2019年4月15日 月曜日

パン屋・ベーカリーのM&Aを実施する前に考えておきたいこと

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

近年、日本において、M&Aは活発化しています。人手不足や競争の激化の対策を行うためにも、M&Aの必要性は高くなっています。
経営状態を維持し、さらなる利益を得るためには、従来のスタイルでは、通用しなくなってきました。経営にも改革が求められているのです。
このような状況下から、パン屋・ベーカリーの経営のステップアップのために、M&Aを検討するオーナーも少なくないのではないでしょうか。

ここでは、パン屋・ベーカリーがM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介します。

 

パン屋・ベーカリーのM&A


パン屋・ベーカリーは、業界として、食品製造業界に分類されます。食品製造業とは、食品・飲料の製造を行い、製造した製品を販売する業界のことをさします。食品製造業の市場規模は、リーマンショックのあった2009年に減少しました。しかし、長期的に見ると、微増傾向となっています。中でも、パン屋は増加傾向が見られます。それは、食の近代化の影響が強いとされています。

食品製造業の規模が微増している一方、事業所数(パンを製造する場所)は減少しており、一事業所あたりの出荷数は増加しています。この点から、業界間でM&Aが活用されていることが推察されます。大手企業が零細企業を買収し、ノウハウと人員を手に入れていれ、製造の効率化を図っているのです。

M&Aは、以前は「買収」という言葉から、マイナスなイメージが強くありましたが、現在は、他社の協力を得るということから、前向きな取り組みとして、活用されています。

 

パン屋・ベーカリーのM&Aを行う理由は?


M&Aを行う理由は、パン屋・ベーカリーに限らず、売却・買収ともに、どの業界でも共通しています。売り手と買い手で、理由や目的は異なりますが、それらを明確化することによって、自店はどのようなパートナーとM&Aを行いたいかを確立できます。パートナーのビジョンが出来上がったら、M&Aの取引相手の候補を絞りやすくなります。M&Aを行う理由や目的は、取り引きを円滑に進める上で重要なポイントとなります。

ここでは、売り手と買い手、それぞれがM&Aを行う代表的な理由をご紹介します。

 

【売却側の目的】

①後継者問題の解決

現在、後継者不足が非常に深刻化しています。人口減少・価値観の多様化により、子どもに事業を継がせるという従来の形式が崩れてきました。その対策として、M&Aを活用するオーナーも少なくありません。

M&Aによって、買い手企業から経営陣を迎え、お店を存続することができます。後継者不足による跡取り問題を解決できることに加え、創業者利益を手に入れることができる点も、大きなメリットです。

 

②経営悪化からの打開

経営悪化が原因でM&Aの活用を検討するケースもあります。
廃業には莫大な資金が必要となります。しかし前述のように、M&Aを活用すれば創業者利潤を得ることができ、事業も引き継がれます。赤字経営のお店に買い手がつくか不安になるオーナーもいるかもしれませんが、M&Aで評価されるのは将来性です。確固たるノウハウや強みがある場合、廃業によってそれらを捨ててしまうのはもったいないです。
廃業では、清算に伴って資産価値が減少しますが、M&Aを行った場合は、営業権等の評価が行われ、廃業より資産価値が増加します。

 

【買収側の目的】

①人材不足の解消

人材不足解消のために買収を行うオーナーも多く見られます。会社を存続していくにあたって、人材は不可欠です。特に食品製造業界においては、労働環境が過酷なことから、人材の確保が困難です。一度に多くの人材と、ノウハウや技術を効率よく獲得するためには、M&Aが適当な方法となります。また、人材の中に優秀な人物がいれば、企業のさらなる成長機会も見込めます。

 

②事業の拡大

買い手としてM&Aを行う理由には、事業拡大があげられます。異なる事業分野の企業を買収することによって、買い手は短期間で新事業に進出できます。実績が豊富な企業を買収すれば、自力で参入することに比べてリスクを軽減できます。また、複数事業の保有によって、景気変動リスクに対応することが可能となり、業績の安定化に繋がります。M&Aを活用することによって、新規事業展開と事業リスクの分散化の両方の実現を目指します。

 

パン屋・ベーカリーのM&Aを行うタイミングは?


パン屋・ベーカリーに限らず、M&Aは需要と供給の世界です。よって、M&Aを行う上で、タイミングは重要なポイントとなります。
買い手側は、今後の経営方針に前向きな展望を持ってM&Aを行う傾向が強いと考えられます。しかし、売り手側は、ポジティブな目的だけでM&Aを行うとは限りません。つまり、オーナーの健康状態や、経営状態が思わしくないときにM&Aを検討する場合もあるということです。ここでは、売り手側の観点から、ケースごとにM&Aを行うタイミングをみていきます。

 

①オーナーの健康状態の悪化のとき

オーナーに突然健康問題が発覚した場合は、早期に事業売却をおこなう必要があります。
オーナーが事業に関与する度合いが低下することは、収益の悪化・事業価値の低下に繋がります。

この場合、オーナーは、事業価値が低下する前に売却しなければなりません。健康問題の発覚後、意思が固まっていれば、その段階で売却の準備を始めましょう。
M&Aは、交渉成立までに年単位の時間かかるとされています。経営状態の把握・相談機関との連携・売却条件の明確化等の準備ができたら、売却のタイミングとなります。

 

②業界再編が進行中のとき

業界再編が進行中の場合、買い手も売り手も多く存在するため、M&Aの会社売却が活性化します。中には、売却するタイミングを見極め、巨額の資産を成したオーナーもいます。業界再編が進行すると、売り手候補が減少するため、M&A価格や会社売却価格が高騰します。さらなる価格高騰を見込んで、売り惜しみするオーナーも出てきます。また、この時期は売り手とM&A業者からアプローチが絶えず、引く手あまたです。

しかし、業界再編は永続しません。このような状況下でも、専門家と相談を密にし、業界再編成が終わる一歩手前で売却することが、最適なタイミングとなります。

 

③景気の良いとき

景気の良いときは、売却のタイミングといえます。
リーマンショック、ITバブル崩壊のように、好景気は突然終了します。いまは買い手企業が多く存在していたとしても、数か月後には、雲散霧消している可能性もあります。
実際、リーマンショック後に、M&A業者に会社の売却の依頼が集中しましたが、買い手は皆無でした。

景気の波は誰にも予想できませんが、景気が良いときに売却を検討している場合、M&Aを行うタイミングとしてふさわしいです。

 

④寡占化が進んだとき 

近年、JTが自動販売機の日本ビバレッジをサントリーに売却した際、非常に高値の売却価格がつきました。寡占化が究極に進んだ場合、業界内のプレイヤーが減少しているため、買収に成功した企業はさらなる寡占化を可能にし、買収に失敗した企業は寡占市場における零細企業となってしまいます。よって、どの企業も寡占市場で生き残るために割高な価格であってもM&Aの買収をしなければなりません。
多くの場合は、究極の寡占化は起こりませんが、仮にそうなるときがあれば、理想の売却価格を提示できるため、タイミングとしては理想的です。

 

⑤オーナーの事業意欲が高いとき

オーナーの事業意欲が高いときも、売却のタイミングとして適しています。オーナーの事業意欲は、業績を左右します。業績はオーナーの事業意欲に比例するからです。オーナーの事業意欲が下がれば業績も下がるため、早い段階で、能力・意欲ともに高い経営者に経営をゆだねることも一つの選択肢です。
M&Aを行う前に事業意欲を高めてから買い手にアピールできると、事業価値に対する評価も変わってきます。

 

パン屋・ベーカリーのM&Aを実施するのは誰か?

パン屋・ベーカリーのM&Aは、主に同業種であるパン屋が買い手となるケースが多いです。つまり、パン屋同士でM&Aを実施することになります。同じ業界でM&Aを行うことによって、売り手は、理念やノウハウを継承することができ、買い手は、それを活かしてさらなる成長を遂げることができます。異業種が新規事業参入のために買い手となることもありますが、パン屋は同業種に人気が高い傾向が見られます。

 

パン屋・ベーカリーのM&Aの相談先は?


パン屋・ベーカリーに限らず、M&Aについて相談する際は注意が必要です。M&Aを検討していることを従業員・取引先に知られてはならないからです。
M&Aを行うことによって、従業員の労働環境は大きく変化します。その不安から、M&Aに反対する人や、お店を辞めてしまう人が出てくる可能性があります。また、M&Aの検討が取引先に伝わった場合、経営悪化を疑われ、取引の条件を厳しくされることがあります。
秘密を厳守する、信頼のおける専門の相談機関に相談しましょう。

 

①会計士・税理士

計士・税理士にM&A相談をするメリットは、2点あります。
1つめは、「お店の経理面を熟知している」点です。普段からお店の決済業務を依頼している場合は、すでに経営状態を把握しているため、M&Aについての相談が進めやすいです。
2つめは、「信頼関係が築かれている」点です。定期的に顧問業務として面談をしているため、会計士や税理士、つまり、相談相手の人柄がわかっているため、0から信頼関係を築き上げる必要がありません。
この2点のメリットから、安心してM&Aについて相談できます。

会計士・税理士にM&Aを相談するデメリットが1点だけあります。それは、「ネットワークが限定的」である点です。会計士・税理士は地域密着型である場合が多く、限られたエリアのネットワークしか持っていないことが多いです。よって、理想の売り手や買い手を広い範囲から見つけることが難しくなります。売却価格・買収価格にこだわりがある場合や、条件が多い場合、マッチングするのに時間がかかってしまう、あるいは、売り手か買い手のどちらかが妥協しなければならなくなる可能性も出てきます。

 

②銀行・証券会社等の金融機関

金融機関にM&Aを相談するメリットは、「経理面の知識が豊富」「ネットワークが広い」点があげられます。金融機関は、金融に関するプロのため、今後の経営方針やM&Aを行う金額の設定について、金融面の観点から的確なアドバイスをしてくれます。また、大手の金融機関であれば、広い範囲で取引先を持っています。そのネットワークを最大限に活かして、マッチングする売り手や買い手を探すことができます。
また、金融機関によっては、M&Aの専門部署を持っているところもあります。その高い専門性や経験を活用することによって、納得のいくM&Aを実現できます。

金融機関にM&Aを相談するデメリットとして、「手数料が高い」「時間がかかる」点があげられます。金融機関は、基本的に大手企業と取引することを前提としており、最低手数料が高額に設定されています。小型のM&A案件を行った場合は、手数料の負担が重くなる傾向があります。また、決裁等の意思決定に時間を要するため、対応に時間がかってしまいます。さらに、金融機関は、取引先同士でM&Aを成立しようとするため、ネットワークが広くない金融機関では、M&Aを行う相手の候補が限られてしまうこともあります。

 

③M&A専門会社

M&A専門会社には2種類あります。
1つめは、M&Aの交渉から成立まで行う仲介会社です。
2つめは、M&Aに関する助言のみを行う相談会社です。
M&A相談会社は、パン屋・ベーカリーのM&Aの事例を多く持っており、専門的な知識も豊富です。また、大きなメリットとしてあげられるのは、「全国にネットワーク」を持っている点です。

M&A専門会社は、幅広いネットワークの中から、迅速に案件を成立するために、最適なパートナー(売り手あるいは買い手)とのマッチングを手伝ってくれます。手数料は会社によって異なりますが、金融機関に相談するよりも比較的安価で助言あるいは仲介を依頼できます。

M&A専門会社に相談するデメリットは、仲介の場合、「利益相反の問題がある」点です。仲介会社は、売り手と買い手の間を取り持ち、両者から成功報酬として手数料を得ます。よって、売り手はできるだけ高く売りたい、買い手はできるだけ安く買いたいとし、双方の利益は相容れないことになります。結果的に利益相反の問題が発生します。
こういった問題を解決するために、自店に不利な価格算定が行われていないか、第三者にセカンドオピニオンとして価格算定を依頼することが推奨されています。

 

まとめ

ここまで、パン屋・ベーカリーのM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介しました。M&Aを実施する前に、「なぜM&Aを実施したいのか」と「自店の強みを明確にすること」が大切です。まずは、専門の相談機関に相談してみましょう。なお、M&Aは取引成立まで、何年も要するとされているため、計画的に準備することをおすすめします。

パン屋・ベーカリーのM&Aを実施する前に考えておきたいこと
近年、日本において、M&Aは活発化しています。人手不足や競争の激化の対策を行うためにも、M&Aの必要性は高くなっています。
経営状態を維持し、さらなる利益を得るためには、従来のスタイルでは、通用しなくなってきました。経営にも改革が求められているのです。
このような状況下から、パン屋・ベーカリーの経営のステップアップのために、M&Aを検討するオーナーも少なくないのではないでしょうか。
ここでは、パン屋・ベーカリーがM&Aを実施する前に考えておきたいことをご紹介します。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年4月15日
事業承継の事例から読み解く潮流《パン屋・ベーカリー》
2019年4月15日
パン屋・ベーカリーの事業承継でお困りではないですか?
WEBからお問い合わせ
当社はお客様の事を最優先で考える成果報酬型エージェントです。
匿名をご希望されるお客様には、会社情報など一切公開せずにお問い合わせ頂く事が可能です。

お問い合わせ内容

氏名

電話番号

メールアドレス

メールアドレス(確認)

業種

会社名

お問い合わせ内容