2019年1月31日 木曜日

【M&A用語】エグジットとは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

エグジットという言葉をご存知でしょうか。
エグジットで若い経営者が大金を手にしたニュースを耳にしたことがある方も多いかとおもいます。しかし、この言葉の正確な意味までは知らないという方もいるのではないでしょうか。M&Aに深くかかわる企業行動である、エグジットについて解説いたします。

 

エグジットとは

「エグジット」という言葉の意味

「エグジット(Exit)」とは、オーナー経営者や投資ファンドなどの投資家が、これまで経営してきた企業を売却して利益を得る行為です。創業企業への投資、バイアウト、不信企業の企業再生、破綻企業の再生などを目的とした経営権の取得にはじまり、一定期間の経営、または経営への深い関与を経て、最終的な出口、エグジットを行って利益を確定します。「エグジット」は、「イグジット」や「ハーベスティング」と呼ばれることもあります。

 

エグジットまでの流れ

・資金を集めて経営を開始する

エグジットは、創業者や投資家が会社を創業したり、経営権を取得したりするところから始まります。創業者は銀行から資金を借りて資本を調達することもできますが、ベンチャーキャピタルなどからから資金を集めることで会社を創業することもできます。資金を借りた場合、銀行が関心を持つのは貸付金の回収ですが、投資家が関心を持つのはエグジット段階で確定される利益です。ベンチャーキャピタルなどから投資を受ける創業者は、資金を募る段階で、エグジットまでのシナリオを描き、投資家を説得しなければなりません。

これは、エグジットを目指した買収や企業再生の場合も同じです。このような場合、はじめにファンドが組まれる場合が多くなります。ファンドの責任者は、やはり経営権の取得からエグジットまでのシナリオを描き、投資家に説得することで、資金を集めます。

 

・企業を経営して会社の価値を高める

資金を調達出来たら、創業者やファンドの責任者は、創業した企業や、経営権を取得した企業を経営します。創業企業の場合、初期の段階は市場で生き残るのは大変難しく、経営者にはあらゆる工夫が求められます。買収や企業再生の場合、経営は業績不振に陥った原因の不良債権などを処理するところから始まります。その後、コア事業に対して、新しい経営組織が所有している専門的なノウハウを活用しつつ、選択と集中などの外科手術を活用して企業価値を高めたり企業を再生したりします。創業者や経営責任者に期待されることは、一定期間内に確実に企業価値を高めることです

 

・エグジットする

エグジットとは、会社を手放して利益を確定することです。エグジットの方法には主に2つあります。株式を公開してから株式市場で売却する方法と、M&Aを活用して会社を売却する方法です。

 

投資対象となる企業

エグジットを考えた投資は、多くの場合、株式未公開企業に対して行われます。未公開株式は、PE(プライベートエクイティ)とも呼ばれるため、このような投資はPE投資と呼ばれます。エグジットを考えた場合、PE投資の役割は、創業期の企業、不振企業、破綻企業など、資金の調達に株式市場のシステムが適さない企業に対して、資金を供給することです。株式市場は、現状の経営陣の能力を信頼して投資する投資家たちから資金を調達することに適しています。PE投資は、自ら経営に深く関与して、企業価値を向上させてから売却益をあげる投資家たちに適しています。PE投資の対象となる企業は、企業のライフサイクルに対応して3種類にわかれます。

 

・創業期企業

創業期の企業に投資する投資家はベンチャーキャピタルと呼ばれます。多く場合、創業は銀行からの融資を受けて行われます。銀行の関心は貸した資金が利息などのかたちで安定的に回収されることであり、大成功を期待しているわけではありません。革新的なアイデアや技術を売りにして新しいサービスを展開する企業などが創業する場合、エグジットの大きな利益を求めるPEの投資家たちも関心を持ちます。大規模な成功を求めるPEの投資家たちが資金を提供して創業した企業は、「ベンチャー企業」と呼ばれます。

ベンチャー企業が成功して、実際に収益をあげられるようになる可能性はかなり低く、全体の1~10%程度だと考えられています。ベンチャーキャピタルは、こうした高いリスクを織り込んで、エグジットまでの計画を立てざるをえません。投資の収益性を利回りで表現する数値に、内部収益率(IRR、Internal Rate of Return)という数値があります。ベンチャーキャピタルの場合、内部収益率20%が投資判断の目安とされています。

 

・成熟期企業

成熟して、安定した収益性を期待できる企業を買収して、さらに企業価値を高めてからエグジットする投資を、バイアウト(Buy Out、企業買収)と呼びます。バイアウトが株式市場で行われる場合はPE投資ではありませんが、未公開企業の株式を取得する場合はPE投資に分類されます。

 

・経営不振企業、破綻企業

経営不振に陥った企業や、すでに破綻した企業であっても、主力事業が健全な場合は、不良債権を処理するなどして財務状況を改善し、中核事業に集中することなどによって、企業を再生できる可能性が高い場合があります。このような場合にも、投資家はPE投資により利益を上げることができます。

このような企業の場合、比較的安く経営権を取得することができますが、リスクが高い投資となるため、投資判断や、その後の経営のためには、該当企業が属する業界に関する専門的な知識が必要です。企業再生に関しては、産業再生機構や企業再生支援機構のような、官民出資の企業再生ファンドも活躍しています。

 

エグジットの方法

具体的なエグジットの方法、つまり企業を売却して最終的な利益を確定させる方法には、主に2つあります。M&Aを活用して個別に企業を売却する方法と、IPO(Initial Public Offering、新規公開株)と呼ばれる、会社を新しく株式市場に上場してから、その株式を売却することで利益を確定する方法です。M&Aを活用する方法と、IPOを活用する方法には、それぞれメリットとデメリットがあります。この点について次節で詳しく解説いたします。

 

エグジットの傾向

これまで、日本では、エグジットと言えばIPOを活用したエグジットと考えられてきました。しかし、IPOが難しいことや、M&Aに対する理解が進んだことを受け、M&Aを活用したエグジットの件数が増えてきています

 

エグジットのメリットとは


エグジットにM&Aを活用する方法と、IPOを活用する方法の2つがあります。ベンチャー企業がエグジットする場合、それぞれの方法のメリットにはこんなものがあります。

M&Aを活用してエグジットするメリット

・短期間で確実にエグジットできる

IPOとくらべて、M&Aのほうが短期間で確実にエグジットすることができます。IPOの場合、多数の投資家が参加する市場に株式を公開することになるため、厳しいルールを満たすことが求められます。M&Aの場合、一つの買い手企業を納得させればすむので、株式市場が要求するルールを満たす必要はありません。

 

・業績不振企業や赤字企業でもエグジットできる

業績不振や赤字で、株式市場に上場する条件を満たしておらず、IPOによるエグジットへの道が閉ざされている企業でも、M&Aを活用してエグジットする道は残されています。M&Aを活用してエグジットするためには、買い手企業一社のみを納得させればよいのです。客観的な書類に現れにくい企業文化、ブランド、人材、事業の将来見通しなどを材料に、買い手企業と交渉を進めることができます。

 

IPOを活用してエグジットするメリット

・経営権を保持しつつ、会社を成長させることができる

IPOの場合、経営者が一定の株式を自分で保有すれば、経営権を保持しつつ創業者利益を確保することができます。引き続き経営を行いたい経営者は、株式売却益を確保する一方で、上場企業のブランド力を背景として、株式市場で調達できる潤沢な資金をもとに、企業の成長を新しいステージに引き上げることが可能です。

 

・より大きな株式売却益を得られる

M&Aにくらべて、IPOによる売却益は高くなる傾向があります。高い基準をクリアして上場したことで、企業の知名度、ブランドイメージ、信頼性などが上がり、そのことはそのまま企業価値の評価に反映されます。IPOによるエグジットの売却益は、ときに非常に高額になります

 

エグジットのデメリットとは


ベンチャー企業がエグジットするときに、M&Aを活用した場合と、IPOを活用した場合のデメリットには、それぞれこんなものがあります。

 

M&Aを活用してエグジットするデメリット

・経営権がなくなったり、縮小されたりしがちである

M&Aの場合、通常経営権は買い手企業に移りま。これまでの経営者は、経営から手を引くか、子会社の経営者として、親会社の傘下で経営を続けることになります。したがって、引き続き経営に深く関与したい経営者は、M&A交渉の中で、エグジット後の自分の立場を確保しなければなりません。

 

・獲得できる売却益が低くなりがちである

IPOの場合、知名度やイメージが上がることで企業価値が上がりますが、M&Aにはそうした要因はありません。M&Aの売却益は、買い手側の企業評価によって決まります。買い手側に無形資産や将来性などの自社の価値をうまくアピールできれば、M&Aを活用しても多額の売却益を得られる場合があります。

 

IPOを活用してエグジットするデメリット

・IPOの手続きに時間とコストがかかる

IPOを活用してエグジットする場合、最初に株式市場に上場することになります。多くの投資家が参加する株式市場に上場する場合、相対で取引するM&Aとくらべて、資本金や収益の点で高い基準を満たさなければなりません。きちんとした書類を作成して基準を満たしていることを証明する必要があります。監査や準備をおえて上場するまでに最低でも2、3年程度の時間が必要です。

 

・上場前とは違う経営が必要となる

上場後、売却までの間も経営を続ける必要がありますが、上場企業の経営は未公開企業の経営とは多くの点で異なります。多くの投資家に対して経営状況を詳細に開示すること、厳しいルールのもとで経営すること、より高いレベルで社会的な責任(CSR、Corporate Social Responsibility)を求められることにもなります。決算発表、有価証券報告書などを提出するために、監査法人依頼する費用も発生します。

 

・エグジットの手続きが大変

IPOを活用してエグジットする場合、公開した株式を売却する際も、いくつかの基準をクリアする必要があります。TOB規制(公開買付けに関する規制)や、買付け側に対する、大量保有報告書の提出などの規制をクリアしなければなりません。

 

エグジットに関連のある用語

M&A

M&Aとは、Merger and Acquisitionの略語で、企業の合併と買収を意味する用語です。直接的には合併と買収を意味していますが、現在ではより広く事業の再編と統合全体を意味する用語としても用いられています
M&Aの中で特に重要な買収は、事業譲渡や株式譲渡によって実行されます。事業譲渡の場合、一部の事業だけを売却することもできますが、手続きが煩雑です。株式譲渡による子会社化は、経営者が変わるだけなので、簡便に行うことができます。

 

IPO

IPOは、Initial Public Offeringの略語で、「株式公開」と訳されます。企業が資金調達のために、これまで一般に流通していなかった株式を、取引所に公開することを意味します。取引所の厳しい基準を満たす必要がありますが。公開企業は知名度を背景とした多様で潤沢な資金調達が可能となります。

 

投資ファンド

投資ファンドとは、投資家から資金を集めて会社の株式を取得し、会社からの配当や、会社の売却、投資家に還元する組織です。エグジットを目指す投資ファンドは、投資家から資金を得るために、株式取得にはじまり、経営をへてエグジットにいたるまでのシナリオを作成します。経営権の取得後は、シナリオを実行して売却益を獲得することを目指します。

 

まとめ

以上、エグジットについて解説しました。ベンチャー企業を創業するためには、投資家から資金を募るために、経営開始からエグジットまでの入念な計画を作成することが望まれます。近年、エグジットの方法として、ハードルが高いIPOに比べ、M&Aを活用したエグジットが徐々に増えてきています。

【M&A用語】エグジットとは
エグジットという言葉をご存知でしょうか。
エグジットで若い経営者が大金を手にしたニュースを耳にしたことがある方も多いかとおもいます。しかし、この言葉の正確な意味までは知らないという方もいるのではないでしょうか。M&Aに深くかかわる企業行動である、エグジットについて解説いたします。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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