2019年5月13日 月曜日

建築資材卸業の事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

建築資材卸業のM&A事例は近年増加しており、これから検討し始める経営者はM&Aに関する知識やメリットを把握した上で、実施する必要があるかを慎重に判断することが求められます。

この記事では、建築資材卸業のM&Aで用いられる手法の一つである、事業譲渡について概要を紹介した後、事業譲渡を用いることによって売却側・買収側企業にどういったメリットがあるか、実施を検討する際にチェックしておくと良い項目などを解説します。

 

建築資材卸業の事業譲渡を検討してみては?

建築資材卸業を事業譲渡するメリットや実行する際のチェック項目について解説していく前に、建築資材卸業が担っている業務について解説します。

建築資材卸業とは、新築住宅やリフォームなどに用いる建材を建築業者、工務店などに向けて販売することが主な事業です。関連事業として、住宅用の空調設備や水回り設備などに用いる商品や部品を販売する事を主な事業とする、住宅設備機器卸業が存在します。

建材と住宅設備機器は同時に取り扱われることが多いので、ここでは”建材・住設機器卸業”という呼称を用います。

 

・事業譲渡とは

事業譲渡とは、売却側企業が運営する事業の一部もしくは全部を第三者へ譲渡することを指します。

事業運営に用いる不動産や在庫といった有形財産に加え、従業員との雇用契約、ノウハウ、ブランドイメージ、債務といった無形財産まで、事業に関連したあらゆる財産を譲渡対象として扱います。

株式譲渡と比べて売却内容を細かく調整できるというメリットがありますが、事業譲渡を実施した会社は、売却した事業を再び行うことは出来ないように制限される(競業避止義務)ので、注意が必要です。

 

建築資材卸業を事業譲渡するメリット

売却側のメリット

後継者問題の解決

経営者の身内や会社内に事業を引き継げる人物がいない場合、売却側企業の経営者は事業承継の一環として、事業譲渡によって第三者へ事業を売却することで、後継者問題を解決することができます。

建材・住設機器卸業を買収する事業者は大手同業他社である場合が多いので、売却成立後における事業運営が安定する可能性は高く、問題なく手続きを完了できれば1年ほどで事業承継を完了できるケースもあります

 

売却益の獲得

事業譲渡を行うことで、売却側企業は譲渡した事業に見合った売却利益を得ることができます。建材・住設機器の卸業者は中小規模の会社であることが多く、資金を獲得できることは大きなメリットです。

高い売却益を獲得したい場合、業務スキルを持った従業員、買収側企業が取り扱っていない商材および取引先などを譲渡することによって、企業価値を向上させる事ができます。

 

主力事業へ専念できる

多様な商材を取り扱うことが多い建材・住設機器卸業では、特定の商材にかかる生産コストが会社の成長を妨げるというケースが少なからず想定されます。

企業によって需要は異なるので、自社で採算性の低い商材を獲得したい買収先へ譲渡することにより、売却側企業は余剰コストを削減したうえで売却益を得ることができます

獲得した資金を自社の主力事業へ投資することで収益力を強化することも可能です。

 

法人格の維持

事業譲渡の場合、事業内容を全て譲渡した場合でも売却側企業の法人格は存続するという特徴があります。法人格を残すことにより、卸売業を譲渡した直後から新しい事業を始めることが可能になります。交渉しだいでは、売却側企業の経営者が引き続き経営に携わることも可能です。

 

買収側のメリット

譲受する事業内容を選別できる

事業譲渡では、買収側企業の目的に応じて引き継ぎたい事業資産を選んで譲受することができます。必要な資産だけを譲受することによって取得コストを抑えられるほか、買収後にかかる維持コストも削減する事ができます。

前もって引き継ぐ資産を選別することによって、買収前に予見することが困難な簿外債務や潜在的な債務などを承継してしまうリスクを大きく低減できるというメリットも得られます。

 

節税効果を得られる

事業譲渡によって建材・住設機器の卸売事業を買収する場合は、譲受する事業資産の評価額に営業権を加算して買収価格を算出することが一般的です。営業権はのれんと呼称されることもあります。

営業権は売却する事業の税引き後利益2~5年分とすることが一般的で、何年分とするかは売却する業種、買収側企業のニーズ、事業規模、将来性などによって異なります。

 

建築資材卸業を事業譲渡する際のチェック項目

売却側企業のチェック項目

スケジュール設定に余裕を持つ

M&Aを実施するうえで共通のポイントとして、なるべく早い時期から準備し始めることが重要です。

事業譲渡は必要なデータの整理や書類作成に時間が掛かりやすく、準備した内容に不足や間違いがあると相手企業から売却交渉を断られる要因になります。

事業承継を目的としている場合は経営者の年齢に合わせて売却時期を調整できるように経営を維持する必要があります。

また、設備投資やコスト削減といった取り組みは効果が出るまでに少なくとも2~3年必要です。高い売却益を獲得したい場合、効率的な経営プランを立てられる知識、および事業価値が最大化したタイミングで事業譲渡を行えるようにM&Aのスケジュールを調整する管理能力が必要になります。

交渉前に適切な準備を整えた場合でも、実際に事業譲渡を完了するまでには1~2年ほど掛かることは把握しておく必要があります。

 

譲渡目的を明確に決めておく

建材・住設機器の卸売事業を企業間で売買する際には、お互いが提示した条件をもとに譲渡する事業領域や売却額などを決定します。

一般的には、売却・買収側企業の双方が納得できるように協議を重ねて、売却条件を調整していきます。

明確な目的を持って事業譲渡を実施することにより、多くのデメリットを防げる可能性があります。

 

事業を売却する主な目的としては、売却益の獲得、事業承継、従業員の雇用引継ぎなどが挙げられます。譲歩できない条件については、具体的な交渉に移る前に買収側企業に必ず伝えておく必要があります。

何を目的として事業譲渡を行うかは、売却側企業の経営方針や財務状況などによって異なります。例えば、抱えている債務を解消したい場合は、債務を上回る売却益を得る必要があります。事業売却後に新事業を始めたい場合も同様に、高い売却益を得ることが目的になります。

注意が必要なポイントとして、売却側企業にとって有利な条件は、買収側企業から見ると不利な条件である場合があることです。売却側企業が一方的に意見を通そうとしてしまうと、相手企業からは悪印象を持たれやすくなります。結果として交渉が決裂することも十分に考えられるので、売却交渉を行う際は経営者同士による商談であることを理解して進めていく必要があります。

 

自社の強みを把握する

建材・住設機器卸業は事業内容が多岐にわたるので、売却側企業は自社が展開している事業を把握し、買収側企業に提示できる強みを明確化しておく必要があります

近年はM&Aによって建材・住設機器の卸売業を売却、あるいは買収する流れが活発化しています。

売却案件が多い状況で明確な強みが無い企業は買い手に注目されづらく、売却できたとしても充分な利益を得られない可能性があります。

地方でシェアを大きく伸ばしていたり、長期的な取引先を複数持っていたりするような場合、安定した収益力を持つ企業と言えます。業界内で自社だけが取り扱っている商材があり、一定以上の需要がある場合も経営が安定していると言えます。

交渉の場では、売却側企業の強みを裏付けるデータや書類を準備しておくことも重要です。買収側企業に対して有力なアピールポイントを並べたとしても、発言内容を実証できる資料が無い限りは信ぴょう性にかける情報となってしまいます。

 

買収側企業のチェック項目

買収コストの算出

M&Aによって事業を買収する時には、対象となる業種や事業内容によって相場となる価格が存在します。建材・住設機器の卸業である場合、買収対象として含まれる事業施設や商品、顧客との取引関係、収益および負債など多方面から企業価値を評価し、買収コストを算出します。

譲り受ける商品の在庫が多かったり、複数の地域に支店を持つ企業を買収したりする場合は相場よりも高い価格で買収することも考えられます。あくまで平均的な相場として、建材・住設機器の卸業をM&Aによって買収する時は数千万円~数億円が相場とされています。

買収スキームとして事業譲渡を用いる場合は事業価値の計算に時間が掛かりやすく、書類手続きも、株式譲渡に比べると複雑化しやすい傾向にあります。加えて、建材・住設機器の卸業では、従業員の雇用や事業拠点を引き継ぐことで買収費用が高額化することも多くあります。

 

買収方法の決め方

事業譲渡は譲受する事業内容を選べるメリットを得られますが、法人税や消費税などが掛かる分、買収側企業の金銭的負担が大きいというデメリットもあります。

場合によっては、事業譲渡以外の買収スキームを用いた方が、最終的な利益が多くなる可能性も考えられます。

M&Aの手法にはいくつかの種類が存在しますが、いずれも一長一短であり、最適な手法は状況によって異なります。売却側・買収側企業の双方が納得できるM&Aを実施するには、多くの買収スキームから事業譲渡を選択する必要性についても考慮することが大切です。

 

共通のチェック項目

実施するタイミング

M&Aによって建材・住設機器の卸売事業を売却する場合、最適なタイミングは経営者が事業承継を検討するのに適した時期に差し掛かっている、売上が停滞してきた時期が良いです。

時間的な余裕が殆どない状況や、多額の負債を抱えた状況に追い込まれてから事業譲渡を図っても、買収先が見つからない可能性が高くなります。もし売却できた場合でも、充分な買収額は得られない可能性が高いと言えます。

M&Aで買収側となる企業は、買収対象とする会社の事業内容、収益力などから買収するメリットを見極め、買収コストに見合った収益を上げられる企業を買収していくことが重要になります。

近年は国内人口が減少していることから新築需要は低下すると予想されますが、既存の住宅をリフォームする事業は今後とも一定の需要が見込まれているので、リフォーム事業を行う建築業者と長期的に取引している建材・住設機器の卸業者を買収することも事業拡大に有効な手段の一つです。

 

M&A仲介業者の活用

建材・住設機器の卸売事業のM&Aではほとんどの場合、M&Aの実施経験を持たない売却側企業が不利な状況になりやすいです。建材・住設機器卸業に詳しい第三者が仲介を行うことによって、双方の経営者が対等な条件で事業譲渡を進めることができます

事業譲渡の実施に必要な相手企業探し、書類作成、デューデリジェンスなどをサポート、もしくは代行することがM&A仲介業者が担っている業務です。M&A仲介業者は、事業価値の算定に必要な税理士、公認会計士といった専門業者も抱えている場合が多く、中小企業がM&Aを実施する際には、信用できるM&A仲介業者へサポートを依頼する事が一般的です。

実際に依頼を行う場合、建材・住設機器の卸売事業のM&A案件を多く成立させている仲介業者を選んで相談することをおすすめします。

逆に建材卸業に関する知識や経験が浅い業者だと、売却側企業の個別ニーズに対応できず、適切なサポートを受けられない可能性があります。

 

まとめ

事業譲渡は、売却する事業内容や範囲を柔軟に調整できることがメリットですが、実際に成立させるには売却側、買収側の経営者が双方とも合意する必要があります。相手に何らかの譲歩を要求する場合、代替案として別の要素で譲歩することがスムーズに事業譲渡を進めるポイントです。

売却を行う際は自社の事業内容や、財務状況から優れた強みを見出し、早いうちから準備を進めておくことが重要です。買収を行う場合は、事業譲渡によって実現したいことを明確化し、低いコストで高い収益に繋げられるように買収対象を見極める必要があります。

事業譲渡を実施する際はM&A仲介業者のサポートを受けながら慎重に手続きを進めることにより、交渉過程でのトラブルの可能性を抑えた上で公平に取引を行う事ができます。

建築資材卸業の事業譲渡を検討する際のチェック項目
建築資材卸業のM&A事例は近年増加しており、これから検討し始める経営者はM&Aに関する知識やメリットを把握した上で、実施する必要があるかを慎重に判断することが求められます。
この記事では、建築資材卸業のM&Aで用いられる手法の一つである、事業譲渡について概要を紹介した後、事業譲渡を用いることによって売却側・買収側企業にどういったメリットがあるか、実施を検討する際にチェックしておくと良い項目などを解説します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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