2019年7月19日 金曜日

空調設備会社の事業承継でお困りではないですか?

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

平成26年に実施された経済センサス-基礎調査によると、国内の大企業・中小企業の従業員数は、大企業の14,330,000人(29.9%)に対して、中小企業は33,610,000人(70.1%)と、全体のおよそ7割を占めていることが分かります。

 

日本の経済は、中小企業の労働力なくしては成り立たないでしょう。そんな中小企業が抱えているのが、慢性的な後継者・働き手不足問題です。空調設備企業の多くは、「事業承継」で後継者・人材不足問題を打開しようと模索しています。

 

そこで、経営戦略の一つとして頻繁に行われるようになった「M&A」による事業承継のメリットやポイントなど、順を追ってご説明していきます。

 

空調設備会社を事業承継しよう

企業のオーナーが、経営業績の伸び悩みや悪化により事業をたたむことは、それほど珍しいことではありません。会社の経営不振による倒産以外にも、経営者やそのご家族の体調が思わしくなく、家庭の都合により廃業という選択を取らざるを得ない状況に陥ることがあります。

 

会社を廃業するとなると、銀行などからの借り入れがあれば返済に追われ、従業員の契約を切らなくてはなりません。そんな中、近年、経営者に心労かかることなく廃業から逃れる術として「事業承継」が多く活用されるようになりました。

 

資金調達による会社経営の安定化と同時に、後継者・人事不足解消が期待される事業承継とは、どのような仕組みになっているのか?空調設備会社の業務内容と併せてご紹介します。

 

空調設備会社とは

空調設備会社は、冷暖房などの空調設備工事を手掛ける会社です。空調設備工事を行う建物は、一般の住宅や会社、工場などが対象となっています。そして、空調設備会社の工事は、発注者によって「元受け工事」と「下請け工事」の二種類に分けられます。

 

さらに、関連事業として室温湿度を調整する工事、吸排気の工事なども行っています。一度の工事で、より多くの利益を上げられるように、冷暖房の設備工事と同時に周辺設備工事(電気・ガス・吸排気工事)や、工事を終えた後の保守点検を行うなど幅広いサービス提供を行なっています。

 

建設業界の中でも、空調設備会社は需要が低下する恐れはないでしょう。その理由は、都市開発や2020年東京オリンピック開催による建築物の増加です。高層ビルや大型の公共施設を利用するユーザーが心地よいと思えるような空調管理を行う必要があります。

 

不特定多数の人が行き交うような場所では、室内の空気は汚れやすく、室内と室外の温度調節が難しい夏場は、きちんと空調管理を行なわなければなりません。快適な空間を維持し続ける役割を担う空調設備会社は、空調設備のコントロールや日々の点検・整備を任されています。また、新築物件以外にも既存物件の入れ替え工事などがあるため、工事会社が手持無沙汰になることはありません。

 

この需要の高まりは、数値として調査・報告がなされています。中小企業庁が発表した、「平成26年度中小企業実態基本調査報告書」によると、設備工事業は「安全性分析」「収益性分析」「生産性分析」の3つの財務指標を建設業界全体の標準値と比較してみると、どれも高い水準であることが明確に数字として表れています。

 

財政状態の健全性、長期的な支払い能力を表す自己資本比率が、建設業全体が33.5%に対し、設備工事業は37.8%。会社の将来性を計る上で重要なROA(総資本営業利率)が、建設業全体は3.7%、設備工事業は4.3%と、業界の中でも効率的に利益を上げることに成功しています。

 

事業承継とは

事業承継を一言でいうと、会社の事業を後継者に引き継ぐことです。事業とひとくちに言っても「新たな経営者を誰にするのか(経営承継)」、「自主株を誰に引き継ぐか(所有承継)」、「後継者教育」など、短期間で引き継がせることはできません。

 

大手企業の場合、経営者の交代は比較的頻繁に行われており、重役候補者が多く在籍しています。大手企業は、特定の経営者に依存する部分が少なく、経営者の交代により会社運営が横揺れすることはありません。

 

一方の中小企業では、経営者一人が会社運営を司っている「ワンマン経営」が多く見られます。社内業務の多くを請け負っている経営者が、高齢化や体調不良により会社運営が困難になった場合、早急な対応が必要になります。そこで経営者は、会社の業績が悪化したり、自身の体調に不安を感じたら、早期に事業承継に取り組むことが重要です。

 

経営者が、会社の経営に不安を感じて廃業や倒産が頭の中をよぎった時に危惧することは、会社がこれまでに培ってきた「暖簾(のれん)」です。事業承継を始めるタイミングは、これまでお伝えした経営者の高齢化・体調不良や、後継者不足によって伝承されるべき雇用や技術・知識が途絶えてしまう瞬間です。

 

先代から企業の存続と発展を託され、その雇用と技術、暖簾を後世に伝え守っていかなくてはなりません。経営者が事業承継に求めている一番の目的は、暖簾の承継といってもよいでしょう。

 

後継者がいない、そんなときは

会社の経営者が何らかの理由でトップの立場から退くとき、後任を決めなければなりません。しかし、どのようにして後継者を探していけばいいのか、困ってしまうかと思われます。

 

そこで、後継者探しの手法である「事業承継」で、新たな経営者に経営を承継させましょう。

 

親族への事業承継

後継者不足で困った時、経営者の一番身近な存在である親族への事業承継「親族内承継」が真っ先に思い浮かぶでしょう。この承継方法は最も一般的なケースで、相続などによって株式や財産を後継者に移すことができるため、経営と所有の分離を回避することができるメリットがあります。

 

一方で、若い世代のモノの考え方が多様化され、親の会社を引き継ぐ風潮が薄まりつつあります。さらに、後継者候補が多くいた場合に後継者の決定や経営権の集中が難しく、親族間でトラブルに陥りやすいのが注意点です。

 

従業員への事業承継

親族への事業承継が難しい場合、従業員の中から経営者候補として相応しい人物を選びます。長期間勤務している従業員に事業の承継を行う場合、会社の経営方針に従って長年勤務してきた経験から、経営の安定性と一貫性を持って会社を承継してくれることが期待できます。長期間勤務している従業員であれば、経営・業務上の引継ぎ事をスムーズに行なうことが可能です。

 

また、新たな経営者として相応しい立場の従業員が選任されることにより、会社の従業員や取引先

に受け入れられやすいメリットもあります。しかし、後継者教育が十分でない場合、事業承継が上手くいかずに経営業績が悪化してしまう場合があるので、気を付ける必要があります。

 

第三者への事業承継(M&A)

経営者の身近な存在である、親族や社内の従業員への事業承継で後継者が見つからなかった場合、M&Aによる第三者への事業の承継が選択肢の一つとして考えられます。M&Aによる事業承継は、外部の人材や企業へ事業を譲渡する方法です。

 

M&Aは、親族や従業員の中から後継者として適任者がいない場合でも、会社の経営を円滑に回し、経験を積み重ねた実力者へ経営を一任することが可能です。

 

M&Aによる事業承継を選ぶメリット

後継者不足で困った時には、経営者の身近な関係にある親族や従業員への事業承継という方法があることが分かりました。

 

ここからは、外部の人材へ事業の承継を行う、M&Aによる事業承継を選ぶことのメリットをご紹介していきます。

 

廃業コストがかからない

一つ目は、会社の廃業コストがかからなくて済むことです。これまでお伝えした通り、後継者不足や経営悪化が原因で廃業の道を選んだ場合、社内の在庫品の処分費用や税務処理の依頼費用など、最低でも数十万~数百万円かかってしまう場合があります。経営悪化による廃業を選択した会社経営者にとっては、泣きっ面に蜂です。さらに、廃業手続きで専門家に相談する場合、時間や費用が積み重なり、莫大な廃業コストが経営者に襲い掛かります。

 

M&Aの事業承継を利用すれば、相手企業に後継者を任すことができる上、経営業績が極端に悪くなることなく、大手企業とのM&Aの成功によって大きな利益を獲得することができます。

 

従業員の雇用継続

会社の廃業・倒産による資産の損失は大きく、これまで培ってきたノウハウや取引先だけではなく、長年経営を共に支えてきた従業員を失うことになります。社内での関係はもちろんのこと、プライベートでも苦楽を共にしてきた仲間やその家族の今後を考えると、経営者として大きな責任を感じることでしょう。

 

M&Aによる事業承継で、従業員は雇用形態をそのままに、新たな経営者の下で働くことが可能です。事業承継を行う経営者は、従業員に対しての配慮を忘れてはいけません。従業員が知らぬうちに会社の経営者が変わることで、経営陣に対する不信感を抱き、業務に対するモチベーションの低下に繋がりかねません。

 

M&Aで事業承継を行うこと、それを社内に発表するタイミングを見誤らないよう、経営者は従業員の心情を汲み取っていく必要があります。

 

事業を拡大できる

空調設備工事業界は、中核事業で市場内のシェア拡大を目指す企業による、顧客争奪戦が繰り広げられています。特に、資金力が乏しい中小企業にとっては、大手企業の市場独占化により経営業績は低下の一途を辿っています。企業の中核事業で大手企業と一本綱で勝負するには、高いクオリティでサービスを提供していくしか手の打ちようがないでしょう。

 

しかし、中核事業基盤の強化、事業の多角化が成功した場合、新たな顧客販路の開拓や既存事業で市場のシェアを拡大することができます。これを効率的に進められるのが、M&Aの事業承継です。他社との事業承継で資金を調達することができ、新たに事業領域を広げることで経営推移を上げていくことが期待できます。

 

現金が手に入る

M&Aの事業承継により現金を手に入れることができます。事業承継の際に経営者自身が受け取れる現金のことを「創業者利潤」といいますが、このお金で銀行などからの借入金の返済、新たな事業の立ち上げに充てるため、老後の生活資金として使用するケースが多くみられます。

 

また、30代という年齢にも関わらずM&Aによる事業承継を行なう経営者がいます。自分の趣味のため、静養する時間が欲しいなど「アーリーリタイア」を目的として、事業承継で現金を入手する経営者が現れるようになりました。

 

いずれも、投資資本と株価に大きな金額の差が出なければ、創業者利潤として大きな利益を獲得することは難しいでしょう。

 

空調設備会社の事業承継のポイント

M&Aによる事業承継を行うことにより、親族や従業員への事業承継では得ることができない「創業者利潤」の獲得や、従業員の雇用を継続させることができるメリットがあることが分かりました。

 

しかし、事業承継を行なうには、事業承継企業候補に自社企業に価値があることを示さなければマッチングするまでに至りません。他企業に興味を持ってもらうためにも、自社企業の強みを理解した上で事業承継に臨みましょう。

 

ここでは、事業承継候補の企業に興味を持ってもらうためのポイントを解説していきます。

 

同業他社との差別化を図ろう

市場の中には、顧客の獲得成功に導いたサービスや商品で溢れかえっています。これらは他社との競合優位性を保ち、市場内でシェアを拡大するため、企業が独自に打ち出したものです。空調工事業界で他社と差別化を図るためには、自社独自のサービス提供や取り組みをアピールしていくことが必要です。

 

また、中小規模の空調設備会社の多くは、地域に密着して顧客を獲得していることが多いです。そこで、長年の実績と安定した顧客を抱え、地域密着だからこそできる独自のサービス提供を行っていきます。同業他社との差別化を図ることで、自然に大手企業の目を自社に向けることができます。

 

従業員の特徴をアピールしよう

優れた能力を持った従業員がいるか否かによって、相手企業による自社企業の印象が大きく変わります。空調工事を行うためには、「管工事施工管理技士」の資格を保有している必要があります。日本の建設業のうち、空調設備工事や冷暖房設備工事、ダクト工事、ガス配管工事などの管工事において、施工計画の作成から工程・品質・安全管理などを担当することができる国家資格です。

 

この資格を保持している人材が相手企業にいることは、事業承継後会社にとって大きな資産価値となります。さらに、空調設備の中には電気系統の工事が必要になる現場があるため、電気設備の工事ができる「電気工事士」の資格を有していれば、事業承継によって業務の幅が広がり、新たなサービス提供につなげることができます。

 

サービスをワンストップ化しているかを把握しよう

空調設備会社は、設計や施工、点検・修理サービスを請負業者に委託せずに、ワンストップで提供している会社に企業価値があると言えます。空調設備における全ての業務フローを遂行していることで、従業員の技術力、安定したサービス提供に確固たる自信があることが分かります

 

激化する競争環境にさらされている中小の空調設備工会社は、サービスをワンストップ化することで、多用化する取引の注文に対してフレキシブルに対応することができます。加えて、サービス単価を引き下げることも可能となり、既存顧客との安定した取引と新規顧客の獲得が期待できます。

 

サービスのワンストップ化を目指す企業にとっては、事業承継相手が設計から点検・修理サービスを一括して管理していれば、ゼロから始めるよりも労力をかけずにサービスのワンストップ化が実現できます。

 

まとめ

M&Aによる事業承継で、株主や従業員の雇用、取引先など、会社の大事な資産を守ることについて解説しました。

 

空調設備会社のM&Aでは、会社を守る保守体制だけではなく、既存事業の基盤強化や事業の拡大など、より一層の会社の繁栄を目指すことを前提とした事業承継が行われています。

 

M&Aの事業承継を活用する場合、M&Aの専門家などを介することできちんとしたプロセスを踏み、スピーディーかつリスクの少ないM&Aを行うことができるでしょう。

空調設備会社の事業承継でお困りではないですか?
近年、空調設備企業の多くは、「事業承継」で後継者・人材不足問題を打開しようと模索しています。そこで、経営戦略の一つとして頻繁に行われるようになった「M&A」による事業承継のメリットやポイントなど、順を追ってご説明していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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