2019年3月26日 火曜日

【M&A用語】コングロマリット型M&Aとは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

昨今、国内における人口の減少と経済規模の縮小から、M&Aによって業界再編が行われたり、新たな市場への参入を試みたりする企業が増加しています。
このうち、既存の業種とは異なる、他の業種の会社や事業を統合することで新規市場に参入するM&Aを「コングロマリット型」と呼びます。コングロマリット型M&Aは、成功すればシナジー創出によって大きく企業価値を向上させることができますが、シナジー創出に失敗、もしくは外部への伝達に失敗すれば、企業価値低下を招きかねません。

今回はそんな「コングロマリット型M&A」について詳細に解説していきます。

 

コングロマリット型M&Aとは


そもそも、「コングロマリット」とはどういう意味を持つのでしょうか。

英語の「conglomerate」は「集団になった」「複合企業の」という意味を持っています。そして日本においての「コングロマリット型M&A」は企業が他業種を営む企業を合併もしくは買収することで、多角的に事業を展開しようとすることを指しています。

コングロマリット型M&Aは大企業だけの選択肢ではありません。近年、後継者不足に悩む中小企業が多数ある中で、経営の多角化を目指す企業がそうした中小企業を買収することで相乗効果を見込むことも十分にあり得るためです。

 

【コングロマリット企業の事例】

ここではコングロマリット型M&Aを成功させるなどして、事業を多角化している企業の事例を紹介しましょう。

・楽天
楽天といえば、言わずと知れたEコマース事業を展開している会社ですが、その他にもいろいろな事業を多角的に展開している典型的なコングロマリット企業と言えます。
楽天が展開しているのは楽天トラベルという旅行事業、楽天モバイルという通信事業、楽天銀行や楽天証券といった金融サービス、またプロ野球球団やJリーグチームと言ったプロスポーツの事業など一見関係のない分野でさまざまな事業を行っているのです。

・ソフトバンクグループ
こちらも言わずと知れた携帯電話の通信キャリアの一つとして知られる会社ですが、実際にはさまざまな事業を展開しています。例えば楽天同様にプロ野球球団を持ち、プロスポーツ事業に進出しているほか、ARMという半導体チップに搭載される技術のデザインをする会社もコングロマリット型M&Aによって買収しています。また、大規模なファンド事業も手がけ、イノベーションを起こしそうな企業やビジネスに対して積極的に投資を行っています。

・JT
JTと呼ばれる日本たばこ産業も典型的なコングロマリット企業と言えます。会社の名前にこそ「たばこ」という名前が入っていますが、そのグループ企業には冷凍食品会社、薬品会社を含むほか、以前はソフトドリンク事業にも参入していました。

・GE(ゼネラル・エレクトリック)
こちらは米国の企業の中でも古くから多くの産業分野で事業を展開してきた会社です。もともとは電力部門を中心とした事業を展開してきましたが、これまで航空、ヘルスケア、オイルやガス、金融といった幅広い事業を手がけてきました。

・ソニー
日本人なら誰もが知っているソニーもコングロマリット企業の一員と言えます。ソニーと言えば電化製品のメーカーというイメージがありますが、実際には金融業やゲーム&ネットワークサービスの2部門、それに加えて半導体部門が利益を引っ張っています。一方でイメージの強いモバイル・コミュニケーションやホームエンタテインメント&サウンドは実際には規模が小さいのです。

 

【コングロマリット型M&Aを成功させるには】

コングロマリット型M&Aのみならず、M&Aを円滑に進めるためにはM&Aアドバイザーやコンサルティング会社といったM&Aを熟知した専門家の存在が欠かせません。買収先の選定からM&Aに必要なデューデリジェンス、PMIといったプロセスまでを一貫して依頼することができます。非常に大きなお金が動く取引となるため、実際にM&Aがアドバイザーやコンサルティング会社を選定する際には十分な時間をかけて吟味する必要があります。

 

コングロマリット型M&Aのメリットとは


コングロマリット型のM&Aを行い、事業を多角化することによってどのようなメリットが生まれるのでしょうか。

 

【シナジー効果を生む】

コングロマリット型のM&Aを実行することで、異なる事業内容、製品、ターゲットである事業を一つのグループで保有することにより、それぞれで培っている技術やナレッジ、顧客を共有し、それぞれの事業のシナジーを発揮させることができます

昨今では、インターネットの発達によるデジタル化が進んだことから、事業間でのデータのやり取りや資源の共有のハードルが下がったため、人口知能やロボティクス、ブロックチェーンといったこれからが期待できる産業をグループ内に取り込むためのコングロマリット型M&Aも増加しています。

 

【多角化によるリスクの分散化できる】

現代は情報化社会による消費者の興味の多様化、新たなテクノロジーによる破壊的イノベーションによって、既存の企業が高度経済成長期に構築したビジネスモデルが破壊されています。そのため、現在あるセグメントで安定して経営ができていると感じていても、そのビジネスがいつ破壊されるかわかりません。

そのため、コングロマリット型M&Aによって多数の事業会社を持株会社で束ね、たとえある市場が危機に瀕しても、他の事業の収益によって補い合うことで、経営が破綻してしまうリスクを低くすることができます

 

【内部資本市場を発生させられる】

事業を多角化することによって、投資家がそれぞれの事業について個別に投資を行うよりも、全体像を把握している経営者が内部の資源を有効的に配分することによって企業の価値を外部の投資家以上に向上させられる可能性があります。これらは多数の事業を運営することによって情報優位性が高まった結果、はじめて発生するメリットです。

 

コングロマリット型M&Aのデメリットとは


一方でコングロマリット型のM&Aを実施することにはメリットばかりではありません。ここからはコングロマリット型のM&Aを実施するデメリットを解説します。

 

【企業価値が下がる可能性がある】

コングロマリット型のM&Aは他のM&Aと異なり、事業が多角化されるため、投資家からすれば企業全体を把握することが難しくなり、単純な評価を下すのが難しくなってしまいます。
また、想定した相乗効果を生むことができなければ、それぞれの事業が単独で存在しているように見えることから、株価が下がり、時価総額を下げてしまうというリスクがあるのです。

 

【グループ企業の中での連帯意識の低下】

コングロマリット型のM&Aを実行することで、即座にシナジーが生まれる事業会社同士であれば、盛んにコミュニケーションを取ることが予想されます。しかし一方で、関係が薄く見える事業会社同士は、どうしてもコミュニケーション不足となってしまいます。これによって、グループ企業で統一すべき企業の理念や風土にゆらぎが生じて、従業員が評価や人事制度で不満を感じる可能性もあります。M&A後には慎重にPMI(M&A成立後の統合プロセス)を成功させることが重要です。

 

【ガバナンスが効かなくなる恐れがある】

コングロマリット型のM&Aでは、買収元が買収先の企業と全く異なる事業を展開しているため、買収先について熟知していないまま買収を進めてしまうことが考えられます。これによって、本来は買収先の経営について適切に指導しなくてはならないにも関わらず、ガバナンスが効かず、経営悪化や不正を招く恐れがあるのです

 

【事業の撤退判断が難しくなる】

コングロマリット型M&Aによって事業が複雑化すると、複数の事業が絡み合い、低収益な事業が生まれた場合でもその事業から即座に撤退することが難しくなるということが有りうるのです。こうなると、全体としては収益が低下してしまう可能性があります。

 

コングロマリット型M&Aに関連のある用語

ここまで、コングロマリット型M&Aについてご紹介してきましたが、ここからは今まで出てきた用語やこれを機に覚えておきたい関連用語について、解説していきます。

 

水平型M&A

水平型M&Aは、コングロマリット型M&Aと異なり、主に同じ業種の企業の間で行われるM&Aのことを指します。水平型のM&Aでは、事業の規模や地域においてシナジーを生むことが主目的とされています。例えば事業の規模が大きくなることでスケールメリットが生まれて調達コストが下がることが期待できます。
また、水平型M&Aによってその事業分野における影響度が増すために、企業の露出が増え、強固なブランドの確立につなげることもできます。

例としては、都内で高いシェアを持った学習塾が、そのエリアを広げ、規模を拡大するために地方の学習塾を買収するといったM&Aが考えられます。これにより、スケールメリットを創出し、全国的にブランドイメージを確率することにも繋がります。

 

垂直型M&A

水平型が横に展開していくイメージであるのに対し、垂直型M&Aは事業における川上から川下までを縦に束ねるM&Aと言えます。
例えば小売のみを事業内容としていた企業が、M&Aによって製造や卸の機能を持つ企業を買収するといったことが挙げられます。

垂直型M&Aのメリットは、ビジネスの川上から川下の間に生まれるマージンを削減することができ、利益率を向上できる点です。
例としては、小売事業を展開しているアパレル販売企業が、縫製工場を有する企業を買収することによって、オリジナル商品の展開など、商品力を向上させるために行うM&Aが考えられます。

 

PMI

PMIは、M&Aが成功するかどうかを決める重要な因子です。PMIは英語で「Post Merger Integration」を指し、M&Aを実行した後の企業間を統合するプロセスのことを指します。段階として、経営統合、業務統合、そして意識統合の3つが挙げられます。
M&Aは買収や合併が成立したタイミングで注目を集めますが、実際にはPMIが失敗したが故に事前に期待していた相乗効果が生まれないということがしばしば起こります。
M&A後は特に買収された企業において社内でトラブルが生まれやすい傾向にあります。これを一つの事業体としてうまく統合させるためにPMIというプロセスが存在しているのです。

 

デューデリジェンス

M&Aにおけるデューデリジェンスは、対象となる企業の価値やリスクを把握するために行われる査定のことです。デューデリジェンスには財務デューデリジェンス、ビジネスデューデリジェンス、法務デューデリジェンスなど様々な種類が存在します。
よく行われる財務デューデリジェンスは、対象となる企業の財政状況や経営の成績など財務に関わる状態を査定し、不正な取引や処理がないかどうか調べます。この財務デューデリジェンスにより、今後の収益力やキャッシュフローの状況を理解し、今後の財務におけるリスクを導き出すのです。

また、ビジネスデューデリジェンスは対象企業を取り巻く市場全体を理解し、その市場の中での位置づけやシナジー効果が実際に創出可能かどうかなどを査定します。
調査は外部環境に関する分析と、内部環境に関する分析に分けられ、それぞれ客観的な数値に基づいて分析がなされます。

 

コングロマリット・プレミアムとコングロマリット・ディスカウント

コングロマリット・プレミアムとは、企業が多角化をすすめることで、企業の価値が上がることを指します。その逆がコングロマリット・ディスカウントです。多角化経営によってそれぞれの事業に相乗効果が見られないか、場合によっては顧客を取り合っているとして、企業価値が下がってしまうことを指します。

 

まとめ

いかがでしたか?コングロマリット型M&Aの意味をはじめ、そのメリットやデメリット、そして関連する用語について解説してきました。
近年事業の多角化によって新たな技術やイノベーション、ビジネスモデルが創出されるなど、大企業のみならず、中小企業にとってもコングロマリット型M&Aが重要な選択肢となってきています。今後もコングロマリット型M&Aは一層盛んに行われるとみられるため、その動向から目が離せません。
この記事を参考に、M&Aに関する知識を深めて頂けましたら幸いです。

【M&A用語】コングロマリット型M&Aとは
昨今、国内における人口の減少と経済規模の縮小から、M&Aによって業界再編が行われたり、新たな市場への参入を試みたりする企業が増加しています。
このうち、既存の業種とは異なる、他の業種の会社や事業を統合することで新規市場に参入するM&Aを「コングロマリット型」と呼びます。コングロマリット型M&Aは、成功すればシナジー創出によって大きく企業価値を向上させることができますが、シナジー創出に失敗、もしくは外部への伝達に失敗すれば、企業価値低下を招きかねません。
今回はそんな「コングロマリット型M&A」について詳細に解説していきます。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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