2019年8月12日 月曜日

マンション管理のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

この記事では、マンション管理会社をM&Aで売却することを検討している経営者向けに、予め考えておくべきことをご紹介します。

M&Aを検討するべき状況、タイミング、適切な相談先など、手続きを進めるうえで重要なポイントを項目別に解説していきます。

 

マンション管理のM&A

マンション管理業の市場規模はこれまで年3%ほどの成長率を保ってきましたが、ここ数年は成長率が伸び悩んでおり、2020年にはマイナスに転じると予測されています。

東京五輪や大阪万博による建築特需は今後しばらく続くと予測されています。しかし、少子高齢化によってマンションを利用する人口は年々減少傾向にあります。

建築特需が落ち着いた後はストック型ビジネスとしての特性が強くなり、中小企業にとっては厳しい状況になることが予想されます。

マンション管理会社の9割以上は中小企業とされていますが、一方でシェア上位である大手15社が市場規模の50%以上を占めている状況となっています。

今後も大手事業者によるシェアの寡占は進む見通しであり、中堅~中小企業による競争は一層激化することが予想されています

 

マンション管理会社をM&Aで買収、売却する場合、株式譲渡や事業譲渡などの形式に沿って実施されることが一般的です。いずれも株式や資産を直接取引する形式であり、吸収や合併などの形式を用いるケースは少ないです。

株式譲渡と事業譲渡の特徴を簡単に説明すると、株式譲渡は売り手側の株式や財産、負債などを買い手側が全て取得する形式であり、事業譲渡は売り手側が運営している事業を買い手側が運営できるように各種資産を移動させる形式です。

基本的には全資産を引き継ぐ株式譲渡の方が手続きは簡単ですが、売り手側が簿外債務や訴訟トラブルを抱えているか、一部事業だけを切り離して売却したい場合などは事業譲渡を用いる必要が出てきます。

 

マンション管理のM&Aを行う理由は?

近年は国内全体で経営者の平均年齢が高くなっており、多くの中小企業が後継者問題に直面しているとされます。

特に、マンション管理業界では初代オーナーが引退に適した年齢を迎えている企業が多く、事業承継を目的としてM&Aを検討する企業が増えてきています。

 

M&Aが活発化する理由としては、人材不足や高齢化社会による後継者不足があります。

近年では親族や会社内に候補者が居る場合でも、別の業種に就職していたり、経営状況を見て引継ぎを辞退されたりすることが増えています。

オーナーの身内に事業を引き継げる人物がいない場合、廃業を選ぶか、外部企業へ経営を引き継ぐことになります。

 

マンション管理会社は顧客の獲得競争で経営に余裕がない場合が多く、後継者教育と事業運営を並行する余裕がないことも多いとされます。

後継者教育には長ければ10年かかることから、オーナーの年齢的に承継が間に合わないというケースもあります。

仮に年齢的な課題をクリアできる場合でも、不安定な状態である会社を親族や社員に引き継がせたくないと考えるオーナーも少なくありません。

 

オーナーの子供や社員へ経営権を引き継ぐ場合、会社の株式を相続する過程で後継者は多大な相続税を支払う必要があります

未上場企業では株式評価額が高くなりやすく、中小企業を承継する場合でも評価額が数千万円となるケースが珍しくありません。資金不足を理由として事業承継を諦めることは多いとされており、事業承継にかかる費用の高さは多くの経営者にとって問題であるといえます。

 

一方、M&Aで買収を実施する企業は高い資金力を持っていることが前提であり、問題なく売却できればまとまった額の金銭を獲得することができます。

資産として不安定な会社を相続させるよりも、M&Aで会社を現金化してから相続させたいというオーナーは一定数存在します。

 

マンション管理のM&Aを行うタイミングは?

マンション管理会社をM&Aで売却することを考えるべきタイミングとしては、自社が管理委託契約している物件の収入単価や契約数が減少に転じた時、社員が退職した時、コンプライアンス違反を起こした時などがあげられます。

 

近年はマンションの新規建築数が減少しており、中小規模の管理会社が継続的に契約物件を増やすことは困難になってきています。

宣伝や設備管理に力を入れたり、リプレイス営業を実施したりするには、もちろんながら資金が必要です。

しかし、売上が減少している時期に各種費用を確保するのは困難であり、自社だけでは問題を解決しきれないケースは多くの中小企業で考えられる話です。

 

中小規模のマンション管理会社は人手不足であることが多く、社員が何名か退職すると業務が滞る企業が少なからずあるとされます。一般的には社員ひとりで10~20件を管理しているとされますが、人手に余裕がない企業だと担当者が退職した際にカバーすることが難しく、サービスを維持することが困難になるケースが多くあります。

人手不足で事業運営に支障が出始めたと実感したら、早めにM&Aを検討、実施することで社員が立て続けに離職する事態を防げる可能性があります。           

 

基本的に、M&Aを行うべきだと判断できる状況であれば、なるべく早いタイミングで行動し始めることをおすすめします

会社の業績が伸びている時に売却できれば、一般的な相場よりも高い売却益を得られる見込みが高くなります。

マンション管理会社をM&Aで売却する場合、管理物件1室に対して約7~9万円ほどが相場とされています。20室あるマンション1軒であれば、相場は140~180万円になります。

逆に業績が停滞、減少している時も、早いうちに買い手を見つける必要があります。

業績が下がっている企業でも、M&Aで資金や人材を獲得して経営を立て直したケースは多く存在します。

しかし、債務が積み重なった状況になってしまうと買い手が付かなくなり、M&Aを実施することが困難になります。

 

マンション管理のM&Aを実施するのは誰か?

マンション管理業界では、大手、中小企業ともにM&Aを活発に実施しています。

買収を実施するのは大手企業であることが多く、買収相手が保有する取引先を獲得してシェア拡大や展開地域拡大などを主な目的としているケースが多いです。

 

2020年を境にマンションを利用する層の世帯数は減少していくとみられており、それまでにM&Aで他社を買収して対外的な競争力を強化しようとする大手事業者は今後増加していくと予測されます。

大手企業が活発にM&Aを実施することによって、近年では中小企業も競争力強化を目的としたM&Aを多く実施するようになっています。

 

マンション管理業はスケールメリットを受けやすい業種であり、自社内で対応できる業務が多くなるほど安定して収益を確保しやすくなります。

中小事業者は大手ほどの人材や資金力を自社だけで確保することは難しいことから、M&Aで同業他社と提携、合併する事例が増えてきています。

例えば共有部分の管理を担う事業者と、居室内の管理を担う事業者が提携することで、それぞれ単独であるよりも幅広い業務を自社内で担当できるようになります。

 

マンション管理のM&A事例

ここでは、マンション管理業界で実施されたM&Aの成立事例をご紹介します。

 

三幸が都市総合サービスを子会社化

三幸株式会社は、都市総合サービス株式会社の全株式を取得して子会社化したことを2019年6月に発表しました。なお、取得価額は非公表です。

同社は以前から都市総合サービスの株式を8.87%保有しており、清掃・設備管理面を中心に協力関係を構築していましたが、当案件をきっかけに協力体制を強化することで、業容の拡大、企業価値向上が見込めるとされています。

 

オリックスが大京を子会社化

オリックスは、連結子会社として株式の約7割を保有している大京の株式に対してTOB(公開買付け)を実行し、完全子会社にすることを2018年10月26日に発表しました。

買付けの実行期間は10月29日から12月10日であり、1株あたり2970円、総額は約770億円となっています。当買付けは12月11日に完了したと発表されており、オリックスは大京の株式を94%保有する結果となっています。

大京は”ライオンズマンション”をはじめとしたマンション開発業、および不動産管理業を主に手がけており、当時の税引き前利益は約197億円とされます。

オリックスは商業施設やオフィスといった法人向け不動産を主に手がけており、2018年3月期の利益は624億円とされます。

当買付けによってオリックスは不動産管理会社として業界第4位の利益水準を獲得しています。今後は両社の一体化を推進し、再開発需要が高くなっている住居やオフィスを複合化した大型開発へ取り組んでいくとされています。

 

フージャースHDがコーケンコミュニティーを子会社化

フージャースHDは、子会社として分譲マンションの管理サービスを運営するフージャースリビングサービスを通じて、神奈川県をメインとしてマンション管理サービスを提供しているコーケンコミュニティーの全株式を取得し、子会社化することを2015年8月に発表しました。

東京、愛知、京都エリアを主体とする同社が神奈川エリアに展開する対象会社を獲得することで、展開エリアの拡大およびグループ全体の事業拡大を図るとしています。

 

マンション管理のM&Aの相談先は?

マンション管理会社をM&Aで売却しようと検討している場合、税理士や弁護士、M&Aアドバイザリーなど、各分野における専門家へ相談することをおすすめします

 

M&Aをスムーズに完了させるには、税務面や法務面に関する知識や、自社の目的に見合った売却先の選び方であるなど、様々な事前知識が必要になってきます。

経営者が自力で進めることは労力や時間が掛かりすぎるという理由でおすすめできないですが、専門家から知識を借りることで成約率を上げたり、優れた後継者を探しやすくなったりするメリットが見込めます。

 

M&Aアドバイザリーは、M&Aを検討している買収側、売却側企業を引き合わせるマッチング業務や各種書類作成、トップ面談時の仲介業務などを担当してくれる専門業者です。

マンション管理会社のM&Aを相談するときは、マンション管理業に関して詳しい知識を持っており、マンション管理会社によるM&Aを成立させている実績を持つアドバイザリーを探して相談することをおすすめします

近年はマンション管理会社のM&Aに特化した仲介会社も存在しているので、目的に合わせて最適なアドバイザリーへ相談することをおすすめします。

 

M&Aを成立させるまでのコストを抑えたい場合は、完全成功報酬制のところへ依頼することをおすすめします。

アドバイザーによっては着手金や中間報酬、月間報酬などが必要になり、M&Aが成立しなかった場合でも、一度払った報酬は返還されないので注意が必要です。

成功報酬の算定にはレーマン方式を用いている会社が多いですが、売却価額をベースにする場合と、移動総資産をベースにする場合では結果的に支払う金額が変わってきます。

負債を譲渡対象に含める場合、売却価額をベースにした方が成功報酬は低くなります。

アドバイザーによって報酬規程は異なっているので、問い合わせ時点で報酬に関する確認を取っておくことをおすすめします。

 

まとめ

マンション管理会社をM&Aで売却する際は、まずM&Aを実施する必要性を考えたうえで、実施するのであれば各種専門家の知識を借りながら進めていくことが成約率を高くするポイントです。

実行に移すタイミングは経営者しだいなので、当記事で紹介した知識を基にトラブルや後悔のないM&Aを目指していきましょう。

マンション管理のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介
マンション管理会社をM&Aで売却することを検討している経営者向けに、予め考えておくべき重要なポイントについて詳しくご紹介します。
例えば、M&Aを検討するべき状況、タイミング、適切な相談先など、M&Aを進めるうえで重要な箇所をわかりやすくまとめました。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年8月12日
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