2019年3月8日 金曜日

焼肉屋のM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

大手チェーン化により、近代化の進んだ焼肉屋業界は、「客単価の高い高級店」「大手チェーン店」「個人営業の生業店」などに分類できます。
飲食店業界は極端な人手不足が継続しており、個人経営店での人手確保は大変難しく、後継者不足にも悩まされる状態が続いています。

こういった状況下でM&Aによる第三者への譲渡により店の継続を望む例も増えています。
焼肉屋のM&Aを実施する際のポイントについてご紹介します。

 

焼肉屋のM&A


個人経営の小規模店がほとんどであった焼肉屋ですが、1990年代後半から大手チェーンが台頭し、イメージは一変。誰にとっても身近な存在となりました。
一時期は低価格の食べ放題店が人気であった時期もありましたが、BSE問題により低価格路線の業態にはブレーキがかかっています。
焼肉屋は原価率が比較的高いため利益が出しにくく、成長の方向性は売り上げ、規模の重視を余儀なくされるという特性があるうえ、ここ数年は輸入牛肉・国産牛肉とも価格の上昇が続き、より一層原価率を押し上げる方向に向かっています。
原価率の高さは利益率アップの難しさにつながり、成長のためには利益率より規模の拡大による売り上げアップに頼ることになります。
事業規模拡大の際には、スピーディーな事業展開を狙って新規店舗開拓でなくM&Aを利用することがあります

少子高齢化からくる生産年齢人口の減少は各産業で人手不足を招いていますが、飲食店業界の人手不足は際立っています。
有効求人倍率が3~4倍という深刻な数値は、人件費の上昇も招き、経営のかじ取りを難しくさせる要因にもなっています。
個人経営の店舗では経営者自身の高齢化も進んでいますが、少子化や人手不足のため親族内や従業員といった身内から後継者を見つけることが難しくなりつつあります。
小規模店舗は後継者難のために、M&Aで第三者に事業の継続を託すことも増えています

以前はM&Aというと経営の乗っ取りなどの悪いイメージが先行していました。
しかし、特に株式が非公開の中小規模事業者のM&Aではいわゆる敵対的な買収は発生しないため、売買側双方がハッピーな譲渡が普通です。

 

焼肉屋のM&Aを行う理由は?


M&Aによって、店や事業の売却を行う理由はさまざまです。
ここでは代表的なものをご紹介します。

 

後継者問題の解決

社会の高齢化の進行は、個人経営の焼肉屋の経営者自身の高齢化と後継者不足を招いています。年齢や健康問題などにより、経営者が引退を考える場合には廃業か事業承継かということになります。

事業承継を選択する場合、通常はまず身内から後継者を選定することを考えます。
しかし、子供の数が少なくなっていることにより、少数の候補者の中からは厳しい経営環境を乗り切れる能力をもった人物が見当たらないといったことが起こりやすくなっています。
また、価値観の多様化により、子供が親の店を継ぐのが当たり前ではなくなっているということもあります。
身内から後継者選定することができない場合でも、M&Aにより第三者に店の経営を託すケースが増え、注目を集めています。

 

事業ポートフォリオの再編

焼肉屋の他にも様々な事業を経営している場合や、あるいは多地域で事業を展開している場合では、焼肉屋のみ、あるいは一部地域のみを切り離して売却することで経営資源を集中させることが可能です。
焼肉屋がノンコア事業であり、集中したい事業が別にある場合や、成績の思わしくない地域の営業から手を引きたい場合も、M&Aは有力な選択肢の一つとなります。

 

事業の継続

店の経営者が引退する際に、もしも廃業を選択すると、長年店に通ってくれた常連客は行き先を失ってしまいます。また、仕入れ先も取引先を失うことになります。
M&Aで第三者に経営を引き継いで店を継続することができれば、こういった面の心配をすることなく安心して引退できます。
また、自分が引退しても、今まで築き上げてきた味や店舗運営のノウハウ(のれん)が継続されることを望む場合も、M&Aでの事業承継を検討する価値があります。

 

雇用の継続

経営者の引退によって店をたたむ場合は、店の従業員は解雇しなければなりません。
従業員にとっては職を失うと同時に、今まで積み重ねてきたオペレーションノウハウや人間関係も失うことになります。

一方、M&Aにより店の営業を継続する場合、売買の条件に従業員の雇用の継続を入れられる場合があります
焼肉屋を含む飲食店業界は過度の人手不足に見舞われているため、従業員を引き継ぐことは買収側の企業にとっても、改めて採用活動を行う必要がないというメリットがあります。
※ただし売買のスキームによっては、雇用契約自体は結びなおす必要があります。

 

現金の獲得

M&Aでは、会社・事業に価値をつけて売買を行いますので、売却側は現金を手にすることができます
今まで事業を育ててきた結果を数字として獲得し、リタイア後、あるいは次の事業展開へ向けての資金とすることができます。
仮に現在の店の経営状態が振るわない場合でも、同地域や焼肉業態でのスピーディーな事業立ち上げを望む買い手からは価値があるとみなされて、売却が可能なこともあります。

 

焼肉屋のM&Aを行うタイミングは?

M&Aを検討する場合、どのタイミングで行えばいいのでしょうか。
実際の売却のタイミングは事業の状態や売買市場の環境によって決める必要がありますが、準備はM&Aの検討に入った段階で、できるだけ早く始めることが好条件での売却につながります。

準備に入る前に、まず行うことがM&Aの目的の明確化です。
M&Aにより事業承継を行う理由は、前に挙げたように様々ですが、その理由により準備段階や交渉の段階での動きや、それぞれのフェーズにどの程度の時間をかけるかが変わります。
年齢により引退を考えている場合は、自分が思い通りに動けているうちに売買交渉までを完了させる必要があり、事業価値にこだわるよりも早めの交渉妥結を目指す必要があります。
売却によって資金を得ることが目的である場合は、買い手が高い事業価値を見出せるように、ある程度経営改善に力を注いだ方がよいでしょう。
M&Aの目的は準備段階や交渉中にぶれることがないよう、スタート段階ではっきりとさせておきます。

M&Aによる事業承継の実施に向けては、現在の事業の課題を洗い出してクリアし、長所を伸ばすための「事業の磨き上げ」と呼ばれる経営改善を行います。
事業の磨き上げの最初のステップでは、自店が他店に対して持っている強みや弱点を再検討したり、経営者と店の資産を明確に分離したりすることで、現在の経営状態を可視化します。その後に実際の経営改善に取り組みます。
貸借対照表や損益計算書などの決算書はできる限り整理された状態にしていきます。もちろん粉飾はNGです。
店舗運営は経営者個人への依存度を減らすようにします。また、高い事業価値の評価を受けるためには、「のれん」を構成する味のレシピや店舗運営のノウハウ、ブランドなど無形の資産についても可能な限り文書化するなどで可視化しておきます。

事業の磨き上げは一朝一夕で実施できるものではなく、地道な経営改善作業であり、時間がかかります。
売却を急ぐ場合は事業の磨き上げは省略する、あるいは非常に簡素なものにするという選択肢もあります。
早めにM&Aの検討に入り、十分な時間をかけて準備を整えておくことで、タイミングを見計らって、売却の選択をすることが可能です。

 

焼肉屋のM&Aを実施するのは誰か?


焼肉屋を居抜き(造作譲渡)やスケルトンなどではなく、店の事業まで含めて買収しようという場合、基本的に買い手は焼肉屋事業をそのまま継続することを前提としており、買い手としては以下のようなケースが考えられます。

 

スケールメリットを求める事業者

仕入れや間接部門の共通化によるスケールメリットを得ようとする事業者が既存の焼肉屋の買収を望む場合があります。
また、その事業者が事業展開していない地域の焼肉屋を買収することで、地域的な補完を行うこともあります。

 

異業種・異業態参入等でのスピーディーな事業立ち上げを望む事業者

焼肉業態を新規に展開しようとする飲食事業者、あるいは全く別の業種からの焼肉店への新規参入をしようとする事業者が、既存の焼肉屋を買収するケースがあります。
既存店を買収することで、一から店舗、人材、メニューを揃える時間をかけることなく、スピーディーに事業展開することが可能です。
新規に焼肉屋を始めたい個人がM&Aにより既存の焼肉屋の後継となるケースもあり、この場合もすぐに営業を始められることが大きなメリットです。

 

のれんを欲している場合

買収対象となる焼肉店が地域で確固たるブランドを確立している場合や、独自のメニュー、店舗運営のノウハウなどを持っている場合に、それらに価値を見出して買収が行われるケースです。
焼肉屋をはじめとする飲食業ではこの「のれん」が事業価値に占める割合が大きく、独自の強みのある焼肉屋はM&Aの事業価値算定においても高い評価を得ることができます

 

焼肉屋のM&Aの相談先は?


M&Aへの準備が進み、具体的にM&Aに乗り出す段階では、M&Aの仲介を専門的に行っている事業者に相談するのが一般的です。
M&Aはその各フェーズで考えなければならないことが多く、専門家の助けを必要とする場面も少なくありません。
M&Aの仲介事業者であれば、各方面の専門家が揃っており、ワンストップで対応が可能です

まず、売却先の選定の段階ですぐに仲介事業者の助けが必要になります。
ごく小規模な焼肉屋の売却の場合は知人同士の間で「一声いくら」で売却が決まるケースもあるかもしれません。
しかし、経営者の持つネットワーク内で順に声をかけていくとすると、売却対象となる範囲が狭く、好条件を得にくいほか、情報が漏れやすいという欠点があります。
売却の意思だけが周囲に知れ渡ってしまう状態になると、何か訳ありであると勘繰られることで、売却が非常に難しくなってしまいます。
また、今営業中の店の経営にも決して良い影響は与えません。
秘密を守りつつ幅広く売却先を探すには、案件情報を持つ仲介事業者の紹介を受ける、あるいはM&Aのマッチングサイトを利用するなどの方法があります。

売却に向けての準備段階では「事業の磨き上げ」を行いますが、事業の磨き上げには時間やコストがかかります。
事業の磨き上げにどの程度の時間・コストをかけて注力すべきかは売却目的により変わってきますが、このさじ加減についてもM&Aの専門家の助言を受けることが有効です。

 

売却先が絞り込まれた段階では、価格交渉も行っていきますが、その前にはベースとなる事業価値の算定を行う必要があります。
事業価値の算定方法には「会社の純資産額(時価)にのれん代を加えて算出する」「会社が将来生みだすであろう利益に応じて算出する」などの方法がありますが、いずれも大変複雑で、会計士などの専門家の助けが欠かせません。
M&Aの仲介事業者は事業価値算定のフェーズにも対応が可能です

 

売買交渉が進み、おおよその売却金額なども盛り込んだ基本合意書が締結された後、最終契約に向けて、デューデリジェンス(買収監査)が行われます。
デューデリジェンスでは買い手側が問題のある会社・事業を買ってしまわないようにするために、買収対象の会社について詳細に調査します。
デューデリジェンスは財務に関する監査を行う財務デューデリジェンス、問題のある契約など法務面の監査を行う法務デューデリジェンスが代表的です。
財務デューデリジェンスでは会計士や税理士、法務デューデリジェンスでは弁護士によって、すみずみまで調査が行われます。
デューデリジェンスで問題点が発見された場合、譲渡スキーム(株式譲渡、事業譲渡といったM&Aの枠組み)を変更したり、売買の条件に反映させたりといった対応が必要になることがありますが、これらの対応の際にも専門家の助言が欠かせません。

このようにM&Aでは経験を積んだ専門家の助けが必要になるシーンが多くあるため、M&Aの相談先としては専門の仲介事業者の利用が有効です。

 

まとめ

焼肉屋の事業承継を検討する場合、実現方法としてM&Aを選択することにはケースに応じたメリットがあります。
大切に育ててきた事業をよりよい形で送り出すためにも、M&Aを含めて、幅広く検討してみてください。

焼肉屋のM&Aを実施する前に考えておきたいこと
大手チェーン化により、近代化の進んだ焼肉屋業界は、「客単価の高い高級店」「大手チェーン店」「個人営業の生業店」などに分類できます。
飲食店業界は極端な人手不足が継続しており、個人経営店での人手確保は大変難しく、後継者不足にも悩まされる状態が続いています。
こういった状況下でM&Aによる第三者への譲渡により店の継続を望む例も増えています。
焼肉屋のM&Aを実施する際のポイントについてご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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