2019年8月14日 水曜日

バス会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

この記事では、バス会社をM&Aで売却、あるいは買収する企業が知っておきたい知識と、考えておくべきことを解説します。

そして、バス会社のM&A事例に関しても紹介しています。

 

バス会社のM&A

バス会社は、乗合型もしくは貸切型のバスによる配送業務を主に実施する会社を指します。

2016年における業界の営業収入は1兆4497億円となっています。

 

乗合型バスは、いわゆる路線バスや高速バスなどが該当します。正確には「一般乗合旅客自動車運送事業」を展開している事業者のバスを指します。

貸切型バスは、旅行や送迎などの用途で貸切利用するバスが該当します。正確には「一般貸切旅客自動車運送事業」を展開している事業者のバスを指します。

 

自家用車が一般に広く普及したことで、バスの年間利用者数はピーク時の年間100億人と比べて半数以下である45億人ほどまで減少しています。

利用者数の減少は乗合バス会社に大きな影響を与えており、乗合バス会社の約7割が赤字経営に追い込まれているという状況です。

2002年に乗合バスの参入規制が緩和された時に新規参入が相次ぎ、過剰な価格競争が実施されたこともバス業界が厳しい状況にある要因です。

 

乗合型バスが不調である一方、観光バスは順調に利用者数を伸ばしています。

高速道路を活用することで、新幹線や飛行機で移動するよりも低コストで遠出できる事が人気の主な要因となっています。

そして、近年は訪日外国人が安価な高速バスを好んで利用するというデータもあり、高速バスに対する需要は今後伸びていく見通しです。

 

しかし、バス業界では長期的な人手不足が問題となっています。

実際に長時間勤務が原因と思われる高速バスの事故も多くなっていて、バス会社にとって運転手を確保することは重要な課題となっています。

 

バス会社のM&Aを行う理由は?

ここでは、バス会社がM&Aを実施する理由として多いものを、売却側・買収側それぞれの観点から解説していきます。

 

・売却側

まず、バス会社がM&Aによって売却を行う場合、後継者の確保、創業者利益の獲得などが主目的となっているケースが多いです。

 バス会社を経営する人物の多くがリタイアの時期を迎えており、後継者問題に直面している中小企業が増えてきています

後継者は現オーナーの親族か従業員から選ぶことが一般的ですが、近年は候補者に承継を拒否されたり、身近に候補者がいなかったり等で後継者を確保できない問題が起こっています。

M&Aは成立すれば外部企業が経営を引き継ぐので、身近に後継者候補が居ない方でも事業承継を実施することができます。

 

M&Aにおける売却側企業は、相手企業との間で取り決めた額の売却利益を得ることができます。

小規模なバス管理会社であれば数十万円から数百万円、バスを複数台保有している中小企業であれば数千万円から数億円ほどが平均的な相場とされます。

基本的には観光用途の貸切型バスの方が乗合型よりも収益が見込みやすく、売却額も高くなりやすい傾向があります。

近年では訪日外国人が増加していることや、2020年に東京五輪があることなどから、特に外国人向け観光バスを運用できる会社は高額売却が見込みやすいです。

 

近年のバス業界は全体的に業界再編の時期に差し掛かっており、売却側企業は多くの買収希望案件から交渉先を選びやすい状況であるといえます

買収事例が多い時期は平均的な相場も高くなる傾向があるので、売却利益を目的としたM&Aは近年増加しています。

 

・買収側

バス会社が買収を実施する主な理由としては、人材確保、許認可の取得、経営力強化などがあります。

バス会社にとって運転手は必須の存在ですが、就職先としてバス運転手を選ぶ新規就業者は減少しており、さらに参入規制が緩和され中小企業間で競争が激化したことで、運転手の確保が難しくなっています。

 

結果として既存のドライバーの平均年齢が上がり、現職ドライバーは6人に1人が60歳を上回っている状態となっています。

新規採用が見込みづらい状況では、採用活動にコストを使うよりも、M&Aで他社から従業員を獲得したほうが低コストでバス運転手を雇用することができます

 

買い手側が貸切型バス会社である場合、貸切型よりも参入規制が厳しい乗合型バス会社をM&Aで買収することで許認可を引き継ぐケースがあります。

主にバス運転手の負担を減らす形で規制が設けられているので、新規参入する事業者が充分な人数のバス運転手を確保することが困難となっています。

しかし、認可を持っている他社を買収した場合は、新たに許認可を取らなくてもバス会社として参入できます。

 

バス会社を買収するのは、鉄道やタクシーなどの交通系事業者であることが多いです。

買収側企業にとっては、実施できる事業領域が増えるので収益額が上がるほか、経営資源を共有することで安定した事業運営が出来るようになります。

 

バス会社のM&Aを行うタイミングは?

バス会社をM&Aで売却する場合、債務が少なく、会社の業績が伸びている、あるいは低下しそうだと予測できるタイミングでM&Aを実施することがポイントです。

M&Aで買収側となる企業は、相手企業の引継ぎ時の経営状況や保有する資産などから、買収することで自社にどれくらい利益があるかを予測します。

過剰に債務が多かったり、業績が低迷していたりする企業は買い手が付きづらいです。

 

しかし、赤字経営である場合でも、コスト削減や収益確保の取り組みによって業績が改善していると認められる場合は買い手がつく場合があります。 

人手不足や資金面の理由などで将来的に経営が厳しくなりそうな場合でも、実際に支障が出る前にM&Aで大手バス管理会社へ売却できれば経営を立て直せる見込みがあります。

 

経営状況とは別に、現オーナーの年齢や健康状況も判断基準にしやすい要素です。

経営職に就いている人の平均的な退職年齢は68~70歳とされているので、健康面に不安がない場合でも、オーナーが60代に差し掛かってきたらM&Aを検討し始めることをおすすめします

M&Aでは過去の書類が必要になってくる場合が多いので、引退時期が近づいてきてから準備を始めることは避けるべきです。

経営が順調なタイミングに合わせてM&Aを実施するには、それよりも前の早い時期からM&Aに向けた準備を進めておく必要があります。

実施するべきタイミングはM&Aの目的や経営状況等によって変わるので、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。

 

バス会社のM&Aを実施するのは誰か?

バス会社をM&Aで買収する企業は同じバス会社、もしくは複数の交通事業を運営しているホールディングスであるケースが多いです。

バス事業を運営するには許認可が必要ですが、他業種の企業が既存のバス会社をM&Aで買収した場合は許認可も引き継ぐことができます

事業運営に必要な人材や車両なども獲得できるので、他業種の企業がバス会社を買収するケースは近年増えています。

 

クロスオーバー型のM&A以外にも、バス会社が同業他社を買収する事例も増加しています。

理由としては運転手の雇用引継ぎや、運送車両を低コストで確保するなどが挙げられます。

路線バスを新しく一台購入するのには2000万円ほど掛かるとされていますが、M&Aでバス会社を買収することで安価に複数台のバスを獲得できます。M&Aが成立した後は塗装を変えるだけで配備できるので、買収コストを回収できるまでの期間を短縮することが出来ます。

 

自動車の普及や国内人口が減少することによって、2020年以降はバス業界の市場規模が縮小する見込みが強いです。

大手バス会社による買収、合併案件は今後一層増えていくと予想されています。

 

バス会社のM&A事例

バス会社によるM&Aは近年活発に実施されています。

他社を買収して経営資源を拡大する以外にも、大手グループ企業内で経営再編の手段にM&Aを用いる事例も多くみられます。

ここではバス会社によるM&A事例を紹介します。

 

第一交通産業が広島合同タクシーを子会社化

第一交通産業株式会社は、広島県内でタクシー事業や貸切バス事業を運営する有限会社広島合同タクシーの全発行済株式を2019年2月4日付で取得したことを発表しました。譲渡価額は非公表です。

当株式取得によって、第一交通産業グループが保有するタクシーは18台増加し、既に広島県内に保有している237台と合わせて255台、グループ全体では8319台となっています。

なお、同社は広島合同タクシー以外にも国内の各エリアでM&Aを実施しており、国内向け交通事業の強化を推進しています。当事例は広島エリアにおける事業拡大を目的としたものと思われます。

 

みちのりHDが東野交通を子会社化

みちのりHDは、栃木県でバス事業を運営する東野交通株式会社の株式を65%譲受し、子会社化することを2016年10月末に発表しました。取得価額は非公表であり、株式の譲渡手続きは同年12月1日に予定通り実施されています。

みちのりHDは栃木県、茨城県、福島県を含む地域に事業所を展開しており、東野交通を取得することによって北関東、東北エリアにおける交通ネットワーク強化と営業力強化が見込めるとしています。

なお、みちのりHDは2017年11月に同社の株式を100%取得完了しています。

 

阪急バスが子会社の阪急田園バスを吸収合併

阪急バス株式会社は、100%子会社である阪急田園バス株式会社を吸収合併することを、2019年3月7日に発表しました。

当合併によって両社の経営資源を一元化し、安定的な人材確保と人員配置を図るとともに、輸送の安全性向上とお客様へのサービス向上を図っていくとしています。

なお、阪急バスと阪急田園バスとの一般乗合バスの管理の受委託契約は、当合併に伴い解消されています。

 

バス会社のM&Aの相談先は?

バス会社のM&Aの相談先としては、公認会計士や税理士、弁護士や司法書士、大手の銀行、M&A専門のコンサルタントや仲介会社などがあります。

 

自社の顧問税理士や会計士へ相談するという方法は最も手軽ですが、そういった個人が対応できる範囲にはある程度限界があります。

法律関係に詳しい人物や、M&Aに役立つネットワークを持った人物であるなど、M&Aを実施するには様々な人の協力が必要です。

 

銀行の中にはM&Aのサポート対応を実施しているところがあります。

銀行が主にサポートしているのは大型案件である場合が多いですが、幅広いネットワークと豊富なサポート実績を持つ相談先です。

ただし、銀行は中小企業のサポートを専門外としていることが多く、必要な手数料も高額です。仮に成約は取れたとしても、中小規模の案件だと企業側にとって割が合わない結果になりやすいです。

 

大手M&A仲介会社は法務面や財務面の専門家を自社雇用していることが多いので、M&Aに必要な相手企業とのマッチングや書類作成、相手企業との直接面談時における仲介業務など、経営者を総合的にサポートしてくれます。

 

バス会社のM&Aを検討している場合、バス会社が実施している業務に詳しい知識を持っており、バス会社のM&Aを実際に成立させたことがある仲介会社へ相談することをおすすめします

M&Aを成立させるまでのコストを抑えたい場合、完全成功報酬制のM&A仲介会社を選ぶようにすると金銭的なリスクを抑えてM&Aを実施することができます。

着手金や月間報酬が不要なので、経営状況にあまり余裕がない場合でもM&Aを実施しやすくなります。

 

まとめ

バス会社のM&Aは買い手がタクシー会社や鉄道会社などである場合も多く、トラブルを回避しながら手続きを進めるにはM&A仲介会社へサポートを依頼することをおすすめします。

M&Aに慣れていない企業であるほど、信頼できる仲介会社と契約できるかが重要なポイントです。

この記事で紹介した考え方や知識を基に、バス会社のM&Aを納得できる形で実施できるように取り組んでいきましょう。

バス会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介
バス会社をM&Aで売却、あるいは買収する企業が知っておきたい知識と、考えておくべきことについて詳しく解説します。
また、バス会社のM&A事例に関しても紹介しています。どのようなタイミングで、誰が、そしてなぜ、バス会社のM&Aを行うのか、本記事を読むことで詳しく分かるようにまとめました。

Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年8月14日
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