2019年3月19日 火曜日

バルの事業譲渡を検討する際のチェック項目

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

バルが日本に現れてから約15年が経過しました。バルは大きなブームとなり、たくさんのバルがオープンしました。ブームから15年が経ったいま、バル事業の譲渡を考える経営者も増えてきているのではないでしょうか。
バルの事業譲渡を検討するときのチェック項目をご紹介いたします。

 

バルの事業譲渡を検討してみては?

日本のバルのこれまで

日本の人々に「バル」が知られるようになってから、それほど長い時間は経過していません。日本におけるバルは、比較的新しい業態です。まずは、日本のバル業態の変遷をご紹介します。

日本のバルは、スペインやイタリアの「バル(Bar)、バール(Bar)」から来ています。スペインのバルは、現地の人々の生活に深く密着しています。スペインのバルは、朝から夜遅くまで開いています。スペインの人々は、朝はコーヒーを飲みながら朝食をとる場所として、日中はランチを取ったりコーヒーを飲んだりする場所として、そして夕方は帰宅する前にお酒を飲む場所として、一日に何回もバルに通います。バルが出す料理は、「タパス」と呼ばれる小皿料理や、「ピンチョス」と呼ばれる串刺しのおつまみです。飲み物には、ビール、ワイン、コーヒー、ソフトドリンクと、アルコール飲料もノンアルコール飲料もあります。

日本のバルは、2005年頃にスペインのバルをまねた店として始まりました。当時のバルは”スペインバル”とも呼ばれ、300円前後のタパス、パエリア、廉価なワインを出しました。洋食やワインを安く楽しめることが支持されました。
その後、バルは日本で流行します。ピザやパスタを値ごろ感のある価格でサービスする、安さよりはお値打ち感を訴求するバルが流行りました。「バル」が非常に流行ったために、業態に関わらず「バル」を名乗る店舗が増えました。いわゆる店舗の「バル化」です。ブームに便乗する動きとも言えますが、店舗名に「バル」や「Bar」を取り入れただけで、中身が伴わなければ、中長期的な繁盛にはつながりません。

今日では、専門性を備えたバルが支持されています。牛肉、鶏肉、海鮮など、メインメニューの素材にこだわったバルが支持されています。こうしたバルの中でも、「肉バル」の動きはとくに顕著です。今や日本各地に「肉バル」を名乗る店舗が現れています。グルメサイトなどでは、「肉バル」はすでに一つの独立したジャンルとして扱われています。肉バルに限らず、板前を常駐させたり、石窯でピザを焼いたりといった、ほかの店舗が簡単には真似することができない特色をだすことで、飽和状態になりつつあるバル業態の中で差別化しようとする動きです。

 

外食業界の動向

外食業界全体としては、人口減少、中食の普及、人材不足など、中長期的に見て将来は厳しいと見られています。そうした状況の中大手外食企業は、国内では業態の多角化より、時流をタイムリーにとらえつつ、収益を安定化させようとしています。成長の可能性が限られた日本を出て、海外における事業を拡大する動きも目立ちます。

 

バルの事業譲渡

こうした大手外食企業の動きは、バルの事業譲渡にとって有利に働きます。業態の多角化や、特色あるサービスの開発を短期間で行うためには、M&Aによる事業買収が最適です。事業譲渡を考えるバル経営者にとって、条件のよい買い手を見つけやすくなっています。

 

バルを事業譲渡するメリット


M&Aを活用してバルの事業譲渡をすることには、さまざまなメリットがあります。最初に譲渡する側のメリットを、次に譲り受ける側のメリットをご紹介します。

 

譲渡する側のメリット

後継者問題を解決できる

中小企業の経営者が高齢化するにつれて、事業承継の問題がますます深刻化してきました。1995年当時は、年齢別に集計すると47歳の経営者がもっとも多かったのですが、2015年では、これが66歳になりました。ピークがほとんどそのままずれています。つまりこの20年間、中小企業経営者の世代交代が滞っていたことを示しています。そのため、高齢化した経営者が後継者を見つけられないままに休廃業・解散に追い込まれるケースが増えています。

M&Aを活用した事業譲渡は、中小企業の後継者問題を解決する切り札です。これまで、中小企業の事業譲渡は、基本的に親族の中で行われてきました。しかし、変化の激しい時代となり、長期的に経営を安定させる見通しが立ちにくくなる中、息子や娘たちが経営を引き継ぐことに難色を示すことが多くなりました。親族に事業を引き継げなくなったことが、今日の後継者問題の一因です。

M&Aを使えば、買い手が事業に価値を見出す限り、事業譲渡を成立させることができます。事業に関心を示す人々全員が買い手候補になるのですから、数の上でも、関心の広がりの上でも、買い手が現れる可能性が格段に高まります。

これまでの日本人の価値観では、M&Aを忌避する傾向もありました。そうした考え方は次第に払しょくされてきています。現在、多くの中小企業が、M&Aを活用して事業を承継しています。

 

廃業にかかる費用を回避できる

事業を譲渡することなく廃業すると、余計なコストがかさみます。会社設備の処分、在庫処分、店舗の原状回復などが主な廃業の経費です。廃業手続きにともなう税務処理の費用、解雇することになる従業員に支払う保障費用などもあります。経営者として債務を負っている場合、事業を廃業したからといってそれがなくなるわけではありません。

事業を譲渡すれば、こうした費用の一部が不要となりますし、事業譲渡による利益を得ることができます。

 

資産評価が高まる

廃業と比べて、事業を譲渡するほうが資産の評価が高まります。廃業の場合、調理器具など、売却できる資産があったとしても、それらはバラバラに個々のモノとして評価されるだけです。
一方、事業を譲渡する場合、そういった資産は事業の一部として評価されます。さらに、これまで築き上げてきた店の評判やビジネスモデル、店舗運営のノウハウなど、数多くの無形資産もまた、評価の対象となります。事業譲渡において、評価の中心となるのは、そのような無形資産なのです。

 

まとまった現金を得られる

譲渡するバルが高い評価を得られれば、事業売却益として、経営者はまとまった現金を手に入れることができます。経営者は、これまでさまざまな努力によってバルの価値を高めてきました。そうした努力は、経営を継続する間は収益をもたらしてきたのですが、事業を譲渡する際には、売却益としてこれまでの努力を一度に回収することができます。そうして得られた現金を、新たな事業に挑戦するときの元手にしたり、豊かな老後ための資金として活用したりすることができます。

 

譲り受ける側のメリット

バルを譲り受ける側のメリットを理解すれば、事業譲渡の交渉を有利に進めることができます。現在多くの大手飲食企業が、M&Aを活用して、バルや、そのほかの飲食店を買収しています。そうした企業が求めているメリットには次のようなものがあります。

 

リスクを回避しつつ迅速に新規事業を展開できる

新しい事業分野に進出しようとする企業が、M&Aを活用しないで一から事業を構築しようとする場合、事業に失敗するリスクが高まるだけではなく、事業が成長するまでに多くの時間と費用を必要とします。すでにある程度成功しているバルを買収するのであれば、地域に受け入れられる方向性を見出して、評判を確立し、常連客を集めるまでのコストと時間が少なく済みます。現代のビジネスでは、状況の変化に機敏に対応するフットワークが重要です。M&Aなしでは、今日要求される成長スピードを達成することは難しいでしょう。

 

業態を多角化できる

現在、大手外食企業は、国内においては業態の多角化に努めています。一つのエリアに多様な業態を展開することで、時代の流れに即応することと、流行り廃りによる収益の乱高下を回避することができます。

M&Aを活用した業態の多角化にはもう一つのメリットもあります。インターネットの普及により飲食店についても大量の情報を得られるようになった顧客は、型にはまったサービスに飽き足りず、特徴をもった個性的なサービスを求めています。M&Aを活用すれば、大手外食企業が自ら開発することが難しい、個性的なサービスを備えたバルを、自分たちのブランドポートフォリオに取り込むことができます

 

バルを事業譲渡する際のチェック項目

M&Aを活用してバルを事業譲渡する際のチェック項目をご紹介します。事業譲渡は複雑で時間のかかるプロセスです。ポイントを押さえておかないと、思わぬところで問題が発生します。事業の譲渡先が見つからない、売り手と買い手双方が利益を得られる状況にありながら、交渉が決裂してしまう、などの事態が発生します。事業譲渡を円滑に進めるためのチェック項目をご紹介します。

 

譲渡の目的を明確にする

M&Aを活用した事業譲渡は、結局のところ、売り手と買い手の間での、バル事業をめぐる売買交渉です。信頼関係を構築したうえで、売却交渉を円滑に進める必要がありますが、双方が自分たちの利益を主張して対立する場面も考えられます。

交渉がシビアになってきて、売り手の条件がすべて満たされなくなることも十分にあり得ます。そうした場合、譲渡の目的が明確でないと、どの条件を優先させるかわからなくなります。そのため交渉が滞ったり、最悪破棄されたりすることもあるでしょう。

バルの経営者は、譲渡交渉が始まる前に、自分の目的を明確にしておく必要があります。できるだけ高額の売却金額を得たいのか、従業員の雇用が優先なのか、事業を譲渡したあと引き続きなんらかの影響力を保ちたいのかなど、交渉の目的を明確にしておきましょう。交渉が始まったら臨機応変に判断することも必要です。

 

バルの事業価値を上げる

より良い譲渡先を見つけ、より多くの事業売却益を得るためには、あらかじめバルの事業価値を上げておく必要があります。バルがより多くの顧客から支持されるようになれば、買い手も魅力を感じるようになるでしょう。今経営しているバルは、十分に「バルらしい」お店でしょうか。また、バルの中で埋没しないような、アピールポイントを持っているお店でしょうか。
人々がバルに期待するイメージは、トレンドに敏感で、若者や女性に支持され、カジュアルな雰囲気の中で気軽に飲食を楽しめるお店です。そうした期待を満たすために、素朴であたたかみのある内装にする、カクテルやノンアルコールドリンクの種類を充実させるなどの努力が必要です。

バルが日本で始まってから約15年が経過しています。この間、バルは急速に流行し、今では大変多くの飲食店がバルを名乗っています。そして現在、バルの中での優勝劣敗が明確になってきました。バルの中で埋没しないためには、アピールできるポイントが必要です。肉にこだわりを持った「肉バル」がトレンドとなっているように、なんらかの専門性をもったバルが顧客に評価される時代がきています。

 

はやめに準備する

事業譲渡を行うと決めたら、早めに準備する必要があります。事業譲渡には時間がかかります。譲渡のための活動を開始してから譲渡契約にいたるまで、短く見積もっても半年~1年はかかるでしょう。事業価値を高めるための取り組みなどもありますので、現実的には2~3年の時間を必要とすると考えるべきです。いつまでに譲渡を済ませたいのかを考え、そこから逆算して行動する必要があります
交渉が途中で決裂することになれば、これまで時間をかけて進めてきたプロセスをもう一度やり直さなければなりません。時間がかかっているうちに、バルの経営者にとってのタイムリミットが来てしまえば、大幅な譲歩を強いられることになりかねません。

はやめに準備するべき理由は、譲渡の手続きに時間がかかることだけではありません。大手飲食企業が積極的に買収に乗り出している現状は、バルの事業譲渡にとって有利な状況です。こうした状況がいつまで続くかはわかりません。人口減少により需要が減っていくことや、「バル」ブームがこの先どうなるかわからないことも考えると、有利な状況を活かすために、はやめに行動を開始するべきでしょう。

 

まとめ

以上、バルの事業譲渡を検討する際のチェック項目をご紹介しました。事業譲渡には時間がかかります。現在はバルの事業譲渡にとって有利な状況です。将来を見据えて、バルの事業譲渡を本格的に検討されてはいかがでしょうか。

バルの事業譲渡を検討する際のチェック項目
バルが日本に現れてから約15年が経過しました。バルは大きなブームとなり、たくさんのバルがオープンしました。ブームから15年が経ったいま、バル事業の譲渡を考える経営者も増えてきているのではないでしょうか。
バルの事業譲渡を検討するときのチェック項目をご紹介いたします。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年3月19日
バルの事業売却のポイントとは?
2019年3月19日
バルの事業承継でお困りではないですか?
WEBからお問い合わせ
当社はお客様の事を最優先で考える成果報酬型エージェントです。
匿名をご希望されるお客様には、会社情報など一切公開せずにお問い合わせ頂く事が可能です。

お問い合わせ内容

氏名

電話番号

メールアドレス

メールアドレス(確認)

業種

会社名

お問い合わせ内容