2019年8月19日 月曜日

ストーリーで読む IPOとM&Aの違い

Written by 松栄 遥

あなたはM&AやIPOの違い、それぞれのメリット・デメリットについてしっかり理解できていますか?

 

世の中の多くの人はM&AやIPOを経験することはありません。

経営者に絞って考えれば経験する人の割合は増えるでしょうが、経営者でも経験せずに経営者としての生涯を終えることは多々あります。

 

しかし、もしあなたが経営者で、より多くのビジネスチャンスを得たいと望むのであれば、M&AとIPOの違い、メリット・デメリットについてしっかりと認識しておくべきでしょう。

 

今回は物語形式でM&AとIPOの違いについてご説明したいと思います。

おや、どうやら今後の経営について、スパイラルコンサルティングに相談しにいらっしゃった方がいるようです。

 

会社の最終的な目標

私は渦巻 一朗。

大学入学を機に上京し、卒業後はプログラマー、システムエンジニアの職を経て、数ヶ月前に起業したばかりだ。

最近では様々な「〇〇Tech」があるが、私の場合はいわゆるREtech(リーテック)、不動産テックと呼ばれるような分野で事業展開を考えている。

地元は比較的栄えている地方都市で、実家は祖父の代から街の不動産屋を営んでいる。

学生時代は不動産屋の仕事に興味はなく、私の関心はひたすらITに向いていたのだが、就職してある程度のキャリアを積んできた頃、昔に比べて明らかに老いている両親を目にし、ITの力で実家の仕事をより良くできないだろうかと考えるようになった。

それが起業のきっかけだ。

 

しかし、不動産の世界にITの力でインパクトを起こしたいという意気込みやどのようなサービスを世に出していくかのイメージはあるものの、会社経営の知識や経験については素人レベル。

手探りで進んでいるのが現状だ。

本で勉強したり、知り合いの経営者に相談したりはできても、経験は実際に経営者としての道を進みながらでしか得られない。

経験は1日やそこらで積めるわけではないので、他の人の力を最大限活用していくしかない。

企業経営に詳しい人たちの力を借りるべきだろう。

そこで、同じく数年前に起業した大学の先輩のツテを頼り、株式会社スパイラルコンサルティングに相談をしに来た、というわけだ。

どうやら事業の成長、拡大という点について企業をサポートしてくれると聞いているのだが、果たして・・・・・・。

 

スパイラルコンサルティングに到着して受付を済ませると会議室に通され、暫くすると若い男性が入ってきた。

 

松栄:

「失礼します。こんにちは、スパイラルコンサルティングの松栄と申します」

 

松栄と名乗ったその若い男性は、スパイラルコンサルティングの取締役の一人だった。

正直、自分と同じくらい、もしくは少し若いくらいの彼に、経営の相談ができるのか、そこまでの経験を持っているのか不安を感じつつも、まずは話を聞いてみようと今までの経歴と現状について一通り説明をしてみた。

 

松栄:

「まだ起ち上げたばかりの会社ということですか。そうですね、まずは何年後に会社をどのような状態にしておきたいか、具体的な目標を決めてそこまでの道筋として3ヵ年計画を立てましょう。目標は人それぞれです。分かりやすい例でいうと何年後までに上場する、とかですね」

 

IPOか。

正直狙っていないわけではない。

しかしIPOはハードルが高そうだ・・・・・・。

日本ではリーマンショック以降、新規上場会社の数は大幅に減少し、その後も回復傾向はあるものの、以前の水準には遠く及ばない

 

松栄:

「IPOは確かに簡単にできるものではありません。しかし最初から諦めるより、そのメリット・デメリットを知った上で、目指すかどうかを判断されたほうがいいでしょう。IPOのメリットとデメリットについてそれぞれ整理してみましょう」

 

IPOのメリット・デメリット

松栄:

「まずIPOのメリットについて見ていきましょう。IPOのメリットは主に7つあります。

それぞれ詳しく説明していきましょう。

 

【1】知名度の向上

まず1つに知名度の向上が挙げられます。

もちろん非上場企業でも知名度の高い企業は存在しますが、上場することで「上場するだけのしっかりした経営をしている企業」として社会的信用や企業イメージが向上します。

そのため顧客獲得や販路拡大、人材獲得にも上場していることが有利に働きます。

 

【2】資金調達の強化

社会的信用が高くなることで上場以前より資金調達が容易です。

融資を受ける先の候補が広がるだけでなく、借入余力も拡大します。

そのため新規事業への挑戦や事業拡大も容易です。

 

【3】株式価値の安定と向上

株式が市場に公開されることで、公正な判断のもとに株価が決定されます。

また株式を資金に換えやすくなります。

 

【4】経営体質の強化

上場するためにはコンプライアンスの徹底やコーポレートガバナンスの確立が不可欠です。

IPOを目指すうえで、必然的に経営体制の見直しが求められます

監査法人による監査があるため、決算が素早く、かつ正確なものとならざるを得ません。

 

【5】創業者利益の獲得

創業者は自社株を売りに出すことで利益を獲得できます。

起業、そして今までの経営におけるリスクへの対価と言えるでしょう。

 

【6】従業員への好影響

上場企業で働いていることに対する従業員のモチベーションアップやストックオプション付与など、従業員にもIPOは利益があります

 

【7】事業承継への対策として

IPOが事業承継対策になることもあります。

親族が代々継いできた企業を上場すれば、優秀な経営者を身内以外の第三者から求めやすくなります。

 

以上がIPOのメリットです」

 

なるほど。

IPOによって資金、人材、事業展開など、あらゆる面で選択肢が増えていくようだ。

 

松栄:

「メリットがある反面、IPOにはもちろんデメリットもあります。

【1】IPOに掛かる膨大な費用

準備からIPOに至るまで、IPOには費用が必要です。

具体的には株式公開までの準備に対応できる人材の確保や上場審査手数料、監査報酬などです。

ある程度の元手がなければ上場は資金的に厳しいでしょう。

 

【2】上場後に掛かる費用

上場したらコスト負担がなくなるわけではありません。

IPO後、上場を維持するための費用が必要です。

年間上場料や監査報酬、株主総会運営費などが掛かり、中堅の企業でも上場維持には年間5,000万円~1億円ほど掛かると言われています。

 

【3】ディスクロージャーのための負担

上場しているからには定期的な株主や市場への報告が必要です。

事業報告書や有価証券報告書を作成し、良いことも悪いことも含めて経営に関する情報を公開し、経営の透明性を維持する必要があります。

公開する情報は正確でなくては信用に関わります。

 

【4】管理コストの増加

管理コストも増加します。

なぜなら内部統制を徹底し、経営の透明性を保つためには、それなりの負担が掛かるからです。

 

【5】経営者・企業としての責任増大

非上場で会社を経営していた頃に比べ、経営者としての責任は重くなります。

なぜなら経営者の判断に影響を受ける相手が株主、投資家、市場と広がるからです。

また会社としての社会的責任もより求められます。

 

【6】経営に対する制約

創業者の意思1つで会社を動かすことは難しくなり、株主の意見を聞きながら会社を経営しなくてはいけません。

上場して株式が分散されることで創業者の発言権は自然と低くなります。

経営上の意思決定を素早く行い、常に株主を意識した経営が求められます。

 

【7】買収リスク

株式が自由に売買できる状況は買収リスクがあります。

いつの間にか敵対する相手に株式を集められ筆頭株主の座を取られてしまったり、競合他社からTOBを仕掛けられたりしてしまうこともあります。

 

以上がIPOのデメリットです」

 

経営上の選択肢、可能性が増える一方、IPOによる制約があるのも事実というわけだ。

今の会社の状況ではIPOに耐えられるだけの体力はない。

IPOを目指すのであれば、これから労力やコストを掛けて体制を整えつつ事業を拡大させていく必要がありそうだ。

しかしそれだけ労力とコストを掛けたのに、上場できなかったら正直きつい。

 

松栄:

「IPOを目指すにはそれなりの体力が必要です。せっかく目指していたのにIPOまで持ちこたえられない、というケースもあります。そうなったとき、ただ諦めるのではなくM&Aという道を検討してみるべきでしょう。海外では最初からM&Aを狙って起業する人も少なくありません」

 

M&A。

日本でも増えてきているようだが、IPOに比べてどのような点で優れているのだろう?

 

松栄:

「実はM&AはIPOと比較した際にいくつかメリットがあります。IPOとM&Aの比較をしていきましょう」

 

IPOとM&Aの違い

松栄:

「M&Aは、資金調達、企業ブランドの向上、社会的信用の向上、創業者利益の獲得など、IPOで達成できることを同じく達成できる上、IPOに比べて必要な期間は短く、コストは少なく済みます。さらに、IPOでは実現までに関わる利害関係者が監査法人や証券会社など複数存在する一方、M&Aであれば仲介会社のみですので、実現可能性もIPOに比べて高くなります」

 

松栄さんはホワイトボードに次のような比較表を書いてくれた。

渦巻:

「M&AがIPOと同じメリットを得られ、かつ実現可能性が高いことも分かりました。しかし会社を譲渡したら、その後の経営には関われないのではないですか?」

 

松栄:

「もちろん会社を完全に手放すケースもありますが、譲渡後に経営者として留まるケースもあります。譲受先の企業との交渉次第です。

また、M&AはIPOの一種ともいえます。上場している企業に譲渡して、子会社の取締役社長として経営に関わっていくこともできるからです。単独でIPOを目指すという経営者の方もいますが、柔軟に考えてM&Aを活用する経営者の方も増えてきていますよ」

 

渦巻:

「しかしM&Aにもデメリットはあるのですよね?」

 

松栄:

「それはもちろんです。譲受先との交渉次第ではM&A後に経営に携わることはできませんし、残ることができても一人で経営してきた頃に比べて自由度は低くなることは事実です。しかし大半はIPOにも言えることです。

 

  • 会社の出口戦略はIPOだけでなくM&Aもある
  • まずはIPOを目指し、状況次第ではM&Aに切り替えることもできる

 

ということを知っておくだけでも、会社の可能性は広がっていくはずですよ」

 

なるほど。

M&Aという手段も視野に入れてIPOを目指すのもおもしろそうだ。

 

松栄:

「また事業承継の選択肢の1つとして、親族や社員に事業承継する代わりに、他社に会社を譲渡する方法を検討される経営者の方が増えています。親族や社員に承継する場合とM&Aで第三者に譲渡する場合、自社株の評価方法が異なり、M&Aの方が3~5倍の評価になるケースが多いのもM&Aの魅力といえるでしょう。起業すれば、いつかは廃業か誰かに引き継ぐかを決断しなければいけないときがきます。IPOだけでなくそのときの選択肢としても考えて準備しておくといいでしょう」

 

渦巻:

IPOを目指すにしても目指さないにしても、M&Aを前提にした企業経営をしておくといいのかもしれませんね」

 

まとめ:IPOとM&Aの違い

渦巻さんと松栄さんの話はまだまだ続くようですが、今回はここまでとしておきましょう。

2人の会話から今回はIPOとM&Aの違いについてみてきました。

M&AはIPOや事業承継のかわりになり得る選択肢のようですね。

経営者の方はIPOとM&Aのメリット・デメリット、それぞれの違いを知った上で進むべき道を選んでいきましょう。

 

スパイラルコンサルティングは会計事務所を母体にしたM&Aのコンサルティング企業です。

IPOにもM&Aにも耐えられる会社作りを目指す経営者の方のサポートをした事例もございます。

ぜひ会社の行く末についてお悩みの方はご相談ください。

ストーリーで読む IPOとM&Aの違い
あなたはM&AやIPOの違い、それぞれのメリット・デメリットについてしっかり理解できていますか?
世の中の多くの人はM&AやIPOを経験することはありません。
経営者に絞って考えれば経験する人の割合は増えるでしょうが、経営者でも経験せずに経営者としての生涯を終えることは多々あります。
しかし、もしあなたが経営者で、より多くのビジネスチャンスを得たいと望むのであれば、M&AとIPOの違い、メリット・デメリットについてしっかりと認識しておくべきでしょう。
今回は物語形式でM&AとIPOの違いについてご説明したいと思います。
Writer
松栄 遥
横浜国立大学工学部卒業後、2012年に株式会社キーエンスに入社し、工場内の生産ラインで使用する画像処理センサーのコンサルティング営業に従事。ニーズを精査した「付加価値のある提案」を実践し、常に国内トップクラスの成績を残す(受賞歴多数)。 2015年、バンタンデザイン研究所にてクリエイティブを修学の後、2016年に株式会社日本M&Aセンターに転職。役員室所属として、数多くのディールを成約に導き、年間新人賞を受賞する。その後も現場主義を貫き、様々な業種にてM&Aの実績を残す。日本M&Aセンターの現場で培った知識と経験を武器に、2019年スパイラルコンサルティングを立ち上げ、「企業価値を高めて売却を狙う”スケール型M&A”」を実現させている。
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