2019年3月21日 木曜日

バルのM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

統計によると、日本人は次第にアルコールを消費しなくなる傾向にあります。右肩下がりの居酒屋の中で、バルだけは流行りの様相を見せていますが、それがいつまで続くのかは誰にもわかりません。バルをM&Aで売却するのであれば、今がそのタイミングです。バルのM&Aを実施するときに考えておきたいことをまとめます。

 

バルのM&A

「バル」とは

食堂とバーが一体となった飲食店を「バル(バール、Bar)」と呼びます。「バル」はイタリア語の「バール」や、スペイン語の「バル」からきた言葉です。元祖であるスペインのバルは、朝や昼はコーヒーやランチを提供し、夜はアルコールと食事を提供する、地域生活の要です。一方、日本のバルはさしずめ食事やコーヒーも提供する洋風居酒屋といえるかもしれません。

 

バル業界の動向

バルは、パブ・居酒屋業態として統計を見ることができます。近年、飲食サービス業は少しずつ伸びる傾向にありますが、「パブレストラン、居酒屋」業態は低下傾向が続いています。こうした傾向の背景には、若者のアルコール離れがあります。雇用の非正規化により、十分な所得が得られない若者は、アルコールを減らして対応しようとしています。また、会社の”飲みにケーション”が減ったことや、ファミリーレストランがアルコールを提供するようになったことなども影響しています。

外食産業では、人手不足も深刻です。とくに、居酒屋の労働条件の過酷さがしばしば報道されていることもあり、外食産業を敬遠する空気が定着しています。こうしたことにより、バル経営に対する人材コストが増加しています。

 

バルのM&A

個性のある店が求められる現在、バルは流行っていると言えるでしょう。この状況に乗じて大手飲食チェーンがバル業態に参入する動きもあります。もともとM&Aは新規参入と比較して多くのメリットがあります。そのため、バルのM&Aに対して追い風が吹いている状況にあると言えるでしょう。

 

バルのM&Aを行う理由は?


M&Aで、バルを売却する理由として、主なものを見てみましょう。

 

引き継ぐ子どもがいない

多くの中小企業と同じように、バルもまた、経営者が高齢化してくれば、後継者を決めなければなりません。自分の息子や娘が事業に関心を示してくれるのであれば、そのまま引き継いてもらえばよいのですが、すでに会社員となってそれなりの地位を築いている場合など、それが難しいこともあります。やりがいはあるものの苦労が多く、夜も昼も働き続けなければならない経営者の立場に身を置くことに、息子や娘が躊躇するかもしれません。経営を成功させて大金を手にできることもありますが、逆に失敗して困窮する可能性もあります。すでに家族を持っている場合には大きな決断となります。

身内から後継者を選ぶことができなかったからといって、廃業を選べば、店舗や設備、調理器具などの人材以外の資産は、単にモノとして評価されることになり、高い評価は得られなくなります。銀行などへの債務はそのまま残りますから、廃業後に借金が残ることも多くなります。また、従業員が職を失うことも大きな問題です。

ここで、廃業ではなく売却を選択すれば、経営者自身にとっても周囲の人々にとっても、より良い結果が得られます。経営者の人脈の範囲で売却先が見つからなかったとしても、M&Aを活用すれば、バルの売却先を見つけられる可能性が高まります。この場合、資産や従業員はバラバラにされることなく、一つのバルとして評価されますから、その分、高い評価額を得られる可能性も高まります。
後継者問題に悩むバルの経営者にとって、M&Aは救いの女神と言えるのかもしれません

 

経営から退き引退したい

歳をとって体力的に経営が難しくなったり、病気をしてこれまで通り働けなくなったり、経営から引退したくなる理由はさまざまです。すでに述べたように、引退すると同時に廃業してしまえば、経営者自身にとっても周囲にとっても重大な影響が及びます。M&Aを活用して、適切な価格でバルを売却できれば、経営者はこれまでの苦労を創業者利益としてお金に還元することができます。そうして手にしたお金を老後の生活資金とすれば、ゆとりある老後を実現することができます。

 

従業員の雇用を維持したい

バルを廃業すれば、これまで苦労を共にしてきた従業員を解雇することになります。従業員は自分で新しい職を探さなければなりません。
しかし、バルを廃業する代わりにM&Aで売却すれば、従業員は慣れ親しんだ職場で働き続けることができます。また、新しい経営のもとで、待遇が良くなることもあります。

 

大手傘下に入って経営を改善したい

売却により大手のバル・チェーンに入る場合など、その資金面、システム面でのバックアップを受けて、これまでできなかった設備投資を実現できる場合があります。また、大手の信用や評判による集客や、従業員の獲得なども、M&Aでバルを売却するメリットとなります。

 

バルのM&Aを行うタイミングは?

バルのM&Aを考えているのであれば、すぐに実行に移すことをおすすめします
飲食店業界は、開業、廃業の流れが速く、今は流行に乗れていたとしても、それがいつ終わり、売却条件が悪化するかはわかりません。人口の減少や、ファミレスなど他業種からの参入も目立つ中、様子を見ているだけでは、状況が良くなることはないでしょう。
売却にかかる時間を考えれば、経営者が高齢である場合は特に、はやめに実行して残りの人生を充実させるべきでしょう。

 

バルのM&Aを実施するのは誰か?


当然のことながら、バルのM&Aもまた、売り手と買い手により交渉を重ねながら実施されます。ここまで、主として売り手の立場から、バルのM&Aについてみてきました。ここでは、もう一方の当事者である買い手の姿を見てみましょう。買い手が求めるメリットがわかれば、その姿を明確に思い描くことができます。

 

買い手は、売り手が既に持っている”評判”がほしい

お酒をサービスするバルが人気店となるためには、サービスするお酒や料理が値段以上に価値があるだけではなく、建物や内装、従業員の接客態度なども含めて総合的にレベルを高めル必要があります。また、その高めたレベルを維持していくことも求められます。
そうした努力を継続してはじめて、バルは人気を獲得し、良好な経営状態を維持できるようになります。

一から建物や従業員を調達して、まったく新しいバルを構えた場合、このような、バルの価値を高めて、地域で評判を獲得する段階も、はじめからやり直さなければなりません。M&Aでバルを買収すれば、すでに一定の評判を獲得できているのですから、すぐにその後の展開を考えることができます

 

繁盛する立地に進出したい買い手

バルの経営にとって、立地は決定的な意味をもちます。良い場所にバルを構えることができれば、新規顧客を獲得する苦労が大幅に減るからです。バルが繁盛するためには、周辺の人口構成や、同業者の出店状況などの要素も重要ですが、飲酒後に帰宅する手段が確保されているかや、バルへの道筋がわかりやすく安全かなど、細かな要素も影響します。よい立地に新しく進出した場合、既存のバルや居酒屋などと競争しつつ、一から顧客を獲得しなければなりません。バルを買収すれば、競争することになる店舗数はひとつ分減少しますし、買収したバルの顧客を引き継ぐこともできます

 

売り手の独自性を手に入れたい買い手

現代の飲食店業界の大きな特徴は、独自性をもった「個店」が強い時代になってきていることです。インターネットが発達した今日では、店に独自性があれば、グルメサイトやSNSで、顧客が自発的に紹介してくれます。以前は、店に独自性があっても、それを多くの人々に知らせることが難しい時代でした。興味をもったときには、勇気を振り絞って店の敷居をまたいだものでした。
現在、そうした状況はまったく変わりました。グルメサイトやSNSに、料理・内装・接客などについての情報が多数掲載されています。現代の顧客は、予算やサービスについて事前に調べ、安心して店を訪れることができます。その結果、そのお店独自の価値があるかどうかが、ますます重要になってきました

顧客に受け入れられる独自性を獲得するためには、多くの試行錯誤や、特色ある料理の食材を確保するのために、新規の仕入れ先を獲得する努力などが必要です。これもまた、一から経営を始めたバルが実行するには、負担が大きいものです。バルを買収することにより、そうした努力を回避することができます。

 

バルのM&Aの相談先は?


バルをM&Aで売りたい、または買いたいと考えた経営者は、具体的にどのような行動をとればよいのでしょうか。
売る側の立場からみると、出来るだけ高く売りたいとか、従業員の地位を守りたいなどのさまざまな条件があるでしょう。買う側としても、できるだけ立地のよいバルを買収したいとか、予算的にそれほど多くの買収金額を用意できないなど、やはりさまざまな条件があります。売却側、買収側、どちらの側からみても、M&Aに関して豊富な情報や経験を持っている相談役を確保できれば、より合理的な条件で、売買が成立することでしょう。M&Aによる売買の実務には、専門性が要求される作業もあります。バルをM&Aで売買するためには、適切な相談役を確保することが必須です。バルのM&Aの相談先としては、以下のような専門家が候補にあがります。

 

会計士や税理士など

バルを売る側であれば、自分が経営しているバルの財務報告書などを作成するために、会計士や税理士などと契約している場合が多いでしょう。最近では、ある程度大きな会計事務所、税理士事務所は、法人としてM&Aも扱う場合が多くなっています。定期的に尋ねてくる会計士や税理士は、すでに信頼関係が築かれていることもあり、M&Aの相談先として機能します。しかし、M&Aを取り扱っている場合でも、取引先のネットワークがそれほど広くないこともあるので、注意が必要です。

 

取引先銀行、証券会社など

取引先の銀行なども、すでに自分のことをよく知っていて、信頼関係もできていることや、地域経済に対して広範囲のネットワークをもっているため、M&Aの相談先として一定の機能をはたします。
しかし、銀行も証券会社も、M&Aを専門に扱っているわけではないので、注意が必要です。

 

M&A仲介会社

今世紀に入ってから、日本においてもM&Aはそれほど珍しいものではなくなりました。今世紀のはじめの10年間は、大企業の合従連衡の時代であり、そのために大口のM&Aが多数行われました。大企業レベルでの業界再編が一段落したのち、次の10年間になると、M&Aの流れは中小企業の世界に及んできています。事業承継が身内で行われることが当たり前だった時代では、M&Aはあまり良くないことと思われる傾向にありました。しかし後継者不足が深刻となり、M&Aで事業承継を行う事例が増加した今では、M&Aに対するマイナスイメージは払しょくされています。

中小企業のM&Aが盛んに行われるようになったことを受けて、現在多数のM&A仲介会社が事業を展開しています。M&A仲介会社は、単に相談に応じるばかりではなく、M&Aを実行するときにしなければならない仕事のすべてについて、代行したり、サポートを提供したりします。M&A仲介会社と契約を結べば、バルの経営者は、仲介会社が敷いたレールの上を走るだけで、事業を売却することができます。情報の質、専門的な作業のサポート、手数料の合理性など、総合的に考えてみて、M&A仲介会社と契約するのがもっとも合理的な選択と言えるでしょう

たくさんのM&A仲介会社がある中、それぞれの仲介会社が提供するサービスの質はさまざまです。売り手、買い手の双方にとって、M&Aは高額な取引となる重大な案件です。単に手数料を見て決めるのではなく、よりよい結果をもたらすために良く調べてからM&A仲介会社を選択する必要があります。バルや居酒屋のM&Aに関して豊富な実績を持っている仲介会社を選びましょう

 

まとめ

以上、バルのM&Aを実施する前に考えておきたいことについてご紹介しました。バルは現在バズワードと化している感があります。実際にM&Aでバルを売却するとなると時間がかかります。流行っている今が、M&Aに踏み切るタイミングです。

バルのM&Aを実施する前に考えておきたいこと
統計によると、日本人は次第にアルコールを消費しなくなる傾向にあります。右肩下がりの居酒屋の中で、バルだけは流行りの様相を見せていますが、それがいつまで続くのかは誰にもわかりません。バルをM&Aで売却するのであれば、今がそのタイミングです。バルのM&Aを実施するときに考えておきたいことをまとめます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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