2019年2月1日 金曜日

【M&A用語】アドバイザリー契約とは

Written by 太田 諭哉(おおた つぐや)

M&Aを検討している方々に向けて、M&Aにおける頻出用語について解説します。
近年のM&Aに求められる目的は多種多様となっています。企業の存続を左右する重要課題ですから、実行に際し、押さえておきたい用語が存在します。
今回はそのうち「アドバイザリー契約」の解説を軸として、そこにある課題や関連する用語についてまとめました。

 

アドバイザリー契約とは


「アドバイザリー契約」とはM&Aを行う際に、M&Aを検討している当事者がアドバイスや実務手続きのサポートを得るために、M&A仲介会社と締結する契約を言います。

 

■アドバイザリー契約を求める背景

近年のM&Aに求める目的は多種多様です。企業規模の拡大・事業多角化・資本増強などを目指し、合併吸収・資本による企業買収・事業譲渡・業務提携が行われます。これらを実現するには領域横断的な専門知識が必要です。通常業務と並行して多岐に渡るプロセスを進めることは容易ではないでしょう。
M&A仲介会社と契約をし、M&Aの進め方・企業経営・財務会計・税務・労務・法律に至るまで専門領域を熟知したM&Aアドバイザーによるサポートを得ることが一般的です。
進捗管理・対象候補企業の選択・文書作成・交渉などをM&Aアドバイザーが行いますから、効率的かつスムーズなM&Aを行うことができます

 

■アドバイザリー契約の規定内容

M&Aを検討する企業とM&A仲介会社とで、アドバイザリー契約における書面を取り交わし、契約締結となります。「アドバイザリー契約書」には、当該契約における業務内容および範囲・契約有効期間・契約解除・免責・秘密保持・報酬等に関する取り決めが記載されています。
このうち、一部を説明しましょう。通常業務と並行してM&Aを進めていくわけですから、業務内容および範囲を規定しておけば、自社で行うべきかアドバイザーに依頼すべきかの判断が容易に行えます。また、依頼するM&A仲介会社により報酬体系が異なります。着手金・中間金・成功報酬ならびに月額固定費の他、手数料や相談料など様々なので、契約締結前に確認しましょう。

 

■M&A仲介会社との契約形態

仲介会社との契約には2つの形態があります。自社にとってどちらが適切か事前に整理しておきましょう。

①専任契約
依頼したM&A仲介会社1先のみと契約の締結を行うもので、排他的な性質をもちます。M&Aを検討しているという情報漏洩のリスク・情報コントロールの手間を低減させることが可能です。専任契約の場合、他のM&A仲介会社との交渉禁止が規定に盛り込まれます。

②非専任契約
同時に複数のM&A仲介会社との契約締結が可能です。多くの対象候補先から条件提示を受ける可能性はありますが、絶対ではありません。複数の候補先企業に自社の情報が出回るリスクも高くなります。そして、複数のM&A仲介会社が、同じ企業に自社の紹介をするケースも想定されることから、結果的に交渉が難航する可能性もあります。

 

■M&Aアドバイザーの交渉方式

アドバイザリー契約に付随し、アドバイザーが行う交渉には2つの方式があります。

①アドバイザリー方式
売却側・買収側それぞれが別の会社とアドバイザリー契約を行い、各々のM&Aアドバイザー同士が交渉を行います

②仲介方式
売却側・買収側双方と契約を締結し、同一のM&Aアドバイザーが仲介を行います。中小企業同志のケースに多く見られます。

 

■M&Aに関連する契約書

「アドバイザリー契約」の他にも、M&Aを実行する上で取り交わす契約書があります。以下4点を解説します。なお、いずれの契約書も、M&Aアドバイザーが作成するものはドラフトであることに注意しましょう。内容の確認と最終的な責任は、売却側・買収側双方の当事者にあります

 

①秘密保持契約書
M&Aの検討を行うには、最初に「秘密保持契約書」を締結しておくことが肝心です。取引当事者を始め、対象企業の従業員・取引先・資産にまで多大な影響を与えるM&Aですから、公表可能となるまで関係者以外にはM&Aを検討している事実を伏せておくことが求められます。

特に、売却側にとって、「M&Aの検討」自体が秘密情報となります。情報が漏れることは、経営への悪影響が起こりかねません。取り決めには損害賠償にも含まれます。当然ながら機密情報の範囲・秘密漏洩の際の責任を明確に定義しておくことも重要項目です。M&Aでは書面・口頭を問わず情報を受領するケースが発生します。開示される一切の情報を「機密情報」とし、機密情報の範囲に含まない情報を定義して除外することが一般的です。

 

②意向表明書
買収側の企業が売却側に対して「意向を示す」ために活用します。買い手による買収の意思・目的・価格・買収方法という条件を提出します。M&Aのスケジュールや手法も記載されます。売却側にとっては売却側の株主が売却先を選定する際の判断材料となります。複数の対象候補があれば、当書類の内容を目安に売却先を選択します。

法的拘束力を持たないため、一般的には契約に結び付かずとも損害賠償や違約金の請求ができません。また、デューデリジェンス(買収監査)などの調査後に、条件が変わりえることを記載することにも留意しましょう。M&Aにおける必須書類ではなく、場合により省略もありえます。

 

③基本合意書
売却側・買収側の株主が、現時点においてM&Aの重要な諸条件が「大筋で合意」されたことを確認するために締結する契約書類です。基本合意書の締結を行わないケースもありますが、交渉内容の整理・交渉内容についての合意を行うことになるため、M&Aの成立に向けて心理的・道義的拘束力を生み出します。

双方の合意形成を表明する性質上、通常は法的拘束力を持たせます。ただし、通常では「取引条件」を法的拘束力の範囲から除外します。というのも、基本合意の締結後に行うデューデリジェンスの段階で新たな事項が発見される場合があり、ここから取引条件に影響を及ぼすリスクが想定されるからです。

 

④株式譲渡契約書
M&Aの成立に向けて最終的に締結する契約書を指します。買収側企業にに売却側企業の「株式を譲渡」し、買収側企業が譲受後に譲渡対価を支払うことを軸としています。M&Aを実行するために合意すべき事項には、譲渡価格などの経済条件のみならず、取引実行に求められる「前提条件・相手方への表明と保証・誓約事項」などがあります。特に、前提条件は契約解除・損害賠償につながる重要事項ですから、入念な確認が求められます。

 

■コンサルティング契約との違い

実務では、M&Aを実行する際に助言・サポートを受けるための、「M&Aコンサルティング契約」も存在します。アドバイザリー同様、コンサルティングも企業に対する助言と提案を行います。この違いはどこにあるのでしょうか。
まず、コンサルティングは、企業が抱える特定の課題を解決に導く側面が強く出ます。解決策を教示するなど、場合によっては自社商品によるコンサルティング・ソリューション活動と言えるでしょう。一方のアドバイザリーは、対象企業から発せられた疑問に対するアドバイス・提案を行う色合いが強くなります。もちろんアドバイザリーであっても、問題点の指摘を行うことがあります。

このように、両者の違いにはグレーゾーンも存在します。いずれにおいても企業に対する助言と提案・サポートを行う点に差はありません。

 

アドバイザリー契約のメリットとは


アドバイザーと契約する最大の利点は、M&Aの一連の流れにおいて包括的なサポートを受けられることでしょう。通常業務と並行して、M&Aを円滑に進めることができます。

M&Aは非常に複雑であり、扱う分野も広範囲にわたります。専門的な知識によるサポート・アドバイスにより期間の短縮・リスク回避も見込めます。

 

アドバイザリー契約のデメリットとは

様々なメリットがあるアドバイザリー契約ですが、デメリットも存在します。アドバイザリー契約を締結する際には、契約内容に注意しましょう。主なデメリットを3つご紹介します。

 

①情報漏洩のリスク

アドバイザリー契約を締結すると、必然的に第三者であるアドバイザリーに自社の情報を提供します。これらの情報は企業存続に関わるものであり、万が一漏洩した場合には今後の企業経営に支障を及ぼしかねません。情報提供を行う前に、「秘密保持契約」を必ず締結しましょう。機密情報の範囲や漏洩の際の責任を明確に定義します。

 

②高額な費用

M&A仲介会社の場合、業務を一括で行ってもらえます。一方でアドバイザリーを専門分野毎に起用していては、かなりの金額が必要です。通常、仲介会社では「着手金・中間金・成功報酬・月額固定費」など様々な費用が発生します。加えてデューデリジェンス担当のアドバイザリーを起用すると、数百万~数千万円規模の費用がかかります。M&Aアドバイザリー起用には、分野・タイミングを慎重に選択しましょう。

 

③アドバイザーとの相性

アドバイザーとの相性の良しあしがM&Aの成否に影響します。売却側・買収側共に自社の利益の最大化を目指すものですが、成功報酬を得るために例え売り手にとって多少条件が悪くなろうとも、妥協や説得を試みるアドバイザーもいます。また、仲介形式の場合は将来的な再契約の可能性があることから、買収企業側の意向や条件をより反映した契約内容になるケースも考えられます。

 

アドバイザリー契約に関連のある用語


アドバイザリー契約には、上述の各種契約の他にも様々な関連用語が存在します。M&Aを検討する際の理解の一助となれば幸いです。

 

M&A

M&Aは「合併・買収」を意味する「Mergers and Acquisition」の略語です。企業の命運を左右する重要な企業戦略であり、主に事業の拡大もしくは縮小のために行われます。「業務提携・資本提携・分割・買収・合併」が含まれます。

①業務提携
開発を効率化するための「技術提携」・生産の委託や共同の資材調達で相互利益を得る「生産提携」・提携先との販売委託で相互利益を得る「販売提携」があります。

②資本提携
相手方の株式を持つことで関係強化につなげていきます。「資本参加」と「相互保有」があります。

③分割
事業の権利・義務を対象企業に継承させることを意味します。一方の会社の事業を相手企業に継承させる「吸収分割」・双方の事業を新しい会社に継承させる「新設分割」に分けられます。

④買収
売却側企業を存続させたまま、その経営権を買い取ります。一部の事業を譲渡する「事業譲渡」・売却企業側の株式を買い取ることで経営権を得る「株式取得」があります。

⑤合併
合併に参加した会社が消滅して、複数の会社が一つの会社になります。合併に参加した1社以外、消滅する「吸収合併」・合併に参加した会社が全て消滅する「新設合併」に分けられます。

 

M&Aブティック

「M&Aブティック」とは、M&Aアドバイザリーを専門に行う専門家集団のことです。役割はM&Aアドバイザリーと同じながら、中小規模案件を手掛けることが多くみられます。M&Aブティックでは交渉の仲介も行うので、情報収集・リサーチ能力に優れたプロフェッショナル集団による業務サポートを選択肢に加えることも良いでしょう。クライアントのリクエストに則り、リスク管理から企業の展望をサポートする存在です。

 

M&Aアドバイザー

「M&Aアドバイザー」とは、M&Aにおける一連の業務・手続きをサポートするスペシャリストです。業務に関連するアドバイスから交渉・契約成立までの取りまとめを行います。「ファイナンシャルアドバイザー(FA=Fnancial Advisor)」・「M&Aコンサルタント」とも呼ばれ、経営・財務・会計・法務など、横断的な領域を専門知識でサポートします。尚、アドバイザーはクライアントに対しての助言を行いますが、最終的な判断・意思決定はクライアント自身が下すことになります。

■M&Aアドバイザーの主な所属先
①M&A仲介会社
②金融機関
③会計・税理士事務所
④ファイナンシャルプランナー
⑤弁護士事務所

 

まとめ

アドバイザリー契約を結ぶにも、契約方式・交渉形式・報酬体系など様々な要素から検討することが求められます。案件ごとにスキーム・価格・期間も異なり、一様にこれ、という雛型はありません。それぞれのメリット・デメリットもありますから、「自社にとって最適なM&A」を実行できる手段を選択しましょう。

【M&A用語】アドバイザリー契約とは
M&Aを検討している方々に向けて、M&Aにおける頻出用語について解説します。
近年のM&Aに求められる目的は多種多様となっています。企業の存続を左右する重要課題ですから、実行に際し、押さえておきたい用語が存在します。
今回はそのうち「アドバイザリー契約」の解説を軸として、そこにある課題や関連する用語についてまとめました。
Writer
太田 諭哉(おおた つぐや)
1975年、埼玉県生まれ。1998年に早稲田大学理工学部を卒業し、安田信託銀行株式会社(現・みずほ信託銀行株式会社)に入行。2001年に公認会計士2次試験に合格し、監査法人トーマツに入社。おもに株式公開支援、証券取引法監査、商法監査の経験を経て、2003年に有限会社スパイラル・エデュケーション(現・株式会社スパイラル・アンド・カンパニー)を設立し代表取締役社長に就任。
「未来を創造し続ける会計事務所」のリーダーとしてベンチャー企業・成長企業の支援を積極的に行っている。
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