2019年4月7日 日曜日

ファンドとのM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

企業が自社の売却先を検討した時に候補に挙がる企業の一つが「投資ファンド」です。

投資ファンドは買収した企業の経営に関与して事業価値を高めた後に、企業を再売却することで利益を獲得します。多くの場合、株式の50%以上をファンド側が保有します。したがって、ファンド側の人間が経営に関与することになります。時には、ファンド側の経営陣の経営判断が事業を失敗させるリスクもあります。

投資ファンドを活用したM&Aで失敗しないためには、投資ファンドという特殊なビジネスについて理解を深めておくことが重要です。

今回の記事では投資ファンドとM&Aを行うにあたり、知っておくべき知識を解説していきます。

 

投資ファンド間のM&Aについての概要


「投資ファンド」聞くと、一般的には「巨大な資本を武器にした敵対的買収」や「利益優先の投資集団」といったネガティブなワードを思い浮べる方が多いのではないでしょうか?

利益獲得が投資ファンドの最大のミッションであることは紛れもない事実です。しかし、投資ファンドが実施するM&Aの実際は、ファンドと企業との間で綿密な戦略の下に実行されます。その理由は、友好的にM&A取引を進めた方が遥かにメリットは多く、スムーズだからです。
昨今では大手企業からスタートアップ・中小ベンチャーが経営戦略・成長戦略としてファンドと手を組みM&Aが行われています。今後も投資ファンドを活用したM&Aは活発になると予測されています。

しかし、買収側がM&Aを行う目的はあくまでも「投資による利益の獲得」です。中途半端な知識でM&Aを実行にはリスクで伴います。

そこで、ここからはM&A・投資ファンドなどの基礎的な知識を解説します。

M&Aとは

M&A( Merger& Acquisition)とは、企業間やファンドと企業の間で実施される「合併・買収」の総称です。日本国内で実施されるM&Aのうち70%は中小企業が対象です。
中小企業はM&A自体が未経験、知識・ノウハウを持ち合わせていないことほとんどです。

また、M&Aの実行には非常に複雑かつ専門的な知識が要求されます。そのため、M&Aの実施経験が豊富な専門の仲介業者を介してM&Aを行うことが一般的です。

 

株式取得

資本提携を伴うM&Aが「買収」です。この時、「株式取得」で企業の買収を行います。株式取得は株式の取得方法によって「株式譲渡」「株式交換」「第三者割当増資」「株式移転」の4つの方法に分けられます。

1:株式譲渡

経営権移動のために発行済株式を譲渡する方法。

2:第三者割当増資

新株を発行し、譲受企業の株式保有割合を過半数超えとすることで、経営権を移転させる方法。

3:株式交換

親会社と子会社間で株式を交換し親子会社の関係を構築する方法。

4:株式移転

子会社となる予定会社の株式を新設する会社に取得させる方法。複数の会社を経営統合する際に多く用いられる。

 

M&Aにおけるファンドとは

ファンドとは一般的に「投資のために集められた資金」のことを指します。M&Aにおけるファンドの目的は、取得した株式の価値を高めた後に、株式を再売却することで益を獲得することです。買収後は3〜5年の短期間のうちに株式を売却します。そのため、ファンド側は企業の経営に深く関わることになります。このとき、外部から新経営陣が会社に送り込まれることもあります。

 

ファンドとのM&Aの現状

M&Aにおけるファンドには投資信託や巨額の資金が動くヘッジファンドなどがありますが、国内では非公開株式に投資する「PE(プライベートエクイティ)ファンド」が近年注目を集めています。PEファンドは企業の経営陣と同じ目線から企業を成長・再生に導くために、中長期的に企業価値を高めるという特徴があります。

 

ファンドとM&Aを行うメリットとは?


簡単にですが、ファンドとM&Aについて理解していただけたかと思います。ここからはM&Aの相手として投資ファンドを選択するメリットについて解説していきます。

 

潤沢な経営資金の獲得

ファンドの目的は利益の獲得です。出資している投資家に対して確実に利益をもたらさなければなりません。ファンドが運用している資金は潤沢にあります。

 

また、投資ファンドは「投資のプロフェッショナル」ですが、経営についてのノウハウを持ち合わせていないことがほとんどです。そのためファンド側としては、M&Aを実施した後も経営者に続投を希望する場合が多い傾向です。企業側からすれば会社の持ち主が変わっただけで、新たに経営資金を獲得する事ができます。従業員達も引き続き雇用し、これまで通りの事業が継続できます。ファンド側は数年後の株式の売却時に利益を発生させるために、会社の経営陣と共に株式の公開・上場といった方向に導きます。

 

後継者不在問題の解決

また、後継者不在の問題の解決策、新たな経営手法を取り入れる手段のひとつとしてファンドとM&Aを行うケースもあります。ファンドは経営に関してはプロフェッショナルではないため、M&Aに経営者を入れ替える場合には外部から優れた経営者をスカウトする事は珍しくありません。
国内のでは後継者不在問題の解決策としてM&Aが期待されています。特に、ファンドとのM&Aの場合は短期間で事業を成長させなければならないので、優れた経営者が送り込まれます。新たな経営者を迎えることで、古くなっていた経営体質を刷新し事業を再生することも可能です。しかし、新たな経営者は短期間でM&A実施前よりも株価を上げなければなりません。

 

ファンドとのM&Aを行うタイミングは?

業績が良い・業界の見通しも明るい

ファンドとのM&Aに限ったことではなく、業績が良い時がM&Aで会社を手放すベストなタイミングです。ファンドとしては今後も利益がでる見込みがある優良企業は高値であっても投資するだけの価値があると判断します。
しかし、業績が良い時に自社を売却するという経営判断は非常に難しいでしょう。それでも、数年先の市場規模・動向を見据えてもM&Aという選択肢を選べる経営者ほど良いファンドと交渉・成立を実現させています。

一方で業績が低い、十分なキャッシュフローを獲得できていない企業は、ファンドの投資対象なりづらい、成約に至らないことがほとんどです。しかし、企業が気づいていない潜在的な価値を見出し、事業を再生して企業価値を高めて売却するファンドも存在し「事業再生ファンド」といいます。

企業成長の戦略としてM&Aが非常に有効な手法のひとつです。事業戦略のひとつとして検討しておくことで、事業拡大において逃すことの出来ないタイミングでM&Aを行う経営判断を余裕持って行うことができます。

 

事業の拡大・新規ビジネスのリソース獲得

市場の動向やテクノロジー革新に対応して事業拡大していくためには、充分なリソースを確保している必要があります。このとき、迅速な対応ができなければ、事業拡大どころか投資分を回収できない恐れがあります。
柔軟に市場変化に対応するためにもファンドがもつ資金力は非常に強力です。ファンドの資金力でもってあらゆる局面に対応できる会社組織に再編することが可能です。

気をつけなければならないことが、一般的にM&Aはクロージング (契約の締結)まで、短くて半年、長いと3年ほどの時間を要すると言われています。したがって、市場に動きがあってからファンドを探していては、時間が間に合わないため投資してくれるファンドが現れないこともあるでしょう。やはり、ファンドを相手にM&Aを行う場合には事業戦略のひとつとして検討をしておくことが重要です。

 

ファンドとのM&Aを実施するのは誰か?


ファンドとのM&Aを実施しているのはどのような企業・組織なのでしょうか?近年のファンドの投資先となってているが、株式非公開の中小企業やベンチャー企業です。
投資ファンドは2013年から続く日経平均株価の上昇に伴い、投資家から資金の集めに成功したことで投資ファンドの動きは非常に活発です。株価の上昇傾向と景気の浮揚により、投資ファンドは株式非公開企業を買収後に上場させた後、保有株式の売却益を得るということを目的としています。上場時の株価はこれまでの事例からみても、高値がつく傾向です。

 

中小企業

中小企業のうち事業が順調で潤沢なキャッシュフローを得ていて、株式が未公開の場合は投資ファンドにとって価値のある投資対象です。中小企業がさらに事業拡大を図る戦略をとる時ファンドとM&Aを実施することがあります。
多くの場合、ファンドは株式を過半数保有します。前述のとおり、PEファンドは企業の経営に積極的に参加し、さらなるキャッシュフローの向上を目指します。

また、PEファンドの中でも「事業再生ファンド」は経営難の中小企業に投資し、事業を再生させます。財務状況や事業の状況に合わせて、事業の方向転換・縮小といった手法によって、経営を改善に導きます。

 

中小企業は投資ファンドとのM&Aを積極的に活用することで、さらなる事業拡大を望む事ができます。

 

スタートアップ・ベンチャー企業

創造的・革新的な事業の展開を目指しているにも関わらず、資金不足に陥っているスタートアップ・ベンチャー企業と投資ファンドはM&Aを実施しています。成長性のある企業に対して積極な投資を行うファンドは「ベンチャーキャピタル」もしくは「ベンチャーファンド」とよばれます。
ベンチャー企業がベンチャーキャピタルの支援を受けるメリットとして、若い起業家の確立していない経営・事業地盤を確立するきっかけとすることができます。ベンチャーキャピタル側のメリットは投資資金を抑えて企業の株式を保有することができるという点です。

起業したばかりの場合、事業が失敗してしまう大きなリスクがあります。しかし、株式公開した場合にベンチャーキャピタルが受け取るリターンは投資額の数百倍にも及ぶことがあります。
そのため、議決権を有する役員がベンチャー企業の経営に関与することがあります。株式公開を目的なので、革新的であったサービスが普遍的なものに変更になってしまうといった事業変更を迫られる可能性があります。

 

ファンドとのM&Aの相談先は?

投資ファンドとM&Aを行う場合、両者間だけで行うのはほぼ不可能です。一般なM&Aでもほとんど場合で仲介業者を介してM&Aが実施されます。
その理由は、M&Aに成約までには膨大な手続きが必要だからです。特に中小企業の場合は業務を行いながらM&Aの手続きを進めるのは現実的な方法ではありません。また、本当に会社を売却することが正しい選択なのか、投資ファンド以外にも適した売却さきがあるのではないか、といった社内だけでは判断できない問題も出てきます。
そういった、専門的知識が必要とされる問題をクリアにするためにも、M&Aの経験をもった仲介業者に相談・依頼することが会社を高く売る成功の近道です。

一般的なM&Aの仲介業者として以下の6つの業者が挙げられます。

  1. 税理士・会計事務所
  2. 銀行
  3. 証券会社
  4. 弁護士事務所
  5. ファイナンシャルプランナー
  6. M&A仲介会社


相談先を選ぶ際のポイントは大きく2つあります。

複数の中立業者に相談する

優れた投資ファンドとM&Aを行うために、まずは優れた仲介業者と巡り合わなければなりません。まずは、会社の顧問弁護士や会計士に相談をするところからはじめ、自社のニーズを理解して互いに利益をもたらす相手を見定めてくれる仲介業者見つけるところからM&Aははじまります。

 

M&Aの実績が豊富な仲介業者を選ぶ

M&Aは非常に専門性の高いビジネスです。収益を優先した専門性の低いM&A仲介業者もいるので、仲介業者の実績は必ず調べておきましょう。M&Aに強いとされるのは「銀行」「証券会社」「M&A仲介会社」とされています。また、業種に特化した仲介業者、地域性に精通した仲介業者など、高い専門性・特徴をもった仲介業者数多く存在します。

まとめ

投資ファンドとのM&Aを実施するにあたって知っておくべきポイントをご紹介しました。
事業拡大・再生の手段として大きな力を発揮する投資ファンドとのM&Aですが、失敗すると廃業といった大きなリスクもあることを忘れてはいけません。
M&Aを成功させる秘訣は、M&Aについて知識を深める事です。そのためにも、まずは信頼できる相談先を見つけることが一番の近道といえるでしょう。

ファンドとのM&Aを実施する前に考えておきたいこと
企業が自社の売却先を検討した時に候補に挙がる企業の一つが「投資ファンド」です。
投資ファンドは買収した企業の経営に関与して事業価値を高めた後に、企業を再売却することで利益を獲得します。多くの場合、株式の50%以上をファンド側が保有します。したがって、ファンド側の人間が経営に関与することになります。時には、ファンド側の経営陣の経営判断が事業を失敗させるリスクもあります。

投資ファンドを活用したM&Aで失敗しないためには、投資ファンドという特殊なビジネスについて理解を深めておくことが重要です。
今回の記事では投資ファンドとM&Aを行うにあたり、知っておくべき知識を解説していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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