2018年12月2日 日曜日

【M&A用語】事業承継とは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

中小企業では、社長の築き上げてきた経営手腕や人間関係によって会社を大きくしてきたという場合も多いでしょう。

その場合、誰を後継者にするかという問題は非常に重要な問題になってきます。

 

現代は少子高齢化の時代で、経営者が高齢になりながらも後継者を見つけることができないという問題を抱えているケースが続出しています。

同業他社よりも業績を上げていたとしても、後継者が不在のために廃業を余儀なくされるという状況があります。

これでは維持していた技術・ノウハウを含め雇用まで廃れていってしまいます。

 

そこで、近年注目を浴びているのはM&Aです。

後継者を親族の中で見つけることができず、外部の会社に譲渡するM&Aは、以前であれば身売りのようなマイナスのイメージがありました。

しかし現代において、かなりそのイメージは払拭されてきており合理的だと判断されるようになってきました。

 

今回は、そのM&Aを含む事業承継についての説明とメリット・デメリットをお伝えしていきます。

 

事業承継とは

事業承継とは、会社などの事業全体を法人個人含めた他者に引き継がせることを意味しています。

「事業」そのものを引き継がせ、その中には不動産や現金・現預金など法人すべての資産が含まれます。

事業承継は誰に引き継ぐかで大きく分けて3つの方法があります。

 

▼親族に承継する

親族承継は、親族である息子や娘などに承継する方法です。

実子に継がせたくても子供がいない場合や、いても他の仕事についていたりして、親の事業を継ぐ気がない場合などもあります。

その場合は孫や子供の配偶者、甥や姪なども親族承継に該当します。

 

▼親族外の従業員に継承する

従業員承継とは親族以外の人のうち、社内で働いている従業員や役員に承継することです。自分の親族で後継者がいない場合など、社内で実際に業務に関わっている経験のある人の中から、後継者を選んで承継することが該当します。

 

▼M&Aで承継する

M&Aは社外の企業に承継することです。

仲介会社や自分で相手先を見つけてくることになります。

事業承継において一昔前は親族承継が主でしたが、近年ではM&Aを含む親族外承継に移行しつつあります。

 

事業承継のメリット、デメリットは

事業承継をする上でのメリットを3タイプごとに説明していきます。

 

▼親族承継のメリット

親族承継のメリットは、なんといってもオーナー家として地位を維持することができる点です。

親族に跡継ぎの候補が見つかっており、すでに会社に入社、そして重要な役職で実力を発揮していれば、3タイプの中で一番取引先や社内からも心情的に受け入れられやすいです。

親族に対して承継後もオーナー経営者は、引き続き経営に関わり影響力をもつことができます。

創業経営者の血筋の経営者のほうが、意思決定も迅速で、経営に対しても一貫性があり企業として魅力がでるというメリットもあります。

 

▼従業員(親族外)承継のメリット

長年、オーナー社長のもとで貢献しており、社内のことを熟知しているのならば社内後継者として従業員に承継する場合もあります。

この場合も業務は円滑に承継することができ、オーナー経営者の理念や考え方も理解している経営者が引き継ぐことになるので、経営に対しての一貫性もある程度保たれるという安定性を発揮します。

 

▼M&Aのメリット

M&Aのメリットは、身近に承継者がいない場合でも事業を存続できるという点です。

その他にも、親族内承継や親族外承継に比べて合意することや、意思の疎通を図る時間が短いため、比較的短時間で会社を整理することができます。

また買収先のブランド力やノウハウなどを使うことで、事業の拡大が期待されます。

その上、経済的な面で言うと会社売却時の利益を、現経営者が取得できる方法でもあります。

 

一方、事業承継にも課題はあります。

これもタイプ別にみていきます。

 

▼親族承継・従業員(親族)承継のデメリット

親族承継や従業員承継を選ぶ場合、現社長が役員や従業員の時の会社への貢献度と、社長になった場合の会社の貢献度と違う場合があるということを考慮する必要があります。

具体的には社内承継によるマイナスの影響になる要素をあらかじめ排除するように努力する必要があります。

最初にやることは、後継者の人望や資質の見極めです。

どうしても常日頃から見ている人である場合なので、オーナー経営者としては欠点を見落としがちです。

会社はさまざまな人が集まって働いています。

人材の配置次第で成果が変わってしまうこともあります。

オーナー経営者としては良い人材だと思っていたとしても、他の従業員から見ると良くないと思っている人もいる可能性もあり、最悪の場合、重要なメンバーの退職という可能性もあります。

 

さらに事業承継の場合、会社の債務は今まではオーナー社長が個人で保証していたものであり、後継社長はその保証も引き継ぐことになります。

後継社長がその点を深く認識できるように、オーナー社長は前もって事業に関する現状を後継社長に説明をしておく必要があります。

また従業員承継の場合、従業員が個人補償の部分の引継ぎを否定する、または金融機関側が従業員承継に難色を示し、オーナー社長の個人補償の一部やもしくは全部を解除しないという事態も起こることがあります。

それに加えて、オーナー社長に対して譲渡してももらう資金の調達も後継社長としてはハードルが高いといえます。

考えらえる方法としては、

 

  • 後継者が個人名で金融機関に対して借り入れを行う
  • 会社が譲渡資金を後継者へ貸し出しを行い、その後役員報酬の一部を原資にオーナー社長に対して長期返済していく

 

という方法があります。

とはいえ、個人で借り入れをする際の信用力の問題や、税引き後の現金で返済するという非効率性から考えると、事業承継をする会社が優良であればあるほど、現実的には難しいといえます。

「譲渡資金が調達できないのであれば、後継者に対して安い金額に設定すればいい」と考えるかもしれませんが、税法上公正な評価額以下の株価での譲渡の場合、贈与とみなされ多額の税金を後日払う必要が出てくる可能性があるので注意が必要です。

 

▼M&Aのデメリット

M&Aのデメリットとしては次の3つが挙げられます。

 

Ⅰ.買い手をみつけることができない

たくさんある企業の中から、自社を買おうと考える企業を見つけ出すことは至難の業です。

M&A仲介会社を通しても、買い手企業が必ず見つかるとは限りません。

まずはこのリスクを考慮する必要があります。

したがって、そのリスクを避けるためにもできるだけ自社の企業価値を上げるための対策を行っておく必要があります。

 

具体的には、

 

  • 不良在庫の処分
  • 自社の強みであるノウハウや独自技術を伸ばしておく
  • 設備投資をしておく
  • 借入金の削減
  • 訴訟などのトラブルを解消しておく
  • 未払い給与などあれば支払いを済ませておく

 

などがあたります。

以上のようなことを行うことで、自社の価値をあげて売却先に魅力のある案件だと思ってもらえるようにしておきます。

それに加えて、M&A仲介会社に探してもらうだけではなく、自力で探すことも選択肢の中にいれておきます。

中には現経営者の身近なところで見つかったパターンもあります。

会社を売却する相手候補はあればあるほどいいので、根気強く行っていくことが必要です。

 

Ⅱ.希望条件で売却することができず、買い叩かれてしまう

仮に売却候補が決まっても安泰ではありません。

希望の価格で取引できない可能性があるからです。

会社を売却する際提示する金額は、将来まで考えてみた場合どれだけの収益を生み出すことができるかという点での評価によって決定されます。

今収益を上げているからといって、将来にわたって利益を出すことができないと評価される場合もあります。

そうなってしまうと、著しく低い金額で設定されてしまいます。

そうならないためにも前述した企業価値を上げるための施策を注意深く行っておく必要があります。

 

Ⅲ.顧客や取引先からよく思われない

M&Aを実施したことが、顧客や取引先が知った場合よく思われないかもしれないというデメリットも存在します。

M&Aは以前よりイメージが良くなったとはいえ、「身売り」という先入観で嫌悪感を示す人もいます。

また経営母体が変わることで、顧客に対しての商品・サービスの内容や金額が変わることや、取引先に対して提示する新しい条件が今まででよりも厳しくなった場合、顧客流出及び取引契約打ち切りという事態もありえます。

 

事業承継のやり方

事業承継を行うために、最初にやることは前述であげている親族内承継やM&Aなどのカタチを決定することではありません。

どの方法が自社にとって最適かということを経営者自身が今までの業績や資産などを考慮して十分に検討する必要があります。

そして、それにそった事業承継計画を策定していきます。

 

▼資産、経営状況の把握及び、問題点の明確化

まず、自社の資産状況や経営状況をできるだけ把握することに務め、検証して問題点を明確にしておく必要があります。

そのうえで、改善方法を検討していきます。

これは外部に引き継ぐにしろ、内部の後継者に引き継ぐにしろ現状の問題点を洗い出し、解決しておかないと、承継後に問題が顕在化する可能性もあり必ずやっておく必要があります。

具体的に現状を把握して検証しておかなければならないことは以下のようなものです。

 

  • 決算処理
  • 自社株式の数とその評価
  • 経営者個人と会社間で、個人間所有財産の事業利用の有無などの貸借関係の明確化
  • 自社製品やサービスの売上動向、主力・補助製品の分析
  • 技術やノウハウなどの自社の知的財産の棚卸

 

▼経営・資産状況の問題点対策

前ステップであげられた問題点の改善をおこないます。

実施すべき主な取り組みは以下のようなものです。

 

  • 新規採用や人材育成などの人的資源強化
  • 主力商品・サービスの拡充、短期化、高度化の実施
  • 債務整理の実施(状況により、会社更生手続きや民事再生も考慮します)
  • 中小企業経営強化法による「経営力向上計画」の策定および実行
  • 役職員の権限の明確化

 

▼事業承継方法の確定

今までの内容を踏まえて、事業承継方法を決定します。

 

▼事業承継計画の策定

事業承継方法を決定したのち、事業承継計画を策定します。内容として、

 

  • 中長期の経営目標
  • 企業理念
  • 後継者の承継時期および承継にかかる基本方針

 

などを盛り込みます。

期間としては5年から10年になります。

なお、M&Aの場合はこの事業承継計画を策定することなく、M&Aのマッチングに向けた準備を行うことになります。

 

▼M&Aマッチングの実行

M&Aを実際行おうとした場合、売却先を探すことになります。

マッチング実行にあたって、自分で見つけてくるということもありますが、仲介機関などを使うのが一般的です。

 

▼事業承継の実行

親族内承継、親族外承継であれば事業承継計画に沿って代表者交代に向けた準備を行います。

M&Aであれば、マッチングした買手企業を決定して最終契約に向けて進んでいきます。

このステージまでいくと複雑になってきますので専門家などのアドバイスが必要になってきます。

 

事業承継に関連のある用語

M&A

企業の合併買収を意味する。

ある会社が他の会社を購入、または、二つ以上の会社を一つにまとめること。

広義には企業の合併、買収だけでなく提携まで含める場合もある

 

事業譲渡

会社の事業を第三者に対して譲渡(売却)すること。

事業譲渡の対象となる事業は、一定の目的のために組織化された有形、無形の財産、債務、人材、事業組織、ノウハウ、ブランド、取引先などの関係を含むあらゆる財産が該当する。

 

2012年問題

2012年問題とは、団塊世代が企業の引退年齢である65歳を迎え始める一方、後継者が不在のため事業承継問題が深刻化し始める問題のこと。

本来であれば2007年にこの問題が起きるとみられていたが、再就職期間があり5年伸びた格好になった。

経営者も比較的元気にやってこられたが、体力的にいよいよ待ったなしという状況になっている。

 

まとめ

経営者の高齢化が進んでいる現代の中小企業では、事業承継をすすめることが必要です。

事業承継の対策をしないと、最悪廃業に追い込まれます。

事業承継は時間がかかるため早めに準備をする必要があります。

最近では、親族外承継やM&Aによる承継が増えてきました。

特にM&Aは、社外から広く希望者を集めることができ、現経営者からみても税制面でも有利に働くことが多いため、候補に入れておくといいでしょう。

【M&A用語】事業承継とは
中小企業では、社長の築き上げてきた経営手腕や人間関係によって会社を大きくしてきたという場合も多いでしょう。
その場合、誰を後継者にするかという問題は非常に重要な問題になってきます。
現代は少子高齢化の時代で、経営者が高齢になりながらも後継者を見つけることができないという問題を抱えているケースが続出しています。
同業他社よりも業績を上げていたとしても、後継者が不在のために廃業を余儀なくされるという状況があります。
これでは維持していた技術・ノウハウを含め雇用まで廃れていってしまいます。
そこで、近年注目を浴びているのはM&Aです。
後継者を親族の中で見つけることができず、外部の会社に譲渡するM&Aは、以前であれば身売りのようなマイナスのイメージがありました。
しかし現代において、かなりそのイメージは払拭されてきており合理的だと判断されるようになってきました。
今回は、そのM&Aを含む事業承継についての説明とメリット・デメリットをお伝えしていきます
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2018年12月2日
【M&A用語】事業譲渡とは
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