2019年4月4日 木曜日

ファンドへ売る?事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

現在の国内経済は、内外需の成長に後押しされ、2017度の上期の実質GDP成長率は平均で前年比1.9%となっています。2017年度の第二四半期の項目別のGDP実額は54兆円と過去最高を記録しています。
緩やかとはいえ、確実に成長を遂げている経済ですが、その恩恵が中小企業まで行き渡っているとはいえません。経済産業省の報告「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、中小企業の生産性の低下が問題となっていることが指摘されています。

中小企業の生産性の低下の大きな原因が「経営者の高齢化」です。経済産業省の報告書の経営者の平均年齢の推移を見ると、20年前の1995年の平均年齢は47歳、2015年の経営者の平均年齢は66歳です。このデータからは経営の「事業承継」が上手く行われいないことが読み取れます。また、2020年以降には団塊世代と呼ばれた年代の経営者、数十万人が引退の時期を迎えることが予測されています。

そのため「事業承継ファンド」といった、地域金融機関と民間ファンドが一体となりM&Aを支援する施策を打ち出しています。事業承継ファンドだけではなく、PEファンドや事業再生ファンドといった資金投資を活用した事業承継が、中小企業を救う手段をとして期待されています。

 

ファンドへ事業承継しよう


ファンドへの事業承継を検討・実行には弁護士や会計士、M&A専門仲介業者と相談することが一般的です。しかし、専門家だからといって事業承継を一任することは危険です。事業承継やM&Aは特殊な取引ではありますが、基礎的な知識・プロセスだけでも理解しておくことは非常に重要です。
そこで、まずはファンドへの事業承継に関する用語を簡潔に解説していきます。

 

経営権・支配権

経営権とは、事業の指揮・決定をする権利のことです。経営権を獲得するには株式の半数を保有する必要があります。さらに、保有株式が2/3以上になると「支配権」という権利を得ます。株式会社における支配権は、会社の持つ有形・無形の財産の全てに対して支配する権利を持っています

 

事業承継

事業承継は会社を後継者に引き渡すことです。事業承継をするまでに成長した企業、独自の技術・知識を有している企業にとって、後継者の選任は非常に重要な課題のひとつです。事業承継は会社を引き継ぐ行為、つまり会社の支配権を渡すということです。したがって、株式の承継=事業承継と考えることができます。
この株式の取得が後継者不在問題、事業承継を難しくしているハードルのひとつになっています。

 

M&A

M&Aとは、企業の「合併・買収」行為の総称として使われます。中小企業の事業承継を目的としたM&Aには、成長戦略の一環で新たな経営者に事業承継をする「攻めるM&A」と、事業は継続させたいが経営者の高齢などを理由に後継者を募る「守るM&A」があります。とくに後者の場合は、優れた技術を有して事業価値が高いにも関わらず、やむを得ずM&Aを実施するケースが目立ちます。

 

投資ファンド・PEファンド

投資ファンドは、投資家から集めた資金で株式をはじめとする投資対象に投資・運用をおこない利益を得る組織体です。ファンドが株式に投資を行う目的の多くは、利益最優先の投資です。企業の支配権を取得し経営に深く関与し、短期的に企業価値を上昇させ、価値の上がった株式を売却し売買差益を獲得することです。

今回のテーマである中小企業の事業承継M&Aには、主に「プライベート・エクイティ(PE)ファンド」と呼ばれる投資ファンドが関わっています。PEファンドの投資対象は、非上場企業の未公開株式です。PEファンドも投資によって売買差益の獲得が目的ですが、長期的に企業の経営に関与するために「投資=支援」と捉えることができるのが大きな特徴です。

 

後継者がいない、そんなときは


事業継続において理想的な事業承継は、親族や社内の中から最適な候補者を育成した上で行引き継ぐ形です。もしくは、外部から自社の事業について理解のある経営者を招くという手段もあります。
しかし、経営権と支配権を確立させるための株式の取得には、一般的に多額のコストが必要です。さらに、中小企業では運営権と経営権(所有権)が異なることは珍しくありません。この場合、所有権を手放したくないオーナーとの交渉がトラブルとなり、事業承継がスムーズに進まないことがあります。

上述したトラブル以外にも事業承継は様々な課題をクリアしなければなりません。非常に複雑で特殊なスキームが必要なM&Aですが、事業承継のノウハウを蓄積しているファンドと取引することで解決が期待できます
冒頭でお話したように、2020年以降に一斉に中小企業の経営者が引退することが予見されているため、PEファンドの中小企業に対するM&A投資機運は非常に高まっています。

2017年度にPEファンドが国内企業に投資した金額は、2000年代中盤と比較すると2倍近い水準です。これは、金融危機「リーマンショック」後にPEファンドが中小企業に対する支援的な投資を行ったことが認知され、投資マーケットに注目されたことが要因です。

PEファンドには、投資対象によって、さらにいくつかの投資ファンドが存在します。老舗企業・スタートアップなど企業の成長ステージや事業特性が異なるためです。

 

事業承継ファンド

事業承継ファンドはその名の通り、事業承継・後継者不在問題を抱えた中小企業に対して支援・投資を行うファンドです。

事業承継ファンドの大きな特徴は「中小企業基盤整備機構」が投資ファンドの総額の1/2の投資を行う点にあります。中小企業基盤整備機構は、中小企業やベンチャー企業のサポートを目的とした独立行政法人です。
中小企業の持つ独自の技術・ノウハウが引き継がれずに失われてしまうことや、地域雇用やサービスが衰退することを回避するために事業承継ファンドは運用されています。

事業承継・後継者不在問題を抱えた中小企業は事業承継ファンドへM&Aを行うことで様々な問題を解決できるとして期待されています。

 

ベンチャーキャピタル

PEファンドの中でも、起業間もなく資金力に乏しいベンチャー企業やスタートアップに対して投資・支援を行うファンドをベンチャーキャピタルと呼びます。

一般的に若い企業は経営体制が定まっていないため、投資対象としては非常にリスクが高いです。実績のある企業は過去のキャッシュフローから将来的なキャッシュフローからリターンを算出できますが、実績がまだない企業は投資額に見合ったキャピタルゲインの獲得に不安定な要素が多いためです。

しかし、投資後に株式公開した場合に得られるリターンは非常に大きく、投資額の数百倍になったケースもあります。そのため、ベンチャーキャピタルは会社の育成支援に対して非常に積極的であることが多く、経営体制を安定させることができるメリットがあります。しかし、これは自由な経営ができなくなってしまうというデメリットにもなるので、投資を受ける場合には慎重な判断が求められます。

 

事業再生ファンド

事業再生ファンドは、金融機関や行政団体から資金を集め中小企業に対して資金支援を行います。注意点としては、経営が困難なほどに事業不振に陥っている企業を再生させるためのファンドではないということです。事業そのものは順調で利益を得ているはずが、財務等に問題があるために業績不振になっているような企業が支援の対象です。
事業再生ファンドによる支援は、資金支援の前に再生計画の策定から始まります。決定的な経営危機に陥る前に、事業再生ファンドと事業の再生計画を立案し、経営方針・事業計画に修正を加えて業績回復までのプランを立てます。

事業再生ファンドから投資された資金は、優先して事業に注入されることが特徴です。金融機関への返済に充てるのではなく、事業を再生することで財務面の問題を解消することを目指すものです。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット


ファンドとM&Aを行うメリットは多岐に渡ります。最も大きなメリットは非常にシンプルで、ファンド・企業の双方に「お金」が手に入ることです。
事業承継を目的としたM&Aの場合、メリットは資金面だけにとどまりません。ここからは、事業承継ファンドから投資・支援を受け入れることで得られるメリットについて解説していきます。

 

経営者保証・個人保証の負担低減

ファンドへM&Aを行い、株式を譲渡・売却することで、経営者は企業のオーナーではなくなります。これまで通り事業に関わる場合、経営に関するあらゆる重責の負担が減ります

金融機関から融資を受ける場合、企業の経営者保証の契約を結んでいるはずです。企業に万が一の事態が起こった際に資産を失うことは大変なプレッシャーです。個人的な経営者保証を外すことを経営課題のひとつとしてる経営者は決して少なくないはずです。

経営者保証があるということは、事業承継において後継者にとって大きな不安材料です。事業承継に多くの投資を行っているPEファンドほど、経営者保証のリスクについて理解しています。ファンドの支援の下、経営者保証の負担軽減を図ることは、事業承継のハードルを下げることにつながります

 

企業風土の継続

1990年代半ばのバブル崩壊後にPEファンドによって行われたM&Aでは、経営難に陥った企業を安く買い叩き、リストラや事業撤退といった利益を優先する短期的な株式価値のための経営関与が行われました。投資ファンドが「ハゲタカ」と呼ばれるようになった由縁はこの頃のファンドの動きがもとになっています。

近年の事業承継M&Aでも、事業の選択と集中の施策は行われます。しかし、ファンドは企業理念・企業風土を最大限尊重して経営に関与する傾向にシフトしています。会社の持ち主が変わるということは、従業員にとっても非常に不安となる問題です。ファンドによる経営方針の転換によって優秀な従業員が流出してしまうことは、業績向上においてマイナス要因でしかありません。
そのため、企業の潜在的な価値を発掘したり、技術・知識を活かして異業種に参入したりと、企業のこれまでの文化を継続しながら、事業拡大・企業価値の向上を目指します。

 

ファンドへの事業承継のポイント


ファンドへの事業承継は、企業のさらなる発展を見込めるため、経営者はM&Aを意識した経営が必要となっています。
ただし、ファンドへの事業承継にはメリットだけでなく、もちろんデメリットも数多く存在します。そもそも、M&Aは買い手・売り手双方に大きなリスクが伴う取引です。
ここからはファンドへの事業承継を成功に導く重要なポイントを2つ解説します。

 

投資ファンドの選定

ファンド側は投資機運が高く、売り手市場が形成されています。
新たなファンドも続々と生まれていますが、事業承継のための知識を持つ人材が運用に携わっていなかったり、ファンドとしての経験が不足していたりと、不安要素のあるファンドも存在しています。そのため、ファンドの選定はリスクを見極める事が重要です。

現在、ファンドとの取引は「身売り」ではなく、「協力して企業価値を高めるパートナー」としてのニュアンスが強くなっています。行政が関わる事業承継ファンドだけでなく、民間ファンドも事業承継・経営支援に積極的です。ファンドの理念や出資方針を理解した上で、経営のパートナーとなる投資ファンドを選定するようにしましょう

 

事業成長のための自助努力が絶対条件

ファンドとのM&A実施後に事業を成長させるために大事なポイントが「自助努力」です。そもそも、投資ファンドに成長の見込みがないと判断された場合、当然ながら投資・支援は行われません。ファンドは将来的なキャッシュフローを算出した上で投資の可否を決定します。そのため、投資ファンドへの事業承継は自助努力を引き上げる戦略的行動として捉えておかなければなりません。
例えば上述した事業再生ファンドの場合、誰でも活用できるものではなく、事業の再生のプランが認められなければ投資・支援を受けることができません。
自助努力によって会社を存続・成長させる意志がなければ、事業承継を目的としたファンドとのM&Aは実現しないでしょう。

 

まとめ

事業承継に関わる投資ファンドとのM&Aについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか。
投資のみならず、経営支援を受けることも期待できるため、新たな企業の在り方として今後も多くの企業へ広まっていくとされています。後継者不在の経営者の方はすぐにでも、後継者育成にお悩みの方も早めに、事業承継M&Aに詳しい専門家に相談することをおすすめします。

ファンドへ売る?事業承継でお困りではないですか?
現在の国内経済は、内外需の成長に後押しされ、2017度の上期の実質GDP成長率は平均で前年比1.9%となっています。2017年度の第二四半期の項目別のGDP実額は54兆円と過去最高を記録しています。
緩やかとはいえ、確実に成長を遂げている経済ですが、その恩恵が中小企業まで行き渡っているとはいえません。経済産業省の報告「中小企業・小規模事業者の生産性向上について」によると、中小企業の生産性の低下が問題となっていることが指摘されています。
中小企業の生産性の低下の大きな原因が「経営者の高齢化」です。経済産業省の報告書の経営者の平均年齢の推移を見ると、20年前の1995年の平均年齢は47歳、2015年の経営者の平均年齢は66歳です。このデータからは経営の「事業承継」が上手く行われいないことが読み取れます。また、2020年以降には団塊世代と呼ばれた年代の経営者、数十万人が引退の時期を迎えることが予測されています。
そのため「事業承継ファンド」といった、地域金融機関と民間ファンドが一体となりM&Aを支援する施策を打ち出しています。事業承継ファンドだけではなく、PEファンドや事業再生ファンドといった資金投資を活用した事業承継が、中小企業を救う手段をとして期待されています。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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