2019年5月14日 火曜日

建築資材卸業の事業売却のポイントとは?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

この記事では、建築資材卸業の事業内容や特徴などについて紹介したのち、建築資材卸業を第三者へ売却する事業者は一般的に何を目的としているか、これから事業売却を検討する経営者が注意するべきポイントなどを解説します。

 

建築資材卸業の事業売却で次のステージへ

建築資材卸業は、住宅の新規建設やリフォームに用いる建築資材を販売することが主な業務内容です。住宅に用いる水道設備、空調設備といった住設機器と併せて”建材・住宅設備機器卸業”と分類される場合もありますが、ここでは別々の事業として取り扱います。

主な取引先はハウスメーカーや工務店といった建築関連業者である事が多く、新築やリフォームに対する需要によって売上が左右されます。近年は新築需要が減少していることから、建材卸業の市場規模は縮小傾向にあります。一方で、既存住宅のリフォーム事業は売上を伸ばしています。

建築資材卸業を運営している会社は中小規模である事が多く、地域密着型の企業としてシェアを獲得している業者が多いという事業特性を持っています

大手事業者が地方への事業展開を図る場合、新規参入よりも買収、提携することによってシェアを直接獲得することが一般的です。

 

事業売却とは

事業売却を実施する目的や注意点を紹介する前に、事業売却の概要に関して解説します。

会社が運営している事業の一部、あるいは全部を第三者へ売却することを事業売却といいます。建材卸業は取り扱う商材の種類が多く、大小さまざまな規模のM&Aが実施されています。中小企業が買い手となるケースや、大手企業が中小企業を買収するケースなども近年増加しています。

事業売却では取引対象となる事業の規模が比較的小さくなりやすいので、買収側企業は余分なコストを抑えながらM&Aを実施できるというメリットがあります。

事業売却を実施する際のスキームには事業譲渡を用いることが一般的です。事業譲渡は成立までに必要な作業が多くなりやすいというデメリットがありますが、中小規模の会社が売り手となる場合には比較的少ない作業量で実施可能なので、多く用いられています。

 

建築資材卸業を事業売却する目的にはこんなものがあります

売却による利益獲得

事業譲渡を用いて事業を売却した場合、売却側企業は現金で利益を得ることができます。事業譲渡によって獲得した利益は今後の経営資金にしたり、債務を返済することに用いたりするなど多くの使い道が考えられます。

特に、建材卸業では事業拠点や設備などの不動産を複数保有している事が多く、相手企業へ引き継ぐことによって得られる金額も高くなりやすい傾向があります。

仮に廃業した場合でも不動産は売却できる可能性がありますが、建材卸業に用いていた設備や施設は価値が付かず、引取になるケースが多いとされます。仮に価値が付いた場合でも、不動産を売却して得た利益には税金が発生します。廃業には多くの時間とコストが掛かるので、可能であれば事業売却を成立させて多額の利益を得る方がメリットは大きいと言えます。

また、不採算事業や収益力が低いノンコア事業を売却して金銭に換え、コア事業へ投資することによって、効率的に会社を拡大できる事業体制を構築することも可能です。

不採算事業を売却できた場合には経営改善が見込めるほか、買収側企業にとって価値のある事業であれば、高く売却できる可能性もあります。

 

後継者問題の解決

建材卸業を運営する会社の多くは中小企業であり、事業承継を目的として建材卸業を売却する事例も増加しつつあります。

近年では経営者の親族が他業種で就業していている、会社内に事業を引き継げる人物が居ない、といった理由で、経営者が引退を考える時期になっても後継者不在の企業が増加しています。黒字経営である会社が、現経営者の引退と同時に廃業に追い込まれるというケースも少なからず存在します。

会社を閉鎖する場合、事業に用いていた施設や店舗、商材といった資産を処分したうえで、雇用していた従業員を解雇する必要があります。取引先への商品やサービスも提供できなくなるので、廃業したことによって地域経済へ悪影響を及ぼすことが予想されます。なお、廃業しても負債は残ることは理解しておく必要があります。

しかし、事業売却によって従業員や事業拠点などを外部企業へ承継すれば会社を存続することが可能になります。建材卸業を買収するのは同じ建材卸業者であることが多く、売却した事業が長期的に存続していく可能性は高いと言えます。

 

建築資材卸業の事業売却を行う上での注意点

売却額の相場を把握する

建材卸業を第三者へ事業売却する場合、引き継ぐ業種や契約によって相場となる価格が存在します。

売買する内容によって金額は異なりますが、中小規模の建材卸業者が売り手となる場合は、平均して数千万円から数億円あたりが相場であるとされます。

一般的に、事業の売却額を決める際には交渉時点における事業資産の評価額に営業権を加えて算出します。

 

営業権とは、売却した事業が将来的に創出する利益を数値化したものです。

基本的には売却側企業の税引き後利益2~5年分を営業権として買収額へ加算します。予測で金額が大きく変動する項目であり、人によって計算結果が大きく異なることは少なからず考えられます。

売却、買収側企業のどちらがベースとなる金額を提案するかは状況によりますが、相場に見合った買収額を提案しなければ取引を断られる、相場未満の価格で売却してしまう、といった問題が予想されます。

売却側企業は、自社が構築してきた事業体系や従業員の技能を高く評価しやすい傾向にありますが、買収側企業は譲り受ける設備や商材、取引先との契約関係であるなど、実質的な利益を重視する傾向があります。

事業売却を成立させるには買収・売却側企業の双方が合意する必要があります。事業を高く売却したい場合、希望額に見合った収益力や将来性を持った事業を構築しておく必要があります

 

会社の強みを把握する

同じ建材卸業者でも取り扱っている商材は多種多様であり、事業売却を実施する時には他社と違う強みを持っておく必要があります。

近年は多くの建材卸業者が買収希望を実施しており、他社と同じような内容が記載された案件は安く買収される可能性があります。

安定した取引先を多数持っている、地方でトップシェアを持っているような場合は安定した収益力を持った企業と言えます。市場需要が高い商材を常に多く取り扱っている、他社での取扱いがない商材で収益を上げている場合なども、中長期的な収益力強化を図る買収側企業にとっては魅力的な会社であると言えます。

しかし、実際に独自の強みを持っていることを証明するには、事実に基づいた資料やデータをまとめておき、買収側企業に対して根拠を実証する必要があります。経営者個人で自社の強みを見出せない場合、M&A専門業者や親交がある同業他社などに質問する事で客観的な長所が分かる場合もあります。

 

明確な目的を決めておく

事業売却における経営者同士の交渉過程では、お互いが提案した意見を基に条件を調整していきます。特に譲れない条件がある場合は最初に明示して、相手企業から同意を得られるか確認することが一般的です。

事業売却で重要になりやすい条件としては、売却内容に見合った対価の獲得、債務引継ぎ、従業員の雇用引継ぎ、売却側企業の経営者が退職するかどうか、といったものが挙げられます。

実際に重要となる条件は売却する事業、および会社の状況、何を目的として事業売却を行うかなどで変わってきます。高い売却益を得て早期退職したい場合は、早期退職しても問題ない程の売却益を得ることが目標になります。

事業売却を実施することで従業員が離職することが考えられる場合、待遇を統一させて従業員を引き留めるといった工夫も必要になります。

ただし、売却側企業が一方的に有利な条件を提案していると、買収側企業の担当者から悪印象を持たれやすくなり、交渉が決裂しやすくなります。有利な条件で売却する事は重要ですが、経営者同士による交渉であることは忘れずに把握しておく必要があります。

 

実施するタイミング

建材卸業を第三者へ売却する場合、現在の経営者が事業承継を実施する年齢や、売り上げが低下してきそうなタイミングに合わせて事業売却を実施する時期を調整すると良いとされます。負債が重なってから事業売却を検討し始めても売却先が見つからない可能性があり、もし見つかったとしても売却価格は負債の分だけ低くなってしまいます。

また、第三者へ事業を売却する場合、交渉開始から成立までに半年から1年程度かかることが多いとされます。売却先を探し始める段階からでは、少なくとも1年はかかると想定して準備を進める必要があります。

売却益の高さにこだわる場合は事業内容の再確認を行い、売却額を高くする対策を行う必要があるので、数年前から準備を始める必要があります。

 

事業売却のプロセスを理解する

事業売却を成立させるまでには多くの手続きや情報が必要です。スムーズに手続きを完了させた場合でも1年は必要であり、交渉途中でトラブルが起こった場合はさらに長期化することになります。

また、非上場企業の株式を売却する場合、公的な株価がないので正確な市場価値を判断することが困難であり、売却額を算出することが困難になります。建材卸業を売却する企業は非上場であることの方が多く、買収先がなかなか見つからないケースも想定されます。

相手企業との交渉過程でもさまざまな情報が必要であり、会社経営と事業売却に向けた調整を個人で行うことは多くの場合困難です。近年ではM&Aを実施する企業が増えていることもあって、ウェブ上から買収先を検索できるサイトや、独自のネットワークを活用して買収先を仲介、斡旋してくれるM&A代行業者であるなど、さまざまな手段によって相手企業を探すことが可能になっています。

 

M&A代行業者を活用する際の注意点

M&A代行業者を活用する場合、建材卸業の現状に詳しく、事業売却の成約実績を多く持つ業者へ依頼する事をおすすめします

近年では大手建材卸業者が中小規模の同業他社を買収する事例も増えており、中小企業のサポートを得意とするM&A専門業者も増加しつつあります。

ただし、業者によっては相談料や月間報酬が必要な場合もあります。成約までのコストを抑えたい場合は、相談無料、完全成功報酬制の代行業者を選ぶ必要があります。

完全成功報酬制でサポートを実施している専門業者は多く、成約するまで無料でサポートを受けられることは経営者にとって大きなメリットです。しかし、事業売却の基本的な方針を決め、最終的な決断を行うのは経営者自身であることは認識しておく必要があります。

 

事業売却の計画は秘密にする

事業売却を検討、もしくは交渉期間中の経営者は、M&Aの計画を身近な他人や外部に話さずに手続きを進める必要があります。売却側の経営者が従業員を安心させようとして善意で話すケースも考えられますが、ある程度具体的な見通しが立つまでは機密性を保っておく必要があります

事業売却の計画が取引先や他社に知られると、売却側企業が経営難であるという認識が広まってしまうことが想定されます。近年は黒字経営の企業がM&Aを実施するケースも増加していますが、

具体的な事情が分からない場合は経営難であると推測され、取引を打ち切られる可能性は少なからず考えられます。

 

従業員に計画を伝えるのは、事業売却が成約した後まで待ったほうが良い結果になりやすい傾向があります。

計画段階で話した後に交渉が決裂した場合、有力な従業員が離職するリスクが高くなります。事業を売却した後に経営者が交代する場合でも、経営方針の承継が適切にできていればトラブルが発生する可能性は低くなります。

 

まとめ

事業売却は他のM&A方式と比べて短期間で実行しやすく、買収先は同業他社である事が多いので事業承継を短期間で実施しやすく、売却側企業にとってはメリットが大きい方法です。

買収側企業からしても潜在的な負債や想定外の問題を引き継いでしまうリスクを避けやすく、事業譲渡によって中小企業を買収する大手事業者は増加傾向にあります。

ただし、事業売却は実行までに複雑な手続きが必要になります。これから建材卸業の売却を検討する場合、M&Aに関する専門知識を持った代行業者やアドバイザリーといった外部の専門家を活用しながら手続きを実行していく事をおすすめします。

建築資材卸業の事業売却のポイントとは?
この記事では、建築資材卸業の事業内容や特徴などについて紹介したのち、建築資材卸業を第三者へ売却する事業者は一般的に何を目的としているか、これから事業売却を検討する経営者が注意するべきポイントなどを解説します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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