2019年6月24日 月曜日

人材サービス業の事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

近年は、多くの業種で後継者問題が表面化しており、従来の承継方式に代わる手段として、M&Aによる事業承継が注目されています。この記事では、人材サービス会社が事業承継を必要とする背景や、承継手段としてM&Aを用いたときのメリットについて解説していきます。また、人材サービス業の事業承継を検討している経営者に向けて、注意するべきポイントについてもご紹介していきます。

 

人材サービス業を事業承継しよう

人材サービス業とは、相手企業のニーズに応じた人員を派遣、または紹介する事業を指します。近年は多くの業界で事業再編が進められており、人材不足を補う手段として人材サービス業者を活用する会社が増加しています。

2019年1月時点での全業種を平均した有効求人倍率は1.63倍で、2014年に有効求人倍率を上回ってから増加し続けています。業種別では、建築業界、介護業界、IT業界などが長期的な人手不足の状況です。

人材サービス業者の多くは中小企業であり、従業員を確保することは人材サービス業者にとって重要な課題です。短期間で従業員を獲得できる手段として、M&Aを実施する人材サービス業者は増加してきています

経営者にとって、事業承継は重要な問題です。親族内承継や従業員・役員承継には後継者教育を含めて5~10年かかることが多く、平均的な退職年齢を考えると、経営者が50代後半~60代前半までには、事業承継の準備を始める必要があります。

しかし、統計によると国内企業における60歳代の経営者の53%は後継者不在であるといわれており、年商1億円未満の企業は、78%が後継者不在であるといわれています。50歳代以上の経営者における後継者不在率は、近年改善されつつありますが、中小企業における事業承継は、なかなか進められていないのが現状です。

 

後継者がいない、そんなときは

少子高齢化や労働者人口の減少による人手不足は、人材サービス業者にも当てはまることで、経営者が事業承継を検討する時期になっても、身内に事業を引き継げる人物がいないケースが近年増加しているのです。

従来における事業承継は、親族内承継が一般的でした。しかし、近年では従業員・役員承継やM&Aを選ぶ経営者が主流となっています。経営者の子息が異なる業種に就業しており、後継者教育を行う時間がないといった理由から、親族内承継が難しくなっているのです。

会社内から後継者を選ぶ場合も、経営に適した人物が社内にいない、すでに高齢化しているといった事例が少なからずあります。年齢や資質の問題をクリアしても、経営権を譲渡する過程で多くの現金が必要になることから、承継が困難であるケースが多く、従業員・役員承継は実施するハードルが高いといえます。

後継者不在で廃業を検討している経営者は多いといわれており、将来的に中小企業が相次ぎ閉鎖することで、国内経済に大きな悪影響を与えるとも予測されています。近年は、人材派遣業界を中心にM&Aを実施する企業が増加しています。大手事業者だけではなく、中小企業が買い手となるM&Aも活発に実施されています

 

M&Aとは

M&Aは「合併と買収」という意味です。企業が別企業の株式、あるいは事業資産を取得することで、会社を売買、吸収合併を行うときに用いられる業界用語です。

中小企業をM&Aで売買するときには、株式譲渡や事業譲渡といった形式に沿って進めることが多いです。

株式譲渡は、会社全体を取引対象としたいときに多く用いられる方法であり、短期間でM&Aを実施したいときに向いています。また、会社が運営する事業を取引対象としたものであり、一部事業を譲渡して主力事業に専念したいときにも、多く用いられている方法です。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

M&Aによって事業承継を行うことには、どのようなメリットがあるのでしょうか。

 

後継者問題の解決

人材派遣や人材紹介会社をM&Aで売却する場合は、同業他社が買収を行うケースが多く、M&A仲介業者のサポートを受けながら進めると、半年から一年ほどで事業承継を完了できることが多いです。

近年は、人材サービス業全般に対する買収ニーズが高いので、承継を実施する経営者は、多くの企業から希望条件に合った承継先を探しやすい状況です。全国的なネットワークを持っているM&A仲介業者に依頼を行うことで、経営者個人で探すよりも、短期間で承継先を見つけることができます。

 

従業員の雇用引継ぎ

M&Aで会社を売却することで、雇用している従業員へ引き続き職務を提供することが可能になります。

人材派遣や人材紹介会社のほとんどは中小企業であり、顧客の獲得競争や従業員不足などで事業運営が困難になる企業が多いといわれています。仮に廃業を選択したのなら、雇用している従業員はすべて解雇する必要がありますが、M&Aを実施することで雇用を引き継ぐことが可能になるのです。

売却側企業からみても、業務経験を積んだ従業員を複数雇用できることは大きなメリットです。人材サービス業のM&Aでは、従業員の雇用契約を引き継ぐケースが多く、他業種に比べて売却額が高くなりやすいという特徴があります。

 

経営力の強化

人材サービス業は多くの業種と関わる事業なので、M&Aで2社以上の企業が統合、合併することによって事業領域を拡大しやすいというメリットがあります。

中小企業が大手事業者へ会社を売却した場合、資金や人員といった経営リソースの提供を受けることで経営を立て直すことができます。加えて、高度な営業スキルや豊富な業務案件を共有することで、継続的に売上を伸ばせるようになります。

人材サービス会社に対する買収ニーズは近年高いので、条件次第では自社より大規模な同業者へ事業譲渡、株式譲渡を実施できる可能性が高くなります。

 

創業者利益の獲得

M&Aで事業承継を実施した場合、会社や事業を譲渡する対価として高額報酬を得られることがあります。獲得した資金は、借入金の返済や新規事業などに使用できるほか、余剰分の資金については、経営者がリタイアした後に生活資金として使うことも可能です。

譲渡する事業内容や負債の金額などによって、経営者の手元に残る金額は変わってくるので、高い利益を得たいなら、売却内容や相手企業を十分に検討する必要があるでしょう。

 

経営者の重責から解放される

人材サービス業界は企業間の競争が激しく、経営者には多くの負担がかかってきます。とくに、中小企業は新規就業者を確保することが課題であり、経営管理と人事活動を並行して実施することは、ほとんど難しいといえるでしょう。

M&Aで第三者へ経営を譲ることで、債務や借入金を解消したうえで充実したセカンドライフを送れるようになります。事前に負債を軽減し、事業価値を向上させる取り組みは、前提として必要です。

 

人材サービス業の事業承継のポイント

人材サービス業を事業承継する際、いくつか気をつけておくべきポイントをご紹介していきます。

 

M&Aの目的を明確化する

M&Aによる事業承継では、経営者の進退以外にも、さまざまなことを決めておく必要があります。従業員の引継ぎ、経営方針の維持、高額で売却したい、といった目標を明確にしておきましょう。結果として、M&Aをスムーズに進めやすくなるほか、成立後に考え直して後悔するといったミスを防ぐことができます。

売却側企業が方針を決めずに交渉に臨むと、議題を絞りこめずに交渉期間を空費したり、買収側企業に有利な条件を取り決められたりする、といった問題が起こることが予想できます。

承継先になにかしらの条件を要求することは多く、あらかじめ譲れない部分を伝えておくことで、経営者の意向に沿った相手とM&Aを実施しやすくなります

 

自社の強みを明確化する

人材派遣会社や人材紹介会社をM&Aで売却する場合、買収側企業の目に留まりやすいように、他社とは異なる強みを打ち出していくことが重要です。

幅広い業種への派遣実績を持っていたり、近年需要が高まっているIT業界に対応できる人材が多く在籍していたり、安定した経営実績を持っていたりする、といった要素はどれも独自の強みとして宣伝していくことができます。

業務実績の積み重ねや、経営状況を改善するまでには時間がかかります。目安として、M&Aの過程である財務デューデリジェンスでは、過去三期分の財務に関する書類が必要になります。そのため、事業承継を考え始めたころから、経営改善や必要書類の調査、準備などを進めていくことをおすすめします。

 

早めの準備を心がける

人材派遣や人材紹介会社に対する買収ニーズは高い状況が続いています。しかし、他の案件に紛れて、売却先がなかなか見つからないというケースも予想できます。売却先が見つかってからも、スムーズに話が進むとは限らず、2社目以降を探すことになった場合は余計に時間がかかってしまいます。譲渡する資産や従業員の規模によりますが、中小企業が売り手になる場合は、交渉開始から完了までに1年ほどかかることが多いです。

M&Aを進めている間も事業運営は並行していく必要があり、交渉期間中に業績が悪化した場合は売却価格が下がる、M&Aを断られるといったケースが想定されます。

また、人材派遣会社は派遣法の改正や取引先の景気によって業績が変動しやすいので、M&Aに時間を使いすぎるとなにかしらのトラブルが起こる可能性が高くなってきます。人材サービス業界におけるM&Aは、仲介業者や支援センターといった、専門業者のサポートを受けながらスムーズに進めていくことが大切なのです。

 

財務状況の確認

売却側企業の経営者は、収入と支出のバランスが取れているか、どのような名目で支出を行っているかを前もって確認しておき、必要に応じて改善するようにしましょう。

人材サービス業で問題になりやすい項目としては、広告費、営業費用、販管費といった項目が挙げられます。売却側企業が前もって問題点を把握しておくことで、M&Aの成約率を高めることができます。

 

法規制の確認

人材派遣会社や人材紹介会社をM&Aで売却する場合、会社が各種法律に違反していないかは、慎重に確認しておきましょう。近年では、2019年4月に働き方改革として各種法律が改正されました。そのため、就業規定が法律に適合した内容になっているか、労働契約が現行の法律に見合っているかを前もって確認しておく必要があります。法律関係はミスがあった時のリスクが高く、規定の見直しには弁護士やM&A仲介業者といった専門家のサポートが必要になってきます。

買収時のリスクに関わるので、一般的には買収側企業によるデューデリジェンスが実施されます。どんな事情があっても、問題が見つかった場合はM&Aを断られる可能性があるのです。

 

M&A仲介業者のサポートを受ける

人材サービス業に限らず、M&Aを実施する場合はM&A仲介業者を活用することが多いです。M&A仲介業者は売却側企業、買収側企業の双方からM&Aの相談を受け、希望条件に合った相手企業を仲介するほか、直接交渉に同席して公正なM&Aが実施できるようにサポートする役割があります

M&A仲介業者の多くは法律、会計面に関する専門家が社内に常駐しており、専門知識が必要な書類作成に関してもサポートを受けることができます。

実際に、M&A仲介業者へ依頼する場合は、人材サービス業界に関する専門知識を持っており、人材派遣会社や人材紹介会社のM&Aを多く成立させている業者を選ぶようにしましょう。結果として、スムーズにM&Aを実施しやすくなります。

 

事業引継ぎ支援センターの活用

事業承継を目的としている場合、全国に展開している「事業引継ぎ支援センター」を活用することでも、事業承継を実施できる可能性があります。

事業引継ぎ支援センターとは、後継者不在の中小企業が、承継先を探すことを支援する公的機関であり、承継先が個人起業家であることが特徴です。起業を検討している人と事業承継を図りたい企業の仲介かつ紹介役といえるでしょう。事業引継ぎ支援センターへの相談は無料で、業種を問わず相談は可能です。ただし、相談は予約制となっているので、状況に応じて問い合わせる必要があります。

 

まとめ

人材サービス業全般に対する需要は、今後増加していくと予想されています。大手事業者による経営資源獲得を目的とした買収、統合や、中小企業による事業承継を目的とした売却案件は増加していくでしょう。

売却側、買収側企業の双方が納得できるM&Aを実施するには、経営者が明確な目的を持って相手企業を選び出すことが重要です。

今後、人材サービス会社のM&Aを検討している方は、各種専門家からアドバイスを受けながら手続きを進めていくことがM&Aを成立させるポイントとなっていくでしょう。

人材サービス業の事業承継でお困りではないですか?
人材サービス業の会社が事業承継を必要とする背景や、承継手段としてM&Aを用いたときのメリットについて解説していきます。また、人材サービス業の事業承継を検討している経営者に向けて、注意するべきポイントについてもご紹介しています。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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