2019年1月22日 火曜日

保険代理店の事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

街を歩いていてもインターネットを見ていても、保険商品の広告は頻繁に目にす事が多いです。一昔前に比べると保険商品はずっと身近な存在になっていると思います。

一方で保険代理店業界に目を向けると、M&Aを繰り返し存在感を増す大手企業もあれば、経営で苦しむ中小の保険代理店も目立ちます。

経営を立て直せれば良いですが、場合によっては経営者にその意欲が沸かないケースもあるでしょう。そんな際に一考頂きたい手法に事業譲渡というものがあります。今回はそんな事業譲渡の基本からポイントまでをまとめてご紹介したいと思います。

 

保険代理店の事業譲渡を検討してみては?

保険代理店業界も少子化の影響を受けており、後継者がいないと頭を抱えている経営者は少なくありません。
また、インターネットを活用した保険の販売形態も主流になりつつあり、生き残りをかけた競争も激しい現状です。それを受け事業の選択と集中を判断する必要のある企業も増えています。

そんな中、注目されているのが事業譲渡という方法です。
年齢や健康状態、事業の取捨選択など事業譲渡に至る経緯は様々ですが、近年事業譲渡を選択される方は増えてきています。
まずはそんな事業譲渡という手法と実際の事業譲渡の流れについておさえましょう。

事業譲渡とは

事業譲渡とは自社が行っている事業を他社に譲渡する事です。
ここでいう事業とは、一定の目的のために組織されている有形無形の様々な財産を指しています。例えば人材・財産・債務・ブランド・事業運営のノウハウ・取引先との関係などです。
この事業譲渡では、会社の営んでいる全ての事業を譲渡する事も出来れば、一部の事業のみを譲り渡す選択も可能です。
注意点としては、事業譲渡をした会社は、事業譲渡した事業と同じ事業を行う事が制限される点です。

事業譲渡の流れ

具体的な事業譲渡の流れですが、以下の7ステップで行われるケースが多いです。事業譲渡の全体の流れを掴みましょう。

①事業譲渡先の候補となる企業を見つける
譲渡を考える上で、まずは相手企業、つまり買い手がいないと始まりません。
しかし事業譲渡は内密に進める必要があるため、会社のHPなんどで大々的に告知を出す事も出来ません。相手企業に出会う道のりは色々ありますが、最近ではマッチングサイト、仲介業者のネットワークを活用する事が一般的です。

②候補企業からの意向表明書を確認する
企業を買い取りたいとの意向を表明したのが意向証明書です。
意向表明書には具体的に譲り受けたい事業は何か、資産はいくらか、債務の範囲はどの程度かなど様々な条件が記載されます。
加えて今後の譲渡の進め方の予定も内容に含まれており、事業譲渡を進める上での土台とも言えます。

③基本合意書を締結する
意向表明書にて両社問題がないようであれば、基本合意書を締結します。注意点としては、この基本合意書に事業譲渡の契約は含まれていません。今まで同意の得られている方向性で話を進めていきましょうという約束と考えて頂けたらと思います。

④売り手側の企業について調査をする
デューデリジェンスとよばれる行為で、売り手側の企業について調査します。この調査では売り手側の申告内容に虚偽がない旨を確認し、会社の評価にかかわる未申告の事柄がないか調べます。

⑤契約書を締結する
デューデリジェンスにて売り手企業の事業の価値やリスクを明確にした上で、初めて契約をするステップに進みます。
大変重要なフェーズであり、お互いの意見が対立すると交渉が長引き、決裂するケースもあります。円滑な交渉のためには弁護士や仲介業者など専門家の力を借りると良いでしょう。

⑥株主総会で事業譲渡の承認を得る
株式が公開されている企業の場合は、株主総会にて事業譲渡の承認を得る必要があります。事業譲渡の承認を得る条件としては、株主の半数の出席および3分の2以上の賛成票が必要です。

⑦事業を受け渡す手続きをする
株主の同意を得られたならば、実際に事業譲渡をする手続きを進めていきます。
債権や土地の名義などを移転する必要があるるので、売り手側と買い手側の双方で協力してスムーズな事業譲渡を行いましょう。

 

保険代理店を事業譲渡するメリット


続いては保険代理店が事業譲渡をするメリットについてみていきましょう。
M&Aの中でも『事業譲渡』という方法を選んだ場合は、どのような利点があるのでしょうか?ここでは、売り手側と買い手側の双方の立場から、それぞれ考えていきたいと思います。

売り手側のメリット

まずは売り手側のメリットです。他のM&Aの手法と共通するポイントもありますが、事業譲渡ならではのメリットもありそうです。最大限に良い側面は活用して、事業譲渡を検討しましょう。

【1】まとまった資金を得られる
事業譲渡に限らず、M&Aの売り手側企業の共通したメリットとも言えますが、会社の売却によってまとまった資金が手元に入るのは大きな利点と言えます。

まとまった資金があれば、残した事業のために使う事、場合によってはリタイア後の活動資金にあてる事もできるでしょう。事業譲渡なので会社売却に比べると得られる資金は少なくなる可能性がありますが、ある程度のまとまった資金が手元に入る事は非常に助かります。今後の選択肢を広げるための貴重な活動源として、有効に使いましょう。

【2】一部の事業のみを譲渡できる
会社は存続させた上で特定の事業のみを譲渡できるのも、売り手側の大きなメリットだと言えます。
事業譲渡を考える背景には、様々な背景があると思います。主力の事業に集中して取り組みたいという方もいれば、採算が取れておらず手に余っている部門をなんとかしたいという方もいるでしょう。
事業譲渡はこれらの売り手側の一部の事業のみ譲渡したいというニーズに的確に答えられる手段です。会社の独立性は保ったまま組織再編を行える手段なので、経営の見直しにも用いられています。

【3】必要な従業員や資産を残せる
上記のメリットの裏返しでもありますが、必要としている従業員や資産を残せる点も事業譲渡の嬉しいポイントです。
同じM&Aでも会社自体を売却してしまう場合だと、当たり前ですが基本的に全ての従業員や資産も買い手側の企業に引き継ぎます。事業譲渡の場合であれば、当事者である売り手と買い手の企業の間で譲渡する事業の承継範囲を契約で定める事ができます
従って売り手側が特定の従業員や資産を残したい場合はそれを契約に反映させる事も可能です。

買い手側のメリット

次に買い手側のメリットです。こちらも事業譲渡ならではの利点が並んでいます。早速みていきましょう。

【1】買収する事業の選択ができる
売り手側とも共通する項目ですが、買収する事業を選択できるのは買い手側にとっても大きなメリットと言えます。
先ほども述べましたが、事業の承継範囲を契約の際に決める事ができるので、売り手側が持つリスクについては承継を回避することが可能です
他のM&Aの手法、例えば合併や株式譲渡の場合だと、売り手側の会社の全てを継承する事になります。そのため、買い手側からすれば不要な契約や資産、場合によっては負債を背負ってしまうリスクもあります。その点、事業譲渡を行えばそれらのリスクを避けられるので、買い手側としても安心感や納得感の強い方法と言えます。

【2】自社の事業の補強ができる
保険代理店を運営する上で、補強すべきポイントというのは多岐に渡ります。例えば社員の更なるスキルアップ、お客様への販売商品の拡大、新たな営業窓口の展開などです。
企業ごとに事業をより強化するためのプランは様々だと思いますが、事業譲渡を活用した自社の事業の補強は十分に可能です。自社の希望にあった売り手企業をよく見極めれば、自社の強みをより磨く道も、苦手としている弱みを克服する道も選べます。

【3】節税になる
買い手側は税務面でもメリットを受けられます。
買い手側が事業を買収する際に支払う金額は、次の2つの合計額です。
・現在の事業の価値
・将来生み出すであろう価値
このうち、「将来生み出すであろう価値」については「のれん」と呼ばれており、損金算入することができます。この「のれん」の償却を利用して税金を削減する事が可能です。


保険代理店を事業譲渡する際のチェック項目 (譲渡の目的、譲渡先、事業価値、譲渡タイミング)


最後にお伝えしたいのは、事業譲渡を考える際にチェックすべきいくつかのポイントです。以下の項目を押さえれば、満足のいく事業譲渡の結果にぐっと近付けると思います。なるべく漏れなく準備を進めて、事業譲渡を成功させましょう。

【1】譲渡の目的を明確にする
事業譲渡に限らずビジネスにおいて共通して言えますが、何か行動する上で目的は明確にするべき必要があります。事業譲渡の際にも譲渡計画書の作成を行いますが、事業譲渡の目的ははっきりと記載すべき項目です。
まとまった資金を得る事が大切なのか、それとも店のコンセプトを継承してもらい、従業員の労働環境の維持を優先したいのか、主とする目的によって事業譲渡の方向性も変わります。
実現したい項目を洗い出して、優先順位や必須項目を明確にしましょう。

【2】譲渡先の選び方
譲渡の目的に合った譲渡先を選定します。
譲渡先は親族や従業員からの紹介で知り合うケース、仲介業者などを利用してそれ以外の第三者から引き合いが来るケースなどがあります。
譲渡先を選ぶ際の注意点は、事業譲渡を考えているという情報が外部に漏れて広まってしまわないかという点です。事業譲渡の情報が広域に漏れてしまうと、事業譲渡の条件が悪くなってしまうリスクが高まります。さらに本業務でも悪い印象が付いてしまい、経営に悪影響を及ぼす可能性も考えられます。
知人などの紹介で譲渡先を探す場合は情報が漏れるリスクがあるので特に注意しましょう。仲介業者を利用する際も、情報の扱いについて注意を促すようにすると安全です。

【3】譲渡対象の事業の価値
実際に事業譲渡先もある程度決まったら、売り手側と買い手側の企業でお互いに事業譲渡を満足のいくものにするために交渉をしていきます。
その交渉の際にポイントとなるのが、譲渡対象の事業の価値です
会社全てを売買するのとは異なり一部の事業を譲渡するので、正しく事業の評価をするのには専門的な知識が必要です。保険代理店の事業譲渡に対して成功事例の多い会計士や仲介業者をよく選定して、専門家に任せるようにしましょう。経営者としては数値的な事業の評価に表しにくい評価材料を明言できるように準備しておくと良いでしょう。例えば保険代理店運営の際に工夫してきたノウハウやポジティブな職場の文化を伝えられると評価額の向上も期待できます。

【4】社員への伝達
事業譲渡をするという情報は極秘情報で、情報を漏れるリスクは徹底的に避けるべきです。保険代理店で働く従業員に対しても、ギリギリまで情報を伝達しないケースが主流です。
しかし、保険代理店でもそうですがm店舗には優秀で円滑な事業運営の鍵となるキーマンが存在します。保有している資格のカバー範囲が広かったり、営業力やクレームへの対応力が優れている人がそれにあたります。
判断は慎重に行う必要がありますが、キーマンに対しては早めに事業譲渡の譲歩を伝える事も場合によっては有効です。保険代理店の運営状況をよく鑑みて判断するようにしましょう。

【5】譲渡するタイミング
理想的には経営にある程度の余力があるタイミングでの事業譲渡が望ましいです。
事業譲渡を思い立ってから、実際に事業譲渡されるまでにはそれなりの時間がかかりますし、その間に不測の事態が起こる事も考えられます。ゆとりを持って事業譲渡のアクションを行えば、より条件の良い買い手企業を見つけられる可能性も高まりますし、事業譲渡も成功しやすいでしょう。
ただ注意点としては、好条件を求めるあまり相手の選定や交渉に時間を割きすぎると、情報が不要に漏洩するリスクも高まります。ある程度スケジュールを決めて行動するようにしましょう。

【6】デューデリジェンスへの準備
事業譲渡の交渉も終盤に入ると、デューデリジェンス(買収監査)が行われます。
デューデリジェンスとは最終的な契約の直前に行われる行為で、買い手側企業が問題のある事業を誤って購入してしまわないように譲渡対象の事業の状態を細かくチェックする作業を言います。この作業に際して売り手側企業は必要な資料を漏れなく準備する必要があります。例えば会社概要、労務管理状況、財務諸表、契約書類などです。書類の点検以外にも、保険代理店の店舗を実際に視察する場合、社員への聞き取り調査が行われる場合もあるので注意しましょう。事業の評価価値を落とさないためにも、周到な準備をお勧めします。

 

まとめ

保険代理店の事業譲渡について全体の流れからメリットやポイントをみていきましたが、いかがでしたでしょうか。

決して事業譲渡は簡単な行為ではありませんが、今回ご紹介したポイントを踏まえて適切な専門家の協力を得られれば、現実的な選択肢として浮上するはずです。保険代理店の経営で悩まれ際は、事業譲渡という選択も視野に入れて会社にとって最善の方法を見つけるようにしましょう。

保険代理店の事業譲渡を検討する際のチェック項目
街を歩いていてもインターネットを見ていても、保険商品の広告は頻繁に目にする事が多いです。一昔前に比べると保険商品はずっと身近な存在になっていると思います。
一方で保険代理店業界に目を向けると、M&Aを繰り返して存在感を増す大手企業もあれば、経営で苦しむ中小の保険代理店も目立ちます。
経営を立て直せれば良いですが、場合によっては経営者にその意欲が沸かないケースもあるでしょう。そんな際に一考頂きたい手法に事業譲渡というものがあります。今回はそんな事業譲渡の基本からポイントまでをまとめてご紹介したいと思います。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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