の獲得

会社にファンドから資金が投入された実績が残ることで、信用力の向上につながります。大規模なM&Aになればなるほど、メディアに取り上げられるチャンスが増えて、会社の知名度を高めることができます。

ファンドへ事業売却を行う上での注意点

企業がファンドへの事業売却を行う目的や、他のM&Aの手法とは違ったメリットなど、ファンドのM&A効果を深く理解できました。
しかし、ファンドへの事業売却は非常に特殊な手法なので、知識が無いままに事業売却を進めてしまうと取り返しのつかない事態に巻き込まれてしまいます。そういった事態を防ぐために、ファンドへ事業売却する上で気を付けなければならない点をいくつかご紹介していきます。

経営を引き継ぐ最適な人物をファンドが用意できるか

ファンドが経営に入る場合、執行役員や経営陣を買収した会社に派遣します。
コンサルティング会社で経験を積んだ優れた人材ですが、経営改善を目的とした派遣となるので、現在の経営者が会社に残る場合は経営改革をしていくなかで弊害が起こる可能性があります。事業の成長を最優先に遂行する後継者とは逆に、これまでの経営者が大切にしてきた経営方針の本質を変えるようなことがあれば、後継者に対して反発心を覚えることでしょう。

このような事態を防ぐためにも、経営者が売却後の会社に何を求めるのか、事業の成長を望むか、もしくは現在の社風を維持させたいのか、あらかじめ整理した上でファンド探しを行えば、事業売却後の人間関係で生まれる軋轢を最小限に抑えることができます。ファンドが派遣する人材と、密に話し合いを行い、経営に対する考え方や人柄などを確認したうえで事業売却を進めていきましょう

事業の成長が期待できるような実績を持っているか

ファンドは、それぞれ得意・不得意な事業領域があるので、会社の経営に合ったファンドを選ぶ必要があります。
例えば、PEファンドは成長期の段階もしくは成熟期に達した企業の価値増大を扱っています。破綻間近の企業やベンチャー企業は、事業再生ファンドやベンチャーファンドに事業売却したほうが、より適切で効果的な戦略を立てることができるでしょう。
事業承継でファンドを選択する場合、事業承継の実績の有無、自社と同じ事業の取り扱い実績があるか、過去事例を見て投資目的・期間・金額など成長戦略に強みがあるかなど確認しましょう。事業売却を行う際の、信頼と実績があるファンドを見定める重要なアクションです。

限られた期間で事業価値を高める必要がある

ファンド側は、最終的に投資先を現金化する必要があります。
ファンドがの資金は元々、投資家が出資した資金です。投資金には期限が設定されており、その投資期間が満了となれば、ファンドは投資家に対して現金で払い戻しをしなければなりません。つまり、ファンドが株式投資した場合には、最後に必ず売却することになります。よって、ファンドは定められた期間の中で事業価値が上がり転売するメリットのある会社を選びます。
M&Aを行った会社に、ファンドから社員が派遣されますが、会社の事業価値を高めるため、ハンズオンによるサポートで売却利益を少しでも上げようと努めます。ファンドが事業売却を行った会社は、投資期間内で事業価値を高めなければ、最悪の場合負債を抱えてしまいます

M&Aの専門家に頼る

ファンドの実績から経営者自身の目で本質を見定めることは難しいです。
そのため、事業承継の専門家であるM&Aアドバイザーへの相談をおすすめします。ファンドへの事業売却を考えている場合、経営者が事業の将来性を見据えたときにどんなファンドを選ぶと効果的なのかを、M&Aアドバイザーが会社に見合った候補先を提案してくれます。不安な点や悩んでいることがあれば気軽にM&Aアドバイザーに相談しましょう

一般的なM&Aの相談役として、税理士・会計事務所、銀行、証券会社、弁護士事務所、M&A仲介会社などが挙げられます。
M&Aは非常に専門性の高い業務です。収益を優先した専門性の低い専門家もいるので、専門家に頼る時は実績を必ず調べておきましょう。ファンドへの事業売却のアドバイザリー実績がある会社を選ぶと、なお良いでしょう。

まとめ

投資ファンドへの事業売却を実施するにあたって、押さえておくべきポイントをご紹介しました。
事業拡大、事業再生の手段として、絶大な力を発揮する投資ファンドですが、投資ファンドを頼れば、事業が必ず成長するとは限りません。M&Aによって廃業に陥るといったリスクがあることも忘れないようにしましょう

事業売却を成功させる秘訣は、やはりM&Aについて知識を深め、入念な準備を行う事です。事業売却をお考えの方は、本稿を参考に早めの準備に取り掛かるようにしましょう。

ファンドへの事業売却のポイントとは?
投資ファンドは自社事業の売却先を検討する際の候補の一つです。こちらの記事では、投資ファンドを活用した事業売却で失敗しないために、投資ファンドとM&Aを行うにあたり、知っておくべき知識を紹介しています。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年6月5日
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