2018年12月13日 木曜日

【M&A用語】In-inとは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

現在では、少子高齢化、人口減少、労働年齢人口の不足などで様々な問題を抱えている企業が多くなっているのではないでしょうか?

「経営側が高齢なため、後継者不足に悩み会社を経営することが難しくなった」、「IT化が急速に進み、他社の技術に引け目を感じていると思うことがある」等、企業によって様々な問題が浮上していることと思います。

そんな企業の課題の解決策として、M&A「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」を検討してみてはいかがでしょうか。

 

本記事では、M&Aの中でもIn-inと呼ばれるタイプのM&Aを紹介します。In-inでのM&Aとは国内企業によって国内企業が合併、買収を行うことをいいます。In-inのM&Aについて、そのメリットやデメリット、市場動向、伸びると予測される業界などをみていきましょう。

 

In-inとは

In-inとは国内企業(in)によって国内企業(in)が合併や買収を行うことを言います。

国内企業が海外企業を合併や買収するM&AはIn-out、海外企業が日本企業を合併、買収する場合はOut-inといいます。In-inは同じ国の企業同士によるM&Aで「In-in型M&A」とも言われる事があります。

M&Aの成功件数は2006年をピークに落ち込んでいましたが、2010年のリーマンショック以降再び増加傾向にあります。また、非上場会社同士、あるいは個人を含めて行うようなM&Aは公表する義務を持たないため、In-inでのM&A件数も相当数存在し、一般に約1万件は公表されずに国内でIn-inでM&Aが行われています。

 

近年のIn-inによるM&Aの例はキヤノン社による東芝メディカルシステムズ社の買収や、富士フィルム社による和光純薬工業社の買収などがあります。

 

M&Aが増加傾向にある原因としては後継者問題が挙げられます。戦後の日本高度成長期に起業した経営者たちが後継者を探すものの、少子化の影響も受けて、なかなか見つからないことが良くあります。後継者がいない経営者にとって上場するか廃業するか、M&Aにより事業継承を行うかの3つの選択肢に絞られます。

廃業を選択すると従業員は失業という形になる為、経営者として廃業は避けたいと考えると思います。上場になると厳しい基準を超えなければならず、希望したからといって簡単に行うことは難しいでしょう。そうなると、残った方法はM&Aによる事業継承により後継者問題を解決する方法になります。

ではどのような企業がこのIn-inのM&Aを行うのでしょうか?

 

行う企業は様々で大手企業から中小企業までが、In-inの方法でM&Aを実施しています。特に近年では大手企業ではなく、中小企業やスモールビジネスのニーズが中心となってIn-inの手法で件数が増加しています。

 

In-inのメリットとは

ではIn-inのM&Aを行うメリットはどこにあるのでしょうか。メリットと、そのメリットを享受している業界について詳しく解説していきます。

In-inのメリットとしては、売買する企業が国内企業のため、相手企業の顔が良く見えることが挙げられます。相手企業の顔が良く見えることから、一番実行しやすいM&Aといえるでしょう。法律的な部分や税金面でもよりシンプルに合併を行うことができます。

売却側と買収側でどちらもそのM&Aから最大限にメリットを受けることができます。確実にM&Aを成功させるには、M&Aアドバイザーなどの専門家のサポートを依頼することも1つの方法です。

 

近年では中小企業でIn-inのM&Aが増加傾向

また近年は、中小企業においてIn-inのM&Aが増加傾向にあります。背景には中小企業の経営者の高齢化とそれに伴う事業継承問題が深刻なことがあります。

大型企業の統合は落ち着いてきている傾向にありますが、中小企業における事業継承に対する課題は残っています。将来の展望としても、中小企業の事業継承に向けたM&Aは増加が考えられています。

 

国内M&Aの問題と今後の展開について

国内のM&Aのの問題は主に4つあります。

 

  • 経営者の高齢化
  • コスト削減
  • 時間短縮
  • 人材不足

「経営者の高齢化」という点に関しては中小企業の経営者の引退年齢は平均で約70歳といわれ、社長の平均年齢は60歳を超えていると言われています。

また後継者育成には5~10年も必要と言われているため、自社で後継者を育成するには時間もかかり極めて難しいと言えます。また、流行の早い現代では後継者を育成している際にビジネスの環境が変化することもあるため、企業価値が下がってしまう恐れもあります。

「コスト削減」という点に関しては、事業拡大の手段としてM&Aを実行する場合に得られるメリットです。商売としての習慣や文化等様々な面で違いが存在している中で新規のマーケットに参入するには大きなコストと時間がかかります。コスト削減の手段としてもM&Aを行っています。

 

「時間短縮」では先ほどのコスト削減の部分と同様にM&Aは役に立ちます。文化面での違いが出る新規地域での信頼を獲得するためには長い時間を要します。また、変化の多い現代では将来の展望として成長していく新規事業を最初から育てている間に時代遅れになる可能性も考えることが出来ます。

「人材不足」ではとくにはIT企業で顕著ですが、成長の傾向にある事業を拡大しようとしても人材が不足している場合があります。そのような場合、競合の他社から人材を獲得することで必要なスキルを保有している優秀な人材を確保できる可能性があります。そのため、即戦力の人材を確保するという点で、M&Aは非常に有効な手段と言えます。

 

この4つの問題点を考えても、国内のM&Aは今後ますます増加するのではないかと考えられています。

 

国内でM&Aが伸びそうな業界とは?

M&Aを実施するにあたって気になるのは、どの業界が頻繁にM&Aを行うのかという事だと思います。ここではIn-inのM&Aが増加しそうな業界を一部例として紹介します。

 

▼建設業界

日本では2020年に東京オリンピックが控えています。訪日外国人観光客が増えてきており、政府も訪日客の受け入れ体制の構築を推し進めています。そのためホテルや観光施設の建設需要が高まっており、建設業界は少子化も相まって人手不足です。

しかしオリンピックが終われば現在の建設需要も落ち着き、今度は建設業界内の競争が厳しくなっていくことが予想されます。

もちろんオリンピックの後にも大きなイベントなどがあれば、その流れも違ってくるでしょうが、いずれにしろ大きな需要発生の際に働き手が増えれば、その需要がなくなったときに仕事を十分獲得できずに生き残れない企業も出てくるでしょう。

その際にIn-inのM&Aによって業界再編が起こっても不思議ではありません。

 

▼人材派遣会社

現在ではIT企業を中心に人材不足が問題になっている為、人材派遣会社にとっては事業拡大のチャンスといえるのです。事業拡大のためにM&Aを利用するのです。

業界のビジネスのモデルが簡単な為、事業を展開する地域やその土地の顧客、派遣人員の拡大を通じて、売り上げの増加を見込むことが出来ます。

 

▼調剤薬局業界

少子高齢化に伴い、医療全般のニーズが高まる中、薬局での需要や、調剤薬局も増加傾向にあります。今後も少子高齢化が予想されていることからますますニーズが高まることが予想されています。

また、業務提携なども非常に多く大手企業がデザイナーと商品開発や販売を目的として提携を行う場合もあり、今後も消費者のニーズを捉え、事業を拡大していくには提携や連携を含めたM&Aが今後は拡大する事が見込まれています。

 

In-inのデメリットとは

In-inのメリットは数多くありましたが、デメリットはどこにあるのかをここでは探っていこうと思います。

 

デメリットとしては、国内で行われているM&Aのため国外でM&Aを行うよりも相手の顔が良く見えやすいが故の問題です。

同じ国の企業同士、「日本企業同士、この点は認識が共通していて当たり前だろう」「日本ではこの点はこうだろう」という意識が少なからずあります。「言わずとも伝わる」「日本企業なら普通はこうだろう」という意識はM&Aを行う際には捨てておきましょう。相手企業の文化に合わせ、取引先の関係性などをより慎重に把握し対応をする必要があります。こういった原因でM&Aの成立後失敗するというケースも多くあります。

海外で行うM&Aよりも意外と相手会社への対応や細かな配慮が必要になるのがIn-inでの難しい点です。

 

In-inに関連のある用語

M&A

M&Aとは「Mergers(合併)and Acquisitions(買収)」の事を言います。2社以上の企業による合併や吸収、資本による企業買収を指す経済用語です。

広い意味では業務提携もM&Aに含まれます。

M&Aは企業の既存事業の強化やほかの市場への新規参入、不採算事業の整理などの目的で活用されていますが、近年、後継者問題による中小企業の事業継承にも活用されています。

また、M&Aときくと日本のIT企業などでは新興企業や投資ファンドによる「乗っ取り」や「敵対的買収」、企業の不祥事による事業再生などのイメージを持たれている方が多く存在していますが現在では株式の現金化、事業継承、従業員の雇用維持などの企業のメリットも多く、買手、売手企業ともにWin-Winの関係を構築することができます。

 

簡単なM&Aの流れとしては、

  1. 情報収集や検討、準備を行う
  2. 具体的な調査や検討
  3. 基本合意契約
  4. 最終契約や譲渡の実施
  5. 統合作業

の5つに分けることが出来ます。

また、譲受企業のメリットとしては新規事業の参入や既存事業の強化、事業拡大に伴うコスト削減等があり、デメリットでは優秀な人材の流失、融合に時間が掛かるなどもあります。

譲渡企業のメリットは事業継承問題の解決や企業基盤の強化、従業員の雇用が守られるというものがあり、デメリットとしては買い手が見つかるか分からない、成約後の従業員の組織問題などが挙げられています。

In-out

In-outとは国内企業(in)によって外国企業(out)の合併や買収が行われることを言います。「In-out型M&A」とも言われています。

少子高齢化の問題や成熟社会の日本国内の需要が伸び悩む中、企業のグローバル化は国家戦略の優先課題として日本政府も海外進出を推奨しています。現在では自社や国内にない技術、成長、市場を得るために、M&Aを行っている企業が多く存在します。

 

まとめ

今回はM&AのIn-inについて詳しくご紹介しました。

会社の存続や経営危機、会社の発展など、どの企業でも考えられる問題ではないでしょうか?それらの問題の解決策の一つがこのIn-in型M&Aです。国内企業同士で、安定した利益を上げ、また人材確保や企業の発展、新規事業の進出など、In-inならではのメリットがあります。今後の会社の発展についてお悩みの方、後継者問題が出ている企業は、ぜひIn-in型M&Aも1つの手段としてご検討いただければと思います。

【M&A用語】In-inとは
本記事では、M&Aの中でもIn-inと呼ばれるタイプのM&Aを紹介します。In-inでのM&Aとは国内企業によって国内企業が合併、買収を行うことをいいます。In-inのM&Aについて、そのメリットやデメリット、市場動向、伸びると予測される業界などをみていきましょう。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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