2019年3月30日 土曜日

【M&A用語】カウンターテンダーとは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

昨今、日本国内ではM&Aが活発に行われています。そこには、新規事業への参入・事業の成長戦略・企業の後継者不足問題解決など、多様な企業背景が見られます。ただし、これまで実行されてきたものの多くが「友好的」M&Aであることをご存知でしょうか?M&Aが日常的に行われる現在では、「敵対的」M&Aに注意が必要になります。
今回は「敵対的M&A」に対抗するための買収防衛策として「カウンターテンダー」をご紹介します。併せて、関連用語もまとめました。

 

カウンターテンダーとは


「カウンターテンダー」とは、敵対的M&Aとして企業の買収を含めた株式の買収の提案(テンダーオファー)をかけられた企業が、買収防衛のために行う施策のひとつです。相手企業に対して、逆にテンダーオファーを行うことを表します
日本国内のM&Aではあまり見られませんが、上場企業の買収手段の一つとして用いられるTOB(株式公開買付)で敵対的M&Aが行われることが多いです。

TOBのうち、友好的M&Aはグループ企業の完全子会社化など、株式の買収について対象企業の了承を得ているものを指します。一方、ここで問題となる敵対的M&Aとは、対象企業、及び主要株主への合意や通知をすることなく実施するものを指します。ライバル企業の経営権獲得が目的であることが多く、被買収企業は対抗することがあります。

このような敵対的M&Aを仕掛けられた時には、買収対抗策として2つの買収方法があります。「パックマンディフェンス」という逆買収と、「ホワイトナイト」と呼ばれる第三者による買収です。

後ほど詳しくご説明しますが、「パックマンディフェンス」は被買収企業が、買収を仕掛けてきた企業に対して逆に買収を仕掛ける方法です。対抗(カウンター)策として買収の提案(テンダーオファー)を行うのです。
そして、「第三者による買収方法」では、友好的TOBを活用します。被買収企業が、自社にとって友好的な第三者企業に大量の株式を取得してもらうのです。ここで「大量に」というのには理由があります。会社法上、株式を保有する企業の経営権を取得するには、50パーセント超の保有が必要だからです。

※TOBとは
上場企業の買収手段のひとつで、「Take Over Bit」の略。株式公開買付を意味します。一定の要件を満たす場合に買収側が事前に株式取得の意向を公開し、対象企業の株式を証券市場外で取得する方法です。不特定多数の既存株主から、直接買付が行われます。
一般的に、TOBは株式の取得による「経営権の取得」を目的に行われます。

 

カウンターテンダーのメリットとは


現在の日本国内において、カウンターテンダーを図る場面はあまり見られません。国内でM&Aといえば、双方の合意に基づく買収・合併というのが通常です。しかし、上場企業であれば、いつ敵対的M&Aをしかけられてもおかしくはありません。前述の「第三者による買収」ならば、敵対的M&Aが行われることが表面化した後でも実行できます。

海外の起業家・投資家からターゲットにされることも考えられます。買収防衛策としての知識を深めておいても損はないでしょう。

また、LBO(レバレッジド・バイアウト)などのように、敵対的買収者が、少ない自己資本と金融機関のローンをもとに、敵対的M&Aを仕掛けてくる場合はどうでしょうか。逆買収に必要な資金をもって被買収企業が敵対的買収者を買収してしまえば、当該企業の経営陣を解任して買収されるのを止めることができるのです

 

カウンターテンダーのデメリットとは

被買収企業がカウンターテンダーを行うには、株主との協議が欠かせません。というのは、株主には利益を追求する「投資家タイプ」が存在するからです。企業の経営層として買収の防衛策を実行したくても、株主からすれば自らの利益を損なう事態は避けたいものです。
このため、簡単には防衛策を実行することができないのです。

 

カウンターテンダーに関連のある用語


ここまで、買収防衛策のひとつ「カウンターテンダー」についてご紹介してきました。
続いては関連用語の「敵対的M&A」、「買収防衛策」、「パックマンディフェンス」についてをご説明します。

 

敵対的M&A

【敵対的M&Aとは】

「敵対的M&A」とは、買収企業が被買収企業の取締役会の同意を得ることなく買収を仕掛けることを言います。過半数株式を取得することで、被買収企業の経営権を支配できる議決権を得ることを目指して行われます。

一般的に、敵対的M&AではTOB(株式公開買付)が用いられ、成功すれば被買収企業の支配権を握ることができるのです。

 

【敵対的M&Aの対象企業に見られる特徴】

アビリティ・スキルが高い企業
能力が高い企業を買収することで、採用が難しい特定分野の人材確保ができますし、特定業界への新規参入など事業規模の拡大の可能性が高まります。買収後のシナジー効果もターゲットとしての基準になるでしょう。

経営状況が不安定な企業
経営陣の入れ替わりが頻繁に行われ、経営状況が不安定な企業の場合、経営陣と株主との間に隔たりが生じがちです。双方を分断しやすくなることから、買収の難度が下がると考えられます。

株主構成が不安定な企業
ここでいう「不安定」とは、利益を求める「投資家タイプ」の株主が大半を占めている状態を言います。TOBによる株式の売却で得られる利益が大きければ、経営陣の変更を望むことが考えられます。つまり、利益を得られることが株主のメリットなので、株主にとっては「友好的M&A」になるのです。
特に、企業間の株式の持ち合いが減っている現在、株主構成がより不安定な企業が増加しています。

 

【中小企業と敵対的M&A】

中小企業においては株式の譲渡制限があることがほとんどであり、総じて経営陣の望まない敵対的M&Aは起こりません。

 

【比較用語「友好的M&A」とは?】

「友好的M&A」は、買収企業が被買収企業の経営陣の同意を得たうえで行うM&Aのこと言います。M&Aの手法を問わず、双方の合意が取れていれば友好的買収となります
日本のM&Aは、友好的買収をもって行われることがほとんどです。というのも、敵対的M&Aを実行するには、
 ・多額のコストがかかる
 ・成功率が低い
 ・株式持ち合いという独特の慣例がある
というストッパーが働くため、敵対的買収が行われないのです。

 

買収防衛策

【買収防衛策とは】

「買収防衛策」は、敵対的M&Aを仕掛けられた際に、買収を阻止するべく行う対策です。
2005年に経済産業省と法務省が公表した「企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針」によると、株式会社が資金調達などの事業目的を主要な目的とせずに新株又は新株予約権の発行を行うこと等により自己に対する買収の実現を困難にする方策のうち、経営者にとって好ましくない者による買収が開始される前に導入されるもの」と定められています。

※企業価値・株主共同の利益の確保又は向上のための買収防衛策に関する指針(2005年5月27日 経済産業省・法務省)
https://www.meti.go.jp/policy/economy/keiei_innovation/keizaihousei/pdf/3-shishinn-honntai-set.pdf

 

【買収防衛策の導入に必要な条件】

上場企業の中には、敵対的M&Aを阻止するべく買収防衛策を導入している企業もあります。
経済産業省と法務省からも上述の買収防衛指針が公表されていますが、この指針では買収防衛策を無条件に肯定しているわけではありません。なぜなら、経営陣にとって「敵対的」な買収でも、株主・従業員、及び経済全体にとって有効な買収であれば、そのM&Aを進める意義があるからです。

そこで、買収防衛策を導入するには、以下に示す一定の条件を満たすことが求められています。3つの条件を解説しましょう。

1.買収を防止するための、必要かつ相当な方法であること
不必要であるのに買収防衛策を行使することは認められません。

2.買収防衛策の導入にあたり、その目的と内容、効果などを具体的に開示すること
買収防衛策を導入するには、事前の開示をもって株主の合理的意思に依拠する必要があります。

3.買収防衛策の導入・発動・廃止が、企業価値・株主共同の利益を確保し向上させる目的をもって行うべきであること
買収防衛策は、経営陣のためではなく株主や会社のために行使すべきものです。

 

【買収防衛策の類型1.事前防衛策と事後対抗策】

買収防衛策には、その実行のタイミングにより2つのタイプがあります。敵対的M&Aを想定して事前に策を講じておく事前防衛策と、買収を受けてから対応する事後対抗策です。

・事前防衛策
友好関係にある企業との株式持ち合いや買収についての情報開示を求める事前警告を予防策として講じています。これに敵対的買収者が従わない場合には、後述の「ポイズンピル」、「ゴールデンパラシュート」などを講じます。

・事後対抗策
友好的第三者に自社の買収を依頼する「ホワイトナイト」、自社の価値を下げる「クラウンジュエル」を実行します。広義の事後対抗策として、自社買収のうえで株式を非公開化するMBOもあります。

 

【買収防衛策の類型2.スローハンド型とデッドハンド型】

・スローハンド型防衛策
被買収企業が期差専任制をとっていると、取締役会構成員の交代を一度に行うことができません。これにより、買収防衛策の発動を阻止したり、防衛策の廃止に時間を要する買収防衛策の類型のことを「スローハンド型買収防衛策」と言います。

・デッドハンド型防衛策
被買収企業の取締役会構成員の過半数を交替させてもなお、買収防衛策の発動を阻止できない買収防衛策の類型のことを「デッドハンド型買収防衛策」と言います。

 

【代表的な買収防衛策】

・逆買収(パックマンディフェンス)
逆買収では、敵対的買収者の株式を取得します。被買収企業が、買収を仕掛けてきた企業に対して逆に買収を仕掛ける方法です。対抗(カウンター)策として買収の提案(テンダーオファー)を行うのです。

・第三者による買収(ホワイトナイト)
「第三者による買収方法」では、友好的TOBを活用します。被買収企業が、自社にとって友好的な第三者企業に大量の株式を取得してもらうのです。敵対的M&Aが明るみになった後でも実行できる買収防衛策です。

・巨額の退職金設定(ゴールデンパラシュート)
事前に経営陣の退職金を巨額に設定しておくことで、買収価格を高騰させる方法です。高額になれば敵対的買収者の購入意欲を削ぐことができるでしょう。効果が高い防衛策ですが、株主からは経営陣の保身のためと見なされる可能性があります。

・株主総会の保護(ポイズンピル)
敵対的買収者が一定数以上の株式を取得した際に、他の株主が有利に新株を購入できるようにします。新株予約権を発行するのです。敵対的買収者の持ち株比率が自動的に下がるため、効果の高い買収防衛策でしょう。ただし、元の株主の持ち株比率に変動が生じるほか、発行済み株式数の増加による株価の下落というデメリットも無視できません。

・企業価値の引き下げ(クラウンジュエル)
買収防衛策の「焦土作戦」の1つ。被買収企業が価値の高い資産や収益性の高い事業を売却することで、敵対的買収者の意欲を削ぐ方法です。王冠(クラウン)から価値のある宝石(ジュエル)を外して、王冠の価値を下げることを示唆しています。

 

パックマンディフェンス

「パックマン」というゲームからその名がついた「パックマンディフェンス」とは、敵対的M&Aを仕掛けられた際に被買収企業が行う対抗策の1つ。敵対的買収者に対して逆買収をしかけることを言います。対抗(カウンター)策として買収の提案(テンダーオファー)を行うのです。
被買収企業が敵対的買収者を逆買収してしまえば、当該企業の買収を図ろうとする取締役を解任し、買収されるのを食い止めることができます。

しかし、パックマンディフェンスを行うには、非常に高額な資金が必要になります。相手の買収に関する議決権を失わせるまで、株式を保有する必要があるからです。また、双方が株式を奪い合う状況が長引けば、その分購入し続ける費用が発生します。実行には十分な財務的余力が求められる対抗策です。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は敵対的M&Aにおける買収防衛策として「カウンターテンダー」を中心に解説しました。国内での敵対的買収は少ないものの、上場企業であれば、いつその対象となるかはわかりません。今後は海外企業や投資家からの敵対的買収も増加すると考えられます。

買収防衛策の実行には、企業の経営層と株主との信頼関係と利益向上が欠かせません。導入への一定条件を前提に、有効な対策を構築していきましょう。

【M&A用語】カウンターテンダーとは
昨今、日本国内ではM&Aが活発に行われています。そこには、新規事業への参入・事業の成長戦略・企業の後継者不足問題解決など、多様な企業背景が見られます。ただし、これまで実行されてきたものの多くが「友好的」M&Aであることをご存知でしょうか?M&Aが日常的に行われる現在では、「敵対的」M&Aに注意が必要になります。
今回は「敵対的M&A」に対抗するための買収防衛策として「カウンターテンダー」をご紹介します。併せて、関連用語もまとめました。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
2019年3月30日
【M&A用語】エスクローとは
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