2019年11月27日 水曜日

【事業譲渡】新しい事業にチャレンジするために譲渡を決断

Written by 松栄 遥 (Haruka Matsue)

成約事例:ミチネイル

『作り手からも買い手からも愛される』をビジョンに、全国のプロネイリストが作成したネイルチップを販売する株式会社ミチ。代表の中崎瞬社長は、オリジナルのネイルチップブランド『ミチネイル』を中心に順調に成長してきたネイルチップ事業を改めて俯瞰し、「このまま独力では思い描いた成長は難しいかもしれない」と感じるようになった。熟考した結果、7年間育てた事業をさらに成長させてくれる会社へ譲渡し、自身は新しい事業にチャレンジするため事業譲渡を決断した。

『自分の力だけではこの事業を伸ばしきれないかもしれない』

ーー 最初に事業を売却をしようと思ったきっかけから決断に至った経緯を教えていただけますか。

中崎 当社は2013年ぐらいからネイルチップ事業を運営してきました。
事業自体は順調で、可能性もあると考えていましたが、利用者は毎年微増で成長になかなかドライブがかからない…。そんな状況の中で、自分の力だけではこの事業を伸ばしきれないかもしれないな、と感じはじめました。

 当社のネイルチップ事業は、ネイリストさんーお客様ー事業者、『三方良し』のビジネスモデルです。このビジネスモデルをもっと大きくしたい、という想いが強くあったので、事業を成長させてくれる他社さんへの事業譲渡を決断しました。

ーー 事業譲渡に先立ち、一番最初に相談した方はどなたですか?

中崎 株主です。
当社の株主は、私の他にVCとCVCの2社。私は普段から株主にいろんな考えを素直に全部話してしまうタイプなので、譲渡をするかしないか決断に揺れていた頃から全部説明していました。それを経ていたので、決断してから改めて相談した時には、株主も「社長が決断したのならそうしよう」とスムーズに話が進んで、すぐに動き始めました。

成約事例:中崎 瞬社長

『長年やってきた事業は自分の子供みたいなもの』

ーー M&Aや事業売却を決断する前と後では、かなりイメージが変わったと思うのですが、実際に経験されてみていかがでしたか?

中崎 M&Aは起業家として、いつか経験するのかな、とは思っていました。しかし、実際の手続きや流れについてはまったく知識がなかったので、やはり不安はありましたね。
長年やってきた会社や事業は自分の子供みたいなもんじゃないですか。それに点数をつけられる、金額がつく、ということには、正直、なかなか慣れなかった部分はありました。最初は買い手の候補となる会社さんと直接交渉をしていましたから、とにかく、M&Aは大変だなぁという印象でした。

スパイラルさんにお願いしてからは、かなりスムーズに進めていただいたので、ひとつひとつの不安を解消していった、というより、手続きが進んでいくうちに、自然と不安が晴れていったという感覚です。しかも、その間にM&Aも決まっていました。こんなに簡単に決まるんだ! と正直、驚きました。

ーー M&A仲介会社の中からなぜ当社を選んでいただいたのでしょうか

中崎 きっかけは、株主からの紹介です。株主が2社とも御社の土橋社長のことを知っていたので、その時点で信頼はさせていただいていました。私はプライベートでアイアンマンレースに出ているのですが、土橋さんがアイアンマンのかなりの熟練者だということもあって、こんな凄い方にこんな初歩的な質問していいのかな、と尻込みしていた部分があったのですが、「なんでもどんどん聞いてください」といっていただいて、些細なことからいろいろ相談していく中で、人間性にも惹かれていって、「この方に任せたい」というか「一緒に仕事がしたい」という気持ちが大きくなっていきました。

ーー 当社のサービスにはご満足いただけましたか?

中崎 スパイラルさんにお願いするまでは、正直、M&A仲介というものの価値を理解できていなかったのですが、実際経験してみると、なるほど、すごく必要な仕事だなぁと感じました。

まず、M&Aの手続きにおいては、相手の会社さんと直接話す機会が対面しかないので、そこをうまく制御していただいたことがすごくありがたかったです。

当社の不安は、事前に噛み砕いて先方に伝えていただいていたと思いますし、スパイラルさんには言いたいことを言うことができました。直接のやりとりでは、お金の事もあって、なかなか率直な意見が言えない場面が多かったので…。
私に合った進め方をしていただいたことにはすごく感謝しています。

成約事例:成約式

『事業の成長のために本当に自分が必要なのか』

ーー 成約式当日です。率直に今はどのようなお気持ちですか?

中崎 まだ実感がわかないですね。来週ぐらいから引き継ぎが始まるので、徐々に実感が湧いてくるのかなと思います。譲渡を決めた時点でこういう日が来るとわかっていたので、寂しさが少しあるぐらいですね。

うちのネイリストさんや社員のみんなは、情熱もってやってくれているので、その情熱やる気をそのまま引き継げればいいなと考えています。

これからは、引き継ぎの力が重要だと思うので、最後までしっかりやり切りたいと思います。

ーー 今後の中崎さんの目標を聞かせていただけますか

中崎 前期の目標に「変化」ということを掲げていたので、事業譲渡という決断ができたという意味では、変化できたのかなと思います。ここ数年、改めて会社の足固めをしたいと考えていたので、これからは、向こう10年20年をしっかり取り組めるような社会的な課題であったり、ビジネスであったりの軸を作りたいと考えています。

ネイル事業をやりながら、新しいビジネスのことを考えていた時は、使う脳みそが半分になってしまうし、切り替えがなかなか大変だったので、今回、譲渡を終えて、新しいビジネスのアイデアを集中して考えられる環境になりました。

ーー 最後に、今、会社の譲渡や事業の売却を考えている方へメッセージをお願できますか。

中崎 事業譲渡の理由は様々で、事業譲渡という言葉に瞬間的にネガティブなイメージを持ってしまう人もたくさんいると思うんですけど、自身の事業にしっかり向き合って「事業の成長のために本当に自分が必要か」を見極めること、事業譲渡も選択肢に入れながら経営をしていくことは、ある意味、0ベースで事業を見直すきっかけになると思うんです。実際に売れる売れないは別にして、そういう視点を持ちながら、経営を進めていくのは大事だな、というのは、今回のM&Aを通じて学びました。

そして、経営者が描く戦略への理解はもちろん、経営者個人の気持ちも理解してくれるパートナーを見つけることが、M&A戦略を視野に入れた経営をスムーズに進めるポイントだと思います。

DATA

運営会社 株式会社ミチ
主要業態 ネイルチップ事業
M&Aの目的 事業拡大
M&A手法 事業譲渡
譲渡先 丸井織物株式会社
譲渡希望価格 非公表
取引総額 非公表

 

成約事例:

プロフィール

中崎 瞬 ( Shun Nakasaki )

2009年アクセンチュアに就職し、コンサルタントとしてBtoB事業やBtoCサービスの立ち上げから運用に携わる。アクセンチュア退社後、2011年株式会社フーモアを設立し代表に就任。BtoBのコンサルタントやシステム開発を中心に事業を展開したが、BtoC事業がやりたくなり、副代表に会社を譲渡。2012年株式会社ミチを設立する。「ネイルチップなら世界一になれる」という想いからネイルチップブランドを立ち上げ、2013年1月から海外向け、2013年8月から国内向けにネイルチップをECと実店舗で販売し人気を集める。2019年にネイルチップ事業を丸井織物株式会社へ譲渡。

 

コンサルタントの目
事業譲渡という言葉には、まだまだネガティブなイメージがあるかもしれません。もちろん、意に反した売買もあると思いますが、事業譲渡を含むM&Aは、経営者さんのポジティブな経営判断として定着し、M&A市場は業種を問わず活況を見せています。日常的に会社や事業の売買が行われているのです。

とはいえ、市況におもねってビジョンなしに譲渡の判断をするのでは、あまり意味がありません。
今回、お話をお伺いした中崎社長もおっしゃっているように、経営者さんにとって、自身で育てた会社や事業は子供のようなものです。その大切な子供を託すのですから、事業価値を正当に評価してくれることはもちろん、事業に真摯に向き合ってるれる信頼できる相手なのかを見極めることが大事なポイントになります。

事業譲渡において、経営者さんが譲渡先候補の会社と直接交渉した、というお話はよく伺うのですが、交渉がうまくいったという話はあまり耳にしません。実は中崎社長も当社にご相談いただく前に、社長ご本人が買い手候補先企業さんと直接交渉をしておられました。当社に来られた際に真っ先におっしゃったのが「相手と直接交渉はしたくない」ということでした。
売り手と買い手、当事者が顔を突き合わせて利害を主張し合いながら合意に向かうのはなかなか厳しい道のりなのです。

当社は、お客様はもちろん、契約する相手のメリットも考えて、企業価値・事業価値を最大に評価し合える相手を探します。こう書くと、当社の事情でマッチングしているように感じられるかもしれませんが、企業や事業の評価を詳細に行うことで、今まで社長自身も気付かなかった、事業の価値を見出し、その価値を最大評価してくれる相手を探すことで、結果的にお客様のメリットが大きくなるのです。

今回のケースも当社で『ミチネイル』の魅力あるビジネスモデルを再評価することにより、社長の事前の自己評価を上回る評価をしていただけた会社さんと約2か月半というスピードで成約となりました。
Writer
松栄 遥 (Haruka Matsue)
横浜国立大学工学部卒業後、2012年に株式会社キーエンスに入社し、工場内の生産ラインで使用する画像処理センサーのコンサルティング営業に従事。ニーズを精査した「付加価値のある提案」を実践し、常に国内トップクラスの成績を残す(受賞歴多数)。
2015年、バンタンデザイン研究所にてクリエイティブを修学の後、2016年に株式会社日本M&Aセンターに転職。役員室所属として、数多くのディールを成約に導き、年間新人賞を受賞する。その後も第一線で活躍し、様々な業種にてM&Aの実績を残す。2019年、日本M&Aセンターの現場で培った知識と経験を武器に、「企業価値を高めて売却を狙う“スケール型M&A”」を実現させるスパイラルコンサルティングを立ち上げ。
また、同年、シニア層が抱える“事業承継問題“を解決すべく、「事業承継型M&A」に特化した株式会社M&Aコンサルティングを設立し、代表取締役に就任。
成約事例:丸井織物株式会社
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