2018年12月3日 月曜日

【M&A用語】事業売却とは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

事業売却の説明をする前にご説明したいのが、意外に正しく理解されていない「倒産」と「廃業」の違いです。

「倒産」は、金融機関などの借入金の返済が困難になり、仕入れ先への支払いが困窮することによる事業資金がショートすることによるものです。

この反面、「廃業」は、まだ経営活動はできるのだけど、後継者が不在などの問題があり、事業は継続可能なのに、後継ぎがいないため事業をその代で自主的にたたむことです。

倒産は、経営者の自主性とは違うところで発生する反面、廃業は、経営者が自主的に行うことです。全く違うことだとお分かりいただけますよね。

平成28年度に発表された「中小企業白書」によると、3万件の企業で休廃業があり、

約8000件の企業が倒産しているのです。

注目すべきは、休業、廃業する企業が倒産の約3倍以上あること、そしてその企業の半数は、黒字企業であるという点なのです。

優良な企業が、後継者が見つからないまま廃業を決断しないといけない状況になっています。

これは、日本経済においてかなりの損失ではないでしょうか。

今回は、事業売却を通して、活発な経済活動が行える可能性を検証していきます。

 

事業売却とは

中小企業庁の見解では、「経営者が引退後も事業の継続を考えているが、後継者が確保できない企業にとっては、事業を売却することも事業継承の方法として考えられる」となります。

要するに、自分の事業を残すために、第三者にその事業を売却して、買い取った者がその事業を継続していくということです。

事業売却についてより一層理解を深めていただくために、事業売却に関しての、売り手企業と買い手側企業の意識調査をご紹介します。

中小企業庁が野村総合研究所に委託して作成した資料ですが、かなり興味深い内容となります。

※中小企業庁委託:「中小企業への事業継承に関するアンケート結果」2012年野村総研作成

【売り手側】《後継者有無別の事業売却への関心度》単位:%   

 

後継者がいる企業

後継者がいない企業

大いに関心あり

2.7

5.8

関心あり

13.9

23.9

あまり関心なし

19.7

19.9

関心なし

63.6

50.4

後継者がいない企業では、30%近い企業で、関心があります。

そしてこの調査は、2012年なので、ここからはかなり数値は上がっていると考えられます。

この2012年時点では、事業を売却して残すことを認識している経営者は少なかったと思われます。

しかし、その中で30%の人は関心を持っています。

現在では、この1.5倍近い企業が関心を寄せているとの調査結果もあります。

ということは、半数近くの後継者不在に悩む企業が、「うちの会社売ってもいいかも」または、「買ってくれる人がいるなら考えてもいいかな」とおもっているわけです。

次に、買い手側の意識調査をみてみましょう。

 

【買い手側】《純資産規模別の事業買収への関心度》  単位:%

 

5千万円以下

5千万~3億円

3億円超

大いに関心あり

4.0

7.1

9.0

関心あり

14.3

21.1

24.1

あまり関心なし

20.3

18.6

19.9

関心なし

61.4

53.2

47.0

この調査結果を見てわかることですが、純資産が多い企業ほど関心が高いことです。

3億円超規模の企業では、関心がかなり高くなっています。

優良な企業を新たな事業として買収したいと考えていることがわかります。

次にご紹介するのは、この企業売却を行う上で、売り手側が障害だと感じている事項です。

 

《事業規模別の企業売却を行う場合の障害(複数回答)》 単位:%

 

小規模事業者

中規模企業

買い手企業を見つけることが難しい

37.5

35.4

適正な売却価格の算定が難しい

25.8

29.4

役員・従業員から理解を得にくい

14.1

30.8

手法・手続面の知識が不足している

21.7

22.6

取引先との関係を維持しにくい

19.0

20.7

情報漏えいや信用力低下等が懸念される

9.4

14.1

金融機関との関係を維持しにくい

10.7

12.6

自社の株主から理解を得にくい

7.3

15.1

相談先がない

8.9

8.4

仲介会社に支払う手数料が高い

4.8

7.1

特に障害はない

28.1

19.4

トップに来るのは、自分の会社を買ってくれる企業を見つけることが難しいとなっています。

買い手の企業を見つけるというのは、今までだと取引先、知り合いなどからの「紹介」が多かったのです。

誰かが買ってくれるのを待つしかないという考えが主流だったのです。

自分が今まで育ててきた会社を、見ず知らずの人に売るのは正直怖いですよね。

ちゃんと事業をつづけてくれるだろうか、既存の取引先、従業員に迷惑がかからないだろうかと心配事がでてきます。

自分の会社を長年みてきてくれた知り合いに売るのが一番いいかもしれないと思うのも仕方ありません。

しかし、そのお知り合いの企業が、あなたという人はある程度わかっていても、あなたの事業を深く理解しているとは限りません。

これではいつまでたっても、自分の企業を正当に評価して買い取ってくれる企業を見つけることは難しくなってきます。

この反面、専門の仲介会社に支払う手数料が高いと思っている人は少ないのも注目すべき項目です。

業界に詳しい仲介会社に、買い手を探してもらうことは、案外とお得なことだと認識している売り手企業が多いことが窺えます。

 

事業売却のメリットとは

まず大きなメリットを挙げるなら「事業を売却した対価(現金)を得られる」ということです。

ココが事業売却を考えている方には一番大事なメリットではないでしょうか。

廃業と売却が違う点は、会社を売却する場合、帳簿上の資産価値だけでなく、これから事業が将来にわたり受け取るであろう利益も売却金額に上乗せして計上されます。

この計上される金額を「のれん」と言います。

廃業する場合には、この「のれん」は計上されません。

固定資産(土地や建物)や、器具設備、車両などを査定した金額のみです。

器具設備、車両の売却価格は、買ったときほどの金額は入ってきません。

場合によっては、処分費用が必要になってきます。

そして不動産などの資産を売却した場合には、法人税も課税されます。

廃業による会社を解散して個人が受け取る配当所得に関しても、金額によっては10~50%の税金がまたかかってしまいます。廃業はただではできずに、新たな費用が発生してしまうんですね。

売却金額を受け取る以外のメリットを挙げると、

 

  • 従業員の雇用を継続することができる
  • 顧客、仕入れ先との関係も継続できる
  • 技術やノウハウを次世代に引き継げる
  • 個人保証を解除することができる

 

これだけの多くのメリットを得ることができます。

この4つのメリットも順を追ってみていきましょう。

 

《従業員の雇用を継続することができる》

なによりも大きなメリットと言ってよい項目です。

従業員とその家族の生活を安定させることができます。

40代後半以上の社員にとって、再就職は難しい問題です。しかし事業を売却することで雇用関係は引き続き継続されます。

会社を売却して、買収されると従業員の大幅なリストラが行われるのでは?と心配されるかもしれませんが、中小企業を買収する場合は、買い取った企業を安定して経営するために、従来雇用されていたベテラン従業員は必要なのです。

とても大切な企業の資産といえます。

買い手との売却時の契約締結の際、従業員の雇用継続を条件に入れることもできますので、会社を買い取られたといっても、従業員は一定期間において雇用継続されます。

 

《顧客、仕入れ先との関係も継続できる》

あなたの会社の製品を気に入って購入してくれていたお客様や、お店のかよってくれていた方がいらっしゃいますよね。

お店、会社をたたんでしまうと、また新しいお店を探さないといけません。

そうそう気に入った商品、サービスが見つかるかどうかわかりません。

その反面、あなたの会社に自社の商品を売っている業者の方は、あなたの会社が廃業してたたんでしまったりしたら、また新しい取引先をさがさないといけません。

もしかしたら取引先も廃業しないといけなくなり、廃業の連鎖が始まる可能性もあります。

地域の経済活動を継続させるためにも自分の会社の将来を考えて、売却することも考えておく必要があります。

 

《技術やノウハウを次世代に引き継げる》

技術力の高い製造業が、廃業するというニュースをみかけることがあります。

売却して、第三者が事業を引き継げば有益な技術もそのまま継承できるのにもったいないと感じてしまいます。

この技術力を次世代へとつないでいけるというのは、事業売却の最大のメリットと言えるのではないでしょうか。

 

《個人保証を解除することができる》

廃業する場合は、社長個人の名義で銀行から借り入れをして、残額がある場合は、返済しないといけません。

資産を整理して返す必要があります。

資産がない場合など最悪、自己破産する他選択肢がないこともあります。

しかし、事業を売却する場合は、事業を買い入れた企業からの売却金、または債務を引き継ぐことを契約事項に入れておけば、個人保証を外すことが可能なのです。

事業を売却しようと考えたら、まず売却条件として個人保証、個人資産の担保を解除できるのかどうかをきっちりと交渉しておく必要があります。

 

事業売却における課題

やはり、事業を売却するということは一生にそう何度あることではありませんよね。

売る側の方は、初めて売却を考えている方も多くいらっしゃるでしょう。

このような壁にぶつかるのではないでしょうか?

 

①  うちの事業って本当に売れるの?

②  そもそも誰に相談すればいいの?

 

など大きくわければ、この2つになると思います。

 

うちの事業って本当に売れるの?

これは気になりますよね。

どうやったら、あなたの事業がうれるのか、よく検討する必要があります。

次項の「事業売却の準備」にも通じるところはありますが、ご説明していきます。

 

《売れる会社の特徴とは》

  1. やはり黒字経営であること、1期くらいの赤字は仕方ないのですが、2,3期と連続して赤字経営が続いているのは難しいと考えられます
  2. 借入金は、営業利益で返済できる範囲であること。借入金額は年商以下であること
  3. 経理面で、不正経理、粉飾決算などを日常的に行っていないこと
  4. 簿外負債がないこと(これは企業価値を大きく下げてしまいます)
  5. 買い手側、売り手側のお互いの事業が拡大していく可能性があること

これら5つの項目は、優良企業であるなら当然のことです。

この特徴を見て、こんな企業なら売る必要なくて事業続けた方が得じゃないかと思うかもしれません。

確かにそうです。

最初にお話しましたが、後継者がいなくて事業を廃業するしかない事業主が、事業を残すための方法が、この事業売却なのです。

売れる会社というのは、継続して利益を上げている会社だということをまず忘れないでください。

これは厳しいことですが、事業売却、すなわちM&Aにはとても大切な項目なのです。

 

そもそも誰に相談すればいいの?

相談する相手はとても重要です。

自分の大切なデータをすべて明かすわけです。

まず、このような会計、経営について理解度が深いこと。

そして何よりあなたが経営する事業内容を深く理解している人であるべきです。

M&Aのプロに相談することをお勧めします。

専業でM&Aを行っていて、大体のM&A紹介エージェントなら、自身の会社で過去にM&Aを行った実績を紹介しています。

その中に同じ業界が多数あるなら、あなたの会社の事業をスピーディーに理解してくれて、役立つアドバイスができます。

「事業売却」に関する不安をできるだけ取り去ってもらうためにも、M&A紹介エージェントにご相談してみることをお勧めします。

 

事業売却の方法

ここからは、事業を売却する上で必要なことを具体的にご紹介します。

 

【事業を売却するときに準備しておくことってあるの?】

《事業売却成功の秘訣は事前準備につきる》

さきほど、売れる会社の特徴でご紹介した項目⑤をご覧いただきたいのですが、

買い手側と売り手側の事業が、事業売却によって拡大していく可能性があるか?というところです。

事業売却は、よく企業同士の結婚と表現されます。

それも一昔前の「家制度」が残っている時代の結婚に似ています。

昔の結婚は、家と家とをつなぎ、両家を発展させる要素が強かったのです。

結婚する当人同士の感情より、家長の意向が強く影響していました。

家同士が繁栄するなら、一緒になりますという感じです。

それが結婚する当人たちの幸せでもあったのです。

現代の結婚ではなく、古き良き時代の結婚制度と似ているのです。

感情論(好きとか嫌い)ではなく、論理的に両家の繁栄を求めて結婚を進めるところが現代の事業売却(M&A)と似ているのです。

昔の結婚は、まずお見合い結婚です。

このお見合いに至るまでにお見合いする当人の資料を交換します。

この資料が「お見合い写真」と「釣書」といわれる現代でいうプロフィールです。

これを交換して、お互いに同意すればお見合いとなります。

釣書というのは、プロフィールですがかなり詳しく記入する必要があります。

誕生地にはじまり、学歴、経歴、それと家系図も交換されるのです。

企業で言えば次にあげるような資料が必要です。

  • 決算書・税務申告書(3期分は必要ですが、直近の1年くらいの試算表でも可)
  • 所有資産を示すもの(不動産だと登記簿、権利書、固定資産税課税明細書等)
  • 総務的な資料(従業員の履歴書、人事考課、また退職金に必要な額:中退共など退職金共済に加入している分ではまかなえず、会社の資金からも退職金を渡す場合は、それは簿外負債になります)

なるべく上記の資料データは、事業売却を考え始めたらどこにあるかは把握しておく必要があります。

このデータをきっちり用意することが、事業を高く売れる成功の秘訣に直結しています。

このような資料データ収集することを「案件化」といいます。

前項でもご紹介しましたM&A紹介エージェントでは、この案件化するために徹底的に調査をします。

M&A紹介エージェントに相談して、あなたの会社を具体的に案件化することは、適正価格で売却することに必要なのです。

この案件化は成功への秘訣でもあります。

かならずプロへ相談してもらいたいのです。

 

事業売却に関連のある用語

事業売却を行う上で、知っておきたい用語をご紹介します。

 

M&A

先の項目でも出てきた用語ですが、

M&A(エムアンドエー)とは『Mergers(合併)and Acquisitions(買収)』の略です。

企業買収、企業合併などとよくニュースでも使われていますよね。

ニュースになるのは、大企業などが多いのですが、現代のM&Aは、中小企業にこそぴったりなビジネスプランとなっています。

 

競業避止義務

「競業避止義務」とは、労働者は所属する企業と競合する会社・組織に就職したり、競合する会社を自ら設立したりするなどの競業行為を行ってはならないという労働契約法3条4項から生ずる義務のことです。

在職中に違反するようなことがあれば損害賠償、懲戒免職を請求され、解雇などの理由にもなります。

また取締役は会社法365条により、在任中は取締役会の承認なしに会社の営業の部類に属する業務を行うことを禁止されています。

ただ、退職者に関しては、憲法22条の「職業選択の自由」条項があり就業規則、労働契約書に「〇年以内は、会社と競合他社への就職、競合する事業を営むことを禁止する」という項目を明記することもできますが、この〇に入る年数は、判例によると1~2年程度が妥当で、5年などの長期間になると有効となる可能性は極めて低くなります。

 

キャピタルゲイン

所有していた資産が変動によって得られる「利益」のことです。

例えば、有価証券(株式)を売却したとき、購入したとき値上がりしていたら、売却益がありますよね。

その利益が「キャピタルゲイン」です。

また、この資産については、土地、不動産、有価証券、絵画、ゴルフ会員権、貴金属など多岐にわたります。

 

まとめ

事業売却について、ご説明してきました。

最後に申し上げたいのは、現在は事業を売りたい人より、買いたい人が多いということです。

売り手市場なのです。

しかし、どんな会社でも良いというわけはもちろんありません。

お話してきました通り、買い手が欲しがっているのは、

「優良で自社の事業とマッチする企業」です。

買い手に求められる企業になるためにも、早い時期から準備して、魅力的な事業づくりをする必要があります。

【M&A用語】事業売却とは
平成28年度に発表された「中小企業白書」によると、3万件の企業で休廃業があり、
約8000件の企業が倒産しているのです。
注目すべきは、休業、廃業する企業が倒産の約3倍以上あること、そしてその企業の半数は、黒字企業であるという点なのです。
優良な企業が、後継者が見つからないまま廃業を決断しないといけない状況になっています。
これは、日本経済においてかなりの損失ではないでしょうか。
今回は、事業売却を通して、活発な経済活動が行える可能性を検証していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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