2019年3月16日 土曜日

事業承継の事例から読み解く潮流《焼肉屋》

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

焼肉業界は厳しい飲食業界の中でも比較的好調な推移をみせる業界です。とはいえ、他の飲食店と同様に、少子高齢化に伴う事業リスクを抱えています。焼肉屋においても経営者の高齢化が進んできました。

経営者の方が事業の引退を考える際には、いくつかの選択肢の中から引退の方法を考えなくてはなりません。廃業をすることも一つの手ではありますが、長年営んできた焼肉店をたたんでしまうのは気が引けると思います。
そのため、まず検討する選択肢は、自分の子供、その他の親族といった身内への事業承継だと思います。子供へ承継すれば、子供に将来の資産を残すことができます。しかし、少子高齢化が叫ばれる現在では、身内で承継する人が見つからないケースも多くあります。そこで注目されている手法が企業への事業承継です。

高度成長期は、中小企業の多くは身内への承継を行っていましたが、現在はその手法も一般的ではなくなりました。そもそも子供がいない経営者もいれば、少ない候補者の中に厳しい経営判断ができる人物が見つからない場合もあります。子は親の仕事を継ぐものという価値観が一般的ではなくなり、子供が継ぎたがらないというケースもあります。

そこで本稿では焼肉業界における事業承継の動向と、事業承継を行う際の必要な準備についてご紹介します。

 

焼肉屋業界における事業承継の動き


トレンドの移り変わりの激しい飲食業界ですが、焼肉屋も例外ではありません。焼肉は日本の外食において代表的なご馳走といえます。子どものお祝い事で焼肉に出かける家も多いのではないでしょうか。
そんな焼肉業界ですが、昨今では品質競争が激化しています。BSE問題を契機に消費者は安全・安心を志向するようになりました。その影響で、過去に流行した低価格な焼肉屋は勢いを失っています。低価格な焼肉業態に代わる業態として登場しているのは、高品質な焼肉店です。せっかくの外食であれば、良い物を食べたいという消費者のニーズが高まってきているのです。
そんなニーズに応えようと、各社は取り扱う食材の品質を積極的にアピールすることで差別化を図っています。食材だけではうまく差別化できないことも多く、店のコンセプトを練り、接客から店の雰囲気まで、あらゆる要素で独自の業態を作り上げている店舗が生き残っています。

そんな焼肉屋業界の経営者が事業承継を検討する背景としてはどのようなものがあるでしょうか。大きな要因は経営者の高齢化です。少子高齢化は日本全国に影響を与えています。焼肉屋も例外ではありません。中小企業の経営者の平均年齢は1995年の47歳から2015年の66歳へと大きく動きました。一方、平均引退年齢も中規模事業者は67.7歳、小規模事業者は70.5歳となっています。つまり現在、多くの経営者が引退する年齢を迎えているのです。

経営者が経営から手を引く場合、廃業と事業承継の二つの選択肢があります。
廃業を選択した場合は、当然ながら今まで働いてくれた従業員を解雇しなければならず、長年営んできたお店も消えてしまいます。常連客も行き場を失ってしまうことでしょう。
経営者としてはなるべく事業を承継したいと考えるものですが、身内に後継者がいるとは限りません。少子高齢化の影響により、そもそも子供がいない経営者も増えていますし、価値観の多様化を受けて親の店を継ぐことに抵抗を示す子供もいます。前述の通り、トレンドの移り変わりが激しい焼肉業界を勝ち抜いていくためには、本人の希望に限らず、能力のある後継者を見つける必要もあります。身内の中から理想的な跡取りを見つけられない場合もあるでしょう。

そういった背景を受けて、第三者への事業承継を目的としたM&Aが増加しています。買収を行う企業からみても、M&Aで既存店を取得することには様々なメリットがあります。店内の造作やメニュー、従業員の採用、人材育成などを行う必要がなく、スピーディーに事業を展開できます。対象となる焼肉店の独自メニュー、ブランド、店舗運営のスキルといったいわゆる「のれん」に相当する部分を取り込むこともできます。
売却側の企業としては、大きな企業に経営を任せることによって、その店が長期に渡って繁栄していくことに期待を持つことができます。得られた評価の分だけ、事業を売却した資金は手元に残ります。引退後の生活資金に充てることもできるでしょう。M&Aは条件さえすり合わせることができれば、買収側にとっても売却側にとってもメリットのある取引といえます。

 

最近の焼肉屋業界の事業承継事例


焼肉屋業界のM&Aの事例を紹介します。

【焼肉と焼鳥業態を展開するあみやき亭によるアクトグループの子会社化】

2014年1月20日、株式会社あみやき亭が株式会社アクトグループの株式を取得し、子会社化することを決議しました。

あみやき亭は焼肉業態の「あみやき亭」、焼き鳥業態の「元祖やきとり屋美濃路」を展開する企業です。セントラルキッチンを愛知県・神奈川県に有し、毎日新鮮な食材を店舗に配送しています。低価格で美味しい商品を提供する体制があみやき亭の強みです。あみやき亭は、2009年11月にも関東地区で焼肉屋を展開するスエヒロレストランシステムを子会社化し、関東地区の郊外型店舗拡充とセントラルキッチンの稼働率向上を行っています。

アクトグループは新宿エリアなどの都心を中心に焼肉屋を含む12店舗展開している企業でした。あみやき亭は関東地区への出店加速を目指していました。株式取得により関東の都心マーケットでのビジネス展開、店舗開発についてのノウハウを取得し、更なる事業成長を目指します

 

焼肉屋の事業承継を実施するうえでのポイント


経営者も年を取ります。永遠に経営を続けることはできません。いずれは事業を誰かに引き継いでいく必要があります。
しかし、事業承継の準備には時間がかかりますし、事業承継は希望すれば必ず希望通りの買い手企業が見つかるものでもありません。市況の影響も受ける為、タイミングも大切です。よって、早めにしかるべき準備を進めておくことが大切です。
焼肉屋の事業承継を検討する場合のポイントについて、実際の事業承継の流れにそってみていきましょう。

目標の設定
事業承継について検討を開始する時に、最初に行うべきなのは「目標の設定」です。経営を引退するための事業承継か、現金を得るための事業承継か、目標によって事業承継の準備の際に努力すべきポイントが変わります。
目標がはっきりしないままでは、事業承継の計画もまとまりせんし、買い手企業が見つかっても、買い手企業が提示する条件の良し悪しが判断できません。
まずは、事業承継をするにあたって、譲れない点を整理しておきましょう。

経営の見える化
事業承継の準備を行うにあたり、まずは焼肉屋の経営状態をしっかりと確認できるようにしましょう。買い手企業も経営状況がわからなければ買収の判断はできません。長期的な経営を考えた際の強みと弱みを明確にしておく必要があります。
また、財務関係の情報は特に大切です。経営者と焼肉屋の間での資金の貸し借り、資産、借入金を整理しておきましょう。

事業のブラッシュアップ
経営状態が確認できたら、「事業のブラッシュアップ」に取り掛かりましょう。事業承継における買収金額は、焼肉屋の事業成績が良いほど金額が高くなります。事業を引き継ぐ企業が魅力を感じるよう、出来る限り経営改善を行いましょう。経営状態が見える化されれば、事業の弱みも強みも明確になります。弱みを解消し、強みを伸ばす施策をうっていきましょう。
焼肉店では独自メニュー、独自の仕入先が評価されるケースがあります。また、将来的な多店舗展開の可能性も大きな評価のポイントです。オペレーションが属人化されていると多店舗展開が難しくなってしうので、これを機に業務の標準化、効率化に取り組むようにしましょう。

デューデリジェンスへの対応
買い手先の企業が見つかったら、経営者同士の面談を行い、まずは交渉の大枠をすり合わせます。条件が定まったらそれらを記載した基本合意書を締結します。基本合意書にはおおまかな買収価格、取引条件、今後のスケジュールなどは記載されます。買収金額はその後の調査によって変動するため、この時点では、取引について法的拘束力は持ちません。機密保持や独占交渉権が主な内容になります。

基本合意書を締結した後に行われる重要なイベントがデューデリジェンスです。デューデリジェンスでは、買収側企業によって、買収対象の事業が本当に買うに値する事業なのか、あらゆる視点から調査を行います。法務の問題を監査するものは、法務デューデリジェンス、財務の問題を監査するものは財務デューデリジェンスと呼ばれ、いくつかの種類があります。事業価値に特に影響を与えるのは、事業に対する評価を行うビジネスデューデリジェンスです。
ビジネスデューデリジェンスでは、現在の事業の状況だけでなく、焼肉店の将来性も含めて評価します。その際、売り手側企業は買い手側企業から様々な経営資料の提示が求められます。デューデリジェンスの際に資料が提示できなかったり、買い手側企業からの質問に答えられなかったりすると、買い手側企業の不信が募り、取引がうまく進まない可能性が高まります。例えば、意図的に隠していた問題点が発覚するようなことがあれば、取引そのものが流れてしまうでしょう。デューデリジェンスに対する準備は手抜かりなく行うようにしましょう。

後継者への事業の引継ぎ
子供やその他の身内に引き継ぐ場合でも、第三者に経営を託す場合でも、後継者の育成は大切です。経営を譲る企業は、今まで営んできた焼肉屋が継続的に事業を継続してくれることを望んでいるはずです。後継者には時間を割いて丁寧に事業を引き継ぐようにしましょう。責任のあるポジションで、しばらくは従業員として焼肉店の運営に携わるといったことも必要かもしれません。焼肉屋の運営について熟知しているベテラン従業員への承継の場合、同業態の企業への事業承継ならば、教育や引継ぎの期間は短くすみます。一方で未経験者、他業界から参入する企業への承継の場合、教育や引継ぎにも時間がかかります。

アドバイザーへの相談
M&A及び事業承継には、様々な専門知識が求められます。法務、財務、労務など多岐にわたります。特に企業価値の算定は素人が行うには困難な領域といえるでしょう。また、知識に加えて必要なものがネットワークです。事業承継において、自分の会社を正しく評価できる買い手企業を見つけることは何よりも重要なことでしょう。一方で、身内や知人のネットワークを頼りに買い手企業を見つけることは至難の業といえます。また、身内をあたっていては情報の漏洩リスクが高まります。

そのため、事業承継を行う際はM&Aの仲介業者やM&Aアドバイザリーファームなど、専門性を持ったアドバイザーに相談をすることが一般的です。M&Aの仲介業者は適切なマッチングが行えるように機密保持契約をしっかり締結した上で取引を進めていきます。独自に売り手候補企業、買い手候補企業のネットワークを持っているため、より広い選択肢から買い手企業を探すことが可能です。また、会計士や弁護士などの専門スタッフを抱えており、買収監査(デューデリジェンス)への対応、契約書の相談作成・チェックなどにも対応してもらえます。

ただし、相談先を選定する際は注意が必要です。アドバイザーは属人的な業務ですので、人や会社によって得意不得意があります。焼肉屋か飲食店におけるM&Aの経験を多く積んでいるアドバイザーを探しましょう。実績は会社の紹介資料などに掲載されていることが多いです。見つからない場合は、初回の打ち合わせの際に経験を聞いておくようにしましょう。経験の乏しいアドバイザーよりも経験豊富なアドバイザーの方が円滑に事業承継を推し進めていけるでしょう。

 

まとめ

人手不足、仕入れ価格の高騰、消費者の志向の変化などで、厳しい経営環境にある焼肉屋の事業承継について見てきました。M&Aと聞くとマイナスなイメージを持たれる方もいますが、M&Aはしっかりと条件が整えば、買い手と売り手の双方にメリットのある取引です。長年営んできた焼肉店を第三者に承継することを検討するのであれば、事業承継についてよく研究し、アドバイザーの助けも借りながら納得のいく条件での売却を目指してください。

事業承継の事例から読み解く潮流《焼肉屋》
焼肉業界は厳しい飲食業界の中でも比較的好調な推移をみせる業界です。とはいえ、他の飲食店と同様に、少子高齢化に伴う事業リスクを抱えています。焼肉屋においても経営者の高齢化が進んできました。
経営者の方が事業の引退を考える際には、いくつかの選択肢の中から引退の方法を考えなくてはなりません。廃業をすることも一つの手ではありますが、長年営んできた焼肉店をたたんでしまうのは気が引けると思います。
そのため、まず検討する選択肢は、自分の子供、その他の親族といった身内への事業承継だと思います。子供へ承継すれば、子供に将来の資産を残すことができます。しかし、少子高齢化が叫ばれる現在では、身内で承継する人が見つからないケースも多くあります。そこで注目されている手法が企業への事業承継です。
高度成長期は、中小企業の多くは身内への承継を行っていましたが、現在はその手法も一般的ではなくなりました。そもそも子供がいない経営者もいれば、少ない候補者の中に厳しい経営判断ができる人物が見つからない場合もあります。子は親の仕事を継ぐものという価値観が一般的ではなくなり、子供が継ぎたがらないというケースもあります。
そこで本稿では焼肉業界における事業承継の動向と、事業承継を行う際の必要な準備についてご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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