2019年4月25日 木曜日

パン屋・ベーカリーの事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

パン屋で働いている皆様は、お店の今後について考えたことはありますか?
突然、経営者が病で倒れた場合、赤字経営でパン屋の廃業を迫られた場合、お店を残す方法はないのか?地域の皆さんとの関係を断ち切りたくない!と考えるかと思います。

そこでご紹介したいのが、M&Aの事業売却という手法です。
事業売却とは何なのか?廃業することなく、お店を残すことが出来るのか?飲食業界で急増する事業売却の利用背景とパン屋が直面している問題を交えてお話していきたいと思います。

 

パン屋・ベーカリーの事業売却で次のステージへ

M&Aは、複数ある会社が一つになる合併や、ある会社が他の会社を買収する経営統合を意味し、事業の拡大・縮小、効率的な資源の利用を目的としています。
その中で、会社の一部もしくはすべてを売却する、事業売却に焦点を合わせてお話していきます。

2017年時点、企業のM&A件数は3,000件を超え、飲食業界でもM&Aは活性化しつつあります。もし、飲食店を手放さなければならなくなった場合、M&Aという選択肢があるということを頭の中に留めておいて頂きたいです。
個人店が多いパン屋は特に、家族経営で困難の時を迎えているかと思われます。売り手が知っておくべき事業売却のメカニズムと、パン屋が事業売却に踏み込まなければならない現状をご紹介していきます。   

  

事業売却とは

事業売却は、名前の通り会社内にある事業を売却することをいいます。会社内にある全ての事業、もしくはその一部のみを売却することも併せて事業売却のカテゴリーに入ります。
採算が取れず赤字を出している事業の切り離し、事業承継の一環として主力事業を承継させるために売却を行うなど事業売却の目的は様々です。
売却する事業の中身は、人・物(商品・工場)、権利(取引先)を定めて売ることができます

【事業売却の手順】

①取締役会での承認決議

取締役会を設置している会社の場合、まずは、事業譲渡を行うことに対して取締役会で承認決議を得ます。事業譲渡に対して取締役で賛成数が過半数を超えれば事業譲渡が承認されます。

②事業譲渡契約の締結

事業譲渡契約を交わす際に、売り手の会社は事業内容のうち何を譲渡するのかを決定します。この時に、事業譲渡の目的や譲渡財産などの事項を記載しておく必要があります。また、契約内容によってはどちらかの会社に不利が生じることがあるので、弁護士やM&Aアドバイザーなどの、外部の専門家からアドバイスをもらっておくとよいでしょう。

③株主への通知・公告

事業譲渡契約に定められた事業譲渡の効力発生の20日前までに、株主への通知・公告を行わなければなりません。事業譲渡に反対する株主がいる場合に株式買取請求ができる余裕をもたせておくために、日時期限の設定をしています。

④株主総会の特別決議

株主への通知・公告完了後、事業譲渡の効力発生日の前日までに株主総会を開催します。株主総会では、議決権を持つ株主の半数以上が出席しており、その株主の2/3以上が賛成することで、事業譲渡の承認決議を取ります。株主総会の承認決議を得ることは必須で、株主総会を開催せずに行われた事業譲渡は無効になります。

 

パン屋の事業売却

パン屋の売買では、厨房施設や内装をそのまま残した状態で売却する、「居抜き形式」での売買取引されることが多くありました。
ですが近年では、M&Aを利用してパン屋を売却するケースが見られるようになってきました。

パン屋の経営者が売却をする際に、自分のお店がいくらで売れるのかは非常に気になるところかと思います。
M&Aを利用して売却する際の相場は、およそ100~250万円程度です。値段の基準は、売上高やブランド力、好物件かどうかで物件の金額を決定します。
パン屋の事業売買では主に、M&A専門のアドバイザーや、中立的な立場で売り手と買い手のマッチングを行い、商談を円滑に進める仲介業者を活用します。譲渡先探しや条件の擦り合わせなど契約が滞ってしまうケースがある為、こういった専門家に相談をして契約を進めていきます。
また、譲渡先を見つける手段として、パン屋のM&Aを得意としている仲介業者に相談をすると、効率的に譲渡先を見つけることが出来るのです。

 

パン屋が求めているもの

中小企業庁が設置している「事業引継ぎ相談窓口」での事業継承に関する相談件数が、2012年には1,000件程度だったのが、2015年には約5倍の5,000件程度まで増えています。これだけの相談件数が増加している原因は何なのでしょうか。

パン屋側からのニーズとしては、
・経営者が高齢の為、事業の承継を行いたいこと
・家族に家業を継ぐ人間が居ないこと
・来客数が多く、常連客の期待に応えたいこと
・従業員の雇用や取引先との関係を守らなければいけないこと
が挙げられます。
M&Aの事業売却は、お店を現存させることができ、経営の悩みを一気に解決することが出来るのです。これまでの地域貢献の実績と従業員の雇用を守ることが可能となり、自分のキャリアを新しくスタートすることが可能になるのです。

 

パン屋・ベーカリーを事業売却する目的にはこんなものがあります

ちょっと変わった商品や豊富なラインナップで店内を賑やかせている人気店がある一方、続々と廃業に追い込まれているパン屋があります。人気に見えるパン屋でも後継者がいないなど様々な問題を抱えているのです。
そこで、パン屋が事業売却に踏み込む目的と、事業売却を利用する上でのメリット・デメリットをご紹介していきます。

 

パン屋が事業売却を利用する目的

昨今の飲食業界では、商品を購入する消費者の目が肥えてきています。新しい商品を開発するための費用と時間をかけなければ、消費者の求めているニーズに応えることは出来ないのです。

日々進化していかなければならない厳しい世界で、飲食業界では経営者の後継者不足が深刻化しています。経営者の想いとは裏腹に、お店を引き継いでくれる人材がいないことが問題視されています。仮に、後継者探しを諦めてお店を廃業するとなると莫大な費用が必要となるのです。

経営者は、事業売却に何を求めているのでしょうか。
パン屋が事業売却を選ぶ理由には以下が挙げられます。
 ①事業継承により会社売却を行い、引退後の生活費に充てたい。
 ②高年齢化や健康面で、経営するだけの体力・気力が無くなった。
 ③早期にリタイアし、第二の人生をスタートさせたい。
 ④転居をする・海外への移住がしたい。
 ⑤資本力のある大企業に売却し、会社の存続を計ると共に、他企業の傘下に入ることで相乗効果を期待したい。

 

パン屋が事業売却を利用することのメリット・デメリット

【事業売却のメリット】

①お店を潰さずに済む

お店の経営者が事業を継続できなくなってしまうと、消費者・取引先・従業員・株主などとの、これまで築いてきた関係が無駄にしてしまいます。業績も良くないし、廃業という選択肢も現れるかもしれません。
しかし、M&Aの価値評価法として使用されるDCF法では、将来会社が生み出すであろう事業価値を含めて算定が行われます。売却する事業が直近の業績が悪く、債務超過の状態であっても、将来の事業価値が十分なれば、売却出来る可能性は高まります。
そのため、諦めずに事業売却の可能性を探ることをおすすめします。
業績が悪くても、例えばM&Aの相手が大きな会社であれば、将来性を見込んで買い取ってくれて、結果的に事業を潰さずに済むかもしれません。

②後継者問題を解決できる

一般的な後継者不足の対策としては、事業を託す上で実力があり信頼できる従業員を後継者候補として、育成を行うことで解決をはかる、という方法があります。
しかし後継者の育成には多くの時間が必要となります。M&Aは、パン屋同士で行われることが多いです。パン屋をマネージメント出来る実力のある経営者や、経験豊富な従業員を即戦力で迎えることが出来ます。経営者の育成の手間が省け、後継者不足を解決することが出来るのです。

③売却利益が獲得できる

お店の経営者が事業売却を行った場合には、廃業時とは異なり営業権というものが加味されます。事業売却における営業権は、企業のノウハウや顧客に提供するブランドのイメージ、立地条件など、目には見えない「無形資産の価値」を表します。
M&Aの事業売却で加味される営業権は、買収する企業の評価項目によって、数億円から数十億円までのぼり、交渉成立後は売却側に大きな利益が入ることとなります。また、事業売却により、個人保証や担保はそのまま買取った企業が引き継ぐ場合があるので、お店の経営者に金銭的・精神的負担がかかることがありません。

 

【事業売却のデメリット】

①売却先の買い手企業を探すことが難しい

お店を売却するパン屋は、自社の経営理念や重要視している部分を尊重してくれる買い手企業とのM&Aを望んでいるのです。ところが、買い手企業を見つけるのは簡単なものではありません。お互いの条件に完全に合意することは難しく、買い手側との綿密な擦り合わせが必要となります。すぐにでも売りたい、と即決してくれる企業とのM&Aを行うと、会社の中身が大きく変わってしまい、従業員が窮屈を感じるような職場環境になってしまう可能性があります。
事業売却が完了するまで、早くても3ヵ月から、長ければ半年から1年の期間を要す場合があります。事業売却を行うのに、時間がかかることを念頭に置く必要があります。

②売却後に事業領域が発生する

事業を売却した経営者は一定期間、売却した事業領域に携わることが出来なくなります。買い手側の企業との交渉次第ですが、一般的には2~3年間、起業・役員・従業員・株主などどのレベルでの関与が不可能となります。これを、競業避止義務といいます。完全に、飲食業界からリタイアする場合は、これに当てはまりません。

③税金が発生する

事業売却で課税対象となる資産は法人税となり、国に対して税金を納めなければなりません。事業売却をするタイミングは、経営者が経営を辞める時が多く、極力資金を多めに残したいと考えます。事業売却で得た利益の約20~40%近くの税金が取られてしまいます。

 

パン屋・ベーカリーの事業売却を行う上での注意点

事業売却で、買い手側の企業がお店を選ぶポイントがいくつかあるかと思います。

ついつい入ってしまいたくなるようなお店構えなのか?
商品に豊富なラインアップがあるか?
駅から近いのか、もしくは郊外にあっても車で多くの人が来店するのか?

買い手側の企業が立地条件やお店の価値を項目ごとに評価し、事業価値を決めていきます。事業価値をより高めていくために、売り手側が注意すべき点をいくつかご紹介していきます。

 

立地条件、街の雰囲気を伝える

何よりも大切なのは、構えているお店がどんな街にあるのか、駅から歩いて行ける距離なのか、といった立地条件です。条件によって買い手側の購買意欲が変動してきます。
特に、パン屋および飲食業界のM&Aでは、一般的な企業のM&Aに比べて、実店舗の立地条件が事業価値に大きく影響する傾向があります。売り手側は、最寄駅から徒歩5分のオフィス街にあるお店や、再開発が進んだマンションや住宅街にお店を構えているなど、具体的に街の雰囲気や立地条件が伝わるようにしましょう
さらに、補足情報で良好な近所付き合いを築いていること、取引先からの信頼を得ていることを伝えておくと、買い手側の企業に安心感を与えることが出来ます。

逆に、買い手側の企業は、お店を実際に目で見て街の雰囲気を体感することで、買収成立後の経営図を想像することができるでしょう。さらに、買収するお店の立地は大きな要素で、不便な場所にあると収益が見込めません。また、駐車場の有無や車で行きやすいかどうかも評価基準に加味しましょう。

 

お店独自の商品をアピール

他のパン屋よりも事業価値を高めるには、競合する店舗との違いを明確にすることが重要です。駅前にパン屋が多く点在している場合、安心な品質はもちろんですが、そのお店の強みとなる商品があるかどうかによって、消費者のお店を選ぶ基準が変わってきます。
焼き立てのクロワッサン1つで勝負するお店、見た目にインパクトがある商品で勝負するお店など、どんな手段で消費者の心を掴むか日々思案に暮れているのです。他の店舗との違いをはっきりさせ、目まぐるしく変わる消費者のニーズに応えていかなければ、既存顧客と継続と新規顧客の獲得に繋げることは出来ません。

自分のお店の切り札となる商品を持っていることで、顧客需要が高くなり、事業売却での買い手企業側へのアピールポイントとなるのです。

買い手側の企業は、世の中の動向や流行へのチェックを怠らず、時代・風潮に合った経営をしているお店を選ぶ必要があります。

 

メディア関連の取材

テレビや雑誌に掲載されたお店は、宣伝効果により多方面からの来客が見込まれます。
取材があり話題性のあるお店に敏感な若者たちが、SNSで実際に食べたお店のパンの感想や写真を共有することで、さらなる顧客増加に繋げることも可能です。
特に、大きな広告を使用していない個人商店であっても、こういった方法で宣伝費用をかけずに集客に成功する例も多くあります。メディアに取り上げられた実績があると、事業売却の買い手側に対してこれ以上にないアピールポイントとなり、買い手側に対して事業価値があることの証明になるのです。

買い手側の企業は、メディアに取り上げられたことがあるお店なのか、事前にリサーチしておきましょう。たとえ、メディアで紹介されたそのお店が田舎の山中にあろうとも、お店単体の事業価値はかなり高くなるのです。

 

まとめ

M&Aの事業売却についてのご説明と、パン屋が抱えている問題と経営者が事業売却をしなければならない理由をご紹介してきました。事業売却で発生するメリット・デメリットを把握した上で、慎重に売却する相手を見極めましょう。

パン屋・ベーカリーの事業売却のポイントとは?
パン屋で働いている皆様は、お店の今後について考えたことはありますか?
突然、経営者が病で倒れた場合、赤字経営でパン屋の廃業を迫られた場合、お店を残す方法はないのか?地域の皆さんとの関係を断ち切りたくない!と考えるかと思います。
そこでご紹介したいのが、M&Aの事業売却という手法です。
事業売却とは何なのか?廃業することなく、お店を残すことが出来るのか?飲食業界で急増する事業売却の利用背景とパン屋が直面している問題を交えてお話していきたいと思います。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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