2019年7月19日 金曜日

ビルメンテナンス企業の事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

ビルメンテナンス企業の業界規模の推移をみると、ゆるやかな上昇傾向を示しています。2011年頃から新築マンションの増加に伴い、管理戸数が増加しました。また、近年オフィス賃料の値上げや空室率が低くなるなどプラス要因が続いています。

 

こうしたビルメンテナンス業界の中で、今問題となっているのが、人手不足問題や後継者不在問題です。AIを搭載した床面掃除ロボットの導入や、最新の防汚技術を導入した省力化なども進んでいますが、万年的に人手は不足しています。

 

こうした人手不足を補うために、国も動き出しています。日本人の人手不足を、外国人の就労に頼ろうとするものです。改正出入国管理法で、ビルクリーニングの職種も2018年4月からこの対象職種となりました。

 

ここでは、ビルメンテナンス事業の人手不足、後継者不在などから、事業を存続させるために事業継承を考える経営者が増えている現状について考えてみたいと思います。

 

 

ビルメンテナンス企業を事業承継しよう

 

ここでは、そもそもビルメンテナンス企業とはどのような職種であるか、また事業承継における重要なポイントを解説します。

 

ビルメンテナンス業の現状

そもそも、ビルメンテナンス業とは主にビル、官公庁、事務所、ホテル、美術館等の多種多様なクライアントを対象として、清掃、保守、機器の運転、建物の環境に応じた維持管理についてのサービスを提供する事業の事を指します。

 

その業務内容は、一般的に以下のように分類されています。

 

・環境衛生管理業務  清掃、給水、排水、廃棄物処理

・設備管理業務    電気、通信設備、空調設備、消防設備、エレベーター

・建物設備保全業務  建物構造部、建築設備の点検整備

・保安警備業務    警備、防火、防水、駐車場

・その他監理業務

 

ビルメンテンス業には、顧客が事務所や商業施設などをビルオーナーとする「ビル管理業」と、マンション管理組合を顧客とする「マンション管理業」とがあります。

 

ビルメンテナンス業界全体の売上高ですが、首都圏では東京五輪需要もあり堅調に推移しています。しかし、地方及び、中小・中堅どころのビルメンテナンス業界の経営には厳しいものがあります。

 

喫緊の課題は、人材不足です。東京五輪関連事業により、都市部では人材不足が顕著になっているのです。人材不足は工期の遅れにつながるだけでなく、業務内容の縮小や人件費の高騰、利益の圧迫、経営危機にまで影響を及ぼします。中小・中堅どころの企業にとっては厳しい経営環境です。

 

また、ビルメンテナンス業界は事業者の数が多いため、価格競争が激しく、それが単価の下落につながります。市場全体の売上高が増加していても、それは主に大手の話であり、中小・中堅企業にまで好景気の恩恵は行き渡っていないのが現状です。

 

そして、東京五輪までは関連する特需景気で業界は潤っていますが、それ以降の市場を考えると仕事の発注は目減りするのではないかと考えられます。市場が小さくなった時、大手企業のみが生き残り、中小企業は経営が厳しくなるのではないかと危惧されています。

 

ビルメンテナンス業の事業承継

そんな環境のなか、中小企業が生き残るにはどうしたらいいのでしょうか?

 

ビルメンテナンス業界の中小企業を取り巻く課題、これは他の業界にも共通することです。人材不足、経営者の高齢化による後継者不在問題、地元だけでなく需要の高い都会へ進出したいなどの理由により、事業承継という選択肢を検討する中小企業が増えつつあります。

 

事業承継とは、会社の経営を後継者に引き継ぐことを言います。中堅・中小企業はオーナー社長が多く、その経営手腕が会社の経営に大きく貢献しているケースが多いのです。したがって、後継者をどうするかという問題は、会社の存続にとって大変重要なのです。

 

後継者がいない、そんなときは

また、経営者教育には時間がかかります。数年から10年もの時間を要する場合があります。しかし、M&Aでは同業種の経験者を人選してもらえるため、教育にかかる時間は短くて済みます。事業承継を考えているのであれば、時間に余裕を持って準備を行う事が大切です。

 

事業を誰に承継するのかについては、大きく分けて下記の3つの選択肢があります。

 

・親族に承継する

・親族以外の従業員に承継する

・M&Aで承継する

 

事業承継においては、親族内承継から親族外承継へ主流が変わりつつあります。中小企業庁のデータによれば、20年以上前には親族内承継が85%、親族外承継は15%でした。しかし、最近では親族内承継が35%、親族外承継が65%と、その割合は急速に逆転しています。

 

親族外承継、つまり、従業員やM&Aによる承継が増加していることがわかります。

 

親族に承継する

事業を親族、特に「子供が承継してくれることが一番良い」と考える経営者は多いでしょう。しかし近年、親族外承継を選択する企業主は増加しています。

 

これは、「子供には自分の好きな道を行ってほしい」、「子供には経営能力がない」、「自分がしてきた苦労を子供にさせたくない」、「これまでのやり方を子供が引き継いだだけでは、先行不安業種なので事業が立ち行かない」など、後継者候補の子供に対する経営者の思いは、親ならではのものがあります。業界の現状を把握しているからこそ、子供に負担をかけたくないと思うのでしょう。

 

親族以外の従業員に承継する

長年勤めてくれた従業員の中から適任者を選び、経営を任せるという方法も有効です。ただ、この場合、会社の経営がうまくいっている事が前提です。経営が厳しい状況においては、それを後継従業員の肩に背負わせてしまうことになるからです。

 

経営者が変わっても、従来の社長と同じやり方でビジネスを続けていくと、どんどん窮地に追い込まれていきます。そこで、新しい経営方針を立てて実行できる人であれば、従業員への承継は成功だと言えるでしょう。従業員に継がせる場合は、業界の景気、会社の業績、将来への展望、社長候補の能力をよく見極めることが肝要かと思われます。

 

M&Aで承継する

親族や従業員に後継者たる人物が見当たらない、そうした場合は、M&Aによる事業承継を検討しましょう。経営者がリタイアするにあたり、身近に後継として適任者がいない場合、会社の存続そのものが危ぶまれます。事業そのものだけでなく、ひいては、社員やその家族の生活を守れなくなってしまいます。経営者には、従業員を守らなければならない責任があります。

 

かつては、「M&Aは大企業の話で、うちのような小さい企業は相手にしてもらえないだろう」、「M&Aをしたら社員がリストラされてしまう」という誤解が多かったのですが、最近では、中小企業はもちろんM&Aの対象になり得ますし、必ずしも社員が全員リストラになるということもなくなってきています。

 

事業を存続させ、従業員の生活を守るために、M&Aのメリットを最大限に有効活用しましょう。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

事業承継するに当たり、M&Aを選ぶ経営者は増えつつあります。

 

そのメリットには以下のようなものがあります。

 

後継者問題が解決できます

少子化により後を継ぐべき子供の数が減っている事に加えて、子供がいても「家業を継ぎたくない」、「継がせたくない」と考える経営者の家族が増えているのは上述した通りです。

 

自分の代で廃業するのは、事業を立ち上げた先祖に対して顔向けできないと考える経営者もいますが、ビジネスは必ずしも血族の間で後継する必要はなく、M&Aを利用するのも現代の一つの考え方です。

 

従業員の雇用が保証される

廃業を免れる事で社員の雇用が確保でき、従業員とその家族の生活を守ることができます。但し、2つの企業が1つになる事で、重複する業務は見直され、業務が重複する社員は異動やリストラなどになる可能性も出てきます。M&Aの話し合いでは、そうした社員の待遇についても細かく話を詰めておくべきです。

 

企業成長の機会が得られる

優良企業に吸収されることで、自社努力だけでは成しえなかった事業展開ができ、企業として成長することができます。ビルメンテナンスの分野でも、例えばAIを使って空調の電気消費量を大幅にカットしたり、空調の最適運転を学習したりといった流れが出てきています。今後、AIを活用したメンテナンスの拡充が期待されます。

 

互いのノウハウが活かせる

買収する側とされる側に、それぞれ蓄積してきた事業についてのノウハウがあります。M&Aで両社が1つになることで、異なったノウハウを共有できるようになります。それによって、技術力が上がり、会社の発展が望めます。

 

顧客の増加、領域拡大が望める

売却側の顧客を買収側が引き継ぐことで、買収側は顧客数が大幅に増えます。また、売却側が地盤としていたテリトリーも買収側が引き継ぐことで、その地域におけるビジネスチャンスを増やすことができるのです。

 

これは顧客側としても、これまで付き合いがあった企業が廃業してしまったら後々のビルメンテナンスをどこに依頼したらいいのか困ってしまう事態となるので、引き続きメンテナンスをしてくれる会社があれば顧客も安心です。

 

海外展開や新規事業への参入、技術力の強化につながる

買収側企業が大手で、海外展開や新規事業への参入など手広く手掛けている場合、売却側企業もそこへ参入することができます。これまで国内の一定地域だけで営業していた企業にとって、海外への参入は自社のみでは叶わなかった事業です。

 

今、経済発展が目覚ましいアジア圏等はビジネスチャンスの宝庫です。東京五輪後、国内での景気が懸念される中、大手企業はこぞって海外進出を目指しています。M&Aによって、売却側企業はその一端を担う事ができるようになる可能性が大きいのです

 

創業者利益を得られる

事業を売却することで、売り手側の経営者は創業者利益を手にすることができます。M&Aによる事業承継では、会社を維持、発展させた創業者に最大の報酬が支払われます。創業者は、受け取った報酬により、リタイア後の生活資金を得ることができるのです。

 

ビルメンテナンス企業の事業承継のポイント

ビルメンテナンス企業の事業継承を成功させるポイントにはどんなものがあるのでしょうか?下記の4つを解説します。

 

仲介業者を使う

業界、業種を問わず、事業継承などのM&Aを行う際には、専門の仲介業者に依頼する事が大切です。それもM&Aを数多く手掛けている仲介業者、ビルメンテナンス企業の事業継承を過去に何度か成約させた仲介業者など、実績ある業者がいいでしょう。

 

専門の仲介業者であれば、独自のネットワークを活かし、スピーディーに候補企業を見つけ出してくれます。その上、プロセスが複雑なM&Aをサポートしてくれます。

 

タイミングに注意する

事業継承は、実施すべきタイミングがあります。それを逸すると、競合他社に意中の相手を取られてしまうケースもあります。さらに、業界再編の波に乗り遅れてしまうと、事業継承自体が難しくなる可能性もあるので、業界の動きを常によく見ておきましょう。

 

価格の確認

M&Aにおいて、買い手はより安く、売り手はより高く価格を設定したいものです。その際に参考となるのが相場価格です。同じような規模のM&Aが、いくら位で取り引きされているのか確認しましょう。その上で、交渉のテーブルにつくようにするのが得策です。

 

契約物件の数、契約実績をチェックしておく

過去に契約を結んだ物件の数や、契約した実績なども事業継承する際に洗い出しておく必要があります。契約物件の数が多ければ、買い手企業はこれからメンテナンスしなければならない物件が増える訳ですし、契約実績についても同様です。顧客が増えることにより、それをケアする買い手側企業の態勢も変える必要があります。

 

まとめ

東京五輪特需で首都圏ではビルの建設ラッシュです。ビルは造ったら終りではなく、その後のメンテナンスが多方面に渡って必要になります。設備面、その他住民からのクレームやそれに対する問題の解決など、ハードとソフトの両面に渡ってもきめ細かいケアが必要です。

 

また、地震や津波などの天災への備え、避難訓練など、人が仕事をしたり生活したりする入れ物を守るために、ひいては人命を守るために、ビルメンテナンス企業の役割はとても大きいのです。

 

ビルメンテナンス企業も、他業界と同様に後継者不足、人材不足に悩まされています。近年においては、事業を存続していくために親族や従業員といった身内間での事業継承よりも、M&Aによる事業継承を選ぶ企業が多いことがわかりました。

 

これからはAIを始めとする機械技術によって、ビルの管理にも様々な局面で自動化が進んでくると思われます。人と機械、双方が補い合ってビルのテナントや住民に安心と安全を提供してほしいと思います。

空調設備会社の事業譲渡を検討する際のチェック項目
ビルメンテナンス業界の中で、今問題となっているのが、人手不足問題や後継者不在問題です。ここでは、ビルメンテナンス事業の人手不足、後継者不在などから、事業を存続させるために事業継承を考える経営者が増えている現状について考えてみたいと思います。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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