2019年8月16日 金曜日

バス会社の事業承継でお困りではないですか?事例を紹介

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

バス運送業界は2000年に大きな規制緩和があり、新規事業参入ラッシュが起こりました。それから約20年が経ち、バス会社経営者の高齢化が顕著になり、多くの中小バス会社経営者は「事業承継適齢期」にあるとされています。

現在ではバス会社向けの事業承継セミナーが開催されたり、バス業界専門のコンサルティンググループが発足したりと、バス運送業界の事業承継を支援する流れが大きくなっています。

そこで、この記事では「事業承継とは?」からはじまり、実際に行われたバス会社同士のM&Aによる事業承継の実例を紹介します

 

バス会社を事業承継しよう

事業承継とは?

事業承継とは会社・事業のすべて、または一部を第三者に引き渡すことです。会社が保有している有形・無形の財産を新たな経営者に売却します。

簡単に説明すると「事業承継は会社の引き継ぎ」、「事業承継=株式の承継」と言うことができます。

 

事業承継は難しい?

事業承継は、事業承継先が2/3以上の株式を保有することで、会社の支配権(会社の持つ有形・無形の財産の全てに対して支配する権利)を得ることができます

事業承継で重要な「株式の取得」が事業承継を難しくしているとされています。

株式の取得には多額のコストと時間が必要です。

例えば、中小企業では事業の運営権と会社の経営権が分離しているケースがあり、所有権を保有しておきたいオーナーとの株式取得の交渉で揉めることは珍しいことではありません。

 

事業承継が必要な理由

現在、日本の中小企業は「後継者不在」「経営者の高齢化」が問題になっています。

そのため、民間の仲介業者のみならず、官民が一体となって事業承継ファンドを立ち上げ中小企業の事業承継をサポートする取り組みも行われています。

なぜ、そこまでして事業承継が行われるのでしょうか?

中小企業は地方の産業の活性化、雇用の創出を担っている側面があります。

さらに、中小企業が抱える独自の技術を後世に伝えるという大きな役割もあります。

事業をさらに成長させる戦略として事業承継を行うこともあります

 

バス会社の事業承継の現実

バス会社は大きく2つに分けることができます。

「乗合バス」と呼ばれる一般乗合旅客自動車運送事業と「貸切バス」と呼ばれる一般貸切旅客自動車運送事業です

2000年と2002年に行われた規制緩和によってバスの運行事業は免許制から許可制になり、バス運営事業に多くの事業所が新規参入しました。

2016年度の公共交通機関の営業収入の約9兆5千億円のうちの15%、約1兆4千億円がバス会社の営業収入です。

しかしながら、バスの輸送人口は1960年頃の約100億人をピークに、2016年には約45億人と減少傾向です。

そのため、バス会社のおよそ7割が赤字経営で事業を行っているというのが現実です。 

さらに、2019年以降、規制緩和によって参入した事業所の経営者が「事業承継適齢期」を迎えたと言われています。

多くのバス会社が後継者育成・譲渡準備を進められていないという調査結果のもと、組織改革やM&Aを活用し事業承継を支援する取り組みも行われています

中小バス会社は、2020東京オリンピック・パラリンピック以降に発生すると見られている高需要の反発から、バス事業の営業収入の低迷が予想されています。

そこで、2018年ころから、中小バス会社の事業承継を支援する取組みが行われています。

 

後継者がいない、そんなときは

バス会社が抱える「後継者不在問題」はバス業界全体が抱える大きな問題です

特に乗務員含め数名で運営しているような中小バス会社が後継者問題で廃業の壁に直面しています。

一般的に親族内から後継者を選定、教育することが事業承継では望ましいとされてきました。

親族に後継者が不在の場合には、バス事業に関わってきた従業員や第三者に事業承継するという選択肢があります。

 

従業員へ事業承継

バス会社においては従業員が経営を引き継ぐことは最も理想的な事業承継と言えます。その理由は、バス運送事業に関わってきたことで得た、法令遵守や生産性の高い運行オペレーションなどを引き続き実施することが望めるからです。

しかしながら、中小企業の従業員への事業承継の際に大きな障害となるのが、従業員の資金力です

前述したように、会社を承継するためには、多くの株式を取得するために多額の費用が必要です。

後継者が買い取る株式の価格は原則任意で設定することが可能です。

しかし、株式の価格が税制上の評価額とあまりにも差があった場合、株式の贈与とみなされ贈与税がかかります。 

さらには、会社の借入金を経営者が連帯保証人である場合、後継者の信用力によっては連帯保証人の変更・借り換えを行うことができない事も想定されます。

従業員による事業承継は、後継者が準備できる資金と信用力が事業承継の大きなポイントです

 

第三者への事業承継

後継者不足のため第三者へバス会社を売却して事業承継を行うために「M&A(Mergers & Acquisitions、合併と買収)」が近年非常に活発的になっています。 

M&Aは「巨大な資本力をもとに会社・事業を買い取り、売却して莫大利益を得る」というイメージが強いのではないでしょうか?

中小企業におけるM&Aの場合は、売却側と買収側の双方が綿密に交渉を行い、合意を得た後M&Aが実行されます

特に株式を公開していない中小企業相手の買収では株式の取得が最も重要なため、買収側は友好的に買収を行います。

近年のバス会社のM&Aでは少し特殊な事情があるようです。

前述のとおり、バス事業への参入は許可制ですが、2012年に関越道で起こった高速貸切バスの事故をきっかけに厳しい規制強化が行われ、バス事業へ新規参入する際の申請・監査が大変厳しくなりました。

そのため、バス事業へ新規参入を目指す他業種が厳しい監査を効率的にパスするために、バス会社を買収し、事業承継をするケースも増えてきています

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

M&Aのメリットは新しい後継者を探す事だけではありません。

M&Aによる事業承継は複合的にいくつものメリットを内包している場合が多くのケースで見受けられます

 

事業の継続・発展

高齢経営者の経営体制で事業継続に問題が生じた場合、M&Aによる事業承継は事業を継続させるのはもちろんのこと、さらなる事業の発展を望むことができます

M&Aを行い会社・事業を買収する理由は多岐に渡るので一概に言えませんが、中小企業を対象として買収行為の目的の多くは事業価値の獲得が目的のほとんどです。 

ここでの事業価値には、事業施設から従業員、取引先や顧客までもが含まれます。新経営陣は事業価値を活用し、事業を今まで以上に継続・発展させます。

 

雇用・取引先の継続

もし、バス会社を廃業した場合、乗務員は解雇しなければなりません。

そうなれば、取引先となる宿泊業者や旅行代理店との関係も失われてしまいます。 

M&Aによる事業承継は、これまでの事業で培ってきた事業価値を最大限に活かすことができる点が、買収側にとっては大きな魅力です。

特に、バス業界は人材不足なため、優秀な従業員の確保が重要な経営課題です。

優秀な従業員は蓄積しているノウハウ・技術の価値が非常に高いため、M&Aでは買収後にも雇用を継続、さらには好条件での契約更新も可能です

 

また、M&Aによる事業承継によって、これまで付き合いがあった宿泊業者や旅行代理店と継続して取引ができます。

事業に新規で参入した場合、自らの足で取引先を開拓しなければなりません。

M&Aでは大切な資産とも言える取引先も承継することになるため、事業承継後に事業に集中できるという大きなメリットがあります。

 

企業風土の継続

長年に渡ってバス運送事業で培ってきたノウハウや顧客を失ってしまうことは、経営を退く経営者にとって最も避けたいことのひとつでしょう。

近年のM&Aでは「友好的買収」と呼ばれ、買収側が売却する企業の企業価値をさらに高める経営を行うケースも多くあります。

そのため、M&Aの交渉では知識・経験を持った従業員を継続して雇用するなど、これまでの企業の風土を尊重するケースが目立ちます。

 

創業者利益の確保

M&Aは保有株式の売却により、事業承継が行われます。つまり、経営者は株式の売却益を獲得することができます。

また、多くの経営者は会社の借入金の連帯保証人になっているため、事業承継により保証人を外れる事で、心的負担から開放された喜びを口にする経営者は少なくありません。

 

バス会社の事業承継のポイント

後継者問題が代表とはいえ、事業承継を行う目的は経営者により様々な違いがあります。

事業承継の完了までには、早くても一年、長い場合は三年以上の時間を費やします。 

例えM&A仲介会社のサポートがあったとしても、目的や自社の価値をしっかりと認識した上で事業承継を行わないと、思わぬトラブルや損を被る恐れがあります。

そこで、バス会社の事業承継で知っておかなければならないポイントを4つほどご紹介します。

 

売却額の相場を把握する

自社の売却価格の相場を把握することは、M&Aを利用した事業承継で最も重要なポイントです。

 

バス会社の売却価格の一例として、

大手バス会社:〜10億円

中小バス会社:80万円〜600万円

というデータがあります。

 

売却価格を左右するポイントは「従業員」と「バス保有台数」です。

長年に渡る乗務経験を持つドライバーなど優秀な「従業員」と「バス保有台数」が 十分以上に備わったバス会社ほど高値で売却できる可能性があります。

 

事業承継の目的

事業承継は非常に長い時間を要します。

そのため、事業承継を行う目的を明確にしておく事は非常に大切なポイントです。 

まずは、現在の経営状況の問題の可視化を行います。

現経営体制下での課題から、他のバス会社にはない自社だけの強み(優秀な乗務員、保有台数、他業種とのネットワークなど)といったバス運送事業面、経営者個人の債務、事業所と土地の賃貸関係などの経理面を事細かく精査します。

 事業の可視化を行うことで、後継者問題を解決するための事業承継ならば、事業に見合った経営者にターゲットを絞ることで事業承継先が早くみつかるでしょう。

さらなる事業発展を望む場合であれば、シナジー効果を得られる買取先を探すことに注力することができます。

 

事業承継を実施するタイミング

現在のバス業界は「事業承継適齢期」を迎えた経営者が多いとされ、2019年はバス会社の事業承継を行うベストタイミングと言われています。

小規模のバス会社だけでなく、中小企業の経営者は事業承継の将来像を明確に描けていないという問題点が指摘されています。

体力が落ちて病気になった70代の経営者が「もう少し早くから後継者問題に取り組んでいれば。」という話は珍しくありません。

「思い立ったが吉日」の言葉のように、事業承継を少しでも意識するようになった時、その時こそ事業承継を始める、実施するタイミングなのかもしれません。 

バス会社の事業承継は2020年東京オリンピック・パラリンピック以降に激化すると予想されています。

優秀な経営者に事業を引き継いでもらいたい、さらに事業を発展させたい、というバス会社の経営者の方はすぐにでも、M&Aアドバイザーなど専門家に相談をしてみてください。

 

バス会社の事業承継事例

すでに活発になり始めているバス会社の事業承継、ここから実際に行われたM&Aによる事業承継の事例をご紹介します。

 

事例:桜交通と旅バスのM&A

買収側:株式会社桜交通(福島県)

売却側:株式会社旅バス(東京都)

事業承継、M&Aの目的:旅バスのバス運送事業資産、従業員と保有バスの獲得

 

「旅バス」は「キラキラ号」の愛称で親しまれていたバスや、これまでのチケット予約Webサイトを含めて桜交通に売却をしました。

これまで旅バスが育ててきたブランドイメージを引き継ぎながら、一層の事業拡大に取り組んでいます

 

まとめ

今後ますます活発になることが予想されるバス会社の事業承継、M&Aについてご紹介しましたが、いかがでしたか?

一つの管理ミスによって大きな事故にもつながりかねないバス運送事業を承継する経営者を探すのは簡単ではありません。

是非体力に余裕のあるうちから事業承継先を探してみてください。

そして、事業承継を内部でやろうとするのではなく、M&Aアドバイザーや事業承継の専門家に相談することで可能性が見えて来るかもしれません

バス会社の事業承継でお困りではないですか?事例を紹介
近年、バス運送業界の事業承継を支援する流れが大きくなっています。それだけ多くの経営者がバス運送業の事業承継を必要としています。そこにはどのような背景・狙いがあるのでしょうか。
この記事では事業承継についての基礎から、実際に行われたバス会社同士のM&Aによる事業承継の実例を紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年8月16日
バス会社のM&Aを実施する前に考えておきたいこと。事例を紹介
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