2019年7月19日 金曜日

製造業(メーカー)の事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

現在、わが国では、少子高齢化により中小企業の後継ぎの減少が社会問題となっています。後継がいなくなることによって、これまで日本経済を支えてきた製造業、特に中小の製造業の休廃業を余儀なくされています。

 

日本の企業のうち、99%以上が中小企業であり、また正社員として働いている人の70%近くが中小企業に勤務しています。そんな中、中小企業の休廃業数の急激な増加が日本社会に与える社会的損失は計り知れません。少子高齢化により後継者となる若者が減っている中で、有効な策として現在注目されているのが、「M&A」という事業承継方法です。

 

事業承継とは、会社の事業を後継者に引き継ぐことをいいます。優れた技術とノウハウを持った会社事業を、いかにして次の世代に引き継いでいくかという、とても大切な手続きです。

 

今回は、この事業承継の種類を解説した上で、今注目を集めているM&Aという事業承継方法について、そのメリットや将来的な可能性について解説します。

 

製造業(メーカー)を事業承継しよう

事業を誰かに承継(引継ぎ)するということは、会社の存続に関わる、とても大切な経営判断です。また、製造業の事業承継特有の問題もあります。ここでは、まず事業承継の基本についてご説明します。

 

事業承継とは会社の経営を後継者に引き継ぐことを言いますが、承継する対象については、大きく3通りの方法があります。

 

親族に承継する

通常、事業承継というと、子供に継がせることを指すと考える方が多いと思います。子供や親族といった身内に引き継ぐ安心感は、経営者にとって大きな魅力です。引き継ぐ側の意思がはっきりしていれば承継の手続きがスムーズに進み、また社内・取引先への周知も認められやすいというメリットがあります。

 

ただ、限られた身内の中から企業経営の資質を持った人材を探し出すことは、少子化の昨今、容易なことではありません。特に最近では、子供に対する「自由な働き方の尊重」という価値観の拡がりにより、子どもが親の事業を引き継がないケースが増えています。

 

また、近年の経済・社会の変化による厳しい経営事情から、「継がせる不幸」を味あわせたくないと考える経営者も多いようです。中小企業庁のデータによると、親族による事業承継は、親族以外による承継の半分以下の割合にまで急速に低下しています

 

(親族外の)従業員等に承継する

親族への承継が難しい場合、長年勤め上げ、事業内容にも詳しい従業員、あるいは見込みのある若手社員に事業を引き継ぐことも有力な選択肢です。元従業員であれば社内での反発も少ないでしょうし、有望な若手を育て上げることで会社のさらなる発展も見込めます。

 

従業員に承継させる場合の注意点としては、候補者を見つけることが難しいという点です。引き継がせる場合、通常は株式を譲渡し、その対価を支払ってもらうことになります。対価は通常、純資産を基準にしますが、多くの会社で純資産額は1億円を超えます。しかし、このような大金を用意できる従業員は少ないので、引き継ぎが難航するのが実情です。

 

従業員に引き継ぐ場合、経営者の相続人との経営権争いを避けるために、事前に合意を取りつけておくなどの入念な手立てを打っておくことが大切です。

 

M&Aで承継する

3つ目は、M&Aによって他社に承継する方法です。M&Aとは「Mergers(合併)and  Acquisitions(買収)」の略で、2社以上の企業による合併や吸収、資本による企業買収、さらに企業提携まで含んだ企業買収の手法です。

 

かつては、買収と言うと会社を「乗っ取る」という良くないイメージがありましたが、最近では事業を成長・発展させるための戦略として、また、企業の後継者不足対策として、M&Aによる事業承継が盛んに行われるようになっています

 

M&Aでは、自社事業に関心を持つ企業を見つけて、その企業に自社の買取を依頼します。中小企業の場合、株式譲渡による方法が一般的です。

 

後継者がいない、そんなときは

人材が豊富で安定した経営体で運営されている大企業と異なり、中小企業の場合、若くして起業し、個人の才覚で会社を大きくしてきたワンマン経営者であったりすると、経営者ひとりに権限が集中していることが多く見られます。このような会社の場合、経営者の交代は大きな混乱を招きかねません。したがって、経営者が元気なうちに、早めに承継作業の手を打っておくことが重要です。

 

近年、特に中小企業において、良好な経営状態にもかかわらず後継者を見つけることが出来ないがゆえに廃業せざるを得ないケースが増えています。

 

親族への承継については、経営者が子供をはじめとする身内の意思を尊重して自由な働き方を認める風潮が強まってきたことにより、子どもが親の事業を引き継がないことが多くなってきています。また、最近の厳しい経営事情のリスクを負わせたくないと考える経営者自身の判断により、引き継がせないケースも増えてきました。従業員に承継することを考えた場合でも、後継者候補の資金力に対する懸念から難しい場合が多いという事情があります。

 

このように、事業承継ができないと廃業せざるをえません。資産をすべて売却し、負債を支払って清算することで会社は消滅します。これは、単にその会社の財産が失われるというだけの話ではなく、その会社が築き上げてきた優れた技術や特許、ブランド価値が消滅することを意味します。このような優良企業の廃業はわが国の国際競争力の低下、さらには産業の衰退にも繋がります。

 

このように、身内や会社内に事業を引き継げる人物が期待できないために廃業の道を選ばざるを得ない事態は、日本経済の発展を守るためになんとしてでも避けねばなりません。

 

そこで、現在注目されているのがM&Aという事業承継方法なのです。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

製造業、とくに中小企業の後継者問題を解決する可能性を秘めているという期待から、M&Aによる事業承継が増加しています。ここでは、そのメリットを解説していきます。

 

安定した経営基盤での事業の継続

M&Aにより、大手の安定した経営基盤を持つ企業に承継することで事業を強化でき、信用度の向上を図ることが可能です。一般的に採られる株式譲渡であれば、経営陣が変わるだけで事業そのものは継続できるので、顧客や取引先との従来の関係性を維持しながら、売却後も引き続き地域社会に貢献していくことが可能です。

 

従業員の雇用の維持

M&Aによって、従業員の雇用の維持が可能となります。とくに、承継先が上場企業であれば充実した福利厚生も期待でき、雇用形態がより安定します。

 

金銭面でのメリット

M&Aは、会社清算を選んだ場合に比べ税制面で優遇されるため、多くの手取りを得ることができます。M&Aは実質的には株式の売買ですから、キャピタルゲインを得ることが出来ます。売り手はこれまでの事業での功績を金銭として獲得することで、リタイア後の生活資金、あるいは新たな事業への資金を確保することができます。

 

資金繰りの悪化により事業の継続が困難であるとき、M&Aによる事業承継により買収企業の資金を注入することでこれらを解決し、さらなる事業拡大を期待できます。

 

負債がある場合、親族間の承継では負債もそのまま承継されます。また、従業員への承継の場合も連帯保証人の変更手続きが難しいという課題があります。M&Aの場合では、負債も含めた財産権すべてが買収企業に移転するので、売り手は負債から解放されるというメリットがあります。

 

M&Aにおけるシナジー効果(相乗効果)

シナジー効果(相乗効果)とは、複数の企業・事業の統合により、それぞれの企業・事業が単独で運営される場合を上回る効果を生むことを言います。

 

 M&Aにおけるシナジー効果(相乗効果)として、売上向上・取引先拡大・コストダウン等が期待できます。

 

製造業(メーカー)の事業承継のポイント

長らく日本経済を支えてきた製造業界。そんな、製造業の事業承継には、この分野特有の課題があります。しかし、またその課題を乗り越えることで見えてくる大きな可能性も秘めています。

 

株価・相続対策

製造業の場合、通常は工場などの不動産を所有しています。株価が高く評価されることが多いので、しっかりとした株価対策が必要です。これは、相続に関してもあてはまります。

 

また、設備投資などで多額の債務を抱えている会社の場合、後継者に借金を背負わせてしまう危険性があります。返済できないほどの負債があるのであれば、事業継承の見直しを視野に入れる必要も出てきます。

 

職人の技の継承

製造業における事業継承の場合、一番の問題になってくるのが技術と人、つまり、職人の技をいかにして継承いくかという点です。これはバランスシートには反映されない部分です。

 

技術を継承するには、継承する相手が必要です。しかし職人の高齢化が進む一方で、折からの人手不足により、若い担い手が減っています。優秀な若い人材を集めるには、時代に合った、より魅力のある職場環境を整えることが求められています。

 

事業継承を契機に、従業員が気持ちよく働けて、かつ継続的な利益を確保するため、会社全体の構造改革に着手することは、未来の技術を担う若手社員を確保するために有効だと言えます。

 

現在、中国をはじめとする、多くの海外企業が買収を試みているという現実があります。海外からの日本製品へのリスペクトが顕著で需要が高い今、事業継承を成功させる事が出来れば、ライバル会社が減少しているなかで存在感をアピールすることができ、生存競争の中で生き残っていくことが可能となります。

 

そのためには、日本の製造業がこれまで培ってきた優れた職人の技を継承しつつ、旧来の職人頼みの技術を仕組化・体系化したものへと進化させていく必要があります。

 

業界再編の動きはあらゆる分野で進んでおり、製造業も同様です。優れた技術を保有しながらも、これまで各々で活動していた零細企業が一つにまとまることで経営力を高め、業務を効率化していこうという取り組みが業界全体で見られます。

 

他分野への応用可能性

今、製造業の中には事業継承を機に、他分野への応用可能性を模索する動きが広がっています。グループの企業化により他分野へ乗り出していこうとする会社、異業種と直接手を組み業界を超えての連携・マッチングに果敢に取り組んでいる会社など形は様々ですが、ひとつの大きな潮流があります。

 

それは、近年成長著しい「Internet of Things(IoT)」、「人工知能(AI)」といった新しいテクノロジーを積極的に取り入れていこうという動きです。

 

従来のIT技術は、あくまで業務を補助的に支えるといった役割に過ぎませんでした。しかし、IoTをはじめとする新テクノロジーには、業界構造そのものに大きな変革を起こす力があります。これは製造業以外の分野でも広く見られる現象ですが、スマートフォンを操る個人がIoTを活用して、様々なビジネス分野に参入しています。

 

その一例として、「Uber」のような車を所有しないタクシー会社の繁盛ぶりはその好例です。今まさにタクシー業界は、こうした新テクノロジーを駆使する競争相手に対抗するために、旧来のビジネスモデルから脱皮することを余儀なくされています。

 

その他の分野においても、土地や建物を持たないホテルチェーンや、回線を持たない電話会社などが生まれてきています。今後、企業は新テクノロジーを積極的に取り込み、成長していくことが出来なければ生き残ることは難しいでしょう。

 

そのためには、先端技術に関する専門的知識が必要です。近年、事業継承の機会を絶好のチャンスと捉え自社に新テクノロジーを取り込みながら他分野・他領域に乗り出していく、こうした目的をもったM&Aが増えています。

 

製造業においても、今までの「モノを作って売る」というスタイルから、IoT技術を使うことで故障を事前に検知し、稼働履歴の把握により燃費を向上させるといった、サービスを収益の軸に据えるビジネスモデルへの転換が顕著になってきています。

 

こうしたM&Aによる他分野への参入先の一つにヘルスケア事業があります。2017年のこの分野での主なM&Aは20近くにのぼりました。中でも、村田製作所が米国のヘルスケア関連ベンチャー「Vios Medical, Inc.」を買収した案件は大きな注目を集めました。

 

Vios社が持つチェストセンサーと、それを支えるソフトウェアやクラウドサービスの技術を活用することで、ヘルスケア・メディカル分野での新たなビジネスモデルの確立と顧客創出が期待できること、さらに村田製作所自身のセンサーや通信の技術とのシナジー効果も十分考えられるということです。

 

ヘルスケア分野へはオムロンなども進出しており、今後もこうした製造業メーカーによるM&Aの案件は増加するだろうと言われています。

 

まとめ

ここまで製造業(メーカー)の事業承継について解説してきました。

 

特に、中小企業における後継者不足によって、事業の存続が難しい案件が増えているというのが現実です。しかし、無理やり後継者を探すのではなく、事業承継の機会をチャンスと捉えて、M&Aという手段で今まで築き上げてきた技術を継承しつつ、会社を存続させて行く事が重要です。

 

その際、既存の枠組みに囚われず、最新テクノロジーを取り入れることで、新たなビジネスチャンスの拡大を狙う事が鍵になるかもしれません。

製造業(メーカー)の事業承継でお困りではないですか?
本稿では、この事業承継の種類を解説した上で、今注目を集めているM&Aという事業承継方法について、そのメリットや将来的な可能性について解説します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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