2018年7月23日 月曜日
積極的な資金調達で国内外への出店を加速
Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)
会計事務所の協力で社員の待遇改善を促進
濃厚豚骨魚介つけ麺のパイオニアとして、つけ麺ファンの圧倒的な支持を得る『めん徳二代目つじ田』。現在、国内外に合わせて18店舗を数える人気店は、さらなる勢いで出店攻勢を続けている。現場でその陣頭指揮を執る創業者の辻田雄大氏は、「つけ麺」の様式を確立した料理人としてはもちろん、飯田橋や御茶ノ水エリアに集中的に出店する「ドミナント戦略」で店を成長させてきた、戦略的な経営者として知られている。
店舗拡大の過程で、会計事務所とパートナーを組み、拡大に比重を置いたことによりおろそかになってしまっていた月次決算・店舗別の損益の管理を強化。関連会社を含む組織再編を行ってグループ損益の管理体制を短期で構築するとともに、従業員の待遇改善にも着手した。さらに、企業としての体幹が強固になったことで、投資ファンドからの資金獲得にも成功。豊富な資金を背景に、よりスピーディな出店計画にシフトチェンジし、国内外への出店を加速させている。
「損益の管理を会計事務所さんに任せたことをきっかけに、現場の人間が店舗に注力できる環境が作れたことが大きいですね。私もアドバイスをもとに戦略を練ることに集中できる。会社の管理体制が整ったことで、目標や課題がより明確になり、社内で共有できるようになりました。また、配偶者手当や子供手当、月8日の休日といった待遇改善で、従業員にとっても長く、安心して働いてもらえる会社になったと思います」。
現在、人手不足が加速している外食産業では、人材の確保は必須の経営戦略となっている。しかも、時給などの金銭的な待遇だけでは良い人材に長く働いてもらうことができない時代となっていることを経営者は理解しておかなければならない。出店を積極的に進めている経営が順調な店舗では、すでに、人材の確保と育成を出店計画を左右する重要な成長ファクターと捉え、対策をとっている。ただ、必要な対策であることが広く認識されても追従する会社が増えないのは、外食産業はもとより、他業種と比べても遜色のない待遇を導入することが、決して容易ではないことの裏返しといえるかもしれない。『めん徳二代目つじ田』では、休日の確保や各種手当の創設で業界最先端の待遇を実現。そこには当然、コストがかかっているし、従業員との信頼とモチベーションをいかに維持していくかが考慮されている。
世界を舞台に勝負する『つじ田』で働く自負
「色々なところでお話させていただいていますが、『つじ田』は、みんなで作ったものをみんなの手で出し、お客様に喜んで頂く。そして、一つの味を通じてお客様との「絆」が生まれた喜びを感じ、その一瞬の感動をみんなの喜びとして、味を守りつつ日々進化させる糧としています。この真摯な味の追求が『つじ田』と従業員との「絆」となって、新しく生まれた味から、また、お客様との「絆」が生まれる。このような日々の積み重ねに従業員が素直に喜びを感じられる会社を目指しています」。
辻田氏の言葉通り、『つじ田』では従業員にまず、接客姿勢を指導する。お客様を大切な人に置き換え、自分で接客を考えることで、与えられた「マニュアル」ではなく、温かく生きた接客が生まれる。店側の独りよがりでない、その温かい「想い」は味への探求にも同様に注がれ、日々進化する原動力となっている。
会社も従業員がプライドと夢を持って働き、自身の会社を自慢できる企業になるべく、努力を怠らない。実は、同業者の間で無謀とまで言われた2011年のアメリカ進出は、従業員へのメッセージでもあった。
「『つじ田』のつけ麺は、世界でも通用するんだ、ということを従業員に示したいという想いが強かった」。
大手でも成功例の少なかった当時、ノウハウのない中でのチャレンジは簡単ではなかったが、『TSUJITA』は瞬く間にロサンゼルスで押しも押されもせぬ人気店に。得意の「ドミナント戦略」で現在はロサンゼルスを中心に6店舗を経営。『つじ田』の「絆」は今や世界を舞台に広がっている。