2019年1月21日 月曜日

保険代理店の事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

現在日本は、少子高齢化の時代を迎えており、この先も徐々に人口が減っていくことが予想されています。
そこで問題となるのが、保険会社の加入率です。
人口が減ると、当然保険会社の加入者が減り、保険会社の収益も比例して減っていきます。保険会社の収益が減ってしまうと、保険会社に勤める社員の数も減ってしまうという負のサイクルに陥ってしまいます。保険会社の社員が減ってしまうことで、保険会社と消費者の仲介役である保険代理店へのサポートが手薄になってしまうのです。
そのため、保険会社は、代理店の数を減らすための方法として、代理店の売却を始めています。

現在、問題を抱える企業や、さらなる躍進を考えている企業がM&Aを実施しています。では、保険代理店の場合は、どのような目的のもとでM&Aによる事業売却を実施しているのでしょうか。本記事では、保険代理店の事業売却の目的や、目指せるステージなどをご紹介していきます。

 

保険代理店の事業売却で次のステージへ


保険代理店の売却では、『さらなる事業展開を目指したい』『顧客のニーズに応えたい』など様々な理由で事業の売却・買収が実施されています。現在、保険業界では、顧客のニーズが多様化しており、幅広い要望に応え顧客獲得に繋げようと考えています。ただ、自社の強みや、企業規模だけでは、なかなか実現できないのが現状です。
そこで、自社が抱えている問題を解決し、次のステージへ躍進できる方法として、M&Aを検討する保険代理店が増加しているのです。
「買収」や「売却」といったフレーズは、一昔前ではマイナスのイメージを抱きがちでしたが、現在は、企業の発展の一つのプロセスとしてプラスのイメージをもちます。もちろん、実際にプラスの効果が期待でき、多くの保険代理店は、そのプラスの効果により、事業を拡大するに至っています。

では、業界の現状と併せて、事例からM&Aで何が実現でき、次のステージへ繋げることができたのか見ていきましょう。

 

保険代理店業界の現状

まず、この業界について知識を深めていきましょう。

現在、保険代理店の数や市場の成長率は、減少傾向にあります。その要因は多岐に及びますが、最大の要因は少子高齢化によるマーケット規模の縮小でしょう。業界全体では、店舗数・成長率が共に減少傾向にあるものの、一部の代理店は事業を拡大しつつあります。
ここでは、現在、勢力を拡大している形態の代理店についてご紹介します。

【ダイレクト販売】
ダイレクト販売型とは、ネットで保険商品を販売する業者です。
この業者は、約10年前から勢力を伸ばしており、特に自動車保険業界では急成長を遂げています。
また、生命保険会社でも、ダイレクト販売のニーズは高まっており、近年は、ライフネット生命を始めとする多くの業者が参入しています。
現代では、ネット環境が身近にある世代であるため、ダイレクト販売のニーズはますます増していくと予想されています。

【保険ショップ】
保険ショップは、店舗を保有して保険商品を取り扱う業者です。ダイレクト販売と同程度か、或はそれ以上に規模を拡大しているのが保険ショップと言われています。
従来の営業では、セールスマンが各家庭を訪問し商品を販売する『訪問型』が一般的でした。しかし、近年は、訪問販売が非効率的であることから、訪問販売を行う業者は激減しています。そのような背景から、顧客が店舗に出向き、商品を購入できる代理店が人気を集めました。
また、テレビCMなどの大規模な宣伝により、市場の存在感が増し、保険ショップの市場規模は、急激に拡大しています。

 

M&Aの事例から見る課題と解決

前述により、近年、来店型の保険ショップが勢力を拡大していることがわかりました。
一見、保険業界は問題がないように思えますが、実は多くの保険ショップは、大企業による買収が基盤となっているのです。
ここでは事例を踏まえて問題と解決手法について見ていきましょう。

《事例》
売却会社:ライフプラザパートナーズ
買収会社:日本生命保険
売買価格:3.8億円

これは、出資によるM&Aの事例です。
ライフプラザパートナーズは、複数の保険会社と代理店契約を結ぶ大手乗合代理です。保険商品を中心として、計50社の商品を取扱い、全国35箇所の営業拠点を持っており、年間売上高は約110億円を計上していました。
一方、日本生命は、「複数の保険会社の商品を比較したい」という顧客のニーズに答えるべく、ライフプラザパートナーズの株式の一部を取得するに至りました。
これにより、日本生命は、顧客のニーズに対応できただけでなく、日本生命の経営資源や企業ネットワーク等を活用し、ライフプラザパートナーズの事業拡大を図り、顧客との接点拡大につなげています。

 

保険代理店を事業売却する目的にはこんなものがあります


保険代理店の事業売却を考えている会社は、どのようなメリットを想定しているのでしょうか。売却側、買収側のそれぞれの目的を整理していきましょう。

売却側の目的

▼事業売却益が得られる

少子化、保険業法の改正、大手を中心とした乗合型の保険代理店が全国的に展開してきていることを受けて、中小の独立した保険代理店には逆風が吹いています。しかし、経営が難しくなってきたからと言って廃業を選択すれば、なんの利益も得られないだけではなく、廃業にかかる経費もばかになりません。
そうした保険代理店でも、事業売却を選択すれば、経営者は事業売却益として、現金を手にすることができます。まとまった現金が得られるので、それを老後の資金に回すことで、ハッピーリタイアを実現できたり、新規事業を開始することができたりします。
廃業にくらべて、事業売却ははるかに良い選択と言えます。経営が悪化していくのを放置して、事業を売却できない状態になってから、しかたなく廃業するようなことは避けたいものです。

 

▼大手の事業力を背景に事業内容をアップデートできる

事業を売却するということは、多くの場合、大手の保険代理店の傘下に入ることを意味しています。
大手の資本力を背景に、ビッグデータの活用や、事務処理コストの削減が可能となるでしょう。大手傘下の来店型保険代理店となれば、最新の顧客ニーズに対応した、多数の人気商品を取り扱えるようにもなります。また、大手の知名度・ブランド力は、新規顧客の獲得にとっても好都合です。
経営が低迷していたり、伸び悩んだりしている保険代理店にとって、事業売却は、反転攻勢をしかける最良のチャンスとなります。

 

▼従業員を解雇せずにすむ

経営が難しくなったからといって、廃業を選んでしまえば、これまで会社に貢献してきてくれた従業員は、新しい就職先を探さなければならなくなります。人手不足の状態が続いていると言っても、とくに高齢の従業員にとって、現状の収入を維持することは容易なことではありません。
ここで廃業ではなく事業売却を選べば、とりあえず従業員の雇用は維持されます。事業売却は、新たに大きな企業の一員となった従業員にとって、待遇をこれまでより良くするチャンスにもなりえます。

 

▼後継者問題を解決できる

後継者問題は、今日の中小企業の経営者を悩ませる大きな問題です。
最近の20年間、中小企業経営者の年齢は上昇を続け、限界に近い状態になっています。中小企業の事業継承は、これまで親族を中心として行われてきましたが、ここにきてM&A仲介会社などを活用することで、より広い範囲から事業承継者を選択する事例が増えてきました。
自分の息子がすでにどこかの企業に勤めていて、そこを辞めたいと思わない場合や、よくできる従業員に事業を引き継いでもらおうとしても、本人にその意思がなかったり、意思があっても事業を承継できるだけの資金がなかったりする場合でも、M&Aを使った事業承継に活路を見出すことができます。
M&A仲介会社は、常日頃から広い範囲の買い手候補をプールしています。たくさんの買い手候補がいれば、その中から後継者を見出せる可能性が高まります

 

買収側の目的

▼一から事業を構築する必要がない

すでにある保険代理店を買収するのですから、買収した段階で、保険代理店を営業するために必要な、従業員、建物、設備などの経営資産は一通りそろっています。買収した企業がやるべきことは、それらを自社の営業形態にふさわしくなるようにリニューアルすることだけです。
これは、一から事業を起こして、何もない段階から経営資産を確保するのに比べて、大きな経費節減につながります。保険代理店を買収することで、起業の初期段階を省略することができます

 

▼既存顧客を受け継ぐことができる

事業を買収することの利点は、従業員、建物、設備などを一気に手に入れられることだけではありません。保険代理店にこれまでついていた顧客も、同時に引き継ぐことができます
これもまた、新しい保険代理店がなにもないところから新規顧客を獲得して、事業を軌道に乗せることと比べれば、格段に有利な状態で経営をスタートできることになります。
買収企業がやるべきことは、既存の顧客を維持しつつ、自分たちの魅力ある商品やサービスを訴えることで、さらに顧客を積み増すことなのです。

 

▼迅速に事業を拡大できる

前述の2点でお伝えした通り、保険代理店を買収することで、買収側の企業は、最初の設備投資や従業員確保、顧客確保の段階を省略することができます。
今日でも新規企業は失敗する可能性が高いですが、その理由は初めに行った投資に対して、想定通りの顧客を獲得できないために、赤字状態から脱却できないことにあります。
買収の場合、仮に赤字だったとしても、それなりに事業を継続してきた代理店を引き継ぐことになるので、初めの段階のリスクや時間を回避することができます。これは、特定地域で網羅的な店舗網を構築しようと考える大手保険代理店にとって、非常に大きなメリットになります。

 

▼スケールメリットを追求できる

保険代理店業界もまた、ビッグデータの活用と相性がよい業界です。より多くの顧客データを分析すれば、それだけ個別の顧客のニーズにより沿った商品を開発することができるでしょう。
顧客基盤を拡大することで、顧客が少なかったときには、あまりにも販売量が少ないために実現できなかった保険商品を、実現することもできるでしょう。 一定地域に多数の店舗を展開することで強化されるブランド力もまた、スケールメリットの一部と言えます。


このように、保険代理店業界においても、事業の拡大は、単なるコスト削減効果以上の積極的な効果を持ちえます。

 

保険代理店の事業売却を行う上での注意点

店舗形態とオンライン形態の違い

保険代理店では、近年では店舗販売型やオンライン販売も目立つようになりました。その他にも訪問販売も多く活躍しています。
買収企業は新しい販売方法を増やすことで販売企業の発展を考えるか、または同じ販売方法で事業の磨き上げを行うかを考えて事業売却を行います。
そのため、自社の販売方法を確立することが重要になります

 

社員の資格取得状態

保険代理店では、社員が保険商品を販売するための専門の資格が必要になります。その資格は「生命保険募集人資格」「損害保険募集人資格」と呼ばれ、保険代理店の社員には必須の資格です。
買収を行う企業にとってはこの資格を多くの社員が保持していることは、保険代理店の質の高さにも繋がるため、買収の判断基準となる事が多くあります。

 

社員に資格の取得を促すシステム

社員が資格を保持しているだけではなく、資格取得を促すシステムが企業に導入されているという事も、買収を行う企業からすると大きなポイントになります。多くの資格を持つ社員が在籍していたとしても、新たに資格を取得するためのシステムがある事で、社員を増やす企業だと判断されます。
そのため、社員の資格取得のための手当てが用意されていたり、資格取得のための勉強会が実施されたりしているような企業は、買収企業からの評価も高くなるでしょう。

 

まとめ

保険代理店の事業売却は人口減少を受け、今後も加速していく動きが予想されます。
また、事業売却には、買収、売却側の双方にメリットが存在していました。
自社の事業の拡大や発展をお考えの方は、ぜひ事業売却も視野に検討してみてはいかがでしょうか?

保険代理店の事業売却のポイントとは?
現在日本は、少子高齢化の時代を迎えており、この先も徐々に人口が減っていくことが予想されています。

そこで問題となるのが、保険会社の加入率です。
人口が減ると、当然保険会社の加入者が減り、保険会社の収益も比例して減っていきます。保険会社の収益が減ってしまうと、保険会社に勤める社員の数も減ってしまうという負のサイクルに陥ってしまいます。保険会社の社員が減ってしまうことで、保険会社と消費者の仲介役である保険代理店へのサポートが手薄になってしまうのです。
そのため、保険会社は、代理店の数を減らすための方法として、代理店の売却を始めています。

現在、問題を抱える企業や、さらなる躍進を考えている企業がM&Aを実施しています。では、保険代理店の場合は、どのような目的のもとでM&Aによる事業売却を実施しているのでしょうか。本記事では、保険代理店の事業売却の目的や、目指せるステージなどをご紹介していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年1月21日
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