2019年8月13日 火曜日

医療機器卸のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

近年、医療機関に医療機器を販売する「医療機器卸」「医療機器商社」に対して同業の他社がM&A(買収・合併)を実施する事例が増加傾向です。

主にM&Aを積極的に行っているのは大手医療機器卸グループ会社です。

およそ5社の大手企業が巨大なグループ企業を形成する一方で、その他の医療機器卸企業も同業で吸収・合併を行い、競争力強化を図っています。

 

従って、医療機器卸事業の売却は今が売却に適したタイミングとする意見もあります。

しかし、市場での注目度が高いからといって無計画にM&Aを実施するのは良い選択とはいえません。

そこで、今回は医療機器卸業界の動向から、M&Aの事例までをご紹介します。

 

医療機器卸のM&A

 

まずは医療機器卸のM&Aが行われるようになった要因について解説していきます。

 

安定と不安の両側面を持つ医療機器卸市場

現在、医療機器関連のマーケットは2兆円を越える勢いのある巨大市場です。

市場を牽引しているのは、高齢化の進行と比例して増加する医療機器関連の需要です。

医療機器関連のマーケットはさらに成長するとされ、今後も安定した成長市場として注目を集めています。

 

一方で、政府の医療費抑制の方針が医療機器市場の成長の妨げになるという見方もあります。

高齢化社会が継続している日本では増え続ける医療費をいかに抑えるかが大きな社会問題です。

医療費のうち、医療機器の費用にあたる材料費の削減が医療機器の卸事業の収益に影響を与えることが予測されています。

 

医療機器需要増に伴わない収益の問題

高齢化に伴い医療機器の需要は年々増加していますが、近年の医療機器卸市場の成長率は1%台とわずかな増加にとどまっています。この低成長率の要因は医療費抑制政策です。

 

医療費抑制方針で医療機器の単価が下落しています。

高齢化や高度医療のための医療機器の需要増加と、医療機器の単価の低下がほぼ数量効果を相殺しています。

 この医療機器の収益低下に対応するための手段として、大手企業を中心にM&Aが活発に行われるようになりました。

 

今後さらに活発になる同業同士のM&A

医療機器単価の下落による関連企業の収益が低下は避けようがないとされています。

しかしながら、高齢化社会は今後も継続するため、医療機器市場は引き続き安定した市場であることは変わりありません。

 

その実、大手企業は確実に業績を増加させ、中小の医療機器の卸事業を傘下に収めることで経営基盤を強化しています。

また、大手企業がM&Aでグループ会社化を進める目的のひとつに、年々売上・生産高を増している医療機器メーカーとの交渉を優位に進めるという目的もあります。

 

医療機器卸は地域密着型事業

医療機器卸には「地域密着型事業」という特徴があり、この地域密着型事業によって生み出された地域シェア率こそが医療機器卸・商社のM&Aを増加させている要因のひとつです。

 

医療機器卸は地域の医療機関と密接な関係を築いている場合が多く、地域で5割以上のシェアを獲得している事業者も存在するほどです。

大手グループ会社は、既に地域で広く事業シェアを獲得している卸企業を買収することで、効率良く事業規模の拡大させる成長戦略としてM&Aを活用しています。

 

医療機器卸のM&Aを行う理由は?

ここからは、さらに詳しく売り手・買い手、双方の立場から見たM&A実施の主な理由について詳しくご紹介します。

 

売却側の理由

事業安定・継続

先に明記したように、医療機器卸の市場は大きく成長しないという予測を出す専門家もいます。

そのため、現在の経営が順調であっても、中小規模の事業者が積極的に大手企業の傘下入り・子会社化を目指す動きが見られます

大手グループ会社の傘下に入ることで、医療機器の共同購入や物流の効率化などの恩恵を受け、安定して事業を継続させる狙いです。

 

医療機器卸の事業承継

国内の多くの中小企業経営者は後継者不在問題を抱えており、医療機器卸の経営者も引退適齢期でありながらスムーズな事業承継ができていません。

医療機器の卸事業は地域住民の医療の継続性という重要な責任を担っているため、廃業ではなくM&Aによる事業承継が望まれています。

 

そのため、地域での事業継続を望む経営者はM&Aを利用して事業承継先を募るケースも少なくありません。この場合も、同業他社によってM&Aが行われることが多い傾向です。

 

買収側の理由

事業エリアの拡大

買い手がM&Aを行う目的として「スケールメリットの獲得」「医療機器メーカーとの交渉力強化」などがありますが、「事業エリアの拡大」を目的としたM&Aが多い傾向です。

 

経営戦略上重要な場所となっている、とあるエリアがあるとします。

効率的にエリアでのシェアを獲得する方法は、地域で事業基盤を確立している企業を買収・グループ会社することです。

これは地域密着型の事業を行う医療機器卸・商社のM&Aにおける大きな特徴といえます。

 

他業種の医療機器卸事業への新規参入

近年、他業種が医療機器卸事業へ効率的に新規参入する手段として、M&Aが用いられています。

医療機器卸事業を新規開業するには、「医療機器製造販売業許可」などの許認可・届け出が必要です。許認可取得は新規参入業者にとってハードルが高いため、医療機器製造販売業許可、そして事業エリアなどの有形・無形の資産を一挙に獲得するために医療機器卸関連企業を買収した事例があります。

 

医療機器の卸事業のM&Aを行うタイミングは?

現在は、医療機器卸業界への注目度の高さから、医療機器卸・商社をM&Aで売却する最適なタイミングとも言われています。

しかし、M&Aのプロセスは非常に複雑であるため、全ての医療機器卸がM&Aによって利益を得ることができるとは限りませんので注意が必要です。

 

では、M&Aを行う最適なタイミングとはいつなのか、詳しく解説していきます。

 

事業の市場価値が上昇傾向

医療機器卸も市場価値が上昇傾向にある理由のひとつが、スケールメリットの追求です。

スケールメリットは前述した事業エリアの拡大を含めたグループ会社化のことを指します。既に市場の25%を大手企業が占めています。

大手グループはさらなるスケールメリットの拡大のために、医療機器の独占販売権を持っている企業などを買収ターゲットとしています。

 

さらなる事業成長を目指す

現在の自社の経営状況の良し悪しに関わらず、さらなる事業の成長を目指したときがM&Aを行うタイミングであると言えます。 

医療機器卸事業でいえば、大手グループの傘下に入ることで安定した経営基盤の下で事業を行うことが可能になり、顧客(医療機関)に対して新しい提案活動を行うことも可能です。

または、M&Aで事業を売却することでまとまって資金を獲得することが可能です。この資金をもとに医療機器事業以外での事業に集中するという選択肢もあります。

 

事業ポートフォリオを最適化したい

取り扱っている医療機器のうち、不採算になっている医療機器部門を事業から切り離す場合にもM&Aを利用することができます。

M&Aによって事業の一部分を経営から切り離すことをポートフォリオの最適化と呼びます。 

自社では不採算部門であっても、大手グループや同業他社にとっては経営戦略上で必要な事業である可能性があります。

M&Aでタイミングを見計らい不採算を整理することで、コア事業に資金を集中的に注入し新たな事業を展開するといった戦略に舵を切ることが可能です。

 

医療機器卸のM&Aを実施するのは誰か?

医療機器卸のM&Aは現在、大手企業と同業他社同士の事例が多い状況です。

異業種からの新規参入のためにM&Aを行う事例も増えつつありますが、まずは医療機器卸のM&Aの大きな流れをおさえておきましょう。

 

大手医療機器の卸事業・商社による買収

医療機器卸・商社の大手がかかえる売上は、上位10社の合計で約4兆円にものぼります。

医療機器卸・商社の代表的な大手企業として「シップヘルスケアホールディングス株式会社」「メディアスホールディングス」などがあります。

 

大手企業は、国内はもちろんのこと、海外への進出も積極的に行っています。さらに、医療機器開発メーカーを買収し、開発市場に参入する動きもあります。

今後の医療機器の卸事業のM&Aは大手企業の動向に左右されるでしょう

M&Aで大手企業への売却を検討する際は様々な方面から情報を取り入れることが重要です。

 

同業他社同士の合併

事業エリアの拡大、医療機器の独占販売権などを補い合うことで事業を強化するために、同業他社とのM&Aも今後ますます活発になっていくことが予想されています。

中小規模の医療機器の卸事業・商社は安定した経営の下、大手企業との競争力を高めるために同業他社同士でM&Aを行い合併しています

医療機器の卸事業再編が本格的に動きはじめたため、中小規模の医療機器の卸事業のM&Aも活発になることでしょう。

 

医療機器卸のM&A事例

小西共和HDとシップヘルスケアHDのM&A

2016年3月、医療介護大手企業のシップヘルスケアホールディングスは医療機器販売業、小西共和ホールディングの株式を子会社化しました。

 

小西共和ホールディングは1950年設立の小西医療器によって2007年に設立されました。国内医療機関と密接なネットワークを築いている老舗医療機器販売として知られています。

 

シップヘルスケアホールディングスは小西共和ホールディングの子会社化によって、医療コンサルティング事業など業務拡大を図るとしています。

 

メディアスホールディングスによるミタスグループ3社を子会社化へ

2018年7月、北陸地方で医療機器・福祉介護用品を販売するミタスグループ3社の株式を医療機器販売大手メディアスホールディングスが習得、子会社化しました。

 

このM&Aにより、メディアスグループのグループ会社は計13社に増加、北陸地方での事業を強化し、売上げ増を狙っています。

 

北陸圏で半数以上のシェア率を持つミタスと、物流・販売システムの基盤を確立しているメディアスグループのシナジー効果で、北陸地方でさらなるシェア獲得と販売強化が期待されています。

 

医療機器の卸事業のM&Aの相談先は?

 

M&Aを当事者同士だけで実行することは現実的ではありません。

実際にM&Aを行う際にはM&A仲介会社をはじめとするM&Aの専門家の支援無しでは成功は望めません。

 

M&A仲介会社とは?

M&A仲介会社はその名の通り、「事業を売却したい企業」と「事業を買収した企業」の仲介をサポートする会社です。

M&A仲介会社にはM&Aの専門家が在籍しており、M&Aにまつわるあらゆる相談を受け付けています。

 

M&A仲介会社を利用するメリット

事業を売却するためには、「機密保持契約」「事業価値算定」など複雑な処理が必要です。

かつ、M&Aのために渡す情報は高い透明性が不可欠です。

そのため、これらの高度な処理をクリアするためにM&A仲介会社を利用せざるを得ないとも言えます。

 

さらに、仲介会社は多くの案件情報を保有しています。

仲介会社を利用せずに買収先を探す場合には、売却側企業がどれだけのネットワークを持っているかでM&Aの成功率が決まってしまいます。

仲介会社を利用する場合、仲介会社の保有する案件情報、そしてネットワークを利用して幅広く買い手を募ることが可能です。

 

M&A仲介会社の選定のポイント

仲介会社を選定する際には、信頼できる仲介会社を選ぶことが最も重要です。

M&Aを仲介会社が事業の売却情報を漏らしてしまい、事業の売却どころか経営不振に陥ってしまったケースもあります。

信頼できるM&A仲介会社を探す際には商工会議所や取引先の銀行といった、信頼のおける機関の紹介を受けるという手段がオススメです。

特に、医療機器に関する許認可の取り扱いについては、仲介会社が取り扱うM&Aの案件の中でも、専門的な知識と経験が必要な領域です。

医療機器関係のM&A実績のある仲介会社に依頼することが最適解と言ってもよいでしょう。

 

まとめ

医療機器卸のM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介しました。

実際のM&Aの事例も交えてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。

M&Aを成功させるためには、本稿後半でご紹介したM&A仲介会社のアドバイスのもとに慎重に交渉を進めることがポイントです。

まずは、医療機器卸のM&Aの仲介経験のあるM&A仲介会社に相談することが、M&Aを成功させるための第一歩です。

医療機器卸のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介
医療機器卸業界の近年の動向から、医療機器卸のM&Aを検討するにあたって重要なポイントについて詳しくご紹介します。なぜ医療機器卸のM&Aが増加傾向にあるのか、M&Aを行うメリットは何かなど、医療機器卸のM&Aにまつわる様々な情報をまとめました。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年8月13日
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