2019年9月2日 月曜日
ストーリーで読む 投資ファンドと事業会社の違い
Written by 松栄 遥
前回、前々回と2回にわたって、株式会社スパイラルコンサルティングに相談に来た渦巻さん(「ストーリーで読む IPOとM&Aの違い 」「ストーリーで読む 持株比率と株式分散」参照)。
松栄さんと話しているうちに、IPOよりも実現可能性の高いM&Aに興味を持ったようです。
M&Aを行う上でどのようなことを知っておくべきなのか気になっているようですね。
それでは渦巻さんとともに、今回はM&Aの相手としての投資ファンドと事業会社についてみていきましょう。
【登場人物】
▼渦巻 一郎
数ヶ月前に起業したばかり。経営者としての知識や経験が不十分であるため、知人の紹介で株式会社スパイラルコンサルティングに相談に訪れた。
▼松栄
株式会社スパイラルコンサルティングの取締役。年間10件以上のM&Aを成約に導いた実績を持つ。今回渦巻の相談相手となる。
M&Aは縁遠いもの?身近なもの?
持株比率や株式分散、企業価値の算出についての話を聞く流れで、スパイラルコンサルティングの得意とする「SCALE型M&A」について話を聞き興味が湧いた。
企業価値を高めて売却する、ということが本当に可能なのだろうか。
そもそも大企業同士のM&Aはニュースで目にすることもあるが、どの程度の規模の企業ならM&Aが可能なのか。
渦巻:
「SCALE型M&Aというのは私の会社でも可能でしょうか?正直M&Aというと名の知れた大企業が実施しているか、小説で敵対的買収が行われることをイメージしてしまいます。できたばかりの私個人の会社が他社に高額で買収されるイメージが湧きません」
松栄:
「M&Aは多くの人にとって身近なものではないため、そのようなイメージを持ってしまうのも仕方がないかもしれません。実際は企業の規模に関わらず、日本でもM&Aが数多く実施されています。年々その数は増え、公表されている数でも2017年には年間3,000件超のM&Aが実施されています」
経済産業省中小企業庁HPより出典
渦巻:
「意外と多いですね。全国ニュースで報道されるようなM&Aは大企業同士のものばかりなので、報道されないようなM&Aも実際は実施されているということですね」
松栄:
「はい、さらに実施されているM&Aのほとんどが友好的なM&Aです。映画や小説のような敵対的買収はほんの一部です。
国内のM&A事情を調べてみてイメージが変わったという方は少なくありません。実際にM&Aで譲渡先となる投資ファンドや事業会社について知ればイメージしやすくなるかもしれませんね。投資ファンドへのM&Aと事業会社へのM&Aの違いをご説明します」
投資ファンドのメリット・デメリット
松栄:
「まず投資ファンドについて、どのようなイメージをお持ちですか?」
渦巻:
「投資目的なので利益回収が第一、ハゲタカファンドなどですね」
松栄:
「あまり良いイメージではない、ということですね。しかし実際のファンドへのM&Aには確かにデメリットもありますが、メリットもあります。投資ファンドにも色々あるので、まずは投資ファンドの分類についてをご紹介しますね。
投資ファンドとは、投資家から集めた資金を様々なものに投資し、それによって得た利益を投資家に分配する組織です。そのため、何に投資するのかによっていくつかに分類されます。
【1】アクティビストファンド
上場株式に投資をするファンドです。企業経営に株主として意見を出して投資先の価値を向上させ、価値が高くなったところで株式を売って利益を得ます。いわゆる「もの言う株主」ですね。
【2】プライベートエクイティファンド(PEファンド)
プライベートエクイティ、つまり未公開株を投資対象にするファンドです。ベンチャーキャピタルや事業再生ファンド、バイアウトファンド、ディストレストファンドなどがこれに当てはまります。プライベートエクイティファンド(PEファンド)は、投資先に口だけを出すのではなく、実際に経営に関わって経営改善を図ります。
渦巻さんの会社を譲渡するとしたら、この【2】プライベートエクイティファンド(PEファンド)の方が譲渡の相手となるでしょう」
渦巻:
「なるほど、投資ファンドにも色々あるということですね。投資ファンドをM&Aの相手として選ぶメリット、逆にデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?」
松栄:
「投資ファンドのメリットには、
- ファンドからの指摘・指導により経営が改善し、会社が大きく成長する可能性がある
- 非上場企業でも資金を調達できる
- 基本的には経営陣は維持される
- 投資ファンドは最終的に株式を売却するため、個別の会社として独自色を守りやすい
- 一部株式を創業者が保有し続ける場合もあり、会社の価値が向上することで利益を得られる
- 投資ファンドが株を売却する際に買い戻せる可能性がある
などがあります。逆にデメリットとしては、
- そもそも投資ファンドに投資対象として選ばれるハードルが高い
- ファンドの投資後は、株式上場や、事業会社への更なる譲渡など、ファンドとしての出口を目指す必要がある。場合によっては、創業者や経営陣が買い戻すケースもある
- 投資手法次第では内部留保が薄くなる可能性がある
などが挙げられます。
投資ファンドにとっては何が何でも利益を獲得したいという考えがあり、かつ他の企業への投資経験もありますので、管理面・資金面・経営計画立案などの面では大きな力になってくれる可能性があります。
そのため、現在では戦略的にファンドと組んで上場を目指す企業が増えていますよ。
投資先の会社や創業者の考えに理解を示してくれる投資ファンドも存在しますから、投資ファンドの中でもどこをM&Aの相手として選ぶのかをよく検討すべきでしょう。
今までの実績を確認するのもいいでしょう」
投資ファンドへのM&Aでは投資ファンドによる監視や指導はあるものの、資金を得て現経営陣のまま会社を成長させられるチャンスに溢れているようだ。
事業会社のメリット・デメリット
松栄:
「次に事業会社のメリット・デメリットをご説明しますね。事業会社を譲受先としたM&Aは、ニュースになるような大企業同士のM&Aがあるのでイメージしやすいかもしれません。実は非上場企業を譲受先としたM&Aが大半を占めています。
事業会社のメリットは
- 譲受企業の経営資源を自社の経営・成長に活かせる
- 譲受企業の事業と自社の事業に親和性があれば、相乗効果が得られる可能性がある
- 譲受企業が上場企業であれば、一種のIPOとして自社が上場したのと同じようなメリットを享受できる
- いつまでに売却するという明確な期限はないため、そのまま譲受企業の一部として安定した長期的な経営を続けることができる
などが挙げられます。逆にデメリットは、
- 基本的に譲受企業から経営陣に人材が送り込まれるため、M&A後は以前と同じようには経営に関与ができない
- 譲受企業の戦略や企業文化を浸透させられることが多く、自社独自の色がなくなることもある
などが挙げられます。
投資ファンドとのM&Aとは異なり、譲受企業の一部として存在することができ、何年後かに売却されるということがないため安定感は事業会社相手のM&Aの方が大きいでしょう。
事業会社とのM&Aの場合、譲受企業との考え方や経営方針、企業文化など、十分にディスカッションする時間を設けて進めることで、M&A後の心配は少なくなると思います」
投資ファンドと事業会社、どちらも一長一短のようだ。
しかしどちらにせよ、相手をきちんと選ぶことができれば良い関係を構築できるM&Aになりそうだ。
渦巻:
「SCALE型M&Aは企業価値を高めて譲渡できるようにしていただくサービスだと思いますが、金額の高さだけでなく譲受先との相性についてもこちらが強く望んでいいのでしょうか?」
松栄:
「もちろんです。スパイラルコンサルティングは企業と経営者の双方に対して、次なるステージを共に創っていける存在になることを目指しています。M&Aによって会社は成長でき、そして創業者は次なる夢に挑戦できる結果になることが望ましいのです。次の夢への挑戦として、譲渡益は元手になる大切な存在です。決して妥協する必要はありません。
実際にM&Aによって会社を成長させると同時に、自身も再出資して、更なる事業成長に顧問という立場で貢献している方もいらっしゃいますよ。
M&Aに興味があるならぜひ弊社にご相談いただければと思います」
私の会社は起ちあがったばかりだが、最初からIPOやM&Aを目標に事業計画を立てて経営していくと面白そうだ。
起業してからのこの数ヶ月、手探りで進めながら漠然とした不安もあったが、未来を少し描けるようになると気持ちが明るくなる。
経営を続ける中で他にも疑問や課題に直面することもあるだろうが、その際にはスパイラルコンサルティングに相談してみよう。
できたばかりの会社だ。
可能性に満ち溢れている。
来るときの不安は消え、今後のことを考えるワクワクした気持ちで家路につくことができた。
まとめ:投資ファンドと事業会社の違い
渦巻さんは晴れやかな気持ちで帰ることができたようですね。
それでは最後に投資ファンドと事業会社の違いについて表にしてまとめておきましょう。
こうして情報を整理してみると、さらに理解が深まるでしょう。
IPOもM&Aも今回ご紹介した内容以上に知っておくべきことがたくさんあります。
自身で調べる際は、少しずつ情報を整理しながら調査することをおすすめします。
また疑問や不安な点があれば、お気軽にスパイラルコンサルティングにご相談ください。
経験豊かなアドバイザーがお答えいたします。