2019年8月11日 日曜日

医療機器卸の事業承継でお困りではないですか?事例を紹介

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

高齢化社会が深刻な問題となり、国全体での社会保障費の抑制が必要と言われています。

病院数の減少、統合合併の動きもあり、医療業界は今までにない生き残りをかけた激しい競争が行われています。

医療機器を病院に販売する医療機器卸業は市場規模2兆円と高齢化社会を背景に成長が見込まれていますが、すべての医療機器卸業が好調とは言えません。

大手医療機器関連業グループ5社を中心に業界再編が進んでいますが、すでに成熟しつつある医薬品関連業界と比較するとまだまだ医療機器卸業界の再編は途上にあります。

 

さらに全国の1,000を超える中小医療機器卸業は経営者自身の高齢化問題を抱えています。

健康問題での引退、会社が好調なうちに引退を考えていても、後継者がいないという悩みを抱えた経営者は少なくありません。

そこで、本記事では医療機器卸を事業承継するためのポイント、実際の成功事例をご紹介します。事業承継でお困りの方の解決の糸口になれば幸いです。

 

医療機器卸を事業承継しよう

医療機器卸業界の現状

医療機器業界を取り巻く環境は非常に厳しいといえます。

極端な高齢化社会から政府は医療費等の社会保障費の抑制が必要だとしています。

なかでも、診療報酬は今後もますます抑制されることが予想されています。

 

診療報酬の削減は医師への診療報酬よりも、医療機器の価格に関係する材料価格に大きな影響を及ぼしています。

近年の診療報酬改定率は0.49%と若干引き上げがありましたが、材料価格はマイナス0.11%と、医療機器卸業界は厳しい現状にさらされています。

 

医療機器卸が事業承継を行う理由

医療機器卸企業が事業承継を行う理由のひとつに、利益率低下への対応が挙げられます。

既に医薬品卸企業は統廃合が進み、メーカーとの交渉力を高めています。

医療機器卸業界もこれに倣い、経営の統廃合、業界の再編成で減少する利益率に歯止めをかけたいという狙いです。

 

もうひとつの大きな理由が経営者の高齢化、後継者不在問題です。

これらの問題は中小規模の企業が抱えているケースが多いです。また、医療機器卸業界のみならず、日本の中小企業全体が抱える問題でもあります。

 

医療機器卸のM&A・事業承継事例が増加傾向

医療機器卸業界は、医療費(材料費)削減、後継者問題などの解決策としてM&A・事業承継の件数が増加しています。

 

医療機器卸業界でのM&Aで目立つ動きを見せているのが、「シップヘルスケアホールディングス」「メディアス・ホールディングス」といった、大手5グループによる買収案件です。

さらには、医薬卸業界とのM&Aや事業承継による統合事例もあり、様々な形態で業界再編が活発になっています。

 

医療機器卸のM&A・事業承継の強み

医療機器卸のM&A・事業承継は、地域密着型の中小の医療機器卸企業と相性が良いとされています。

その理由として、医療機器卸の事業には医療機器取り扱いの許認可・届け出が必要なためです

 

医療機器の製造・販売を行うためには事業所所在地の都道府県知事への届け出が必要です。

そのため、事業エリアを拡大したい企業は新規開拓よりも、既にその地域で認可を受けた企業を買収するほうが短期間で事業エリアを拡大することができます。

 

後継者がいない、そんなときは

少子高齢化問題によって後継者が決まっていない中小企業は多々あります。

引退適齢期に迫っているが今ならまだ経営を引き継げるというオーナーが、後継者がいないためにやむを得ず廃業することは珍しくなくなりました。

 

そこで後継者不在問題の解決方法、事業承継についてご紹介します。

 

親族内承継

事業承継の方法で最も一般的な方法が「親族内承継」です。親族のなかでも、経営者の子供に事業を承継することを望む経営者は少なくありません。

事業承継で一番多く行われる承継の手段でもあります。

 

しかし、親族内承継はクリアしなければならない課題が多い点が問題です。

後継者の選定から教育、資産・株式の相続などがあり、少なくとも10年は準備期間が必要と言われています。

また、子供が事業承継を望まないケースも多く、親族内からも候補者が見つからない可能性も多くあるようです。

 

親族外承継

「親族外承継」では、親族内から後継者を選任できない場合に、社内の役員・従業員、社外から後継者を立てます

親族外承継は後継者問題解決だけでなく、経験豊富な経営者を外部から招きいれることで、事業拡大を図る際にも用いられます。

 

親族外承継を大きく分けると、「現経営陣が株式を保有したまま次期経営者に経営を任せる」「経営と自社株式を次期経営者に譲渡する」のどちらかの方法で行われる事が多いようです。

後者の場合は株式を取得するための資金調達が課題となります。

このとき、「MBO」という手法で株式取得する方法が有名です。

 

同業他社への事業承継

同業他社への事業承継は売却・買取、双方の企業に非常に多くのメリットをもたらします。

売却企業は後継者問題の解決、買収企業は売却企業の有形・無形の資産を効率的に手に入れることができます。

 

同業他社への事業譲渡は、引き継ぎがスムーズな点が非常に大きなポイントです。

医療機器卸事業の場合、地域医療を支えているため事業の空白期間を作ることは望ましくありません。

新規参入するよりも効率的でスピーディーに事業を運営できるのが、同業他社への事業承継です。

 

M&Aで広く買い手を募る

M&A(Mergers ”買収” and Acquisitions”合併”)は大手企業の「マネーゲーム」のイメージが強いのですが、近年では後継者問題の解決手段として積極的に利用されています。

 

地域密着の中小企業の多くは経営に行き詰まってしまい、それでも事業を継続したいという場合に買収先を募るケースが増えています。

大手企業チェーンや投資ファンドはこうした企業に対して積極的に買収を行っています。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

事業承継の方法のひとつ、M&Aによる事業承継をご紹介しました。

さらに、M&Aによる事業承継のメリットは後継者不在問題だけではありません。ここからはM&Aによる事業承継のいくつかのメリットを解説します。

 

事業の継続・発展

企業活動で重要な事業の継続です。M&Aによる事業承継は企業活動を継続させ、さらに企業を発展させる可能性があります。

M&Aで買収を行う企業の目的は様々ですが、小規模の企業を対象とした場合の買収目的は、買収する企業の事業価値を手に入れるためです。

事業価値は企業の持つ有形・無形の資産のことを指します。これには、取引先企業(病院)や従業員も含まれています。事業価値を引き継ぎ活用することで、さらなる事業の継続と発展が期待できます。

 

雇用・取引先の継続

M&Aによる買収では従業員の雇用・取引先の継続が行われる場合があります

特に地域密着型の中小企業がM&Aによる事業承継を選択する場合、雇用と取引先の継続は大きなメリットです。 

同業他社によるM&Aの場合も、事業そのものや業務フローに大きく変更はありません。

そのため、雇用・取引先の継続することは買収側が効率的に事業を運営することを可能にします。

 また、お互いが持つ事業の知識・ノウハウの統合を行い、さらに事業価値を高めていくこともできるでしょう。

 

売却益の獲得

M&Aで事業を売却すると、売却益を獲得することができます。経営者として育ててきた企業を売却することで、多額の現金収入を得ることができるため、M&A最大のメリットと言われることもあるほどです。

 

ただし、M&Aによる事業承継で必ず利益が出るわけではないことに注意しなければなりません。

先にお話したように、買収側の目的は事業価値の獲得です。

将来的にM&Aで事業を売却することも視野にいれ、事業を育成することも企業戦略のひとつです。

 

事業ポートフォリオの再編

いくつかの事業を展開する企業においては、M&Aで事業の選択と集中ができます

採算部門は手元に残し、不採算部門だけを売却するといったこが可能です。

不採算事業の売却益で採算部門に資金を注入し事業に専念しながらも、売却した事業も優秀な企業に経営によって事業を継続させることも可能です。

 

医療機器卸の事業承継のポイント

M&Aによる事業承継には多くのメリットがあることがご理解いただけたかと思います。

しかし、事業承継は決して簡単なものではありません。事業承継の準備が不十分だったために最終段階で交渉が破断になってしまうこともあります。

ここからは、医療機器卸を事業承継する際のポイントについてまとめていきます。

 

事業承継の目的を明確にする

事業承継によるメリットは先に述べたとおり、様々なものが存在します。

しかし、そのすべてを得る事は難しく、何を目的として事業承継を行うかを明確にしなければなりません

目的を設定する際のポイントとして、「譲れない条件」を設定することです。交渉では譲れない条件を軸にする事で、円滑に話が進むようになります。

 

事業価値を知る

事業価値は事業承継の最も重要な要素と言えるでしょう。

事業価値は現在の資産のみならず、現在・将来の収益性など様々事業にまつわる要素から算出されます。

事業価値を正しく知ることで、正当な売却益を得ることができます。また、交渉の透明性を示す指針にもなり得ます。

しかし、事業価値の算出は非常に複雑であるため、専門家にサポートしてもらう必要があります。

 

M&A・事業承継の専門家に相談をする

事業価値の算出をはじめ、M&A・事業承継の際にはM&A専門仲介業者などの専門家の助言が必要です。

特に事業価値の算出に関しては、いくつか算出方法がありますがどれも専門的な知識・経験が必要な作業です。

 

そして、ほとんどの経営者がM&A・事業承継が初めてであることに対して、M&Aの専門家は数多くのM&Aの経験を得ています。

M&A・事業承継の検討をはじめた際、まずは専門家の手を借りてみてください。

 

譲渡先の選定

M&A・事業承継では、事業の譲渡先の選定は非常に慎重に行います。

 まず、譲渡先が決まり交渉が最終段階に進むまで、M&A・事業承継の情報が外部に漏れてはいけません

また、従業員に与える心理的影響も考慮し、従業員にも情報は伏せて譲渡先を探す必要があります。

 

M&A・事業承継には最適なタイミングがある

M&A事・業承承継のタイミングは非常に重要です。突然条件にマッチした買収企業が現れるかもしれません。

事業承継を行うには様々な準備が必要です。前もって承継の準備を済ませておきましょう。

また、医薬品卸業界の統廃合、医療機器卸業界の再編のように売却に適したタイミングがあります。

最適なタイミングで事業承継の交渉ができるように、好条件で売却するために早めの準備が望ましいと言えます。

 

医療機器卸の事業承継事例

医療機器卸企業のM&A事例

買収側:エムスリー株式会社(東京都)

売却側:コスモテック(東京都)

買収の目的:医療機器の販路獲得

 

エムスリー株式会社は医師を会員とした医療ポータルサイト「m3.com」の運営、Webを活用した医薬品営業代行サービスなどを提供している国内最大手の医療IT企業です。

 エムスリー株式会社は医療機器分野への進出のため、医療機器商社コスモテックを2017年11月1日付けで完全子会社化しました。買収価格は10億円、医薬品で成長した事業モデルを医療機器卸業界で展開する狙いです。

 

医療機器卸業の事業承継の事例

買収側:A社(未上場)

売却側:B社(同業上場企業)

事業承継の目的:息子への事業承継と同業大手傘下で事業を継続させる。

 

A社は材料価格の下降、業界大手企業が商圏へ参入し、営業赤字となります。

地域で着実に優良顧客を育てていましたが、単独での経営に危機感を感じたため、同業大手B社の傘下に入ることをM&A専門仲介会社へ相談しました。

A社の事業承継の条件は会社売却後、創業者の息子C氏が経営に携わることです。

 

B社はA社の事業価値、特にB社の事業戦略上重要な地域に顧客を抱えていることに対して高い買収の意思をもっていました。

さらに、C氏は高い経営センスを有していたことから、A社の経営とB社の持つ商圏のエリアマネージャーを兼任、さらなる活躍を期待されています。

A社とB社に相互利益をもたらし、事業承継も成功した事例です。

 

まとめ

医療機器卸の事業承継についてまとめてご紹介しましたがいかがでしたか?

今後、高齢化に伴い医療機器の需要は高まり、医療報酬の抑制といった要因で医療機器卸業界はますます統合・再編が進みます。

事業承継の準備を何から始めればいいのか、お困りの方は経験豊富なM&A・事業承継の専門家へ相談することをおすすめします。

医療機器卸の事業承継でお困りではないですか?事例を紹介
本記事では医療機器卸を事業承継するためのポイント、実際の成功事例をご紹介します。医療機器を病院に販売する医療機器卸業は市場規模2兆円と高齢化社会を背景に成長が見込まれていますが、すべての医療機器卸業が好調とは言えません。事業承継が、経営や後継者不足でお困りの方の解決の糸口になれば幸いです。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年8月11日
医療機器卸のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介
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